第30話「バトルロイヤル④謎の男・エル」
「あのね、ゴモラはね、ママとパパに隠れてお家に住んでたの。お家に私しかいない時に出て来るんだよ!」
「……どっから?」
「色々だよ?お昼寝しようとしてお布団をめくったら居た時は、びっくりしちゃいました!」
「そりゃ、驚くだろうね。……うん。驚く。僕だったらショックで気絶するね。間違いなく」
布団の中に居る……?
屋根裏に住みついているってレベルじゃないんだが……?
普通に常識的に考えて、庭に出没するとかだろ。なんで家の中に居るんだよ……?
ワルトナは理解を超えた事象が起こりつつあると、背筋を正し、視線を鋭く尖らせた。
そして、知略に富んだ頭脳をフルに動かし、とある結論を出す。
「つまり、リンサベル家で飼育してたってことかい?ペットとして」
「ううん。ママとパパは知らない」
「知らない……?じゃあ、食料はどうやって調達していたんだい?」
「キッチンに果物が置いてあるから、それを食べてたよ。それと私のおやつもあげてました」
キッチンに果物……?それは普通の事なのか?
世間一般の家庭を知らないワルトナは、キッチンに常に果物があるという事が気になった。
確かに、果物を常備しておく事はあるだろう。
しかし、常備していた果物が消えるとなっては話は別だ。
セフィナの口ぶりから、両親には隠していた事は大前提であるが、それはバレていないという理由にはならない。
そして、「毎日バナナが消えたら、誰だって気付くだろ!」とワルトナの思考は終了した。
つまり、タヌキ帝王が住みついているのは、食料を管理していたであろうセフィナの母親にはバレている。
それはつまり……。
へぇー。リンサベル一家の戦力は、国家レベルを超えているんだねぇ。
というか、人類じゃ勝てないっぽい?ははは、すげぇや!
ワルトナは恐ろしい事実に直面し、表面には出さないように、密かに震えた。
「そうかい。お友達なのかい。ちなみに、リリンサは知ってるのかい?」
「知ってるよー。たまたまおねーちゃんが学校から早く帰ってきた時があって、その時は一緒に絵本を読んでたんだけど、見られちゃったの」
「タヌキが本読むなよ……。で、リリンサはタヌキを見てなんて言ったんだい?」
「かわいい。セフィナ、どこで拾ってきたの!?って」
「……で、どうなった?」
「その後、一緒におやつをあげたよ。ゴモラはリンゴ好きなんだもんねー?」
「ヴィーギィルアップル!」
……ち。食い意地張ってんな。
そこはバナナにしとけよ。持ってないんだよ!リンゴチップスなんて!!
ワルトナは小さく悪態をつきながら、「そうか、それで……」と昔から思っていた疑問の答えを見つけた。
リリンが小動物……という名の危険生物に対して、まったく物怖じしないのは、タヌキ帝王が原因か。
ついでにリンゴチップスなんてレアなお菓子を持ち歩いている理由もこれか……。
ワルトナは、露骨に「はぁ。」とため息を吐きだし、問題を先送りにした。
視線の先にある闘技石段では、二人の男が向かい合っている。
荒んだ心を少しでも癒そうと、ワルトナは恋慕の混じる表情で、小声で呟いた。
「せめてキミは勝っておくれ、ユニ。キミから勇気が貰えたら、この世紀末な状況を打破できる気がするんだ……」
**********
「行くで!」
「あぁ、胸を貸してやるよ!」
胸を貸してやる?はっ。何を言っているんだ俺は。
絶対の確信を持ってエルを見据える。
この男はただのランク3では無い。
飄々とした表情の下の、揺るがぬ瞳。
薄ら笑いともとれる、余裕のある態度。
そして、……その身に纏う整い過ぎたオーラが、ただもので無いと証言しているのだ。
エルは、それこそ、どこに居ても不思議じゃない雰囲気を纏っている。
今も、商人を名乗りながらも拳闘大会なんかに出場しているが、まったく違和感のない自然体だ。
恐らくだが、この雰囲気はどこに居ても、たとえ市場や漁港、下町や教会、果ては王宮であっても揺るが無いだろう。
万能という言葉一つで語れない何かを持っているのは、確定的。
後は、その能力が俺よりも上かどうか、そこが気になる所だな。
俺は、タヌキ幼女相手に掛けたバッファを全力で活性化させ、エルを迎え撃った。
上段から最も速度が出る姿勢で、一呼吸の間も無く切り捨てる。
そうしようとして、失敗に終わった。
エルは手にしていた短剣でグラムをいなし、最小限の動きで回避を行ったのだ。
「良い剣だけあって、重い一撃やなぁ」
「軽くいなしておいてよく言うぜ。むしろ、短剣なんかで受け流された事がショックなんだが?」
「ワイは商人やで?装備品は超絶一級品や」
確かに、エルの持つ短剣からは、尋常じゃない力を感じる。
それはまるで、太陽の光のようだ。
刀身からは絶え間なく陽光が漏れ出し、日光の温かな熱を感じる。
持ち手の部分はエルの手に隠れてほとんど見えないが、精巧緻密に刻まれた魔法陣があるようだ。
美しさで言えば、グラムと同等。
そして、秘めているエネルギーは……未知数。
少なくとも、短剣だから一撃で第九守護天使を破壊する力は無い、と侮れるレベルじゃない。
もう一段階気を引き締めて、警戒レベルは『大悪魔級』としておこう。
つまり、最高レベルってことだ。
「装備が一流か。だが、それは俺も同じだ。この剣はグラム、神を殺す為に――」
「知ってるで」
「……なんだって?」
「知ってる言うたんや。その剣の名は『神壊戦刃・グラム』。神の器を破壊するために作られた、第六の武器。特性は『万物の絶対破壊』であり、概念ですら破壊を可能にする神理の破壊剣。その力の前では、神の作りし世界の秩序ですら……なんや、絶句して?」
「いや、やけに詳しいんだなって思ってさ」
「何度でも言うたるわ、ワイは商人やで。世界最高の武器の情報くらい仕入れるちゅー話や」
「……あの、続きをお聞きしても?」
「それは……有料に決まっているやろ!」
ちくしょう!良い所で話を区切り居やがって!なにが有料だよ!
……2億エドロで、なんとかならないかなッ!?
一応の打診をしてみたが、答えは拒否。
「そんな小遣い程度の金、1分で稼げるで」と冷たくあしらわれてしまった。
ぐぅ。まぁ、分かってはいたんだ。
今は戦闘中。
普通に考えて敵である俺に情報を売るなんて事はしないだろうし、そもそもが適当な事を並べた嘘という可能性もある。
俺の知識はリリンに準ずるもので、リリンはどこからか、たぶんワルト辺りから仕入れた情報を俺に話してくれただけだ。
そしてワルトは、不安定機構の深部とかで調べた情報を元にしているんだろう。
つまり、グラムについて調べる手段はあるわけだが、簡単に調べられる情報はすべて俺達の中で共有されているはず。
さっきの話とリリンからの情報が一致しても、より深い情報をエルが持っているとは限らない。
だが……。
「そうか、有料なのか。で、その料金はどうやって支払えば良いんだ?グラムの技を軸にした戦闘とか見せればいいのか?」
「それは『重力流星群』を基軸にした高速戦闘の事かいな?だったらいらんで。せめて『覚醒体』にならんと、話にならんわ」
「覚醒体……?お前は何を知っているんだ?エル」
「そうやなぁ。ワイは商人やから……ってのは無理があるやろな。兄ちゃんよりも長く生きているからって事で勘弁してくれや」
少しだけ探りを入れて見たが、エルが俺達の知る情報よりも高度な情報を持つ事が確定した。
そして、俺のカマ掛けに引っ掛かったというよりも、ワザと暴露された様な印象を抱く。
コイツは何者なんだ……?
もしかして、親父の関係者……か?
「なぁ、エル。唐突だが、賭け勝負をしないか?」
「賭け?」
「あぁ、賭けだ。このままグラムについて聞いても、教えてくれる気は無いんだろ?だったら、俺が勝ったら質問に3つ答えてくれ。もし俺が負けたらお前の質問に3つ答えてやる。商人であるならば情報は欲しいだろ?」
「ほう、魅力を感じるで。だが、商人として、不確定な賭けなんぞ行う訳にはいかん。だから、聞かれる内容を決めた上での契約という形ならいいで」
予め聞く内容を決めておく……?
それは、普通に考えれば悪手でしかない。
予め質問が決まっているという事は、嘘を考える時間を与えるという事になる。
嘘か本当か分からない情報に価値はない。
それに万が一、エルが敵であった場合、罠に掛けられる可能性すらある。
しかし……。
「質問の答えに、嘘を混ぜたりしないんだよな?」
「しないで。嘘偽りなく、真実と史実を話してやるわ」
「そうか。だったらその条件で良いぜ」
「契約成立やな。じゃ、情報のやり取りは3つや。持ちかけたのはそっちやから、兄ちゃんから提示してくれや」
俺は、エルを信じることにした。
特に確証は無く、ほぼすべて直感に頼った判断だ。
失われた記憶の残滓、その一欠けらにも満たない何かが、エルは信用できると訴えかけている……様な気がしただけ。
賽は投げられ、後は結果が出るだけだ。
俺はエルに、三つの質問を提示した。
「俺が知りたいのは……『グラムの未来』『お前の現在の目的』『俺の過去』だ」
「へぇ。随分と突拍子もない事を聞くんやな。ワイの現在の目的は置いといて、前後の二つはまったく知らんという事もあり得るで」
「はっ。嘘をつくなよ。お前は俺の過去に何らかの関わりを持っているだろ?」
「さてどうやろな。それは契約履行後のお楽しみって奴にしとけや」
「あぁ、分かった。それでエル、お前の質問は何だ?」
「ワイの質問はな……兄ちゃんが連れてる女の子の……」
「……ん?」
「『バスト』『ウエスト』『ヒップ』のサイズや!」
「……知らねぇぇぇぇぇぇよッッッッ!!」
何だそれは!?
そんな情報、俺が知りたいくらいだっつーーの!
あ、いや、違……ちくしょう、コイツ、ふざけてるのか!?
俺は至って真面目な質問をしてるっていうのに、馬鹿にされてるとしか思えない。
というか、俺がリリンと一緒に居る事を把握していやがる。
ものすっごく怪しさが増したんだが?
敵という可能性は勿論、大魔王レジェリクエルートも大幅確率アップ。
クノイチ幼女は囮で、こっちが本当の刺客ということも……?
えぇい!敵が多すぎて混乱するんだが!
助けて、悪辣聖女様!!
「なんや……知らんのか。ワイはてっきり、あの豊満な乳を揉みしだいたんかと思うとったわ」
「豊満……?いや、心当たりが無いんだが?」
え。一体、誰の事を言っているんだ?
豊満と言えばカミナさんだが、揉むとかそういう次元に居ないし。
つーか、むしろ揉まれた。
「んー。筋肉に変な癖があるわね。えい」とか言って、バッキバキに揉まれた。
うーむ。心当たりが無い。
あ、もしや……。アホタヌキの事を言っているのか?
アイツは女の子。体も普通のタヌキに比べて大きいし、タヌキ的には巨乳であっても不思議ではない。
……おい、俺の性癖がタヌキだって言いたいのか?
ぶっ殺すぞ、てめぇ。
「馬鹿にしてるのかエル?ん?」
「……。なんや、手間どっとるんかいな」
「ん?」
「まぁ、そういうことなら変更するで。ワイが聞きたいのは『兄ちゃんが使える魔法の数』『リリンサリンサベルが使える魔法の数』『うまいバナナ料理』や」
「おい、最後。何だバナナって。その並びだと、俺とリリンとバナナが同格に聞こえるんだが?」
「なにを馬鹿な事言っているんや。同格なんてありえへんやろ。こういうのは一番大事な情報を最後に持ってくるんやで。前二つはオマケや」
「バナナに敗北しただとッ!?」
「ちょいとした手土産が欲しくてなぁ。美味いバナナ料理、できれば菓子がええで」
それも知らねえよ!
何だよバナナ料理って!?
タヌキじゃねえんだから、そんなにバナナを喰わねえしな!
だが、ここで重要な事を思い出した。
なにを隠そう、オレのポーチの中には、至高のバナナ料理が封印されているのだ。
もし、敗北する様な事があったら、バナナチップスを差し出そう。
本来は情報で済ます所なのに、現物を出すのだから文句はあるまい。
「それにしてもバナナか。ちなみになんでバナナなんだ?オレンジじゃだめなのか?」
「ワイの本拠地はバナナ農園があるんや。んで、文字通り飽きるほど食うて来たわけだけど、新しい料理があるなら食うてみたいやん?」
やべぇ。バナナチップスを出せる雰囲気じゃなくなった……。
こうなったら……うちの食欲旺盛な大悪魔さんに聞くしかない。
古今東西、あらゆるグルメを堪能してきたであろうその舌ならば、きっとバナナ農家を満足させる逸品が見つかるはず!
あれ……?こんな話でいいんだっけ?
もっとこう、大事な話をしてなかったっけ?
「いや、話がネジ曲がってるな……まぁいいや。バナナについて語る気も無いしな」
「その口ぶりだと、ワイに勝つ気でいるんかいな?」
「そうだ。グラムの機能を知っているようだし、本気で行かせてもらうぜ。幸い、お前をぶっ殺しても問題ないしな」
「おぉ、怖い。タマが縮こまるで」
拳闘大会に参加したのは、もともと冥王竜を一人で狩れるようになる為に、訓練をすることが目的だった。
200人中、198人が雑魚だったせいでまるで手ごたえが無かったが、エルは違う。
グラムの機能をすべて使っての全力戦闘。
まずは、戦闘フィールドを構築する所からだ。
俺は先手を取り、グラムを真横に振り抜いた。
切っ先がエルをギリギリ掠める程度だし、回避は余裕のはずだ。
実際エルは体を仰け反らせるだけでグラムをかわして見せた。
だが、オレの狙いは攻撃ではない。
振り抜く前と振り抜いた後、そして、くるりと体を翻して後方にも二つで合計四つ、重力流星群を飛ばす。
これで闘技石段の四隅に重力場が設置された。
尽かさず、グラムの刀身と俺自身を重力場の影響下に置く。
惑星重力軌道。
人間の可動領域を超えた動きを可能にする俺のバトルフィールドだ。
俺は後方から斥力を発動し、推進力を獲得。
エルに向かって文字通り、飛んだ。
「一太刀で決着とか、悲しい終りは勘弁してくれよ!エル!」
「それは、取らぬ狸の皮算用って言うんや、覚えておけや!兄ちゃん!」
声と共に、絶対破壊の刃と、美しい短剣が交差した。
圧倒的な剣圧が吹き荒れる中、俺もエルもピクリとも動かない。
いや、動けない。
お互いの力が拮抗し、重なった刃で力を相殺しあっているこの状況では、力を逃がす事は命取りになる。
それにしても、惑星重力軌道で力を増幅している俺と同等の力か。
はっ!面白ぇ!
「悪いがな、鍔迫り合いは俺有利なんだぜ?《重力衝撃波!》」
拮抗し、お互いの頭は剣の後ろにある。
普通ならば、剣の技で上手く相手を騙すんだろうが、俺にはもっと直接的な攻撃方法がある。
くらえ!グラムビーム!
卑怯だとか言われようとも、勝てばいいのだよ!
「光の性質を持たない純粋なる破壊のエネルギーかいな。そんなもん、受け止められんわな。普通は」
「なに?」
エルは悠然と立っていた。
重力衝撃波を受けて後ろに吹き飛ばされたものの、その距離は5mにも満たない。
そして不思議な事に、エルの周囲に7つの魔法陣が一瞬だけ浮かんで消えたのだ。
その魔法陣は七色の輝きを放ちながら重なり合い、無色へと変化。
何らかの方法で、重力衝撃波は無効化されてしまったらしい。
「魔法も扱えるのか?やるじゃねぇか」
「今のは魔法じゃなく、この短剣の機能のひとつやで」
「へぇ。それじゃ今度は、手数で勝負だ!」
グラムを引き戻しながら、重量を軽減。
四方の惑星重力軌道の影響力を強めて、乱撃を繰り出す。
上段切りの構えから、筋肉を無視した動きをして胴薙ぎへ変更。
エルに触れるギリギリのところで今度はグラムを振り上げる。
コの字を描くようなあり得ない軌道でグラムは動き、狙うはエルの下顎。
アッパーカットのように登るグラム。
それを目で追い、無駄のない動きでエルは回避した。
「ほら、どんどん行くぜ!」
だがまだ終わらないぜ!
上昇するグラムへ再び斥力を行使。
そしてだんだんとグラムの剣速が高まり、やがて未知の領域へと踏み込んだ。
「おらおらおら!ははっ!全部防ぐのかよ、エル!」
「こんだけ激しいアプローチ、無視するには惜しい代物やで!」
グラムを振った音どころか、通り過ぎた残像までが歪み始めている。
光の速さを超えたとまでは言えないが、それでも、剣を振るスピードじゃない事は確かだ。
それを真正面から、エルは短剣で迎撃していく。
迎撃の度に、激しく散る火花のような発光が起こり、空気の焦げ付いた臭いが鼻をくすぐる。
「ええでユニクルフィン!案外面白いもんやんけ。見直したわ!」
「見直したか。んじゃ、そのまま見上げて後ろにひっくり返ってろ!《重力破壊刃!》」
エルの顔の目の前にグラムが来た瞬間、進路を下降から前進へと変更。
刺突攻撃に切り替え、揺るがぬ瞳を狙う。
剣先にエネルギーを集中させた、一点突破。
防御魔法すら貫くこの一撃で勝負を決めに行く。
エルは視線だけでグラムを負うと、あえて顔を前に突き出した。
ガキィンと響く、金属音。
……何だとッ!?
コイツ、歯で受け止めやがった!?
「ぺっ。商人は歯が命っていうてなぁ」
「歯にバッファをかけるとか、すげえ発想だな」
「そうかいな?牙に魔法紋を持つ動物は多いし、案外普通やろ」
「普通……なのか……?」
俺の思考の中で、タヌキリリンが大きく口を開けた。
薄く光る、並びの良い歯。
うん、ありえそうで怖い。
「さてと、そろそろ遊びは終わりにしましょか」
エルの声を聞いて、脳内タヌキリリンにバナナチップス食わせて封印。
ふざけている場合では無い。
どうやら、エルは戦闘レベルを一段階引き上げるらしい。
エルは、手にして居た短剣を前に突き出し、冷たい瞳で俺を見据えている。
その瞳に対し、俺は虚勢を張った。
「遊びは終わり?俺はさっきから真剣だぞ?」
「いやいや、遊びみたいなもんやろ。『神殺し』が交えているんやで、周囲の状況も含めて、こんなもんで済むはずが無いわ」
「……なに?」
「余興は終わりちゅーことや。《英知永劫・繁栄輪廻……数ある命は我が糧なりて、やがては神等に捧げるものなり……。覚醒せよ、神縛不動・ヴァジュラ》」
エルの持つ短剣が、光に包まれた。




