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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第7章「仇敵の無敵殲滅」

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第27話「バトルロイヤル①開幕」

 大会開始10分前。

 既に戦闘区域内には100人の剣士が登壇しており、俺も待機場所で待っている。


 俺を含めた2番目に投入される50人の出場者が横並びに控える中、俺はバトルロイヤルのルールを思い出していた。



『バトルロイヤル形式』


 戦者は、神の定めし以下のルールで戦い、命を賭し、演目を捧げよ。


 一、戦者は命を奪う事を許される。

 一、戦者はいかな手段を使おうとも、神の名において咎められる事は無い。

 一、戦者は己が意思で敗走する事を許される。闘技石段から降りし戦者は既に戦者では無い、敗者だ。

 一、神を最も長く楽しませし戦者に、祝福と栄光を与える。


 ※以上が神が定めたルールとなりますが、より素晴らしい演目を行う為、追加で以下のルールを定めます。


 ・後から順次投入される追加組は、自分の参加時間が来た場合、速やかに闘技石段を目差し、壇上に上がならければならない。

 もし次の投入までに壇上に上がっていない場合、失格とする。



 リリンと確認したルールは至ってシンプルだった。


『戦うフィールドである『闘技石段』から落ちること無く戦い続け、最後の一人となればいい』


 そこに至る手段に制限は無く、剣士であっても魔法を使用しても良いという、まさに実践と言うべきルール。

 要は、『勝てばいいのだ!』を突きつめたルールだということだ。

 神も、随分と適当なルールを作ったもんだと心底思う。


 さて、俺の第一目標を速やかに達成させるため、計画を立てておこう。


 俺が居るのは、円形に広がる闘技場の最も外側の『非戦闘区域』。

 魔法を完全無効化する場所にある、五つの待機場所の一つだ。

 大会が始まり俺の出番が来たら、ここから闘技場中央の戦闘区域、『闘技石段』へ登らなければならない。



「ユニク、バトルロイヤル形式は、闘技場の端にある待機場所から走って闘技石段へ登ることから始まる。ひゅーん!と行ってしゅたた!ってやればいいと思う!」



 そんな事前説明を受けていたが、思っていたよりも距離がある。

 屋台村襲撃2週目をしつつリリンに聞くんじゃなくて、もっと詳しく聞いておくべきだった。



 俺は目の前の会場全体を見渡した。


 そこのあるのは、直径300mの正円形の敷地。すべて石畳で舗装され、中心部以外は平らな地面となっている。

 そして、中心部には、灰色の石で出来た『闘技石段』と呼ばれる戦闘区域が有る。

 闘技石段は、神製記憶石アカシックアダマントと呼ばれる特別な石材で作られていて、どれだけ破損させようとも、一定時間で凹凸の無い元の状態に戻る魔法が掛っているとリリンが言っていた。

 そんな石で出来た闘技石段の大きさは、一辺が150mの正方形で、石畳から1m程せり上がっている。

 当然、戦闘の場となる壇上は平らで、繋ぎ目すら見当たらない。


 さらに、この闘技石段を含めた中心から250mの円形は『魔法使用可能区域』。

 待機場所から戦闘区域の闘技石段に登る前に、バッファ等を掛ける事が出来る場所となっている。


 戦いが始まり、俺の番が来たら、闘技石段を目指し走って行く事になる。

 始めは自力で走り、魔法使用区域に達したらバッファを掛ける。

 そして、闘技石段に登り切った瞬間から、戦いの幕が上がるのだ。



「いよいよ始まるのか……」

「ん?なんや兄ちゃん、随分と緊張してるみたいやな。初めてかいな?」



 つい口に出してしまった心の声に、返事が返ってきた。

 えっ、どちら様?

 吃驚しながらも視線を向けた先に居たのは、褐色肌の人の良さそうな青年だった。


 俺は愛想笑いを浮かべつつ、嘘をついてもしょうがないので、思ったままを返す。



「あぁ、そうなんだよ。連れは何度も出てるって言うけど、俺は初めてでさ」

「そうかいそうかい。レベルは……14000か。あんまり生き残れるレベルじゃないなぁ……が、兄ちゃん、実はすごく強いやろ?」


「ん。さてな。よくレベルの割には強いって言われるが、あんまり人と比べた事も無いし分からん。あ、ちなみに、タヌキには勝てない!」

「なんや、唯の雑魚やないか!って、そんなわけあるか。そんだけ立派なモン持ってて、そりゃないわー」


「立派なモン?あぁ、グラムの事か?」



 青年の視線から察するに、グラムの事を言っているのだろう。

 確かにグラムは物凄く立派だ。

 真紅のフレームは常に輝いているし、刀身だって傷一つ無い。

 これだけの武器を所持しているだけで、並みならぬ人物に見える……といいなぁ。


 そんな事を考えつつも、思っていた事を確かめるチャンスだと気が付いた。

 まだ始まるには数分あるだろうし、暇つぶしには丁度いいか。



「なぁ、この戦いってさ、最初から戦えば戦う程、不利だよな?なにせ体力は有限な訳だし」

「んーそうでもないやろ?技量が有る人にとっちゃ、有利になる事もある訳やし」


「有利になる事?」

「ぐいぐい聞いてくるなー。兄ちゃんが持っている情報と交換なら教えても良いでっせ。何か面白い事でも良いで」


「そうだなぁ……」



 流石に、これから敵になる訳だし、簡単には教えてくれないか。

 この青年のレベルは31270。ランクは3で、バトルロイヤル形式に出られる中じゃ明らかに強者だ。


 情報を得るには、俺も情報を話すか、面白い話をするか。

 ……ゾッとする話でも良いのかな?



「この間な……空からタヌキ将軍が降ってきたんだ。大体1000匹くらい」

「……怖っ!?なんやそれ!」


「でさ、近くに居た冒険者に襲いかかり……」

「ど、どうなったんや……!?」


「バナナを強奪して、森に帰って行った。それ以来、その森では剣の先にバナナを刺して行動するのがルールになった」

「意味が分からんぞ!?確かに、タヌキはバナナめっちゃ食うけども!」



 この男、タヌキがバナナ好きだという事を知っている……だと!?

 その後、原因はタヌキ帝王なるクソタヌキが仕出かしたと言ったら、男はちょっと考え込み、「そうか。兄ちゃんも数奇な運命やなー」と同情を示された。


 そして男は「笑わしてもらったし、教えたる!」と会場を指差して解説を始めてくれた。

 初めてタヌキが役に立ったぜ。ありがとうとは、言わねえけどな!



「いいか、戦いは闘技石段の上だけじゃないで。魔法使用可能領域に入った瞬間から始まるんや」

「ん?どういう事だ?」


「当たり前の話っちゃそうだけどな、魔法が使える場所に入った瞬間、遠距離魔法でドカーンと吹き飛ばされる事もあるって事やな」

「……それってアリなのか?」


「神様が良いって言った以上、アリやで。壇上に登っている奴らからしたら、上がってこられたら敵が増える訳だしな。遠距離攻撃ができる奴はあえて放置されて、投入される人員を減らすんや」

「なんてこった……つまり、最初は初期組VS追加組の戦いって事か?」


「大体そうなるで。まぁ、遠距離攻撃が出来ないもの同士で壇上で戦っているから、まったく数が減らないという訳じゃないけども。それとな、後になるほど魔法使用可能領域には罠が増える。これは通過した追加組が後発を蹴落とす為に仕掛けるんや」

「……何でもアリかよ!?剣で戦えって言いたいんだが!?」



 俺は剣での勝負がしたくて、ここに居るんだよ!!

 壇上に上がる前に魔法を撃って来るわ、罠は仕掛けられてるわ、ロクな事が無いじゃねえか!


 男は悪びれることなく、その後も説明をしてくれた。

 壇上に辿りついている戦者は、バッファの魔法も防御魔法も十分に使用した状態だという。だが、投入組は闘技石段に上がる事を優先させながら、適度にバッファを掛け、魔法での襲撃に備え、足元を確認し、周囲の邪魔を警戒しなければならない。

 要は、後になればなるほど、同時にこなす仕事が増えて行くと言う事だ。


 最初から戦い続けて体力を消耗するか、後から参戦したが為に、地の利を捨てるか。

 確かにこれは難しい判断だが、俺の場合は……最初から戦ってた方が気楽そうだな。



「なんかそれを聞いて、闘技石段に上がれるか心配になってきた……。俺の連れは「ひゅーんと行って、しゅたた!ってやればいいと思う!」って簡単なアドバイスしかくれなかったし」

「あの嬢ちゃんも適当やなー」


「……ん?なんで俺の連れが女の子だって分かったんだ?」

「ずっと見てたしな。今だって兄ちゃんとお喋りしたくて、さりげなく隣についてんねんで」


「は?俺と喋りたかった?」

「あの嬢ちゃんは有名人やん?そんな有名人と一緒にいる男なんて面白そうなネタやんかー」



 一瞬だけ、「コイツ、敵か?」という思考が頭をよぎった。

 飄々とした態度、腹が見えない笑顔で、好意的な態度で話をしてきている。


 だが、恐らく違う。

 リリンとワルトが相談した結果、しばらくは敵の襲撃は無いだろうとの事だった。

 敵としてみれば、ランク6の強力な手札を失ったばかり。

 自らが出向かず、手下を用意して攻撃を仕掛けているし、相手は慎重派。

 次の襲撃にはそれなりの時間を要するはずというのが、ワルトの意見だったのだ。


 だとすると……コイツは何者だ?



「なぁ、俺達の話を聞いてどうするつもりだ?」

「どうもこうもない。自己満足の為やで」


「何のための自己満足だ?」

「ワイは行商人や。金貸しもしてるで。んで、古今東西、商売のタネになりそうな話を集めとるって事やな。あの嬢ちゃん、鈴令の魔導師やろ?最近てんで噂を聞かんと思っとったら、男、作っとったなんてな」


「確かに、リリンは鈴令の魔導師だが……。そんなに噂になってるのか?」

「なってんで。基本的に、恐れ慄かれる方向に」



 そんな事に……。

 リリンは鈴令の魔導師じゃ悪事は働いていないって言っていたが……。


 ん?あれ、話がすり替わって無いか?

 今、大切なのは、コイツの正体だ。

 手際良く話をすり替えられた事に危機感を強めながら、再び、男に問いかける。



「もう真正面から聞くけどさ、お前、俺の敵か?」

「敵やで。……そりゃそうやろ、今から闘技大会が始まるんやで」


「いや、そうじゃなくてだな……」

「おっと、もう時間や。始まってしまうなら慣れ合いは終わりやな。ほな、さいなら」


「待て、名前くらい教えてくれ!」

「他人は『エル』と呼ぶから、そう呼んでや」



 そう言い残し、謎の男エルは人の中に紛れて消えた。

 俺の周りには50人程しかいない。

 それなのにどこを探しても見当たらないのだ。


 アイツは本当に何者なんだ……?



 **********



「ぱんぱかぱーーーーーーん!レディース&ジェントルメン!お待たせいたしました!本日の拳闘大会、時間となりましたので始めさせていただきまぁす!実況と解説、あと、ほんの少しの悪意が満ちた罵倒は、この私、ヤジリが務めさせていただきます!!」



 空に向けた視界の先で、女性が空を舞っている。

 先程と違い、小奇麗な格好だ。

 奇術師のような衣装を着て、右手にはマイクを持っている。

 化粧もしているらしく、顔立ちがさっきよりもハッキリ。

 ピンクのメガネはそのままで高らかに開始の宣言をしているのは、リリンと仲が良さそうだった、お昼寝受付員だった。


 ヤジリさんが実況と解説者なのかよ!

 受付に居たときはやる気ないなぁと思ったもんだが、本職はこっちだったのか。


 そして、『ほんの少しの悪意が満ちた罵倒』もしてくれるらしい。

 なるほど、心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)と相性抜群そうだな。



「本日は、バトルロイヤル形式の『剣』からですね!参加人数は200人。ここら辺はいつもと変わらないです。賞金も変わらず1位1億、2位5000万、3位2500万。……変化無しな毎日で楽しいか、コノヤロ―!」



 ……。

 思ったより、テンション高め。



「でもでも、いつもとちょっと違うのは、優勝経験者が今回は凄く多い!なんと過去最多の15人もの優勝経験者が紛れています!これは、頑張って参加した初出場者には辛い展開だー!」



 へぇ。そうなのか。

 俺としちゃ強い人が居るに越した事は無いと思うが、負けたくないとも思うし微妙な所だな。



「ん~~~、新人には頑張って欲しいところですね。個人的に注目している人もいることですし、その人がもし優勝争いに参加するようなら……全力で野次を飛ばすと誓います!」



 ……それって、俺の事じゃないよな?

 野次なんて飛ばされたくないんだが。



「それでは、ササッと始めちゃいましょ。みなさん、カウントは3からですよ!行きます!さぁん!にぃい!いちぃ! スタぁーーート!」



 声高らかに宣言がなされ、唐突に拳闘大会は始まった。


 さてどんなもんなのか、楽しみだ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 他人は『エル』と呼ぶから、そう呼んでや エル⁉僕はパクッテませんよ!?
2021/06/07 14:24 退会済み
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