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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第7章「仇敵の無敵殲滅」

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第10話「ヤンデリリン、降臨」

「ユニクを殺すと言ったあなた達に、慈悲なんてあげない。さっさと死んでしまえ。」

「ひ、ひぃいい……。」

「あ、ああぁあ……。」



 リリンサが冷たく放った言葉は、ウワゴートとモウゲンドの心に深く突き刺さった。

 召喚された『魔王シリーズ』から止め処なく叩きつけられる恐怖の波動によって思考が停止し、与えられるがまま、リリンサの言葉を飲み込んだからだ。


 リリンサが召喚したのは、『絶望が形を成した』と、古より言い伝えられている伝説の魔道具『魔王デモンシリーズ』。

 世界に七つ存在していたとされる魔王シリーズの内、『右腕』『左腕』、そして『心臓』だ。


 これら魔王シリーズは、標準の能力として、とある特殊な能力を宿している。


『恐怖装置』


 この能力は、使用者であるリリンサ以外の近くに居る生物の意識を捻じ曲げ、理由なき恐怖を無差別に撒き散らす。

 生命として必ず備わっている、危機本能。

 それを強制的に刺激し、思考を恐怖で塗り潰してしまうこの機能は、戦場において絶対的な力を発揮する。



「「し、死にたくない……死にたくない、死にたくないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」



 そうして、半狂乱となったウワゴートのモウゲンドの悲鳴が響いた。

 恐怖に怯えながら、二人は自らの行いを振り返る。


 ウワゴートとモウゲンドがリリンサに仕掛けていた精神誘導は、思考を撹乱させ間違った選択肢に進ませるというもの。

『様々な感情を揺らし、思考が散漫になった所で虚を突き、精神を支配する』

 二人が目論んだ精神誘導は成功し、確かにリリンサを追い詰めたのだ。


 そして……。

 リリンサは、心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)・『無尽灰塵』となった。

『ユニクルフィン』という、リリンサにとっての『全て』を殺すと明言した事により、心の奥底に眠っていたモノが呼び起こされたのだ。


 それは、あらゆる理不尽を経験し、感情を失いかけていた、過去のリリンサ。

 力には力で。

 理不尽には理不尽で。

 暴力には暴力で。


 親しき友人達に出会ったことで身を潜めたはずの悪感情は、この瞬間に目覚め、くすくすと不敵に嗤う。

 そして、恐怖装置を宿す魔王シリーズが三つも召喚されるという異常事態へと発展してしまったのだ。


 たった一つ存在するだけで、1000人の軍隊を恐慌状態に陥れる恐怖装置の波動は、たった二人の人間、ウワゴートとモウゲンドへ向けられている。

『恐怖によって思考を統一し、精神を支配する』

 奇しくも、ウワゴートとモウゲンドがやろうとしていたのと同じ事を魔王シリーズは遂行し、この場の主導権はリリンサへと移り変わった。



「なんだってんだなぁ!?何なんだその槍は、その杖は、その宝珠は、なんだってんだなああああああ!!」

「怖い怖い怖い怖い怖いこわいこわいこわこわいいいこわいわいこわ」



 塗り潰された思考の中で、ウワゴートとモウゲンドは自身が生きる可能性を必死になって考えた。

 思った事を口に出し、時間を稼ぎ、その時間で現状から抜け出せる可能性を再び思考する。


 繰り返される思考は、敗北することが大前提であり、逃走に関する事ばかり。

 この魔王シリーズを前にして恐怖に支配されず戦う事が出来る者など、それこそ、世界の頂きに立たんとする者だけだ。


 そして、にこやかな笑みを浮かべたリリンサは、内にくすぶる嗜虐心を隠しもせず、言葉を吐いた。



「質問?答える訳がない。そんなことより、ユニクを殺すと言ったのだから、相応の償いをさっさとするべき。《うごめけ、魔王の右腕(デモン・ライト)。今ここに、悪なる私が命ずる。》」



 リリンサの右側に浮遊していた魔王の右腕(デモン・ライト)が、その問いかけに対し、意思があるように反応を示した。

 魔王の右腕(デモン・ライト)は瞬時にリリンサの目の前に移動し、鎮座。

 優しくその槍を包み込むようにリリンサは両手をかざし、命令の呪文を唱える。


 その呪文は、酷く残酷で、悪意に満ち溢れているものだった。



「《四十四回、刺して、生かせ。》」



 鈴とした声が響き、魔王の左腕(デモン・レフト)は、けたたましい目覚めの声を上げた。

 鋭い切っ先を震わせ、バキリバキリと体を軋ませ、リリンサの願いを実行するべく姿を変えてゆく。


 出来上がったのは、数十に枝分かれした、おぞましき槍。

 剣山を成長させたかのようなその槍は、数十に枝分かれした先端一つ一つに返しの付いた刃が輝いている。


 黒と黄金で出来た暗黒の槍は、姿が出来上がってから一呼吸置くと、一筋の光となって消えた。

 リリンサの小さな手の中から上空に向けて打ち上げられ、空間に黒線を引いたような軌跡だけが残る。


 それを見たモウゲンド(・・・・・)は、多大な恐怖を抱き、震えながら「何かが来る。防御、防御だ。防御をしなければ……!!」と、恐怖に染まる思考で必死に思考を巡らした。

 だが……防御の魔法を発動する前に、何かがモウゲンドの頬を襲った。



「ひっ!?」



 ぬめりとした、何か。

 自分の右側、ウワゴートが居るであろうその場所から飛来した何かが頬にぶつかり、熱い雫となってモウゲンドの手の甲に落ちてゆく。

 一秒の時間を使い、モウゲンドは、それが血液であると理解した。



「ひ、ひぃぃ!?」



 恐怖に駆られ、本能の赴くがままに血液が飛来した方向へモウゲンドは視線を向けた。


 そこにあったのは、『黒い針山のような、何か』。

 それは、四十四本に分岐した槍に貫かれ、磔刑に処されているウワゴート。

 無残な姿となり、ピクリとも動かない仲間の姿を見て、モウゲンドは思ったがままの事を口にするしかできない。



「……死んだ……のか?おぉい、ウワゴート?おい、おい!!」



 血で汚れる事を構いもせず、磔られたウワゴートへ身を寄せるモウゲンド。

 これは、仲間の身を案じての行動では無い。

 この絶望的状況で仲間を失うことへの恐怖が、上辺だけの優しさを演じさせているのだけのことだった。


 そして、僅かばかりに唇を動かし、「痛てぇ……痛てぇよ……」とウワゴートが声を漏らしたのと同時に、リリンサが口を開く。



「死んでなんかいない。そいつは、ユニクの居場所を吐かせるために生かしてある。だから、死にたくても、死ねない(・・・・)。」

「死ね……ない……?」


「そいつに刺さっている槍は『魔王の右腕(デモン・ライト)』。その効果は『私の命令を忠実に実現させる』という事。私は魔王の右腕(デモン・ライト)に『四十四回刺して』『生かしておけ』と命令をした。だから、槍の中に内蔵された数え切れないほどの魔法陣を使い、槍は私の願いを実行した。」

「意味が、分からない……」


「……はぁ。つまり、私の願いどおりに槍は先端を44本に分裂させ、そいつを刺し貫いた。そして、槍に内蔵されている魔法陣の効果によって生命を維持されている。例え今、そいつを魔法で攻撃したとしても、魔王の右腕(デモン・ライト)が刺さっている限り『死』は許されない。」


 

 リリンサの丁寧な答えを聞いても、モウゲンドは理解できなかった。

 自分の理知を越えた、理解不能な何か。

 それと相対してしまったという後悔だけが、延々と思考の中で渦巻いている。



「そんなわけあるか!?オラ達には物理攻撃無効の防御魔法が張ってあるんだぁ、槍で貫けるはずが……」


「そう。確かに一撃では貫けない。だから、貫けるまで魔王の右腕(デモン・ライト)は攻撃を繰り返した。何度も何度も、あなた達の防御魔法を突き破るまで、ね。」



 リリンサが召喚した暗黒が渦巻く槍、『魔王の右腕(デモン・ライト)』。

 それは術者の意思を読み取り自律して動く、魔王の槍。

 遥か古の時代、『枢機魔導霊王国・ソドムゴモラ』が繁栄を極めた時代の遺産。


 内部に搭載された途方も無い数の魔導規律陣は現代では再現不可能であり、長い歴史上、最も文明が発達していたとされるこの時代の技術の結晶がこの魔王シリーズ。

 その中でも、最も汎用性に富んでいるのがこの『魔王の右腕(デモン・ライト)』だ。


 リリンサ自身は、魔王シリーズがどのような原理で動いているかを理解していない。

 しかし途方も無い効果を秘めているという事は理解し、そしてそれを、相対する敵へ加減すること無くぶつけた。


 そんなことをすればどうなるかなど、微塵も考えることをせず、怒りにまかせて振るっただけのことだった。



「それで、あなたはどうやって死にたい?どういう風に苦しみたい?聞くだけ聞いてあげよう。」

「ひぃぃい、ま、待ってくれ!オラ達はお前に手を出さない!も、もちろん、あの男にもだ!だから、だから……」


「いまさら、何を言われても信じる気にならない。無駄。」

「たのむ、いや、待ってくれ。そもそも、なんなんだ、ソレは!?お前はだって、レベルが、48471だろ!おかしい何でそんなもんを、や、やめ……」



 錯乱するモウゲンドと、笑みを称えたまま表情を崩そうとしないリリンサ。

 リリンサの表情は、悪戯を思いついた子供のように無邪気で、そして、悪意に満ちたものだった。

 捕まえた昆虫を興味本位に引きちぎるといった、子供ならではの無邪気な悪意は、時に、入念に計画された悪意を上回ることがある。


 やがて、リリンサは「知りたいなら教えてあげる。」と、自らの正体について語り始めた。



「あなた達は、私のレベルを見て勝てると思ったんだと思う。けど、そもそも、そこが間違っている。」

「な、なんだぁ……?」


「このレベル表記は、偽装用、兼、警告用に固定しているもの。良く見て、『容赦しない』と書いてある。」

「警告……?どこにそんな……?」


「私のレベルは48471。ほら、『(よう)(しゃ)()()()』って書いてあるよね?」

「……何だそれはッ!?!?!?気が付くわけないだろぉおおおッ!!」



 リリンサの説明を受けて、レベル表記が語呂合わせになっていると気が付いたモウゲンド。

 まるで、悪質な詐欺にあったかのように絶望に染まるモウゲンドの顔をみて、リリンサは満足げに頷いて言葉を続けた。



「《レベル偽装解除》。そしてこれが、私の本来のレベル。ほら、見て。よーく見てほしい。」



 リリンサは自身に掛けていたレベル偽装の魔法を解除し、モウゲンドに見せつけた。

 そのレベル表記は、ウワゴートとモウゲンドのレベル5万どころか、ボスのブライアンのレベル6万ですら、遠く及ばないものだった。


 圧倒的な力の提示。

 通常時でさえ、そのレベルを見れば恐怖を抱くというのに、この場には魔王シリーズが三つも存在する。

 恐怖と恐怖が掛け合わされ、直接リリンサと会話をしていたモウゲンドの、心の容量を超えた。



「うわぁああああああああああ!!」



 錯乱し、剣を片手に突撃を仕掛けたモウゲンド。

 恐怖で思考が塗り固められた結果、切り殺して逃げるという、短絡的な行動をとってしまったのだ。


 しかし、この状態になる事を、リリンサは知っていた。

 魔王シリーズを召喚した時点で、この結末は数少ない選択肢の中の一つとなっていたからだ。

 そして、モウゲンドの動きに呼応するように、リリンサが首からぶら下げていた宝珠『魔王の心臓核(デモン・センターコア)』が怪しく光り、周囲の空間に干渉を始めた。


 モウゲンドが仕掛けていた空気を重くする魔法『水空反転アクアウェイト』は、一瞬で砕け散り、ただの魔力として空気中に霧散。

 その魔力を魔王の心臓核(デモン・センターコア)が奪い取り、力として、所持者であるリリンサへ還元してゆく。



「よくよくみれば、その剣の型、オタク侍にそっくり。もっとも、練度が違いすぎてお粗末も良いとこだけど。」



 リリンサは、モウゲンドが錯乱しながら放つ剣撃を魔王の左腕(デモン・レフト)で受け止めた後、蹴りを放って突き飛ばした。

 先ほどまで防戦一方だったリリンサがモウゲンドを蹴飛ばせた理由は、いくつかある。


 まずは、モウゲンドのアンチバッファが破壊された事。

 次に、剣撃を放ったモウゲンドの動きが、恐怖によって正常でなかった事。

 最後に、魔王の心臓核(デモン・センターコア)によって、リリンサ自身の体の抑制が外れてしまっている事。


 特に、魔王の心臓核(デモン・センターコア)が及ぼしている効果は大きいものだった。


 魔王の心臓核(デモン・センターコア)は、術者の体内の流れ(・・)を増幅する。

 その流れとは、魔力だけに限ったものではない。

『意識の流れ』や、『神経の流れ』、『血流の流れ』、『呼吸の流れ』など、体内を循環するあらゆるものを増幅し、体を守る必要最低限の抑制のタガを外してゆく。

 それと同時に、体外に霧散している魔力の流れを奪い取り、自身の力とするのだ。

 しかし、扱いを間違えれば魔力切れを引き起こし、術者自身が死に向かうという恐ろしき諸刃の剣でもあった。


 だが、危険を顧みず、リリンサは体の流れを全て、魔王の心臓核(デモン・センターコア)に同期させていた。

 この時点ですでに、”人外”と呼ぶべき身体能力となっていたリリンサは、体の痛みすら制御し、呻くモウゲンドへ再び蹴りを放つ。



「ぐはぁっ。なんだ、なんだよぉ。オラの動きを見切れるのなんざ、祖国でもそうはいねぇはずなんだぁ!!」

「祖国……?あぁ、その剣の型は見たこと有る。あなた『ジャフリート』出身なんだね。」


「そうだよッ!!オラは師範代だ!!それも、相当上位の師範代だ!!だから、オラの上に居るのは師範とそれから……」

「師範代程度の動きなんて、目で捉えるだけなら簡単にできる。思いあがらないで欲しい。」


「ふざけんなぁ!お前みたいな剣もロクに扱えないガキが、何をほざく!」

「その点に関しては、私も不服がある。私だって、澪みたいに魔法剣士になりたかった。でも、オタク侍は「お前の小さい体じゃ剣を扱っても限界がある。槍にしとけ」ってあんまりよく教えてくれなかった。」


「誰だよさっきから!?オタクサムライとかミオとか!何の話をしているだぁ!?」

「あぁ、そう言えばこれは、身内用の呼び名だった。『八刀魔剣オクト・パラディーン』……オタク侍は『剣皇・シーライン』の事だよ。」


「け、剣皇様……だと……」



 その名を聞いて、モウゲンドの思考は加速した。

 数年前、祖国で師範を目指していた頃に聞いた信じがたい噂話を思い出したのだ。


「剣皇様は、幼女を育てているらしい」


 そしてその幼女こそ、人嫌いで有名な剣皇シーラインが選んだ後継者だという噂が、国中に広がっていたのだ。

 現に、シーラインの近くに儚げな少女が居たという目撃情報が後を絶たない。


 実際は悪ノリしたエアリフェードが流した悪質なデマだったのだが、真実を知らないモウゲンドは、リリンサの口からシーラインの名前が出た瞬間に全てを誤解してしまった。



「と、とんだ化け物にオラ達は、喧嘩を……」

「……もういい?生きる事をちゃんと諦めた?じゃあ、そろそろ終わりにしてあげる。」


「ひぃいいいいいいいいい!!」



 もう既に、策を考える余裕もないモウゲンドは、四つん這いになって逃げ出した。

 とにかくアレから離れよう。1cmでも遠くに逃げよう。と、不規則に手足を動かして地面を這いずり回る。


 その後を、リリンサは同じスピードで追いかけた。

 離れず、近づかず、一定の距離を維持しながら、魔王の左腕(デモン・レフト)を手にとって魔力を注いでゆく。



「《教えて、魔王の左腕(デモン・レフト)。アイツの弱点はどこ?》」



 やがてリリンサが注ぎこんでいた魔力が限界値となり、断罪の時間が訪れた。

 逃げ回るモウゲンドへ、まるで悪魔の腕をそのまま杖にした様な形をしている魔王の左腕(デモン・レフト)を向け、リリンサが命令を下したからだ。


 魔王の左腕(デモン・レフト)は、杖の先端の宝珠をギョロリと輝かせ、モウゲンドの姿を映した。

 種族、性別、年齢、体格、骨格……。衣服、鎧、武器、靴、アクセサリ……。

 リリンサが敵意を向けている物体の情報をかき集め、内部の魔導規律陣にて解析し、構造上の欠陥を浮き彫りにしてゆく。


 そして、持ち手を介してリリンサが欲した情報が伝えられた。

 その情報を知覚したリリンサは、「ちょどいい。言動が不快だったし」と再び笑みをこぼす。



「《魔王の左腕(デモン・レフト)よ、私の問いに答えを示せ。》」



 魔王の左腕(デモン・レフト)をモウゲンドに突きつけ、再度、リリンサは命令を下した。

 鈴とした声が発せられた瞬間、青白い魔法陣が杖から吹き上がり、それと対を成す赤い魔法陣がモウゲンドの下腹部を中心にして出現。

 事態の悪化を悟ったモウゲンドは逃走をやめ、ひたすら、リリンサへ悲痛な声を向けた。



「なんだ、これは……こんな情けない所に魔法陣なんて、あ、あんまりだぁ……」

「その魔法陣は対象物の急所を正確に判別し、狙いが外れないように固定する為のもの。」


「そ、それってまさか……オラの……」

「ふふ。人間で言う所の急所とは、人体の構造上、皮膚で覆われにくい部位のこと。……すなわち、男性のみが持つソコは、眼球と同じく体外に露出した内臓器官であり、急所。』



 魔王の左腕(デモン・レフト)の特殊効果は、『対象物の構造的弱点を探り、転移魔法を介して、その弱点へ直接攻撃を可能にする』というものだ。

 今回の事例で言うのならば、人間『モウゲンド』が体の中心に供えている、薄い膜に覆われただけの内臓器官への、直接攻撃。


 魔王の左腕(デモン・レフト)の先端に出現した魔法陣は、モウゲンドの陰部に出現した魔法陣へと繋がっている。

 その事を理解したモウゲンドは、涙を流して慈悲を懇願した。


 

「や、やめ……やめ……」

「さっきから、『イイ事をしよう』とか、『裸の付き合いがどう』とか、言動がとても不愉快だった。」


「ひぃ、いや、いやだ、やめ、やめて……」

「ふふ。……ソコ、火に弱いんだってね。」


「や、やめて、やめ、やめやめやめやめてぇえええええええええええ!!!!!!!」



 そしてリリンサは、朗らかな笑みを浮かべ、絶望を呼ぶ呪文を唱えた。



「《イマジィィィン(幻想の)ファイア()。》」


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