表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/1328

第62話「悪魔竜会談・語られた真相」

 タヌキッ!タヌキッ!タヌキッ!!


 なんでタヌキの加護が俺に付いてるんだよッ!?

 よりにもよって、なんでタヌキなんだよッッ!!

 タヌキの加護なんかいらねえんだよッッッ!!


 何の役にも立たちゃしねぇだろうからなぁぁぁ!!



「ふぅぅぅ!!!?タヌキッ!タヌキッッ!!絶滅しろ、タヌキッ!!」


「……ユニクが壊れた」

「あぁ、見事な壊れっぷりだねぇ。僕ですら、ちょっと引いたよ」



 誰の陰謀だ、ゴラァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!?

 てめえの陰謀か、クソタヌキ(タヌキ帝王)ィィィィィ!!


 頭を振り乱し、体を捩じらせ錯乱する俺。

 何が嬉しくて、タヌキの加護なんて貰わなくちゃいけねえんだよ!?

 断っとけよ、過去の俺ッ!!

 全世界で三番目に強き生物だろうが、タヌキなんだから断っとけよッ!!


 込み上げる感情を隠しもせず、俺は天空でのた打ち回る。

 信じられない。信じたくない。

 ……だが、俺の内に秘められし加護は確かに存在するのだ。


 ワルトの死を感じた瞬間、ホロビノが現れた瞬間から、俺の背中がズシリと重い。

 恐らく、無力感と後悔の末に抱いた感情によって、俺の加護が反応したのだろう。

 そして、錯乱状態にある今も、加護の発動条件を十分に満たしている。


 俺の背筋が、ゾワリと蠢いた気がした。

 モゾモゾと確実な意思を持つかのように背中に纏わりつき、俺が激しく体を震わせようとも、決して離れることはない。


 それでも、俺は纏わりつく”何か”を振り落とさなければならないと、心の底から思った。

 このままの状態を維持することを、本能が嫌がっているのだ。


 俺は、グラムの惑星重力操作を起動し、バッファの魔法まで掛けて、体を必死に回転させた。



「うおらあああああ!!」

「ヴィィギルアァァ!!」



 ……背中に纏わりついている”何か”が、「ヴィギルア!」と鳴いた。



「……は?」

「ユニク、ユニク」


「……なんだ?リリン」

「背中にタヌキが付いてる」


「……。」



 俺は無言で背中に手を伸ばす。

 視線は向けなくても良い。リリンとワルトの目を通して、事態は十分に把握しているから。


 ほどなくして、俺の手はゴワゴワな謎の物体に触れた。

 躊躇なく掴み、背中から無理やり引き剥がし、捕獲。



「……なんだこの、汚ねぇ毛玉」

「……。」



 俺は、毛が縮れまくってマリモみたいになっている謎の生物を体の前に持って来て、両腕でがっちりと拘束。

 気まずそうに視線を外す魔獣に話しかけた。



「このクソタヌ……将軍の方か。このアホタヌキ。俺の背中にくっ付いているとは、いい度胸してるじゃねえか……」

「ヴィギルア……」


「てっきりホロビノが現れたから、負けて死んだのかと思ったが、生きてやがったんだな?」

「……ヴィーギー。ヴィギルア!」


「最後に言い残す事はあるか?」

「……ナカヨクシナイ?」


「……死にさらせッ!!オラァッ!!」

「ヴィギルアァァァァァーーー………」



 俺は体中の力を込めて、冥王竜との戦闘中に設置した『超重力軌道ガルシステム』を全開で発動。

 あらゆる力を右腕に注ぎ、タヌキを地上に向かって投げつけた。


 フォン!っと風を切る音を残して消え失せる、タヌキ。

 タヌキは俺の全力をその体で受け、音速を超えたスピードで地上に接近してゆく。


 しかし、地上まであと少しと迫った時にタヌキはクルリと回転し、四肢を広げた。

 広がった身体で完全に風を掴み、滑らかに滑空してゆく、タヌキ。


 二足歩行→人っぽい何か→羊っぽい何か→汚ぇ毛玉→ムササビ。


 お前はいつからムササビになったんだ?

 タヌキと呼んでいいのか悩むんだけど。



「……まったく、酷い目に会ったぜ」

「タヌキを投げ捨てるとは、赤き先駆者よ、中々やるな」


「……?で、冥王竜。俺に付いていたタヌキの加護はどうなった?」

「ふむ。もう無いな。今、お前の加護の中で一番目立つのは、フルイラードの加護だ」


「そうか。やっぱり親父のだよな。で、もう一度聞くが、タヌキの加護は混じって無いんだよな?」

「無い。先程のタヌキが密着していたが為に勘違いしたようだ。すまぬ」


「すまぬ。か。謝ってくれるんだな……よし、ホロビノ、この黒トカゲをボコれ!」

「きゅあら!」

「え!?っちょ!?なんでっすか!!謝ったっすよ!?」


「謝れば何でも済むと思ってんじゃねえ!!」



 俺の指示どうりに、ホロビノは「きゅあぁん!?」と低い声を出しながら冥王竜に近づいてゆく。

 まるで、獲物をじりじりと追い詰める猫のように。


 そして、ホロビノは冥王竜の鼻先に狙いを定め、飛びかかった。



「きゅあらぁぁ!」

「え?あ、やめ、うわぁぁぁぁぁ!」



 飛びかかったホロビノを空間魔法を使って回避する冥王竜。

 逃げられた事が気に入らなかったホロビノは、さらに低く唸りながら、冥王竜の後を追っている。


 鬼ごっこ……いや、悪鬼羅刹ごっこか。

 とりあえず、ホロビノが時間稼ぎをしている間に、状況を確認しておこう。



「リリン、ワルト、現状についての話がしたい」

「ん。分かった」

「僕が知っている事なら何でも答えてあげるよ」


「俺達にはそれぞれ加護とか言うもんが付いているらしいが、この加護がある事によってのデメリットは無いんだよな?」

「うん。無いよね?ワルトナ」

「無いだろうね。強いてあげるなら、白銀比様の加護が付いているリリンを見て、高位の生物が逃げ出すかもしれないって程度。実際にはほとんど影響が無いだろう」


「じゃあ、加護によって得られるメリットは?」

「特に感じないけど……」

「加護は発動しないと意味がないんだって言ったろ。その発動条件だって感情の高ぶりとかいう不明確なものだし、当てにはしないでくれよ」



 なるほど。つまり加護ってのは、『当たりくじの付いた名札』みたいなものか。


 加護を与える一番の目的は、加護の対象者に威光を与えるという事だ。

 リリンで例えるのなら、『リリンの後ろにはとても強い白銀比が居ます。喧嘩を売るという事は、白銀比に喧嘩を売るという事ですよ』と脅しているのだ。


 そして、加護には有事の際に役立つ力が備わっている。

 問題なのは、その効果が出るかどうかは不確定であるということ。

 結局、不確定すぎて当てに出来ないんだから、当たりくじみたいなもんだ。



「ということは、ホロビノはリリン達の加護を見て近寄ってきたって事か?」

「なるほど。その答えはしっくりくる」

「そういうことか。何らかの原因で力が無かったホロビノは、見るからに強い加護を持っている僕らに媚を売って来ていたって訳だ」



 ホロビノが語らずとも、真実にたどり着いてしまったかもしれない。


 リリンとワルトの情報を整理すると、森の奥深くで蟲の眷皇種と戦闘を行ったホロビノ。

 どんな戦いだったのか不明だが、ホロビノの傍らには大きいドラゴンが死んでおり、恐らくそいつはホロビノの保護者か仲間的ポジションだった。

 確か冥王竜はホロビノへ「縮みましたね」と言っていたし、ホロビノ自体もその時に弱体化したのだろう。


 そして、身を守る術を失った瞬間に、あろう事か、心無き魔人達の統括者(アンハートデヴィル)に遭遇。

 身を守る手段も無く、5人の大悪魔はそれぞれが思惑を浮かべて笑みを称えている。


 ホロビノは、生き抜くために必死でリリン達にすり寄り、ペットの地位を確立させた。

 恐らくこんな感じだろう。

 ホロビノのレベルがおかしい気もするが、よく分からないので、とりあえず度外視だ。


 あぁ、ホロビノよ。お前も壮絶な運命を歩いているようだな。

 同情するぜ。



「さて、この後の予定を決めちまおう。ドラピエクロを解放させるように冥王竜を説得するんでいいんだよな?」

「うん。早くピエロンに会わせてあげよう」

「そうしないと、悪才アンジニアスが何をしてくるか分かったもんじゃないしね」



 そう言ってワルトは、「ホロビノ、冥王竜を捕まえておくれ」と指示を出し、ホロビノはすぐに実行に移した。

 ホロビノは空間魔法を使って必死に逃げている冥王竜の動きを眺め、しばらく観察。

 そして、きゅあら!とひと鳴きしながら目の前10mの位置に蹴りを放った。


 そんな何も無い所を蹴って何がしたいんだ?

 タヌキと戦った後遺症で頭がおかしくなったのかもしれない。


 しかし、俺の懸念は必要ないものだった。

 ホロビノの足が伸びきった瞬間、その場所に冥王竜の頭が出現。

 べシリ!と鼻先にホロビノの足がめり込み、冥王竜は動きを止めた。



「ぐおおおおおお……」

「きゅあら!」

「よくやったホロビノ。褒めてあげるよ」



 うん。完全に飼いならされてるな、ホロビノ。

 ワルトに褒められて嬉しそうにこちらを見ている。



「さて、冥王竜。ドラピエクロの処遇なんだけどね、無罪放免ってことでいいよね?」

「……こ奴は竜族を統べる素質があるのだ。人間に飼われるなど、竜族の未来の為にも許可する訳には……」

「きゅあらあーん?」


「ふ。竜は自由を尊ぶものだ。好きにするが良い」



 ホント、この黒トカゲ、調子のいい奴だな。

 こんな奴が竜族の上位にいるなんて、ドラゴンの未来が心配になってくる。



「じゃあ、冥王竜。ドラピエクロを放してやってくれ」

「よかろう。《拘束解除チェインブレイク》」


「ピッエロォォォォォン!復活!直グニ会イニ行ク!!」



 ん?言葉が若干滑らかになった?

 どうやら、冥王竜に拘束された絶望で、何かが吹っ切れたらしい。


 ブンブンと腕を振り回し、空中で意味も無く一回転。

 再び、「ピエロ―ン!」と鳴いて、力強さをアピールしている。



「いいかい、ドラピエクロ。南に飛んで行った先の『デュウゲシティ』に行くんだよ。ゴルディニアスって奴が出迎えてくれるはずさ」

「ピエロン!分カッタ」


「あ、ドラピエクロ。昔付けてたこの首輪も持っていくといい」

「懐カシイ!嬉シイ!!」



 ワルトが行き先の確認をした後、リリンが空間から古めかしい赤色の首輪を取り出した。

 ………ピエロンとワルトの別れ話の途中、裏の方でリリンが物色してた首輪だろうな。持ってきてるのかよ!


 リリンは首輪に視線を落とした後、ドラピエクロの頭を見上げた。

 サイズ感的に絶対に無理だ。どうするんだ?



「首に巻くのは無理そうなので、尻尾でいい?」

「ピエロン!」



 そうきたか。

 尻尾なら先っぽの方が細くなってるし、問題無さそうだ。


 リリンは差し出された尻尾に首輪をはめると、バッファ全開で無理やり締め付けた。

 いくら緩いと落ちてしまうとはいえ、締めすぎて食い込んでいるのどうかと思うぞ。


 それでも、ドラピエクロは首輪が付いた尻尾を嬉しそうに眺め、うっとりしている。



「ピエローン!ミンナ、色々アリガトウ!コノ恩ハ忘レナイ」

「そうかい、恩返しされるのを楽しみにしてるよ」

「ドラピエクロ、ピエロンによろしく」



 今、気が付いたけど、ドラピエクロ、会話が出来るようになってる……。

 冥王竜が出てくるまでは、何を言ってるかイマイチ分からなかったし、原因は冥王竜と見て間違い無さそうだ。


 ……鎖で縛られて目覚めるとか、どこまで行っても変態性の高いドラゴンだな。

 まぁ、ピエロなんだから、それでいいのかもしれないけど。



「ピエロン!マタネーー!ピエローーーーン!!」



 そうして、ドラピエクロは南の空へ飛び立っていった。

 これで一件落着……じゃない。


 まだこの場には、どことなくポンコツ臭がするが、一応、眷皇種だという触れ込みの冥王竜がいる。

 コイツを何とかしないと、面倒なことになりそうだ。

 そういえば、そもそもコイツらは、何でここに来たんだ?



「冥王竜、お前は眷皇種で不可思議竜の側近だろ?なんでこんな所に来たんだ?」

「確か、大災害が起こったとか言っていたかい?なんか、噴火じゃ無さそうな感じがするけど?」

「……。」


「なんか言えよ!」

「ホロビノ、攻撃魔法の準備をしておいておくれ」

「ひぃ!話す!話すから!!」



 ワルトの指示を受けて、ホロビノは両腕を天に向けて光のエネルギー的なものを集め始めた。

 それを見た冥王竜は「マジで!?」って顔をした後、慌てて口を開く。


 始めから素直に従っていればいいのに。

 お前が相手しているのは、悪名高き大悪魔。

 ほら見ろ、リリンとワルト、ついでにホロビノまでもが、真っ黒い笑みを浮かべているぞ。



「我等竜族は、天龍嶽にて平凡な毎日を過ごしていた。そしてその日も、ありふれた一日だった」

「竜の平凡な一日ってどんなもんなのか興味があるが、関係なさそうなのであえて聞かないでおく」


「だが、何の兆候も無く、突然にあの”お方”が降臨なされたのだ」

「あのお方?」


「至高にして、究極の”全知”を司る皇種、那由他ナユタ様だ」

「……とうとう姿を表しやがったか、タヌキの皇種(クソタヌキの上)が」



 カツテナイタヌキ(勝つ手段が無い)と名高きタヌキ帝王。

 ならば、そのタヌキ帝王を従えているというタヌキは、一体どんなタヌキなのか。


 俺の中に、電撃的ひらめきが走る。

 恐らく、これほどまでにしっくりくる呼び名は他に無いだろう。


 タヌキの究極系。

 奴の名前は、『カミジャナイ?タヌキ』。

 俺の中で、奴の存在は神と同等だ。



「で、その神タヌキがどうしたって?」

「……蹂躙された。我では、全く歯が立たないどころか、戦い、いや、遊びにすらならなかった」


「遊ばれるとか以前の問題だったんだな。強かったか?」

「強い?そんなレベルでは無い。那由他様をあえて竜と例えるならば、我は果実だ。無抵抗に食われるだけの存在でしかない」



 お前はバナナだったのか……。

 本当に戦いになって無かった……。


 俺達3人がかりでも及ばなかった冥王竜が無抵抗で食い物にされる。

 流石は最上位タヌキ。理不尽過ぎる。



「でも、お前は生きているよな?どうしてだ?」

「瀕死の重傷を負いながらも、必死に抵抗した我だったが、弱過ぎたせいで那由他様は興味を手放された。「暇つぶしにもならぬの」と仰られた後、我の先輩方に当たる眷皇種を呼び出し、戦いに興じられた」


「……先輩、方?一体何匹の眷皇種が出てきたんだ?」

「我を除いて6匹だ。その時に天龍嶽にいた竜の眷皇種の全員が参戦したのだ。不可思議竜様はいらっしゃらなかったから、事実上の天龍嶽の最高戦力であった」


「で、どうなった?」

「……20分で全滅しましたが、何か?」



 ……おう…………。

 決して舐めていた訳じゃないが、凄まじすぎる。


 聞くからに冥王竜よりも強そうな眷皇種が6匹もいて、20分で全滅。

 一匹当たり、約3分か。

 一応は戦いになっているっぽいのが、妙にリアル。

 つまり、不意を突いた一撃ではなく、個人攻撃で確固撃破していったということだろう。


 あれ?タヌキの加護、有ったが良くない?

 だが、俺にタヌキの加護があるというのは誤報だった。


 そして、俺の代わりに、アホタヌキ(タヌキ将軍)が神タヌキの加護を持っているらしい。くそう。



「そんなわけで、那由他様が暴れ……戦闘を行われた後、憂さ晴ら……「訓練をしてやるの!」と言いだして、地獄が出来あがった」

「タヌキが居る時点で地獄だろ」


「我は逃……状況を打破すべく、とりあえず英気を養おうと休憩場所を探していた。すると、ドラジョーカーの奴が美味そうな餌の繁殖地を見つけたという話ではないか」

「美味そうな餌……ドラゴンモドキか」


「そして、空間をつなげて様子見していたら、あろう事かタヌキ帝王のソドム様が顕現なされた。我は焦りを感じ、参上したという訳だ」



 なるほど、話が繋がったな。

 つまり、神タヌキがドラゴンの住処を襲撃したせいで、ドラピエクロを含むドラゴンが逃げ出し、冥王竜は深手を負った。

 天龍嶽を出る事になったし、せっかくならとピエロンを探していたドラピエクロは、ワルトが放逐したドラモドキの匂いに引き寄せられてこの森へ。


 そして、タヌキ帝王が出てきたせいで、交渉役のホロビノを含む全てのドラゴンが全滅し、ドラピエクロが発狂。

 それを見ていた冥王竜も焦り、リリンとワルトがドラピエクロを倒した後のタイミングで出現し、今に至る。


 ……殆ど、タヌキのせいじゃねぇかッ!!

 最上位タヌキ、支配階級タヌキ、中間管理職タヌキの全てが出撃しているとか、誰が予想できんだよッ!!

 間違いなく、歴史を揺るがす天変地異に違いねぇよッ!!



「だが、思わぬ良い結果となったものだ。……お願いします!お師匠様!一緒に天龍嶽に戻ってください!!」

「きゅあ。」


「え!?なんでっすか!?」

「きゅあらきゅうー」


「嫌っすよ!?一匹で戻ったら今度こそ殺されますって!あの『理想を持たぬ土星竜イデアノウト・サターン』さんですら、15分でボコられたっすよ?俺なんか、首を引っこ抜かれてポイっす!!」



 誰だよ、『理想を持たぬ土星竜イデアノウト・サターン』。

 名前だけでもう強さが滲み出ているが、それでも15分でやられたのか。


 いや、15分という事は、残りの眷皇種5匹はそれぞれ1分ずつという事になるよな?

 なんだ、理想を持たぬ土星竜イデアノウト・サターンさんは、他の眷皇種よりも15倍くらい強いって事か。


 ははは、インフレについて行けない。



「なぁ、冥王竜。そんなに神タヌキがやべえんなら、ホロビノを連れてっても意味が無いんじゃないか?」

「そんなことはない。我が師と、ブベラッ!!」

「きゅぁーん?」



 ホロビノが一撃で冥王竜を黙らせた。

 うん。ものすごーく嫌な予感がする。

 ホロビノから上位っぽい感がヒシヒシと伝わってくるし。


 だが、俺はあえて口には出さない。

 藪をつついて蛇を出す。

 ドラゴンつつけば、世界が滅ぶ。


 なにせ、コイツの名前は壊滅竜・ホロビノ。

 大悪魔が溺愛する可愛いペットだ。



「さて、どうしたもんか……どうする?リリン、ワルト?」

「うーん。あんまり危険な事をホロビノにはさせたくないとは思う……」

「僕的にも、無茶はしないで欲しい所だね。ホロビノを失うのは僕にとっても大損害だし」



 大損害?散々いじめてたよな?

 サーカスに売り飛ばそうともしてなかった?



「だけど、このままじゃこの黒トカゲ、帰らなさそうだぞ?」

「嫌っす!!一匹じゃ絶対に嫌っす!!」



 冥王竜がブンブンと頭を振って拒否を示している。

 さぁ、どうするか……。

 こんな事なら、さっきの将軍を投げ捨てなければ良かった。


 人質として天龍嶽に連れて行って、交渉するという手段が取れたのに。



「……はぁぁ、きゅあら」

「え!?ホントっすか!?」


「きゅあらん。きゅあー」

「それでいいっす!!ありがとうございますっす!」


「冥王竜、ホロビノはなんて言ってるんだ?」

「我と一緒に天龍嶽へ来てくれるそうだ。なお、空間魔法でひとっ飛びして一晩泊まった後、お前達の所に戻ってくるから心配いらないとも言っている」



 なんか、ノリが軽過ぎない……?

 上位の眷皇種を軽くボコるタヌキが居る所に行くというのに、まるで実家に帰るかのような雰囲気。


 ドラゴンの聖地みたいな所なんだろうけど、よくよく考えたら、ワルトがドラゴンと一緒にタヌキを送りつけている。

 ……タヌキ汚染が著しい。最早、タヌキの聖地になりつつある。



「大丈夫か?ホロビノ?」

「きゅあら!」


「本当に大丈夫?ホロビノ。絶対に無理はしないで困ったらすぐに逃げ出して欲しい!必要とあれば助けに行く!!」

「きゅあきゅあ!!」



 俺とリリンの心配をよそに、問題ないと頷くホロビノ。

 ホロビノはそのまま親指を立てて、早く行こうぜ?と冥王竜に指図を送り、それを察した木の化物竜が空間に転移魔法陣を作り始めた。


 そして、転移魔法陣があっという間に完成し、起動。

 空間に穴を開けて竜達を待っている。



「ふむ、赤き先駆者よ。フルイラードに会ったらお前に出会ったと言っておこう」

「……は?」


「では、さらばだ」

「っちょ、おい、待てッ!!」



 なんだよその言い方!?

 まるで親父に会う予定でもあるみたいじゃねえかッ!?


 振り返りざまに爆弾発言を残して、冥王竜は空間転移の魔法陣の中へさっさと入っていってしまった。

 最後の最後まで本当にポンコツな奴だ。


 それにしても……。

 天龍嶽に親父がいる?

 あぁそうか。謎の噴火を調査しに行ったのか。


 全裸な噂のせいで心配していたが、ちゃんと英雄らしい事をしているんだな、親父。

 少し、見直したぜ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ