第51話「大きさ」
「ピエロン……ぐす。ピエロォオオオン!」
「あーうるさいねぇ。でかい図体のくせに甲高い声で泣くんじゃないよ」
「ん。ワルト、もう踊りやめて良い?疲れた。バッファの効果も切れそうだし」
「いいよ。僕らの意図は十分に伝わったようだしね」
俺とワルトは踊り続けていたリリンに近寄り、話しかけた。
ワルトは「お膳立ては僕がする」と言っているし、後は任せてしまっても良いだろう。
だが、相手の言葉が分からないのに、どうやって意思の疎通をする気なんだ?
タマノッテオチール!とか、ピエロンの痴態を披露されても困るんだが。
「ドラピエクロ。僕らはお前の主人の居場所を知っている。それは分かっただろう?」
「ピエロン!」
「あぁ、YESの時は『ピエロン』。NOの時は『ピエリエッタ』と鳴いてくれ。できるね?」
「ピエローーーン!」
なるほど、そう来たか。
『はい』と『いいえ』が分かれば、最低限の意思の疎通ができるもんな。
というか、このピエロドラゴン、良く見りゃ可愛いじゃねえか。
意思の疎通はできるし、人懐っこいし、いざとなったら超絶強いし、完璧すぎる!
このくらい知能があると、飼育するのも楽だろうしな。
「おや?ユニはペットが欲しいのかい?でも、コイツはダメだから、タヌキでも飼うと良いよ!」
「心の声に反応するんじゃねえよ!!そしてタヌキは絶対に飼わねぇ!!」
タヌキをペットにする?そんなの絶対に不可能だ。
思い出せ、俺。
奴との憎き思い出を!!
……思い出してみれば、タヌキ将軍は最初はこんな感じだった気もする。が、いつの間にかバナナを要求してくるくらい図太くなった。
そして、クソタヌキこと、タヌキ帝王に関しちゃ、流暢な人間の言葉で暴言を吐いてきやがった。
可愛いらしさが欠片も無い。
だが、ドラピエクロは、普通に可愛いと思う。タヌキに比べればその差は歴然だな。
飼い主からも愛されているというし、ペットとして十分にやっていけるだろう。
……愛さえあれば、大きさなんて関係ないよな!
「妄想にふけるユニは放っておいて、僕らも話を進めようか」
「ピエロン!」
「さて、ドラピエクロ。お前の探している『トレイン・ド・ピエロ』は今、ブルファム皇国に居る。僕らは彼らとは仲良しでね。この服もピエロンから貰った物だよ。分かるかい?」
「ピエロン!コッチハピエルド、コッチハピエリーヌ!」
「ほう?覚えているもんだね。そうさ、リリンの服がピエリーヌの服で、僕のがピエルドの服さ。懐かしいだろう?」
「ピエロン!ミンナニアイタイ!」
「そうかい。……でも、ピエリーヌはもういないんだ」
「ンガ!?」
なんだ今の声!?
甲高いどころか、もの凄い低音だったぞ?
もしかして、今のが地声か?
……無理があり過ぎだろッ!!そんなんだから、咳き込むんだよッ!
「25年、色々あってね。彼らも苦労したんだ。一番大変だったのは『第2次ブルファム皇国平定戦争』。キミが何度も退けたブルファム皇国の兵士が戦争を始めたことがあってね」
「……。」
「その時、戦火に巻かれそうになったピエロンは、必死に団員たちを守った。だが、その時に……」
「ピエリーヌ?ピエリーヌイナクナッタ?」
話の雲行きが、おかしくなってきたぞ?
ワルトは、何故かブルファム皇国の歴史と戦争について語り始め、ドラピエクロは真剣に話を聞いている。
完全に二人だけの世界に入っているな。
だから、隣で平均的な表情の魔導師がティータイムをしていても、まったく視界に入っていない。
あ、リリンが手をこまねいて呼んでいるし、俺も休憩にしよう。
俺とリリンはお茶を楽しみつつ、ワルトとドラピエクロの会話を聞いた。
「あぁ、悲しきかな戦争!ブルファム王国の剣は、一度ならず二度までもピエロン達を傷つけた。その時に多くの団員たちと道を分かつ事となり、ピエリーヌとも再会できていない。ここまではいいかい?」
「ピエロン!」
「そして再び、戦争が起ころうとしている!」
「ンガッ!?」
「そんな事になれば、今度こそ……ピエロンは……。」
「マモル!ゼッタイニマモル!!テキハクシザシ、ドッキリショー!」
……。おい、ワルト。
もしかして、ドラピエクロを設置するだけじゃなくて、戦いに参戦させるつもりじゃねえだろうな?
俺の脳裏に、広大な草原で戦うドラピエクロの姿が映し出された。
敵対しているのは、イケメンな『戦雷の騎士長』だ。
幾多の連鎖猪を葬って来た名高き強者、戦雷の騎士長。
彼は、蛇を叩いたせいで刃こぼれした剣を煌めかせ、颯爽と大地を駆け……あ、踏みつぶされた。
妄想終了。
ドラピエクロが魔法を使うまでもなく圧勝するという、すごく悲しい結果となったよ。ロイ。
「そんな訳で、トレイン・ド・ピエロに危機が迫っている……かもしれない。その時はキミが守るんだ。いいね?ドラピエクロ」
「ピエロン!」
「だけど、その前に困ったことがあってね」
「?」
「キミ、体が大きすぎるんだ。そんな大きさじゃ、ピエロンには会わせられないね」
「ンガッッ!?」
これは酷い!
今更そこを指摘するのかよ!?
あれだけ期待させておいて、『やっぱ無理です』とか、大悪魔でもやって良い事と悪い事の判断くらいして欲しい。
ほら、ドラピエクロも涙目じゃねぇか!
流石に見ていられない。
俺はどうにかしようとワルトに向き直ろう……として、やけに落ち着いているリリンの姿が目に映った。
リリンは完全にリラックスしているっぽい。
空間から取り出したクッキー缶を抱えて、サクサクと頬張っている。
「リリン、随分と落ち着いているんだな。ドラピエクロはこのままじゃ、サーカスに帰れないってよ」
「もふ。……たぶんそれは、どうにかなると思う」
「え?体の大きさはどうにもならないだろ?」
「今、ドラピエクロは『命を止める時針槍』で作った氷の塊から頭だけ出している状態。そして、この空間は私達の支配領域『 慈悲なき絶死圏域』。魔法の効果を捻じ曲げるなんてお手のもの」
「あ、あぁ。そうだな……?」
「時すら超越すると言われるこの槍は、そんじょそこらの魔法とは比べ物にならない効果を及ぼす事が出来る。それこそ、正真正銘、時間を巻き戻すくらいに」
「時間を巻き戻すッ!?」
リリンの自信満々な口ぶりに、俺は驚愕し口を開ける事しかできなかった。
まさかそんな……時を巻き戻すなんて、出来るはずが……。
『命を止める時針槍』は時間の流れを狂わすと、ワルトも言っていた。
そして、ドラピエクロはそんな魔法を全身で受けた訳だ。
今だって、ホント意味分からない事になってるし、充分に可能性がありそう。
俺は改めて、ドラピエクロを上から下まで眺めてみた。
コイツの今の状態を一言で言い表すのならば、『ドラゴンの首が生えた、雪だるま』。
ドラピエクロがワルトの召喚した超巨大な氷の塊をぶつけられた後、その氷は体を覆いつくすように広がり、凝結。
歪な球体となり、今もドラピエクロの自由を奪ったままだ。
……そもそも、なんでこんな状態で生きてるんだ?
普通、体のほとんどを凍らせられたら、凍死すると思うんだが?それなのに、ドラピエクロは「ピエローン!」と元気一杯。
ドラピエクロの生命力が凄いのか、それともワルトが何かをしたのか。
まぁ、どちらにせよ、俺の理解を超えている事は間違いない。
「時を巻き戻す……か。理不尽だ理不尽だと言い続けていたが、ついにここまで来たか」
「うん。ワルトナなら上手くやってくれるはず!」
「あのさ、誰が時間を巻き戻すだって?……そんな事出来るわけねえだろ!馬鹿かキミらは!!」
「は?」
「あれ?ずっと前にしてなかった?」
「まったく違うね。時間を巻き戻すなんて、僕らがどうのこうのできるレベルじゃない。どうしてもというのなら、伝説の英雄ホーライにでも頼みなよ」
そうか。流石に出来ないのか。
時間を巻き戻すなんて、理不尽を通り越して『なにそれ?悪魔の奇跡かな?』と思っていたくらいだし、ちょっと安心。……は、まだ早い。
今、ワルトは、『英雄ホーライにでも頼め』と確かに言った。
英雄は時間すら超越する。
文章にしてみると大変にカッコイイが、現実として考えると大変に恐ろしい。
そして、まぶたの裏に、にこやかに嗤う村長の姿が思い浮かんできた。
……まさかな。
「そんな訳で、時間の巻き戻しなんてのは、僕らが扱っていい物じゃない。なので今からやるのは、安心安全、完全無慈悲でエコロジーな方法さ!」
「おい、後半に、ヤバいのが混じってなったか?」
ツッコミを入れてみたが、ガン無視された。
一応疑問形にしたが、俺は確かに『完全無慈悲』って聞いたぞ!!何をするつもりだよ!?
ワルトの言葉に不安を抱いているのは、俺だけではない。
一番の当事者の、ドラピエクロも首をかしげている。
そんなふうに不安に思う俺達を他所に、事態は進行していた。
気が付けばリリンが移動し、ワルトの隣に居る。
良くない事が起きそうだし、一旦、地上に逃げ……ればそこは、タヌキ地獄。
ちくしょう!逃げ場が無い!!
出来る事は心構えくらいしかなさそうだ。
俺は、苦し紛れにワルトに問いかけた。
「ワルト、何をするのか教えてくれ」
「今からやるのは、言うならば、究極の回復魔法さ」
「回復魔法?確か回復魔法って、あんまり凄い効果が無いんだろ?そもそも、回復魔法でどうやってドラピエクロを小さくするんだよ?」
「キミに、この魔法の説明をする事になるとは。感慨深いね」
「は?感慨深い?」
「……感慨深いだろう?キミの知能じゃ、どうせ説明したって理解されないってのに。あーあ。キミにタヌキ帝王ほどの知能があればなー」
「……。反論できねぇのが分かってるくせに、タヌキと比べやがって……」
いつの日にか、俺は魔法を極めて、そして……タヌキを爆裂させよう。
新しい目標が出来た。頑張ろう。
「まぁ、一応の説明はしてあげるよ。ドラピエクロも良く聞いといて」
「あぁ、頼む」
「どんなのか私も知りたい!」
「ピエロン!」
「……何でリリンまで知らないんだよ。キミは知ってなきゃダメだろ!」
俺もその意見には賛成だぜ。ワルト。
リリンは首をかしげ、きょとんとしている。
大変に可愛らしい仕草だが、当事者からしたらその反応は恐ろしすぎる。
要は、リリンはよく分かっていない魔法をノリで使いたいと言った訳だ。
ワルトの苦労が伝わってくる。……同情はしないけど。
「いいかい。ドラピエクロは命を止める時針槍から生成された氷に閉じ込められている。つまりは、槍の効果を直接、受け続けているってことだ」
「ピエロン!」
「で、肝心のその効果だが、世界との時間軸をずらし、物質を槍の中にエネルギーとして蓄えるってことだったよね。つまり、あと1200秒もすれば、存在を保てなくなって消滅するってことさ」
「ンガガ!?」
「だから僕はそれを加速させて、ドラピエクロの存在を槍の中に閉じ込める。そして、そのエネルギーを使ってもう一度作りだすんだ。25年前の、ドラピエクロの記憶の中の肉体をね」
なん……だと……?
槍の中に閉じ込めて、もう一度作り直す?
言っている意味はなんとなく分かる。だが、出来る理由も確証も、俺にはちっとも分からない。
ただ言えるのは、ついに大悪魔さんは、生命を作りだす所まで来たという事だ。
恐るべし、心無き大悪魔・ワルトナバレンシア。
ずっと帽子をかぶっているのは、悪魔の角を隠す為なのかもしれないと、ちょっと本気で思う。
「じゃあ、ドラピエクロの記憶通りの大きさ、体長5mくらいに体を作り直すってことか?」
「そうゆうこと。この大きさなら何ら問題ないだろ?レジェにはフィルシア攻略は頑張って貰うことになるけど」
そうか。最悪の未来は回避できそうだぞ。ロイ。
悪魔とドラゴンに挟まれるとか、生き残れ……あ、でも、青い髪の悪魔が白いドラゴンに乗ってやってくる可能性もあるんだっけな。
……頑張れ、ロイ。
「ということで、ドラピエクロ。幼かった姿を思い浮かべておくれ。曖昧な所は、ふわっとした感じになっちゃうから、正確に頼むよ」
「ピ……ピエロン……」
それだけ言うと、ワルトは杖を構えて詠唱を始めた。
そしてドラピエクロも目を閉じて意識を集中。必死に思い浮かべているようだ。
で、ふわっとした感じになるってどういう事?
ちょっと気になる。リリンに聞いてみよう。
「それにしても、ふわっとした感じ、か。どんな風になるんだろうな?」
「……少し思い出してきた。確か、曖昧な所は今の姿のままになるはず」
「今の姿のまま?」
「体を小さく、体を小さくと考え過ぎて、頭を小さくするイメージが曖昧だと、頭が今の大きさのままで体が5mのヘンテコドラゴンになるということ」
なんだそれ!?悲惨すぎる!!
今の尺度のままだと、頭と体の大きさがほぼ一緒の、頭でっかちドラゴンが爆誕するってことだよなッ!?
もの凄く珍しい珍獣として、サーカスは大繁盛するかもしれないが、俺は可哀そうすぎて直視できそうにない。
ここまで来たら、是非、ハッピーエンドを迎えて欲しい。
「《……体躯の有無など、生命の理の上ではさして重要ではないのだ。必要なものは、強き願いとそれに耐えうる魂。肉体は器ならばこそ、思うがままと成る》」
「ピエ、ピエ!ピエローーーーン!!」
「《物質転生・"あの楽しみをもう一度》」
ワルトが呪文を唱え終わった瞬間、ドラピエクロの姿が光に包まれた。
体を包んでいた氷が虹色に輝きだし、そして、ひび割れて砕け散る。
現れた眩い光の繭は、正円となり、空中で脈打っていた。
目の前の神秘的な光景は、時間を戻しているのではなく、体を作り変えているだけ。
頭では理解しつつも、感情が追い付かない。
俺はただ、光り輝く繭から、ドラピエクロが再誕するのを待つのみだ。
そして、光はだんだんと小さくなり始めた。
恐らくその光が5mくらいになった所で、ドラピエクロが出てくるのだろう。
うんうん、順調に小さくな……あれ?止まっちゃったんだけどッ!?
「ワルト?光が小さくならなくなったぞ?」
「……あれ、おかしいな?そんな訳無いんだけど」
大悪魔なワルトも首をかしげている。
どうやら、想定外らしい。
……この流れ、なんかよくない気がする……。
「なぁ、俺の気のせいかもしれないが、若干、膨らんできてないか?」
「え、えっと……。膨らんでいる……ぽいよね?」
「この後どうなるんだ?ワルト」
「……爆発?」
「うわぁあああああ!逃げろッ!!」
俺が叫ぶと当時に、光の繭は一気に膨張し始めた。
ゴゴゴゴゴ!と中からヤバそうな音も聞こえる。
俺は素早くワルトとリリンを回収。
そして、小脇に抱えて緊急離脱!
あぁ、二人の体が小さくて助かった!!
そしてすまん、ドラピエクロ!
お前の墓は、立ててやるからなッ!!
「一気に駆け抜ける!《飛行脚ッッ!!》」
「……。《大地の息吹》」
うおぉ!?背中側から、風が!!
この緊急時に、なにをしてるんだリリン!?
俺が後ろに視線を向けると、リリンは愛用の星丈―ルナを魔法で打ち出していた。
星丈ールナは空中を真っ直ぐ突き進み、光の繭に突き刺さった。
巻き上がる光の奔流と、爆裂音。
ヤバい!せめて二人を俺の陰になるようにしねえと!
瞬時に体勢を切り替えて、リリンとワルトを体の前に持っていき覆いかぶさる。
絶対に二人は守り通すッ!!
……だが、身構えた俺の所には、いつまで待っても、なにも届かなかった。
「あ、れ……?」
「星丈―ルナは、魔法を拡散させる以外に、収束させることも出来る。だからエネルギーを束ねて、空へ向かって打ち出した」
「そうなのか?いや、そんな事が出来るのかよ……」
「うん。星丈―ルナは超一級品。並みの魔道具に出来ない事も出来る」
俺の胸の中で丸くなりながらも、リリンは平均的な頬笑みで親指を立ててガッツポーズをしている。
あぁ……守ったつもりでいたのに、守られてしまった。
志だけじゃ、どうにもならねえ。
やるせない無力感がどっと押し寄せてくる。
「……でも、僕は、嬉しかったよ」
ん?何か言ったか?ワルト。
今は無力感に苛まれているんで、そっとしていて欲しい。
そしてリリン。俺の胴に腕をまわして絞めあげるのはやめてくれ。色んなもんが出そうだ。
**********
「さて、どうなったかな?」
俺の胴体を絞めあげてきた大悪魔な二人を引き剥がし、光の繭があった場所に視線を向けた。
そこではもうもうと煙が上がっているが、風の流れ方がおかしい。
何かがあるのは間違いないだろう。
成功か失敗か。
もっというなら、生か死か。
やがて煙が晴れていき、そして……。
頭のおかしいカラーリングのドラゴンが姿を現した。
「ピッエロォォォォンン!ダイダッシュツ!ミンナドキドキ!ハクシュカッサイ!!」
「……。」
「……。」
「……。」
「ビックリ!?ビックリシタ!?ミンナタノシイ!ピエロンヨロコブ!!」
「言いたい事を言っても良いか?」
「僕は許す」
「私も」
「コレデアエル!ピエロンウレシイ!」
「縮んだことには縮んだな。……2割くらいか?」
「測定してみた。全長81.8m。キッチリ2割だね」
「なんでそんな中途半端?」
「ホメテモラエル!トッテモウレシイ!」
「失敗したってことか?ワルト」
「いや、魔法は失敗はしてないね……。これは……おい、ドラピエクロ!!」
ドラピエクロは喜びのあまり、ピエロな踊りを始めている。
さっきリリンが踊っていた奴だ。
81.8mな巨体がブルンブルン揺れている。
そんな近寄りがたいドラゴンにズカズカと近づくワルト。
かなり足取りが乱雑だ。これは……。
「おい!この野郎!!僕は25年前の小さい姿を思い出せって言ったんだよ!誰がそんな中途半端な大きさになれって言ったんだい!?」
「ビッグ・スターニナル!ピエロンヨロコブ!ホメテ!」
ビッグスターになる?ピエロン喜ぶ?
……それはそういう意味で言ったんじゃねえだろッ!
物理的に体がでかくなってどうすんだよ!!
俺は内心でツッコミを入れた。
そんな俺のツッコミを聞いてか聞かずか、ワルトは重い声でドラピエクロに話しかけ睨みつけている。
「……なぁ、ドラピエクロ。本当にピエロンが大きくなれって言ったんだね?」
「ピエロン!」
「そっか。……なら、しょうがないよね!」
……どうやらワルトは諦めたらしい。
ということは、ドラゴンに踏みつぶされる未来が復活したぞ。ロイ。
……頑張って、生きてくれ。




