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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第6章「宿命の戦略破綻」

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第28話「依頼者」

 

 決め台詞に被せてきやがったタヌキにデコピンを撃ち込みつつ、シュウクに視線を戻す。

 シュウクは気まずそうに視線を漂わせているが、意を決したように「はぁ」っと短くため息をついた後、おもむろに立ち上がった。



「……くふ。く、くははははは!」



 そして……声を荒げて笑い出す。


 その異様な光景に、俺はもちろん、関係の無いトーガまでもが立ちあがって警戒態勢を取り武器を構えた。

 どう見てもB級小説の雑魚悪役っぽいんだが、俺も一応の礼儀として、グラムを構えておくか。


 そんな中、未だに空気を読まずに座り続けている奴らが一人と一匹。


 のほほんとした平均的な表情で事の成り行きを眺めているのはリリン。

 座ってこそいるが、一応、星丈―ルナを手に持ち、シュウクに向けている。

 もし俺達に危害を加えるような動きをシュウクがしても、誰よりも先に動いて、一撃で沈めてくれるだろう。

 リリンの戦闘力の高さは絶対だからな。座っていても何も問題ない。


 ……問題があるのは、お前だよ、タヌキ。

 確かに、この状況はお前に全く関係がない。が、だからと言って欠伸なんかしてんじゃねぇよ!

 腹も膨れて日も沈みかけているし、後は寝るだけ……って顔しやがって。

 ……つーか、いい加減、森に帰れよッ!


 タヌキに突っ込みを入れていると日が沈むので、俺は強引に話を進めた。



「……で、笑っているが何が楽しいんだ?シュウク。俺の質問にも答えてないし」

「答えなくても分かっているでしょう?私が、あなたをレジェンダリア国へ引き渡そうとしているという事は」


「やっぱりそうだったのか。誰の差し金か言ってくれるか?もしかしたらすんなりレジェンダリアへ行くかもしれないぜ?」

「誰の指し金か……ね。しいてあげるなら、私自身という事になるのでしょうか」


「……どういうことだ?さっぱり意味が分からねぇ」

「あなたはレジェンダリア国では凄く有名でしてね。……ぶっちゃけて言えば、懸賞金がかかっているのですよ」


「なんだってッ!?」



 え?ちょっと待って!?!?どういうことだよッ!?


 シュウクは完全に俺に視線を向けて話をしている。

 という事は、懸賞金を掛けられているのはどう考えても俺だ。


 ……なんでだよッ!!

 俺、何も悪いことしてないけど!!



「ここであなたに会えたのは偶然です。ですので凄く幸運だと言えるでしょう。最終通告です。大人しく、私とレジェンダリアにいきませんか?」

「その前に確認しておきたいんだが、懸賞金ってのは指名手配的な意味か?」


「私は冒険者であって、賞金稼ぎでは無いのでね。懸賞金と銘打ちましたが、実際は依頼書に基づく任務ですよ」

「それって不安定機構の冒険者依頼ってことか?」


「そうに決まっているでしょう。ちなみに、特別任務扱いなので重複しても問題ないですよ」

「なぁ、その依頼書持ってたりしない?」


「……見ますか?自分の目で確かめて、観念してください」



 もしかしたら、シュウクの勘違いって事もあるかもしれないしな。

 投げ渡された依頼書の紐をほどき、俺は中身を確認した。



『ユニクルフィンの捕獲』

 行方不明のユニクルフィン探しています。

 非常にすばしっこいのですが、どうにか捕獲してはいただけませんでしょうか?


 ※本当に素早いです。時速100キロは簡単に出します。

 達成賞金・500万エドロ~



 ……ふざけんなッ!!

 ゲロ鳥と殆ど同じじゃねぇか!!



「おい、シュウク。こんな依頼書を信じたのか?明らかにおかしいだろ!」

「おかしいことなどありませんよ。その依頼書は正式にレジェリクエ女王陛下の王室から拝命されたもの。虚偽などあるはずがありません」



 虚偽の塊みたいな人だけどな、レジェリクエ女王。

 貴族宛の手紙でも、完全に遊んでたし。



「まったく……こんな理由でややこしくなるとか勘弁してくれよ……」

「……。ユニク、ちょっといい?」


「どうしたんだ?リリン」



 今はちょっと余裕がない感じなので、後にしてくれると助かるんだが。

 だが、リリンはフワリと立ち上がり、俺の耳元に口を寄せてきた。

 恐らくこの状況に関係があるのだろう。


 ……脳内に心無き悪魔達がちらつく。

 たぶん、悪魔女王が仕掛けた事だろうな。だが、悪辣悪魔が面白半分で仕掛けてたという線もありそうだ。


 俺は心の中で選択肢を吟味しつつ、衝撃に備えた。



「ユニク、伝え忘れていた事がある」

「このタイミングで言い出すって事は無関係じゃないんだな?言ってみてくれ」


「ユニクに懸賞金を掛けたのは……私」

「……。なんでだよッ!!」



 どうせ女王レジェリクエかワルトの仕業だろ?っと思っていたら、まさかの不意打ち。

 というか、リリンが懸賞金を掛けているってどういう事だよ?

 懸賞金も何も、一緒にいるじゃねぇか!



「なんでそんな事をしたんだ?」

「私達パーティーが別れる前、私がレジェにお願いした。『もしユニクを探し出してくれたら、謝礼をいくら支払ってもかまわない』と」


「……なるほど、俺を探していた時のなごりって訳か。確かに人海戦術は有効だよな。うん」

「でしょ?でも結局は運命の導きによって私達は出会う事となった。きっと紐で結ばれているんだと思う!」



 ……紐?

 それはアレか?首輪付きのリード的な意味か?

 俺にそんな趣味は無いし、付けるんだったらタヌキにでも……いや、タヌキに付けるのはもっとダメだろッ!?

 そんな事をしたら、『魔獣懐柔』ルートまっしぐらじゃねぇか!!



「リリン、そのお願いは解除できるのか?」

「レジェは私がユニクと出会ったのを知っている。たぶんもう、ユニク捕獲の依頼は取り下げられていると思う」



 ……今、捕獲って言いやがったな。

 どいつもこいつも動物扱いか。……ぐるぐるげっげ―!!



「シュウク。恐らくだが、俺をレジェンダリアに連れて行っても懸賞金はもう貰えない。ということで諦めてくれ!」

「捕獲対象からそう言われて諦める奴がどこにいるのです?こうなったら少々手荒ではありますが、拘束させていただきますよ!」


「待て待て、俺はともかくリリンには絶対に勝てないぞ。怪我する前に辞めておけって」

「私だって穏便に済まそうと思っていましたよ。ですが、彼女が居るのなら話は別。作戦が使えなくなってしまった以上、これしかないのです!」


「彼女……? 彼女が居ると使えなくなる作戦ってどんなんだよ!」

「ふふ、良いでしょう教えてあげますよ。私はあなたを、レジェンダリア国の歓楽街に誘おうと思っていたのです。アダルトなお店でいい気分になった後、女王陛下に差し出すつもりでね。あなたも乗り気だったでしょう?」



 ぐぇぇぇッ!?おま、それをリリンの前で言うんじゃねぇよッッ!!


 しかし、心の中で悲鳴を上げても、もう遅い。

 恐る恐る視線をリリンに向けると、そこには……。


 悪鬼羅刹が立っていた。



「へぇー。ユニクもそういうの好きなんだね。知らなかった」

「えっと、その、リリンさん?」


「大丈夫。安心するといい。私()誰にも言わない。だから情報が漏れることはあり得ない」



 いやいやいや!少なくともこの場には俺とリリン以外もいるんですが!?

 シュウクはともかく、トーガまで巻き込むのは間違ってるぞ。


 そしておい、寝たふりしながら様子を窺っていたクソタヌキ!

 面白そうだからって顔を上げるんじゃねぇよ。……寝てろ!



「ユニク。この人は今から私の獲物。手出し無用」

「……おう。お手柔らかに頼む!」


「さて、シュウク。私のユニクを誘惑しようとした罪は重い。どのくらい重いかと言うと、この惑星の重さと同じくらい重い!」

「ははは、すごいスケールですね。……あなたの噂はかねがね聞いていますよ。『”鈴令”は古代竜すら殺す』なんてのは大げさとしても、それに近い実力があるのでしょう?ですが……」


「……。」

「この究極のバッファを見ても、今と同じ態度でいられますかねぇ!!《時を置き去りにする――」



 いや待てシュウク!それは死亡フラグだ!!


 というか、古代竜ってエンシェント森ドラゴンの事だよな!?

 だったら、その噂どおりだから!


 俺は一応の警告として「やめろ、シュウク!」と叫ぶ。

 これはマジでお前の為を思って言っているんだよ。


 ……だって俺は、その究極のバッファ魔法の呪文に、心当たりがあるんだ。



「《――速さ。強さ。強靭なる肉体を持つ狂人者どもよ。ただちに知るが良い。これこそが究極だ!!―二重魔法連デュオマジック瞬界加速スピーディー―》」



 ……やっぱり瞬界加速だったか。

 俺もこの魔法を覚える時に、何度も唱えたから覚えているぜ。

 偶然にも最初の言葉は同じだったしな。


 さて、勝負が決まった。

 杖を構えていたリリンもシュウクのドヤ顔を見て、やるせなさそうに杖を下げたし、タヌキは寝やがった。



「くくく、驚きのあまり声も出ないようですね。それもそのはず、この瞬界加速はバッファ系の頂点。最速の力を得る効果があります。ですが、その態度から察するに説明をするまでも無く、力量差が分かってしまったようですね」

「あまりに呆れ果てたので、訂正するのが面倒になってるだけ。でも一応言っておくと、もっと速くなるバッファの魔法もあるので、その知識は間違っている」


「……何を馬鹿なことを。そんなもの、聞いたことが……。」

「ないよね。上位バッファは体にかかる負担が大きいから、人目に付くような場所では使わないし」



 ……上位バッファ?聞いたことが無いもんが出てきたな。

 リリンの話を聞く限り、普段使うバッファとは一線を画すバッファがあるようだ。


 よし、少し様子を見てみよう。

 一応シュウクは敵だし、多少酷い目に遭っても問題ないしな。



「ふ、ハッタリで時間稼ぎ。そんな事をしても意味がないというのに。この瞬界加速の前では、全てが遅すぎるのですッ!!」



 シュウクは勢いよく剣を引に抜き、リリンに向けて走り出した。

 リリンが居るのは距離と言えるほどでもない、わずか10歩の位置。


 そんな至近距離にいて、リリンが後れを取る訳が無かった。



「そうでもない。なぜなら私も、使うから。《瞬界加速》」

「えっ!?」



 あ、目を見開いて固まっちゃったな、シュウク。

 そんでもって、そんな隙を見せれば結果なんて決まっている。


 シュウクは、後ろに回り込んだリリンにケツを蹴飛ばされて、地面へ派手にダイビングした。



「ぶべぇ!!……な、なんで!なんで瞬界加速を使えるのですかっ!?」

「むしろなぜ使えないと思った?私はソロで旅をしていたというのに」



 そして再びシュウクは固まった。

 完全に予想外だったようである。


 コイツ……。さてはあまり頭が良く無いな?

 恐らくタヌキ以下だろう。



「く、くそ!こんなはずでは……」

「どんなはずだったのかなんてどうでもいい。今は唯、自分の愚かさを嘆くと良い」



 あ。……リリンさんが大悪魔してる。

 近づかない方が良さそうだ。


 だが、身を引いた俺とは真逆に、前に進みでる人物が一人。

 今まで事態について行けず静観を決め込んでいたトーガだ。



「シュウクよ。良く分からねぇが、嬢ちゃんとユニクルを黙らせればいいんだよな?手を貸すぜ」

「……トーガ……。いいのですか?」


「良いも何も、俺達は同じチームだろうが。隠し事されてたってのは気にいらねえが、それは手伝わない理由にはならねぇよ」

「あぁ、どうやら私の最高は瞬界加速だけでは無かったようです。最高の魔法に最高の仲間。これでは負けようがありませんね」



 いや、それっぽい勝利フラグを立てても、勝てないもんは勝てないんだって。

 それに、気になっている事があるんだが。


 お前らのパーティーの女性陣、姿が見えないんだけど?

 大悪魔の餌食にされてない?



「前衛連携Bでいくぞ。俺が前で拳撃、お前は後ろから刺突して機動力を奪え」

「分かりました。サポートは任せてください」

「獲物が二人に増えたらしい。でもどうせ歯ごたえが無いし、面倒なだけ」


「言ってくれるじゃねぇか、嬢ちゃんよぉ!」

「達成報酬は頂きますよ!」

「……。ひゅんといって、ずどん」



 ドスッ。バキッ。



「……手甲がッ!!俺の手甲がぁ!!」

「……剣が折れたっ!?」



 だから言っただろ?勝てないって。

 そして、次は取り換えの効かない物が折れる番だ。


 折れた心ってのはな、簡単には戻らないんだぜ?



「弱過ぎて話にならない。さっさと終わらせるために、お望み通り、上位バッファを使ってボコ殴りにしてあげよう」



リリンが走り出した。



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