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第51話「戦闘とこれから」

 視界は一面、空の色。

 両腕も両足も後ろに捻じ曲げられ、筋肉が軋んでいる。

 カミナさんの前で、無抵抗で心臓を差し出しているというのが今、俺が置かれている状況だ。


 絶体絶命。

 ……だが、諦めない。

 心臓の鼓動が止まるその瞬間まで、抗い続けてやる。


 ……もう二度と、大切な人を失わない為に。



「《グラムッ!!》」



 頼れるのは自分の価値観だけ。

 俺は腕に持っていたグラムをワザと手放し、そして再び召喚を行った。


 その瞬間に響く、痛烈な金属音。


 カミナさんの拳は今まさに俺の心臓を穿とうと迫っていたらしく、そこにグラムが割り込み、かろうじて直撃を免れる事が出来た。

 結果、カミナさんの拳に押し込まれるようにしてグラムは俺の胸に激突し、一筋の光明が湧く。



「ッ……堅ったいわね!」

「あぁ、そしてこれが……勝機だ」



 俺の鎧に押し込まれたグラムの持ち手が、首筋に触れた。

 肌に触れているのならば、惑星重力制御が発動できる。



「《惑星重力制御ッッ!!》」



 そして、今ならばグラムに触れているカミナさんにも効果を及ぼせるはずだ。


 俺は体中の魔力を操作し、惑星重力制御を三系統に分けた。

 一つ、俺の重量を限りなく0にすること。

 二つ、グラムの重量を俺と同等にすること。

 三つ、カミナさんの手袋の重量を可能な限り増大させること。


 使い物にならない四肢の感覚を無視し、グラムのコントロールだけに集中する。

 その結果、俺の願いは実現したのだ。



「くっ!重い……」



 打ち付けられた運動エネルギーは余すことなくグラムを通して俺に伝わり、真っ直ぐ後方に吹き飛ばされる事が出来た。

 そしてカミナさんはその場に立ち尽くしたまま、追撃を仕掛ける事が出来なかったようだ。


 稼いだ時間は恐らく5秒も無いだろう。

 吹き飛ばされてゆくこの体が地面に付くまでにはカミナさんの攻撃が再開されるはず。

 頬をかすめる心地よい風を感じながら、少ない勝機をこじ開けるべく、バッファを唱えた。



「《瞬界加速スピィーディーッ!》」



 瞬界加速スピィーディー

 体の周りの空気に干渉し、人間の限界を超えた速さを引きだす魔法。


 たとえ腕や足の神経が痺れていようとも、外部からの干渉ならば関係ない。

 俺は捻じ曲げられた両の手足を正位置に戻すように空気を操作し、かろうじて人間らしい形を取り戻した。


 正常に戻した視界の先で、再び連撃を繰り出そうとカミナさんが迫る。

 あの連撃を受ける訳にはいかない。

 少し時間を稼がして貰おうか。


 俺はグラムの重量を増大させ、地面に叩きつけ粉塵を舞わせた。

 過剰なまでに舞いあがった粉塵には、重力操作した小石や土塊を混ぜ込み、カミナさんの視野の妨害を狙う。


 だが、その程度ではカミナさんの足止めは出来なかった。


 カミナさんの腕から発生している黒い粒子。

 その粒子に粉塵が触れた直後、モウモウと撒き上がっていた粉塵はまるで押し潰されるかのようにして地面に急降下したのだ。



「な!……流石に対策済みか」

「接近職が遠距離対策をしない訳ないじゃない。ついでに言うと射出系の魔法もことごとく落下するわよ?」



 ちくしょう!あくまで近接戦闘しかさせないつもりか。


 苦し紛れに出した粉塵を簡単に処理され、いよいよカミナさんの拳が俺に再び迫る。

 こうなったら……。


 俺は自分の足で大地を踏みしめ、再び重力操作を行って下半身の重量を増大。

 強固な足場を形成し、意識をカミナさんの拳に集中する。

 ……拳は拳で、迎え撃つ。

 グラムを握り締めたままの、威力が可変する拳で。



「うおぉおおおおぉお!!」

「あら、拳で語るのね。素敵だわ!」



 ドドドドドドドドドッ!!


 激しい拳の応酬。

 一発一発が脅威となるように、最大限の重量を以て拳を打ち付ける。

 そして、それを事もなさげに受け止め裁くカミナさん。


 始めこそ均衡が保たれていたものの、徐々にだが、明確な差が生まれ始めた。

 ……俺の不利な状況へと。


 俺の放つ拳はグラムを持つ右手一本。

 かたやカミナさんは両腕が使える。その差は明確だった。

 そして繰り出される手数の多さこそ……俺が求めた、勝利のカギだ。


 俺は拳に紛れ揉ませて、幾度となくグラムの刃でカミナさんの拳を受け止める。

 たった一回斬り付けただけでは、カミナさんの魔道具は壊せない。

 だったら、何度でも何度でも、壊れるまで繰り返せばいい。


 一体、何分の時間が過ぎたのだろうか。

 だんだんと追い込まれていく俺と、楽しそうに笑うカミナさん。

 まだか、と焦る俺の想いがついに実現し、その殴打の終止符として、ヒビが入る音が響く。


 ……ピシリ。



「……え?」

「あぁ、やっとか」


「……なるほど、これはやられたわね……」

「悪いなカミナさん。その手袋、壊させて貰うぜ!」



 そして、俺がグラムを振り抜くと、カミナさんは苦し紛れに掌で弾く様な素振りを見せ、小気味よい音と共に漆黒の手袋は破裂した。



「まさか、『弾捨離』が破壊されるとはね……。正直、驚きを隠せないわ」

「伊達にリリンの訓練を受けていないってこったな。これくらいでヘコたれちゃ、リリンを守れないだろ?」


「あは。まいったなぁ……ちょっとリリンが羨ましく思えちゃったわ」

「ん?なんだそれ?」


「要は、合格ってことよ」

「合格?この訓練の事か?」


「そう。そして、素直に安心したわ。リリンは本当に良い人をパト―ナーに出来たんだなって。だから合格!ぜーんぶ色んな懸念を度外視してでも、飛びきりの満点をあげるわ!」

「よっしゃ!よく分からんうちに合格したぜ、やっほい!!……んで、この訓練の決着はどうするんだ?」


「あはは、無粋な事を聞くのね。もちろん……続行よ!」



 ですよねー。

 俺としてはもう既に満身創痍。一分一秒でも早く戦闘を終わらせて休憩がしたい。

 そうじゃないと、草葉の陰からこちらの様子を窺っているホロビノがかわいそうだ。


 そう、カミナさんの後ろ500mの位置にはホロビノがいる。

 どこからか隠れて見ていたらしいホロビノは俺とカミナさんが戦いを始めた瞬間に行動を開始していた。


 伸びている森ドラゴンの回収。


 俺達の戦いに巻き込まれないように、自分よりも10倍近い大きさの森ドラゴンを引きずって一か所に集めた後、そばで寄り添って防御魔法を張っている。

 とても怖いだろうに、涙目になりながらも、俺達の戦いを目をそらさずに見ているのだ。


 だから、ちょっと待ってろ、ホロビノ。

 お前のトラウマの仇は俺がとってやる。



「うおらぁ!」

「あら、最後は力ずくでってことかしら?でも、力じゃ負ける気がしないわ」



 俺は上段からグラムを振り降ろし、カミナさんへの一撃を狙う。

 普通の人間にそんな事をしようものなら、大怪我をさせてしまうだろうが、相手は悪魔デヴィルだ。

 このくらいでちょうどいいはず。


 ガァン!

 ……ほらな。普通に弾かれた。



「あの、伝説の剣を素手で弾くのやめて貰えます?」

「よく見て、素手じゃないわよ?」


「素手じゃない?どう見たって素手だろ……?」

「これはね、実は素手じゃないの。偽装肌アウタースキン解除」



 ……なにッ!?


 カミナさんが素手では無いと宣言し、見せつけるように腕を大ぶりに広げて、そして……

 弾け飛んだ皮膚の下から覗き見えたのは、指先から肘までを埋め尽くす、翠色に輝く魔法陣だった。



「なんだ、それ……」

「これ?これはね、魔法刺青マジックタトゥー。人の体を魔道具として扱う為の魔法医学の最先端」


「おい、待て。じゃあリリンがカミナさんの事を「半分は機械で出来ている」とか言っていたのは?」

「ある意味で本当という事ね。結構使い勝手が良いもので、かなり入れちゃってるから」


「……本物の悪魔さんだった!!」



 うっわぁぁぁ!!人間やめてたぁぁぁ!!!


 つーか、超納得したんだけど!

 いくらバッファに慣れているといえど、魔法を唱えもせず真頭熊を爆裂とか、薄々おかしいとは思ってたし!



「さて、私の秘密を知ったからにはタダじゃおけないわ。ひとつ、練習に付き合って貰うとしましょう」

「自分で言っといてなにいってやがる!?……断るッ!!」


「さあ、いくわよっ!」



 えっとちょっと待って、緊急事態すぎて思考が付いてこない!

 とりあえず、俺の目標はこの場から生き残ること。


 ……ホロビノの野郎が俺と森ドラゴンを見捨てて逃げ出そうとも、それは変わる事は無い。



「くっ!《飛行脚》」



 効果が弱くなってきていた気がするバッファの魔法を再度唱え、近接戦闘に備える。

 さっきは一応、殴打の応酬が出来た。

 一方的な展開にはならないはず。……は?


 そんな俺の淡い希望は、飛び込んできた景色によって粉々に破壊された。



「《八十魔法陣(オールタトゥー)、空間展開》私を中心に半径500mを戦闘空間として認識。発動。《大規模個人魔導パーソナルソーサリー生命認識メディカルチェック 強制支配アウトプット》」



 カミナさんの腕の魔法刺青が一際輝きだし、それと同じ模様の魔法陣が空に描かれた。

 空を見上げれば魔法陣同士が隙間なく繋がり、ドームのようなものを形成している。


 これは……リリンの『失楽園を覆う(ディスピアガーデン)』と同じ……か?



「最近はこの空間を使ってまで倒したい敵も居なくてね。でも、昨日の暗劇部員みたいな奴もいる事だし、ちょっと練習」

「……ちなみに、効果はいかほどなもので?」


「効果はこの空間内に居る生命の全ての、生命情報の把握と強制干渉。この空間の中に居る限り、あなたの動きは事前に察知できる。こんなふうに」



 俺はカミナさんに質問を投げかけ、その隙に距離を取ろうと走り出した。

 いや、正確には走り出そうとしたのだ。


 半歩踏み出した所で、カミナさんのひざ蹴りがわき腹に刺さる。



「ぐぇ……」

「さ、今度は逃がさないように、連撃行くわよ」



 チッ、っと俺のこめかみが爆ぜた。

 揺らぐ思考と暗転する視野。


 俺が意識を保っていられたのは、その後、殴打3発が限界だった。



 ********



「……あぁ、俺は負けたのか……」



 俺はぼんやりする思考で、現状を確認するため呟いた。


 仰向けに寝かせられ、規則的に揺れる大地。

 いや、違うか。

 土にしちゃ柔らかいし、ほんのり温かい。

 これは、ホロビノの背中だな。汗でちょっとしっとりしてるし。


 俺は今ホロビノの背中の上。

 どうやら森を歩いて帰っている途中らしく、カミナさんはホロビノの頭の近くで手帳に書きものをしながら歩いていた。



「えっと、俺は負けたんだよな?カミナさん」

「えぇ、ほんと大人げなく本気で殴っちゃってごめんね。一発で仕留めるつもりだったんだけど、予想外に耐えるものだから強く殴り過ぎたわ」



 ……今、死留めるって平然と言いやがったな。

 森ヒュドラ同様、病院に持ち帰って実験をするつもりのなのだろうか?


 俺、森ヒュドラと合体ルート!?断るッッ!!



「すみません……人体実験は勘弁して下さい……」

「え?それはもしかして……前フリってやつかな?」


「違うッッ!!誰が好き好んで改造されたいと思うんだよッッ!!」

「あはは、それだけ元気なら大丈夫そうね!さってとぉ……」



 いや、そんな風に意気込まないでくれ。

 つーかこれ以上何をするつもりだ?


 こうしちゃいられないと思い、慌ててホロビノの背中から起き上がる。

 その際ホロビノが助けて欲しいと視線を向けてきたが、助けてやらない。


 ……お前、さっき逃げたもんな。

 こうして俺を背負っているという事は、カミナさんに捕まったんだろうけど。



「それじゃ、ご褒美をあげなくちゃね!」

「ご褒美?」


「そうよ?私はさっきこの攻撃で意識を失わなければ合格にするって言ったじゃない?結果は意識を失うどころか反撃されて、しかも『弾捨離』を壊して見せた。これはご褒美あげるしかないじゃない、って」

「えっと、ご褒美くれるってのはすごく嬉しいんだが……その弾捨離ってのの、弁償は?」


「え?弁償してくれるの!?じゃあ、ほんの30億エドロくらいでいいわ!」

「無理だァァァァ!!」


「だよね。ま、壊れちゃったもんはしょうがないし、もう一回違うの作るから弁償しなくていいわよ。というか、むしろ、やりすぎちゃったことリリンに黙ってくれると嬉しいな―なんて……」

「……リリンに?」


「うん、その。私がガチ装備の弾捨離を持ち出したばかりか、大規模個人魔導パーソナルソーサリー まで使ったのバレると、間違いなく喧嘩になると思うの」

「ちなみに、その大規模個人魔導パーソナルソーサリー ってのはどういった位置づけの魔法なんだ?」


大規模個人魔導パーソナルソーサリー っていうのは、魔法辞典に載っていない、新しく個人が編み出した高位の魔法の事よ。要は、私だけが使える最強の魔法って事」

「……その、最強な魔法を残りの心無き(アンハート)な皆さんは使えるのか?」


「えぇ。しかも、私よりも格段に強い魔法を、ね」

「なんて恐ろしい!」



 心無き魔人達の統括者アンハートデヴィルには個人のみが使えるという、秘められし必殺技があるらしい。


 リリンの雷人王の掌(ゼウスケラノス)でさえ、一瞬で十何か所も土を抉り飛ばすほどの威力。

 個人が編み出した必殺技ということは、リリンの大規模個人魔導パーソナルソーサリーはそれはもう、トンデなく派手な事になっていそうだ。


 直径5kmにわたり『雷人王の掌(ゼウスケラノス)願いと王位の債務ハルバードベットティアラ』が降り注ぐ……とか?

 ……木端微塵だろ。大陸が。



「そんなわけで、私とリリンが喧嘩したら、ちょーっと面倒なことになりそうなの。……黙っててくれるかな?」

「はい!喜んでッ!!」



 そんな事になったらホロビノの背中に乗って逃げ惑うことになりそうだ。

 全力で阻止した方が良いだろう。



「ということで、賄賂的な意味も込めて、なんでもひとつ願い事を叶えてあげるわ」

「なんでも、だと……!?」



 え?なにその魅力的なご褒美。


 今は人知れず森の奥深く。

 言うならば俺とカミナさんの二人っきりって事だ。

 あ、ホロビノもいるか。まぁどっか行ってろと言えば、喜んで姿を消すだろう。


 外見だけで見れば、凄く美人なカミナさん。

 まさに白愛の天使。そんな人が俺の言う事をなんでも一つ聞いてくれるだとッ!?

 ぐへへ、それじゃあ、是非、その豊満な胸を……


 ……そんな事をしようものなら、処されるな。

 カミナさんによって散々弄ばれた揚句、リリンによって確実にヤられる。

 ……自殺、よくない。



「そうだな……それじゃあ、ひとつ……。リリンの弱点でも教えて貰おうかな!恥ずかしいエピソードも添えて!!」

「おっと、面白そうな事を言い出したわね。それはリリンと旅をしていた頃の失敗談を聞かせればいいのかな?」


「あぁそういう事だな!なにせ俺はリリンに対する対応策を持ち合わせていない。ここらで一つ、弱みでも握っておいて備えておこうかってな!」



 実際は、弱みなんて握ってもしょうがないと思っている。

 そんなつまらない事をして嫌われたくないしな。


 だから、恥ずかしいエピソードを所望することにした。

 意外と抜けている所のあるリリンの事だ。面白エピソードの一つや二つあるだろう。


 そういうのって聞くチャンスあんまり無いしな!



「ふふ、ユニクルフィンくんも、悪魔っぽくなってきたわねー」

「いえいえ、先生ほどではありませんよ……」



 俺達の小悪党な笑い声が森に響く。

 その声を聞いてホロビノが震えだしたが気のせい気のせい。



「それじゃ、ひとつ、リリンの弱みを暴露しちゃうわ。リリンは実は……」

「リリンは実は……?」


「お酒に弱いのよ!」

「へぇ……酒に……って、未成年だろ!!」



 ふざけんな!そもそも飲ませていい歳じゃねえだろ!

 医者がなんで飲ませてんの!?止める立場だろッ!!



「なんでリリンに酒なんて飲ませてるんだよ!」

「えーだって私達が隠れて晩酌してたら、リリンにバレちゃったんだもん。すごく泣かれたし」


「そもそもがおかしいだろ!?カミナさんというか、心無き魔人の統括者ってリリンと近しい年齢の少女5人組じゃなかったっけ!?」

「……私は医師よ?急性アルコール中毒の対応も心得ているわ!」


「そういう事言ってるんじゃねえんだよッ!!あーもういいや、で、リリンが酒に弱いって?」

「そ、リリンはすっごくお酒に弱いわ。コップ半分も飲ませれば速攻で泥酔状態よ!」


「速攻で泥酔って……健康状態に問題は無いのかよ?」

「リリンの強靭な消化器系を以てして、お酒程度でどうにかなると思う?」


「……思わねぇ。かけらも」

「そ。という事でお酒を飲ませると、凄く可愛くなるわ。私の真似して診察の真似事してみたり、ワルトナの真似して賭け勝負を挑んでみたり、レジェの真似してべったり肌を寄せてきたり、メナフの真似してホロビノと戦ってみたり」


「なんだそれ……。可愛いっちゃ可愛いが、ちょこちょこ不審な事が混じってるな……」

「というわけで、リリンにお酒を飲ませれば、ベットの上でイチコロにできるわよ?やってみたらどう?」


「やらねぇよ!!俺とリリンはそういう関係じゃねえんだよ!」



 まったく。俺が我慢しているってのに、そんなイラン情報を寄越しやがって。

 最近じゃタヌキなおかげで、ずいぶん我慢が楽になったけどな。



「ま、その情報は一応心に留めておく。ありがとな」

「あら、取り繕っても男の子ってことね。恥ずかしがっちゃってー」


「違うからッ!間違ってリリンが酒を飲んじゃった時に、正しい対応をする為だから!!」



 くすくすと笑うカミナさんと、必死にいい訳をする俺。


 そりゃリリンは可愛いけどな、酒飲ませて無理やりなんて俺の趣味じゃねえんだよ!

 つーか、酒飲ましたら、四分の一の確率で戦闘になってるじゃねえか!!


 リスクが高すぎるだろ!!



「まったく……意外と下ネタとか言うんだな。カミナさんって」

「医者なんてやってると、下ネタなんて飽き飽きするほどよ。だったら童貞さんをからかって遊ぶしかないじゃない?」


「……俺が童貞ってばらした奴、絶対に許さんからな!!判明次第、ブチ転がしてやるッ!!!!」



 さらに声を大きくして笑うカミナさんと、同情の視線を送ってくるホロビノ。

 そうか、お前も俺と同じなんだな。


 何とも言えないしんみりした感情を抱いていると、スッと体を返してカミナさんが俺に急接近。

 そっと俺の耳に口を寄せて、ひそりと、一言つぶやいた。



「……リリンを、大切にしてあげてね。ちゃんと構ってあげないと、『病んでリリン』になっちゃうからね!」

「……は?」



 え?え。

 ……病んでリリン?え、え?



「え、カミナさん?なんですかその、恐ろしい響きな言葉は……」

「ふふ、答えてあげないわ。ご褒美は一つだけだもの」



 え、え、えぇ!そんなっ!!

 その情報は、命に関わるんですがッ!!


 そうして、俺達は町に向けて歩いて行く。


 心無き魔人達の統括者アンハートデヴィル、一人目、再生輪廻・カミナガンデ。

 彼女との出会いは、隠れていた敵の影と、新たな目標、そして……大いなる謎を俺に与えた。



 ……あぁ、これからが期待と不安でいっぱいだ!



皆様こんばんわ、青色の鮫です!


いやー長かった五章、この話で終了です!!

殆どプロットもなく、当然、ネタなんて頭の中にしか存在しない状態で書きだしたら、長くなるわ、長くなるわ。

そこら辺の反省的な内容の記事を活動にでもあげておきます。


さて、いつもどうり、この後の更新は幕間「リリンサの手記」を投稿し、6章プロローグ(という名のユルドルード側の話)を投下いたします。


そしたら、第六章「宿命の戦略破綻」へと物語は進みます。

……タヌキもでるよ。

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