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第18話「悪魔たちの饗宴・好意」

「少し、情報を整理したいと思うんだが、いいか?」

「うん。そうしよう。予想外に新しい情報が出てきて私も、少し混乱している」


「カミナさんとミナチルさんも協力して欲しいんだけど、大丈夫か?」

「えぇ、もちろんよ。カルテを付けるのは得意だから任せて!」


「じゃあ、一番古い情報を持ってるミナチルさんから質問しても良いか?俺の過去についての話だ」

「……ゆにふぃーって童貞だったんですねー。……ふふ、かわいい」


「そういう野次は後にしてくれッ!あとリリン、威嚇するのはやめような!?」



 大悪魔なミナチルさんが全然ぶれない。


 今も「英雄なのに童貞さんですかー。あはは。ベットの上では新人冒険者なんですねー」と野次を飛ばし、それに反応したリリンが「ユニクが英雄であることと、童貞であることは関係ない!そもそも、ユニクはベットの上でも、きっとすごいと思う!」とか、テキトーな事を言って激しい戦いを繰り広げている。


 ………。

 もういいや。しばらく放っておこう。



「カミナさん。とりあえず始めるか?」

「そうね。そのうち勝手に話に入ってくるでしょ」



 意外と淡白なカミナさんも、大悪魔リリン達を放置することに同意。

 さっそく、俺の正体について分かっている事を順に並べていく。



「まずは時系列順に整理するか。一番古い情報は『8年前の夏、8歳の俺は英雄ユルドルードと行動を共にし、ミナチルさんの村を助けに行った』」

「そこで、ユニクルフィンくんは『少なくともレベルが2万以上あり、レベル8万の蟲を一刀両断出来る技術を持っていた』ということね」


「あぁ、しかも俺は『高位の魔法を難なく使いこなし、致死性の毒すらも無効化した』らしい。事実として証言しているミナチルさんがいる訳だから、事実なんだろうけど、問題はそのユニクルフィンが俺かどうか疑わしいという事だな」

「……いや、ユニク本人だと思う。ミナチルは私と同じ『ゆにクラブ』カードを持っている。このカードの信憑性は絶対的」


「お?リリンが復活したな。うんで、その信憑性とやらはどこから来たんだ?」

「このカードは、『私、リリンサ・リンサベルに授けられた神託に同封されていた』つまり、神の名において、このカードに映っているのは私の横に座るユニクであるという事が証明される」



 うん?それはなんか信憑性が薄くないか?

 だって、ミナチルさんにカードを渡したのって不安定機構だろ?

 例え、そのカードが同一だとしても、カードに映る俺と、記憶の中にある俺を同じ人物だと判断したのはミナチルさんな訳で、確証とは言えない気がする。



「この判断は難しい所だな。俺の記憶がない以上、ミナチルさん一人の証言じゃ弱い気もするし」

「なるほど。せめてもう一人、ユニクの過去を知る人に出会えれば……」

「えぇー。こんな童貞英雄、そんなにいないと思うんですけど」


「……なぁ、童貞ネタ引っ張らないでほしいんだけど?実は結構、心に来るんだぜ?」

「あ、ごめんなさい。でも、童貞って言葉を教えてくれたの、ゆにふぃーですし」


「なにやってんだよ!幼い俺ッ!!」

「昔からユニクは変態だった?」

「ねぇ、ちょっと、聞いても良いかなミナちー」



 ちくしょう!ミナチルさんが童貞ネタを引っ張ってきやがる!

 つーか、8歳の俺、なにやってんだよ!

 あれか?親父の影響か?

 全裸大好き英雄ユルドルードの仕業なのか?


 親父、見つけ次第絶対にブン殴ってやるからな!

 そう心に決めつつ、意識は話し合いに向ける。


 どうやらカミナさんも、気になる事がある様子。第3者の目線というのは冷静で参考になるよな。



「あの、ミナちーってさ。ユニクルフィンくんの事、好きなの?」

「は?」

「あ!」

「え?」



 はぁぁぁぁぁッ!?

 ちょっと、なんて事言いだすんだよ!この心無き魔人達の統括者アンハートデヴィルさんは!!

 全然参考にならないじゃん!今、そんな事を聞いている雰囲気じゃないだろッ!?


 いきなりトンデモナイ事をカミナさんが言いだしたが、その反応は三者三様だった。

 困惑する俺を他所に、興奮したリリンがミナチルさんに言葉を捲し立てる。



「これは、是非答えていただきたい!さぁどうなの?さぁ!」

「え、今それ、関係あります?」



 ミナチルさんの言うとおり、まったく関係ないよな。


 ……だけどさ。

 俺だって男な訳だし。

 ミナチルさんだって活発そうな美人さんな訳だし。

 ちょっとだけ、気になっちゃうんだよなぁ……。


 俺の邪な心は、ミナチルさんの返答を待つという事を選択した。

 ミナチルさんは言葉を渋りながら、どうにかこの状況を切りぬけようともがいている。



「カミナ先生?私の感情とか、どうでもよくないですか?」

「いやそれが、かなり重要な事なの」


「え……どうしてですか?」

「誰かに対しての好意は、行動を起こす動機になりうるからよ」



 え?なんだそれ?

 至って真面目な質問だったのか、カミナさんは真剣な表情でミナチルさんに視線を送っていた。



「現状確かめようがない話はいったん保留よ。次に確かめるべきなのは『このゆにクラブ会員証を持つのが12人いると言う事』」

「えぇ、カードの枚数が12枚なんですから、12人いますよね?」


「そう、つまりミナちーの知るユニクルフィンに関わりを持った人物があと10人いると言う事になるわ」

「なりますね」


「なら、やっぱり気になるじゃない。さぁ、白状して?」

「いや、流れがおかしくないですか!?繋がっているようで全然繋がっていないですよ!?」



 うん。俺もそう思う。

 というか、なんでカミナさんはそこにこだわるんだろうか。

 大して重要じゃないと思うんだけどなぁ……気になるけど。



「ミナチル。これは重要な事。現状、過去のユニクを知るためには、それを知るという人物に接触する他ない。もし、このカードを持つ人物がユニクに好意を抱いた末に接触を試みているとしたら、こちらもその人の発見がしやすくなるということ。だから、話して?」

「うっ……。なんだか、逃げ場がない気がしますね……」



 ここでリリンがそれっぽい説明を入れてきた。

 確かに相手も俺を探しているのなら接触がぐっと楽になるよな。

 その理屈はなんとなく分かる気がする。


 ……気がするんだが、リリンよ。

 なんで、ミナチルさんの事、獲物を見るような目で見ているんだ?

 そんな目で見られた日にゃ、三頭熊でも逃げ出すぞ?



「あーもー!分かりましたよ!言えば良いんですよね!?言えば!!」

「うん。」

「……あとで、ディナーのおいしいお店に連れてってあげるね。ミナちー」


「あ、じゃ、フルコースディナーでお願いします!んで、ゆにふぃーに対して好意を抱いているかですよね?」

「……。」

「……。」

「……。」


「ぶっちゃけ、そこまででもないです」



 ……は?

 そこまででもない?

 なんだその、可もなく不可もなくみたいな表現は。



「まぁ、家族どころか、村一個まるまる助けて貰っといて恩義を感じていない訳じゃないですよ?でも、男性としてはこれっぽっちも意識していません」

「ぐっ!」


「第一、彼は私を裸に剥いたんですよ?なんで好きにならなくちゃいけないんですか。変態なのに。」

「ぐはぁ!」


「ついでに言うとパパからも止められてます。『英雄様は変態だ。あそこんちに嫁に行ったら何されるかわかんねぇぞ!』って」

「ぐへぇ!」



 やめてくれ……。

 俺の心がもう保たないから……。

 俺も親父も変態なのは分かったから……。



「うーんでも、普通そんな危機的状況を助けられたら、コロっといきそうなもんだけど。ね?リリン」

「カミナが言ってた。『割り箸効果』って奴?」



 リリンそれ、多分間違ってるだろ。

 割り箸効果?……恋心が真っ二つになりそうなんだが。



「吊り橋効果ですか?あはは、まぁ、そうですね……確かにカッコイイなって思ったですし、一瞬だけドキッとしちゃったかもしれません」

「やはり……!」


「でも、恋にはならなかったんですよねー。あぁ、私じゃ勝てないなぁ(・・・・・・・・)って分かっちゃいましたから」



 え?どういう事だ?

 勝てないって”恋”のことだよな?


 ……何かがおかしい。

 その違和感は俺だけじゃなく、リリンやカミナさんも感じたようだ。




「どういうことだ?」

「ミナちー?誰に勝てないのかな?」

「え?そりゃもちろん…………誰、です?」


「「「は?」」」

「あれ?ちょっと待って下さい。えっと、、、。え?ゆにふぃーは一人で私達の所まで来たんですよ?だから、私が誰かに遠慮するって、変、ですよね……?あれ?」



 そう言って頭を抱え込んでしまったミナチルさん。

 唯の羞恥プレイかと思ったら、しっかりと謎を増やしていきやがった。

 さすがは、大悪魔。


 俺を困らせることに、余念がない。


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