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第228話「第13章余談、それぞれのお祭り①」

 

「た~~まや~~!!」

「「か~~ぎや~~!!」」



 空に咲いた大輪の花火を、リリンやワルトと一緒に見上げる。

 表彰式を終えた俺達はお役御免。

 MCに戻ったサチナとベアトリクスが宣言した第二回カラオケ大会を見物するべく、ステージを降りてお祭りを満喫中。

 評価点によって打ちあがる花火が豪華になるシステムにより、耳だけじゃなく視覚的にも幸せになれる素晴らしい催しだ。



「終わり良ければすべて良しだな」

「なんてこというんだい、ユニ。僕らの人生はこれからなのに!!」

「ももふぅ!!」


「おっと悪い悪い、暫くは尻に敷かれてやるから勘弁してくれ!!」



 対外的には損害0で記憶にも残らないという、この上ないハッピーエンド。

 だが、俺達においては、色んな関係性が変化した人生のターニングポイントとなった。


 俺、リリン、ワルト、そしてあの子に関する過去の動機は、殆どが金鳳花による仕込みだった。

 そして、この人狼狐によって清算された現在、誰かに操られていない、それぞれの人生を取り戻したことになる。



「ワルトの見立てだと、金鳳花はもう仕掛けて来ないんだったか?」

「過去の記録もそうだけど、金鳳花アンジュは勝敗に執着しないんだ」


「というのは?」

金鳳花アンジュが珍しくビジネスで負けた時、さっさと損切りして逃げた。なお、仕掛けたのはノウィン様」


「うわぁ」

「未熟だった僕が見ても対抗手段はあったんだけどね。本格的にやりあうと火傷じゃ済まないから、相手がノウィン様だと気が付いた時点で超速攻で逃げて、一切の関わりを断っていたよ」



 どうやら金鳳花は、リスク回避を最優先に行動する性格らしい。

 俺はビジネスには詳しくないが……、一獲千金を夢見て賭けをする奴は、大抵の場合で取り返しのつかない大失態を犯すって聞いた。

 テトラフィーアがサチナに損切の大切さを教えていたように、ビジネスでは大きな利益よりも、損をしない立ち回りの方が重要。

 小さい金額であろうとも最終利益が出ている=商売成功だ。



「金鳳花が継戦を望むなら、僕らも追撃しなくちゃならない。しかも、今度はノウィン様が嬉々として参戦する」

「うわぁ」


「世界経済を牛耳る大聖母+世界政治を掌握した女王+冒険者組合という世界流通を支配する大牧師ぼく。それこそ、関係ない生活基盤からぶっ壊しに掛かる訳で」

「うわぁー」


「そうなったら、サーティーズ以下の貧乏キツネ待ったなし。僕らを嵌めなくても死ぬわけじゃなし、静観しながら別の物語のプロットを練るだろうね」



 やれやれと肩をすくめているワルト。

 戦って困るのは金鳳花だけじゃないと分かっているからこそ、心情的にしたいであろう復讐を我慢しているようだ。


 三系統の最高位権力者が揃っている俺達だが、金鳳花もそれぞれの2番手を押さえている。

 俺達が有利であっても、無傷で勝てるなんてのは甘い考えだ。



「ということで、僕らは晴れて自由の身だ」

「うん?」


「結婚式はいつにする?ユニ」

「ん”!」

「ももふぅるっ!!」



 上目づかいでこっちを見てくるワルトと、横で焼きまんじゅうを頬に詰まらせたリリン。

 どことなく「今すぐ!!」って聞こえた気がするが、やばい、口が空く前に何とかしないと挟撃されるっ!!



「おいおいで良いだろ。みんな覚えていないとはいえ、俺達には心の整理をする時間が必要だろうし?」

「覚悟する時間が欲しいのはユニだけだと思うけどねぇ」

「もっふ、ももっす!!」



 あぶねぇ!!口の水分を吸い上げる焼きまんじゅうで助かった!!

 いつもより飲み込みに時間が掛かっている、チャンスだ!!



「それよりもチラシの福引が楽しみなんだが、昨日のは参加できなかったし。もちろん勝負するだろ!?」

「だから僕にも当たりが分からない様に、抽選会の責任者をカミナとレジェにしたんじゃないか。完全ランダムな抽選機を作ってくれるよ」

「もっふも……ふ。こくん」


「当たった景品の値段が高い奴が優勝、それでいいな?」

「もちろん。思えば、僕の運が悪い時はリリンと一緒に居る時が多かった。騙しているっていう罪悪感が悪さしてたのかも」

「たとえワルトナの運が良くなっても関係ない、勝つのは私!!」



 よし、話題のすり替え完了。

 真の目的を達成した今、くじ引きの結果はそこまで重要じゃないんだが……、どうせなら勝ちたい。



『おっと、カラオケの参加者が途切れちゃったです?』

『告知無しのゲリラ開催だから仕方がないゾ。楽器を取りに行ったっぽい連中がいたし、すぐに来るはずだゾー!!』


『それじゃ、くじ引き大会の方を進める、ですっ!!温泉郷に隠してあるチラシの番号がクジ券になってるです、引き換えは明後日の午前中いっぱいになってるから、注意なのです!!』



 俺達が持っているクジ券はA~Zの24組と、8桁の番号が組み合わさったもの。

 24組×99999999=23億9999万9999枚のクジ券がある訳ではないが、相当な数が用意されているらしい。

 景品はワルトの資本金を湯水のごとく使った豪華仕様だが、全部に当選者を出す仕様ではないとか?


 豪華景品が当たる可能性は0ではない、だが、当たるとも言ってない。

 そんな絶妙なバランスになるように調整されているとは流石だぜ!!



「末賞の当たる確率10分の1だし、そもそも参加費は無料。それで豪華景品が当たる夢まで見られるなんて、お徳だねぇ、既得だよねぇ」

「確かにお得だと思う。ちょっとだけ見たけど、魔導杖や防具、簡易拾得物転送陣ワープナーもあった。どれも1000万エドロを下ることは無い!!」


「使うかどうか微妙で保留していた僕個人のコレクションからも何個か出したよ。リリンと冒険して手に入れた思い出の品」

「……どれ?」


「盗賊に誘拐された宝石商の娘の宝石とか」

「ローズハーブを助けた時の?あの大量の宝石は確かにきれいだった!!」



 思い出の品というか、おぉ、ひでぇ……の品な気がするのだが、考えすぎか?

『盗賊に誘拐された宝石商の娘ローズハーブを助けた時』までは美談なのに、『の大量の宝石』がワルトのコレクションに加わっているのが謎過ぎる。



「謝礼として貰ったんだよな?」

「ゆすって?」

「奪った!!」


「おい、やってることが盗賊と同じだぞ」

「ローズハーブから奪ったのではない!!」

「盗賊の所有物は討伐者に所有権が移るって仕組みでね。ならず者同士を潰し合いさせる為に、僕が推し進めた冒険者ルールさ!!」



 なるほど、確かに納得のできる話だ。

 盗賊は警察、冒険者、そして同族から狙われ続けるから、一気に数が減っていく。

 そして、リリンとワルトが荒稼ぎできる程、潤沢に盗賊が居るのは、その法律自体が出来て間もないからか。


 要するに、ワルトが小遣い欲しさに作った法律。

 流石は金鳳花の弟子、10歳の時点で思考回路が魔王級。



『よっしゃ、さっそく行くです!!サモンウエポン=抽選機!!』



 テンション高めなサチナが魔法陣を構築、出てきた巨大液晶をベアトリクスが担いで台に乗せた。

 リモコンで操作するタイプなようで、景品が次々に紹介されている。



『で、サチナ。どういう感じでやるんだダゾ?』

『賞品を紹介しながらテキトーにやっていくです!!じゃ、末賞の発表~~です!!』


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