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第223話「お祭り幸七・後夜祭④」

「テトラフィーアの件はこのくらいの雑さで良いとしてぇ……」



 雑に処理されたくないんだが?

 というか、指輪を渡すと解決するってのが謎過ぎる。


 ……。

 …………。

 …………………いやまさか、どっかのタヌキ首輪みたいに俺の心が読めるとか言わないよな?



「リリン?ワルト?」

「ん!私達は一心同体!!」

「同体にはなってないねぇ、しいて言うなら一蓮托生だねぇ」



 え、あ、うん?

 ……や、やっちま……。


 いやいや、やらかしては……、無い。

 別に、俺が誠実な考えをしていればいいだけだし?

 リリンもワルトも美人だし、愛嬌もあるし、飯も美味そうに食うし。

 二人、テトラフィーアを含めれば三人も俺のことを好きだって言ってくれるなんて贅沢な話だし?


 お手柔らかにお願いします。

 なにとぞ、魔王のごとき寛大なお心を期待しております。

 切実に。本当に。



「ということでワルトナぁ。一旦、余からの追及はこのくらいにしてあげるわ」

「そりゃどうも。そうだ、これだけはちゃんと言ってくよ。ごめんね」


「ふっ、浅い謝罪ねぇ。ま、余以外の賠償も控えているしねぇ?」

「次はサチナだね。今はどこにいるだい?」

「運営本部にいるよん」



 一歩下がった位置から様子見していたレラさんは、絶対視束アルゴリュートを使って情報収集をしていたっぽい。

 サチナの近くにはホロビノが控えているものの、警戒するに越したことはない。



「あぁ、ローレライ……様?と呼んだ方が良いかな」

「呼び捨てにしてね。おねーさん無駄に敬われるの好きじゃないからさ」


「じゃ、お言葉に甘えて。ローレライ、レジェンダリアの革命の件も金鳳花の仕業だと思う。ひいては僕のせいだ。ごめん」

「愚王も無色の悪意を持っていたんだろうねー。それで?」


「特に何も。恨みも後腐れも縁故もない、ビジネスライクな関係。それが僕の理想かな」

「ふーん?おねーさんの頼みも報酬次第で受けてくれるんだ?」


「もちろん、友人割引も可能だよ」

「にゃは!流石レジィの友達、コミュ力満点じゃん!!」



 おぉ、レラさん的にはグッドコミュニケーションだったらしい。

 俺的にも二人の関係が険悪だとやりづらいし、良いことづくめだぜ!!



「テトラフィーアほどじゃないにせよ、僕もサチナに警戒されているかな?」

「大人びていると言っても、まだ8歳だものねぇ。子守りが得意なメナファスにアドバイスを貰うのが良いんじゃないかしら?」


「いや、小細工なしでちゃんと謝るよ。行こうか」



 **********



「ん、サチナ!!」

「主様っ!!」」



 温泉郷の運営本部事務所に付いた俺達は、20数名の大人に囲まれているサチナを見つけた。

 彼らは温泉郷に常駐しているサチナの右腕。

 各部門の責任者たちが集まり、今後の方針を話し合っていたようだ。



「やぁ、皆様、お揃いで。温泉郷の共同出資者の大牧師・ラルラーヴァーです」

「「「!!」」」


「少し、サチナとプライベートな話がしたいんだ。10分程度の時間を頂けるかい?」



 温泉郷の総支配人はリリン。

 だが、旅をしている名ばかり社長であり、通常時の最高責任者の席にはサチナが座っている。

 そして、運営顧問とアドバイザーをテトラフィーアが担っていた。

 大陸間戦争で忙しいレジィやワルトは、娯楽要素が強い温泉郷の運営からは手を引いていたらしい。


 だが、全く権力が無い訳じゃない。

 温泉郷の発足時の資本金は、ワルトとレジィ、それに大聖母ノウィンの3名が出資。

 街並みはカミナさんのデザイン、そこには、大衆娯楽に詳しいメナファスの意見がふんだんに取り込まれている。


 そんな訳で、ワルトは温泉郷においては筆頭株主のような存在。

 責任者と言えど、雇われ従業員である彼らは魔王の悪辣微笑に頷くしかできない。



「迷惑を掛けたね、サチナ」

「なんか用か……ですっ!!」


「謝罪と弁明をしたくてね。ここからは嘘を吐かないし、騙しもしない。許す許さないは別として、素直に聞いて欲しいんだ」



 そんな前置きの後、ワルトが事情を語り始めた。


 ワルトの本当の名前はワールドトナー、俺やリリンと一緒に居させるために金鳳花が仕込んだ存在だということ。

 リリンの故郷の滅亡、レジェンダリア革命、世界戦争、それらはワルトを育てる為の舞台として、金鳳花が用意したこと。

 そして、ワルトは村長ホーライの話を聞いたことで、自分が無色の悪意を持っていると気が付き、絶望したこと。


 簡潔に語られる言葉は、サチナ以外にも向けられている。

 当然、その中には俺も……、いや、俺にこそ聞いて欲しかったのかもしれない。



「無色の悪意は、一定以上の欲望を抱いた瞬間に発芽することが多い。だからたぶん、テトラフィーアが野心を抱いたのはレジェが敗北して死んだ時だと思う」

「……じゃあ、最初っからサチナを騙そうとしていた訳じゃないです?」


「最後まで騙すつもりはなかったんじゃないかな。舞台が人狼狐というゲームだったから、ルールに従いサチナを吊っただけ」

「遊び、です?」


「そう、遊びは友達とするものさ。最終的に負けたテトラフィーアは悔しがるだろうけど、君のことを嫌いにはならないよ」



 ワルトが出した結論を聞いて、サチナが息を飲んだ。

 クリクリな目を丸め、そして、力を抜いて笑う。



「そっか。少し安心した、です」

「安心?」


「サチナだって分かっているです。大臣の目的はゲームに勝つことで、サチナの排除じゃないって」

「じゃあ、何がキミをそんな顔にさせているのかな?」


「まんまと策に嵌ったサチナが未熟だった。だから、恥ずかしいだけ、ですっ!!」


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