表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1318/1327

第221話「お祭り幸七・後夜祭②」

「おじいちゃん!!フランクフルト2本、やきそば1つ、たこ焼きも!!!」

「サヴァンーー注文入ったよー、イカフライ、てんかす、温玉、ネギマシ、海老2、特盛でー」



 ……。

 …………。

 ………………いや、だから何やってんだよ、お前ら。

 随分と大盛況じゃねぇか?えぇ?



「レジィ、一応聞くんだが……、あの魔王共、喧嘩してたよな?」

「喧嘩というか、仁義なき女の戦いねぇ。タヌキすら食べない醜い争いよぉ」


「だよな。で、俺はどうすればいいと思う?」

「たこ焼きでぇ」

「じゃ、おねーさんはフランクフルト」



 ……買いに行って来いってか?

 くっ、ここで下手に出ておくのも生存戦略の内か。



「よ、リリン!!美味そうだな!!」

「ん、いらっしゃい!!何にする!?」


「たこ焼きとフランクフルト。あと、事情聴取を大盛りで」

「分かった!!」



 何食わぬ顔で行列に並び、無事に到着。

 ツッコミ欲求を表に出さない様に抑えつつ、頼まれたお使いも無事にクリア。


 あ、エプロンを付けたセフィナとゴモラが厨房に入って行った。

 お前ら、これ以上の混沌を生み出すなよ。

 絶対だぞ、俺にも許容量ってもんがあるんだからなッ!!



「おねーちゃん!!何すればいい!?」

「セフィナ!?焼きそば焼いて、あと、唐揚げの下ごしらえも!!」


「任せて!!」



 的確な指示を受けたセフィナが、ガスコンロに巨大鍋3つをセット!!

 一つに油を引いて焼きそばの具を投入、真ん中の鍋で溶き卵と小麦粉に鶏肉を絡める!!

 そして、最後の鍋にゴモラがバターをぶち込んだァァッ!!



「すげぇ、瞬く間に焼きそばと唐揚げが出来上がっていく」

「ユニク、お待たせ!!」


「おう、滅茶苦茶いい匂いだぜ!!」



 満面の笑みで差し出された焼きそばとフランクフルトを抱えつつ、レジィが取っていた席に移動。

 なお、俺の注文『事情聴取』は無視された模様。



「ほらよ」

「リリンはぁ?」


「逃げられた」

「使えないわねぇ。いいわ、余がお手本を見せてあげるぅ」



 そう言って、ワルトナのうどん店に向かう大魔王陛下。

 そのままハイヒールを打ち鳴らし、行列の視線を掌握する。



「退きなさい」



 うわぁ。雲の子を散らすように一斉にいなくなった。

 すげぇ、これが支配声域を使った全力の大魔王営業妨害か。



「ねぇ、ワルトナァ、一体何をしているのかしらぁ?」

「復興支援だねぇ」


「滅ぼそうとしたの貴女でしょぉ」

「ちゃんと罪悪感を感じているとも。だからほら、うどんだって無料だし」



 そう言って、黄緑色のうどんを手渡してくるワルト。

 ふっ、もたれた胃にすだち風味のうどんが染み渡るぜ!!



「出頭を命じるわぁ」

「しょうがないねぇー。サヴァン、ちょっと行ってくるよ」



 ワルトの顔色を見る限り、リリンと喧嘩中って事はなさそう。

 とりあえず一安心だが……、俺の戦いはこれからだ。



「結果から言うと僕はリリンに負けた。だけど……、おっと、店は良いのかい?リリン」

「セフィナとおじいちゃんに任せて来た!!」


「そうかい。それじゃ、メンバーも揃った事だし座談会でも始めようか」



 座談会ってくらい気楽に話せたら良いんだが……、大魔王陛下の額がビキビキと音を立てている。

 一方、リリンもワルトも機嫌が良さそう。

 これは……、俺が思っていたよりもハッピーエンドを迎えたって事で良いのか?



「言いたいことが山ほどあるのだけれどぉ、まずはそうねぇ……、二人とも、お洒落な指輪をしているじゃなぁい?」



 ……指輪だと?

 リリンとワルトの手を見てみると、なんか見覚えがある気がする金色の指輪が付けられていた。

 すんげぇ、トンデモネェ場所ゆびに。



「あぁ、これはね、なんていうのかな……、リリンの熱烈なアプローチに負けてしまってね……、えへへ」

「そう!勝利の報酬として、私はワルトナの人生を貰い受けた!!これからはずっと一緒!!」


「へぇー。そうなのぉ。結婚したのぉ。おめでとぉ」



 なるほど、俺を巡った大魔王戦争の結果、リリンが勝利。

 そのままマウントを取る為に、言い逃れできない証拠として指輪を贈って結婚。

 法的事実まで念入りにブチ転がすという、想定の斜め上を爆破した素晴らしいハッピーエンドを迎えた訳だ!!


 ……。

 …………。

 ………………恋人同士で結婚したら、俺がボッチになるんだがッ!?!?



「いや、ちょっと待て、どうしてそんなこ――」

「あ、ユニクにも渡さないと。はい!!」


「……。おう!ありがとな!!」



 左手の薬指に添えたリリンの右手の中に、金色の指輪が生成された。

 形状はワルトが付けている物と同じで、宝石の色が赤か青かの違いがある。


 そして、平均をやや超えた満面の笑みで、俺に指輪を差し出すリリン。

 パッと見た感じ、俺がホーライの店で買ってきた指輪だと思うんだが……、うん、そんな堂々と複製されると笑うしかねぇな!!



「ユニク、付けて欲しい!!」

「左手の薬指……、って事で良いんだよな?」


「そう!!」



 結婚指輪(偽造)を手に血迷っていると、4つの視線が俺に突き刺さった。

 満場一致で『覚悟を決めろ』という圧力に……、えぇい!!男を魅せろ、俺ぇぇぇッ!!



「ほら、付けたぞ」

「よし!これでユニクも私のもの!!」



 ……。これで良いんだよ、な。

 なんかカッコ良さの欠片もない愛の告白だが、結果だけ見れば想定内だし?

 あれだけの大事件があった後だし、これくらいサラっとしていた方が、逆に……。



「あ、付けたねぇ」

「付けたわねぇ」

「付けちゃったね」

「ヴィギルーン!!」



 不安を煽って来るじゃねぇよ、魔王共ォォォッ!!

 そんで、ここぞとばかりに戻ってくんな、ニセタヌキィィィイイ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ