第221話「お祭り幸七・後夜祭②」
「おじいちゃん!!フランクフルト2本、やきそば1つ、たこ焼きも!!!」
「サヴァンーー注文入ったよー、イカフライ、てんかす、温玉、ネギマシ、海老2、特盛でー」
……。
…………。
………………いや、だから何やってんだよ、お前ら。
随分と大盛況じゃねぇか?えぇ?
「レジィ、一応聞くんだが……、あの魔王共、喧嘩してたよな?」
「喧嘩というか、仁義なき女の戦いねぇ。タヌキすら食べない醜い争いよぉ」
「だよな。で、俺はどうすればいいと思う?」
「たこ焼きでぇ」
「じゃ、おねーさんはフランクフルト」
……買いに行って来いってか?
くっ、ここで下手に出ておくのも生存戦略の内か。
「よ、リリン!!美味そうだな!!」
「ん、いらっしゃい!!何にする!?」
「たこ焼きとフランクフルト。あと、事情聴取を大盛りで」
「分かった!!」
何食わぬ顔で行列に並び、無事に到着。
ツッコミ欲求を表に出さない様に抑えつつ、頼まれたお使いも無事にクリア。
あ、エプロンを付けたセフィナとゴモラが厨房に入って行った。
お前ら、これ以上の混沌を生み出すなよ。
絶対だぞ、俺にも許容量ってもんがあるんだからなッ!!
「おねーちゃん!!何すればいい!?」
「セフィナ!?焼きそば焼いて、あと、唐揚げの下ごしらえも!!」
「任せて!!」
的確な指示を受けたセフィナが、ガスコンロに巨大鍋3つをセット!!
一つに油を引いて焼きそばの具を投入、真ん中の鍋で溶き卵と小麦粉に鶏肉を絡める!!
そして、最後の鍋にゴモラがバターをぶち込んだァァッ!!
「すげぇ、瞬く間に焼きそばと唐揚げが出来上がっていく」
「ユニク、お待たせ!!」
「おう、滅茶苦茶いい匂いだぜ!!」
満面の笑みで差し出された焼きそばとフランクフルトを抱えつつ、レジィが取っていた席に移動。
なお、俺の注文『事情聴取』は無視された模様。
「ほらよ」
「リリンはぁ?」
「逃げられた」
「使えないわねぇ。いいわ、余がお手本を見せてあげるぅ」
そう言って、ワルトナのうどん店に向かう大魔王陛下。
そのままハイヒールを打ち鳴らし、行列の視線を掌握する。
「退きなさい」
うわぁ。雲の子を散らすように一斉にいなくなった。
すげぇ、これが支配声域を使った全力の大魔王営業妨害か。
「ねぇ、ワルトナァ、一体何をしているのかしらぁ?」
「復興支援だねぇ」
「滅ぼそうとしたの貴女でしょぉ」
「ちゃんと罪悪感を感じているとも。だからほら、うどんだって無料だし」
そう言って、黄緑色のうどんを手渡してくるワルト。
ふっ、もたれた胃にすだち風味のうどんが染み渡るぜ!!
「出頭を命じるわぁ」
「しょうがないねぇー。サヴァン、ちょっと行ってくるよ」
ワルトの顔色を見る限り、リリンと喧嘩中って事はなさそう。
とりあえず一安心だが……、俺の戦いはこれからだ。
「結果から言うと僕はリリンに負けた。だけど……、おっと、店は良いのかい?リリン」
「セフィナとおじいちゃんに任せて来た!!」
「そうかい。それじゃ、メンバーも揃った事だし座談会でも始めようか」
座談会ってくらい気楽に話せたら良いんだが……、大魔王陛下の額がビキビキと音を立てている。
一方、リリンもワルトも機嫌が良さそう。
これは……、俺が思っていたよりもハッピーエンドを迎えたって事で良いのか?
「言いたいことが山ほどあるのだけれどぉ、まずはそうねぇ……、二人とも、お洒落な指輪をしているじゃなぁい?」
……指輪だと?
リリンとワルトの手を見てみると、なんか見覚えがある気がする金色の指輪が付けられていた。
すんげぇ、トンデモネェ場所に。
「あぁ、これはね、なんていうのかな……、リリンの熱烈なアプローチに負けてしまってね……、えへへ」
「そう!勝利の報酬として、私はワルトナの人生を貰い受けた!!これからはずっと一緒!!」
「へぇー。そうなのぉ。結婚したのぉ。おめでとぉ」
なるほど、俺を巡った大魔王戦争の結果、リリンが勝利。
そのままマウントを取る為に、言い逃れできない証拠として指輪を贈って結婚。
法的事実まで念入りにブチ転がすという、想定の斜め上を爆破した素晴らしいハッピーエンドを迎えた訳だ!!
……。
…………。
………………恋人同士で結婚したら、俺がボッチになるんだがッ!?!?
「いや、ちょっと待て、どうしてそんなこ――」
「あ、ユニクにも渡さないと。はい!!」
「……。おう!ありがとな!!」
左手の薬指に添えたリリンの右手の中に、金色の指輪が生成された。
形状はワルトが付けている物と同じで、宝石の色が赤か青かの違いがある。
そして、平均をやや超えた満面の笑みで、俺に指輪を差し出すリリン。
パッと見た感じ、俺がホーライの店で買ってきた指輪だと思うんだが……、うん、そんな堂々と複製されると笑うしかねぇな!!
「ユニク、付けて欲しい!!」
「左手の薬指……、って事で良いんだよな?」
「そう!!」
結婚指輪(偽造)を手に血迷っていると、4つの視線が俺に突き刺さった。
満場一致で『覚悟を決めろ』という圧力に……、えぇい!!男を魅せろ、俺ぇぇぇッ!!
「ほら、付けたぞ」
「よし!これでユニクも私のもの!!」
……。これで良いんだよ、な。
なんかカッコ良さの欠片もない愛の告白だが、結果だけ見れば想定内だし?
あれだけの大事件があった後だし、これくらいサラっとしていた方が、逆に……。
「あ、付けたねぇ」
「付けたわねぇ」
「付けちゃったね」
「ヴィギルーン!!」
不安を煽って来るじゃねぇよ、魔王共ォォォッ!!
そんで、ここぞとばかりに戻ってくんな、ニセタヌキィィィイイ!!