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第201話「慶弔の神楽舞い④」

「愛嬌あるわねぇ、へび」

「だろ?ちなみに逃げ足、くっそ速かったぜ!!」



 ちょろと出てきて暴言を吐いて帰りやがった、あんちくしょうのヘビだが……、どう考えても幾億蛇峰・アマタノだよなぁ?

 その証拠に、ギンが腹を抱えて笑ってる。



「様子を見るにぃ、アマタノって事でいいのかしら?」

「そうでありんす。まぁ、こんだけ森が荒れれば出てくると思っていたなんしが……、尻尾を巻いて逃げだす様まで想定どうりでありんした!」



 幾億蛇峰・アマタノと言えば、リリンと勉強した時に話に上がった超ド級の皇種。

 その時は絶対に出会いたくねぇと心の底から思ったもんだが……、今はリベンジマッチに燃えてるぜ!!


 ほぼコメディと化していた戦闘だったが、冷静に考えてみると、やられた事が滅茶苦茶やべぇ。

 被っていた皮のせいで破壊値数を見誤るわ、皮と本体の間に次元の権能を駆使した絶対防御バリアーが仕込まれてるわ、グラムでも破壊に時間が掛かった移動制限デバフをぶっかけてくるわ。


 なお、他の皇種にも言える事だが、その種族が持つあらゆる生態を無条件で行使可能。

 ベアトリクスなら色んなクマ魔法陣を使い放題。

 それをヘビに置き換えると……、毒を始めとする状態異常のオンパレードだ。



「ちょっといいか?ユニクルフィン」

「ん?あぁ、リリンの師匠の?」


「アストロズだ。さっきのヘビには見覚えがある。ちぃっとばっかし小さい気もするが、奴は膨らんだり縮んだりするからなァ」

「あの感じだと5倍……、太さ100mくらいにはなりそうだな」


「で、だ。あれは倒せると思うか?リリンサの話だと、お前ならいけるって言っていたが」



 詳しく聞くと、リリンは最初、アマタノを攻略可能だと言ったらしい。

 だが、チィーランピンに出会ったことでアマタノの評価を見直し、格上の化物扱いしたとか?

 チーランピン 〉 帝王枢機を出していないクソタヌキーズらしいが……、俺の主観でも、アマタノの方が強い。



「たぶん木星竜やエデン、サチナと同格だと思うぞ」

「通常攻撃が全体攻撃で即死攻撃のバカドラゴンと同格か。バカじゃねーのか?」


「実際、そこん所どうなんだよ、ギン。アマタノって強いのか?」



 俺自身はサチナ達の戦いを見ていただけで、直接戦ったわけではない。

 だが、ホロビノに労いのおにぎり(大葉みそスイカ味)を食わせているサチナを見た感じだと、肉体の性能はあっちに軍配が上がる。

 権能の強さはサチナの方が上、だが、熟練度は……、そう考えると、いい勝負になりそうだ。



「くっくっく、あ奴が本気を出せば……、相手の方が先に死ぬでありんしょう」

「妙な言い回しだな?」


「ヤバいと思った瞬間、あ奴は本気で逃げ回るなーんし。結果、戦いを挑んだ相手は寿命で死ぬ。歴史に刻まれてきた公然たる事実でありんす!」



 なんて不甲斐ない勝ち方なんだ。

 どっかの村長みたいな生き様しやがって。



「まぁ、目下の脅威は去った訳だしぃ、愛嬌のあるヘビなんて放っておけばいいわぁ」

「そうは言うが、蛇峰戦役が近いつー話だろ?」


「それ、ワルトナのサブブランだと思うしぃ、後でどうとでもできるから大丈夫ぅ。それよりも……、諸悪の根源、金鳳花の方が重要だわ」



 一応、俺がグラムを見せつけたせいで、これ以上の蛇の介入は無いらしい。

 結果だけ見れば上々なんだが、なんかイマイチ釈然としない。



「金鳳花、数千年前から生きてる裏の支配者か。想像しかできないけど、かなり手強そうだよな」



 サチナの暴れ……、戦いを見て、キツネの戦闘力を甘く見る奴はいない。

 ましてや、金鳳花は130体の皇種を手玉に取った奴だ、サチナ以上の武闘派と考えるのが妥当……、ん?



「どうした?サチナ」

「金鳳花姉様は……、運動音痴うんちなのです」


「……は?」

「ホロビノの記憶を見たです。運動神経がよわよわなので、戦いには参戦しねーと思うです」



 ……。

 …………。

 ………………なにその、クソ設定。

 流石に無茶があ……、白銀比も肩を空かしているな?



「え、ちょっとぉ……、白銀比様ぁ?」

「まぁ、事実なんしな。あの子も頑張ってるようなんしが……、伝え聞いた話によると、精々、サーティーズくらいの実力しかないでありしょう」


「うわぁ、マジで運動音痴うんちじゃなぁい」



 世界頂上決戦レベルの戦いが繰り広げた後の最終戦が、そこらの冒険者レベルってどうなんだよ。

 俺やレラさんなら文字通り瞬殺。

 魔王共が群れれば余裕で圧勝、なんだったら、タヌキを1匹派遣すればKOだ!!



「金鳳花の時の権能の扱いは、兄弟の中でも抜きん出て上手い。それこそ、わっちよりもでありんす」

「認識阻害特化ってことか?」


「それもありんすが、世界の記憶を利用した自己蘇生手段を生み出しているなんし。そこのタヌキ共が苦々しい顔をしているのが証拠でありんす」



 セフィナの足元でごろ寝していたゴモラが、やる気なさそうに尻尾を振り上げた。

 ぶんぶんと振り回しているのは肯定だからか?



「ゴモラがね、金鳳花は無色の悪意の発生システムを利用して蘇れるって」

「無色の悪意のシステムぅ?それって、カラレスハートを持つ者が死んだ場合、他の生物に乗り移るってやつよねぇ?」


「うん、確実に殺した後に別の地域で発見したって。その時間は最短で12時間、だって」



 無色の悪意の本体であるカラレスハートは、リリンの先祖の七賢人、カーラレス・リィンスウィルの魂を神が変質させたもの。

 物語を生み出し続ける舞台装置、それはつまり、俺達生物とは別次元の世界ルールと呼ぶべき存在だ。



「色々と思う所はあるけれどぉ、直接介入の可能性が薄いってだけで朗報ねぇ」

「薄い?無いじゃなくてか?」


「不死性を有しているなら、相打ち前提の自爆特攻が使えるものぉ。ただし、神の眼を持つロゥ姉様に見つかれば、ゲームエンド。何もなせずに抹殺できるわぁ」

「レーヴァテインか!」


「そう。サチナや紅葉がクリスタル化したって事は、似たような仕組みのレーヴァテインも効くはず。そして相手もそれが分かっている以上、ここには来れない。……このゲームは余達の勝利。あとは」

「リリンとワルト……、か」



 リリンとワルト。

 もしも二人に配役があるのなら……、両方ともが主人公だろう。


 何もかも分からぬまま運命に翻弄されたリリンと、運命が何か分かった上で暗躍したワルト。

 光と影、陽と陰、善と悪。

 相反する立場だからこそ、願いと希望が混じり合う真の結末トゥルーエンドは二人で見つけるしかない。



「心配かしら?」

「いや、大丈夫だ」


「くすくすくす、余も同意見。ということで、今日最大の見せ場が来たわねぇ、ユニクルフィィン?」

「俺は信じてるぜ、仲裁することなく、二人でいい感じな決着をつけてくれるってなぁ!!」


「そこは疑ってないわよ。でもねぇ、男を奪い合った女が和解した場合、その矛先って何処に向くのかしらぁ?」

「……。ラスボスは魔王×2か。ヘビより手強いのは間違いないねぇな!!」


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