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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第167話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-キツネside②」

「ならば、わっちにも参加の資格はありんしょうな?」



 ゆっくりと嚙みしめるように発せられた声が、張りつめた空気に反響する。

 この場にいる誰しもが、次の一言が今後の命運を握ると分かっている。

 そしてそれを切り開くのは、運命掌握・レジェリクエの役割だ。



「くすくすくす……」

「何がおかしいなんし」


「遊戯の皇を遊びに誘わないなんて、不敬以外の何者でもないって思ってねぇ」



 支配声域を持つレジェリクエであるからこそ、他者の感情を掌握する技術を軽視しない。

 最も効果が高いタイミングで能力を打ち込むからこそ、レジェリクエは支配者の名を欲するままに手に入れている。


 怒りが頂点に達するまでの時間は約6秒。

 楽しいという感情を共感させる笑い声で時間を稼ぎ、最も適切な答えを探す。

 そうして出来上がった思考、それは、『この白銀比は本物なのか?』だ。



「こんなにも大規模な遊びだものぉ、白銀比様にもご参加頂きたく思っているわぁ」

「御託はよい、何が起こっているのかを詳らかにするなんし」


「そう簡単には答えられないわねぇ。余はこの遊戯に真剣に取り組んでいる。敵味方の判別がつかない相手を、無条件で信用できないわぁ」



 この場にいる殆どの者にとって、レジェリクエの言葉は嘲笑や当てつけにしか見えなかった。

 まったく感知されずに数十名の命を同時に奪い、蘇生させた。

 時を止めたとしか思えない所業に暴挙を叩きつけたレジェリクエが、優雅で深い笑みを零す。



「知恵者か、はたまた痴れ者か。この白銀比を疑うとは大きく出たなんしなぁ?」

「ワルトナとテトラに裏切られたからねぇ。嫌でも慎重になるでしょう?」


「ほぉ、両翼を捥がれた蝶か。踏みにじりたくなるでありんす」



 今回の下手人を報告して責任を擦り付けつつ、目的の為に言葉を重ねる。

 そして、僅かに弛緩した空気に、ありったけの支配声域かみのこえを混ぜ。



「くす。あなたも様子見をしているのは分かっているわぁ。余達の首で、脳内に刻まれたルールを試したのでしょう?」

「死した者はクリスタルと化し、キツネの接触で生き返る。ルール自体はシンプルでありんすが……、サチナにつまらぬ入れ知恵をしたのは、お前さんでありんしょう?」


「つまらないかしら?」

「この仕組みに抜け道があると言ったら、さぞ、愉快な顔をするでありんしょうなぁ?」



 サチナが絶対不可侵を宣言したルールに綻びが存在する。

 それは致命的な欠陥であり、致命的なブラフでもある。

 これは、話を聞いて罠に掛かるか、無視をして挽回のチャンスを逃すかという、悪魔の二択。


 心理戦の嗜み。

 それは古来より、ゲームを愛する者のマナーだ。



「興味深いお話ね。死ねば無色の悪意の影響から解放されると言うけれど、余は、それが間違いだと知っている。他ならぬ白銀比様の言葉よ」

「確かに紅葉と紫蘭は心の臓を止めた。他ならぬわっちの手によってな」


「その時に白銀比様はこう仰ったわ『金鳳花によって、何度も無色の悪意の汚染が行われていた』と。それは、時の権能単体では無色の悪意を取り除けないという証明でしょう」



 時揺れのクリスタル+命の権能による魂の捕縛。

 この組み合わせを解除できるのは、この世界でただの一匹、サチナのみ。



「いちいち鼻につく小娘でありんすな」

「この程度の揺さぶりに反応するのねぇ?」


「あぁ、臭くて叶わぬでありんす、立ち上る血の、なんとも言えぬ生臭さよ」



 血が滴る指を口の添え、眉をひそめて、口角を上げる。

 白銀の九尾の下にうずくまるは最愛の――、姉。

 ピクリとも動かない亡骸から、とめどなく、赤い命が零れ出て。



「ロゥ姉様っ!?」

「呼吸も心の臓も止まり、肉体と魂の接続も切れておる。どこをどう見ても死んでおるようにわっちは思うが……、クリスタルにならないとは、これ如何に?」


「何を、したのかしら?」

「無礼者に罰を与えただけでありんしょう?」



 絶対に失えないレジェリクエが天窮空母という目立つ場所に陣取った理由。

 それは、発見が不可能なキツネをあぶり出す為に他ならない。


 認識阻害のスペシャリストである金鳳花は、数千年の間、誰にも捕まったことが無い。

 そんな存在を倒す唯一の方法は、自発的に正体を現した瞬間を狙う奇襲しかない。

 だからこそレジェリクエは自らを囮にすべく、微妙な戦力のみを集めて身を固めることで、ローレライの奇襲のお膳立てをしていたのだ。



「悪くない戦略でありんした。レーヴァティンの封印は神殺しの中で最も対策がしづらい。わっちを殺す理に叶ってるなんし」

「答えなさい。ロゥ姉様に何をした?」


「だが稚拙。来ると分かっている奇襲ほど、容易いものはないでありんす」

「答えろって、いっているのよッ!!」



 壱切合を染め伏す戒具を翳したレジェリクエが、咆哮と共に駆け抜ける。

 両手に飾る二本の剣、それが向かう先は――、敗北。



「かっ……」

「このルールは、勝手に死んだ者には適応されないでありんす。死ぬギリギリの傷を負わせて放置するなどして、攻撃で死んだという認識から切り離されれば、無様な死体が出来るだけなーんし」



 なによそれ、そんなものルール違反も甚だしいじゃない。

 途切れ逝く意識で最後に見たのは、世界で6番目の階級。

『極』色万変、白銀比。



 **********



「レジィ!」

「……おはよう、ロゥ姉様。ここが天国であってるかしら?」



 最愛の姉の膝枕を堪能しながら、レジェリクエが甘えた声を出す。

 外見に似合う仕草で頬をこすりつける姿は、まさに姉妹の触れ合いだ。


 そんな光景へドン引きな視線を送っている者は幸せ者。

 そして最も不幸なのは、白銀比のご機嫌取りをさせられているエアリフェード達とナインアリアだ。



「レジィちゃん、目が覚めたんでありますね!?早くこっちに来てごめんなさいするでありますーーっっ!!」

「あと30分くらい頑張れるかしら?今はエネルギー充填中なのぉ」

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