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第160話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-ユニクルフィンside①」

「ラグナとワルトが敵か……、はっ、頭がぐるげー!しそうだぜ」



 まったく、もう……、ただでさえ面倒な状況なのに、俺の頭の中はぐっちゃぐちゃだ。


 村長をハメた狐、金鳳花の襲来。

 最終目的は『神に物語を奏上すること』。

 だが、その物語のタイトルが何なのかがイマイチ分からない。


 敵の主役は、ワルトナ・バレンシア。

 ワルトの目的は俺、そして、あの子を手に入れること。

 その為の試練として、『蟲量大数との決着』と、『あの子の復活』がある。

 そしてこの人狼狐は、その両方を満たすために起こしたはずだ。



「ヤンデ・リリンが可愛く見えるレベルのやらかしだが……、俺はお前を信じるぞ。ワルト」



 思い出してみれば、ワルトは全てを放り出して逃げようとしていた。

 神が楽しみにしている人狼狐の発生自体は避けられない。

 だが、人狼における『恋人』の勝利条件の中に、恋人同士が生き残るというものがある。

 だからこそ、初めからリリンを追い出し、俺を連れて外に出る事で、狐や仲間の存命とは関係ない形の勝ちを狙っていたのだとしたら?



「ちっ、ごちゃごちゃ考えすぎるのも問題だな。どうしても、俺に有利な結論になっちまう」

「楽観など毒にしかならんからな。なにせ、タヌキが嬉々として仕掛けてくる」



 俺にだって情はある。

 これが愛情なのか友情なのか分からないが、全部が終わった後で、まるごと抱きしめてやるくらいの度胸が必要なのは間違いない。

 その為の訓練として、まずはお前の攻略からだ、ラグナガルム。



「随分と余裕があるんだな。ラグナ、それと紅葉くれはっつったか?」

「ゲームは始まったばかり。焦るには早すぎだよ!!」



 俺達が温泉郷の外に出てきた瞬間、紅葉を背中に乗せたラグナは森の中へ身を潜めた。

 現在の戦いの主舞台は大空。

 巨大な鳥と魚、そして、リリンにブチ転がされたらしい皇種と戦うエゼキエル騎士団という、カツテナイ・ロボアクションファンタジーが繰り広げられている。

 それを安全に鑑賞する為に森に逃げ込んだんだろうが……、マジギレ・サチナの暴虐により、安全地帯であるはずの森が死地に早変わり。

 木星竜が叩きつけられて大地震が起こるわ、その衝撃で木々や岩石が飛び交っているわ、空からクリスタルが降り注ぐわ……、そんなこんなで逃げ惑っていた駄犬を探すのは非常に簡単なお仕事だった。

 めっちゃ光るから、すっげぇ目立つ。



「始まったばかり……、か。サチナがルールを更新して仕切り直しになったもんな」

「かわいい妹の頼みだよ、聞いてあげなくちゃ」


「そうか、その割には苦々しい顔してるけどな?」



 紅葉の視点では、せっかく準備した遊びの上書きだ。

 将棋をしようと思って駒を並べていたら、横からチェス駒を叩きつけられたようなもんで、腹が立つのは間違いない。

 だが、不服に思いつつも癇癪を起さない程度には理性があるらしい。



「詫び代わりと言っちゃなんだが、真っ当に氷鬼で遊んでやるよ」

「はぁ?」


「ぶっちゃけ、今すぐ殺すこともできる。ラグナはともかく、お前は大した身体能力じゃねぇだろ?」

「それは……」


「そもそも俺はラグナにも勝ってる。背中に重りを背負ってない、万全の状態のラグナガルムにな」



 ラグナは光速で移動できるが、背中に誰かを乗せている時は超音速まで落ちる。

 光速を発揮できるのは、体を光粒子へと置き換えているからで、紅葉にそれは適用できない。

 そうなると純粋な筋力で動かなければならず、途轍もなく弱体化する。



「ラグナの速度にキツネの認識阻害を組み合わせて、ようやく俺達に対抗できる。ワルト辺りにそんなことを言われたんじゃないか?」

「う、うるさい!!ゲームマスターの俺に向かって言葉が過ぎるぞ!!」



 俺がこんな提案をしているのは、さっさと決着を付けると不都合が発生すると、レジィやレラさんに教えて貰ったからだ。

 リリンVSワルト、サチナVS木星竜、この戦いの両方が終わった後で紅葉を捕まえるのがベスト。

 先に紅葉を敗北させていると、万が一、リリンやサチナが負けた時に勝敗が確定し、ゲーム終了。

 それ以降の挽回が出来なくなる……、そんな可能性を示唆されりゃ、俺だって慎重になる。


 結論、俺がやるべきことは二つ。

 一つは、紅葉とラグナガルムを自由に行動させない様に見張り、動きをコントロールすること。

 そして、森に隠れている皇種共を片っ端から殲滅することだ。



「実は俺も鬼ごっこが好きでな。久しぶりにガチでやりたい」

「そうなの?」


「昔は結構やってたんだよ、晩飯のリクエスト兼やお手伝い券を賭けたりしてな。だが、いつも変わらないメンバーだったから飽きちまって。そういう意味じゃ、お前やラグナは凄くいい。勝てるかどうか分からねぇからな!」



 あん畜生の村長は手加減なんてしねぇし、レラさんには思いっきり手心を加えられていた。

 リリンとやるのは悪鬼羅刹ごっこだし……、だから、少し楽しみだってのは俺の本音。

 紅葉は記憶が読めるからこそ、俺が本気で誘っているってのも分かって貰えるはず。



「ふーん、そんなに言うならやってあげるよ」

「よっしゃ!俺が鬼な、逃げる時間は15秒。15、14、じゅー」


「えっ、ちょ、行くよラグナ!!」



 強引に鬼役をゲットし、15秒を数える。

 流石に狼だけあって足が速いが……、追い付けない程じゃねぇな。



「2、1、……行くぜ《単位系破壊ユニットゼロ空気抵抗パスカル》」

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