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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第154話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-真・タヌキside②」

「……にゃはは――?」



 エルヴィティスは産声を上げなかった。

 その代わりに抱いたのは、純粋なる破壊衝動。



「不味ったァ!!」



 幽鬼の様に立っていたエルヴィティスが、ローレライの背後で停止した。

 視認、踏み込み、振り被り、斬閃、静止。

 右腕に持つ一本の剣で行われた、剣士としての真っ当な動き、そんなものは見慣れている筈のローレライでさえ、紙一重の回避でやっとだった。



『ロゥ姉様!?』

「ごめんレジィ、戻れないかも」


『!!返事はいらないわ。余の言葉を聞くだけで良い』



 ローレライが約束を違える、それはレジェリクエにとって最大級の緊急事態。

 その磨き上げた英知で思いつく限りの想定外を列挙させながら……、視界の端で動き出したアホの子とペットを捕獲する。



『どこに行くのかしら?セフィナ、ゴモラ?』

『えっと、ゴモラが帝王騎士団を助けに行った方が良いって、それで』


『端的に聞くから答えなさい。エルヴィティスに何らかの異常が発生した。そうよね?』

『えっと……、はい?』



 同時に、レジェリクエの前にあるモニターの中、帝王枢機第一騎士団にも動きがあった。

 一糸乱れぬ統制で皇種達を結晶化させていく戦果を乱したのは、あろうことか、騎士団長のカナン。

 そして、それを諫めたエゼキエルリリーズが、空の彼方に飛んでいく後ろ姿が映し出されている。



『ソドムが動いたわ。カミナ、ムーと連絡を取ってちょうだい』

「にゃは!」



 援軍が来ることを理解したローレライは、戦略を時間稼ぎに切り替えた。

 事態を好転させるレジェリクエからの指示に対応できる下地作り――、瞳に宿す『神聖幾何学魔導アルカナソーサリィ』を全力で起動し、帝王枢機と真正面からやり合う未来を視認する。



「《虚実反生・月希光を覆う黒塊竜(エグリプス・ムーン)!》」

「ぬぅ、タヌキ退治は終わったか?やたらデカいエネルギーが入ってき――お”お”お”お”!?!?」



 先ほどの一太刀で、エルヴィティスは準備運動を終えていた。

 ただ漠然と、体の駆動を確認する為だけの行動。

 言ってしまえば、対象に攻撃が当たっても外れても目的は達成する、そんな『確かめ』は、二度も必要ない。


 ローレライの正面から胸を裂き貫いてこじ開け、露出した心臓に第二第三の刃を突き立てよう。

 そんな意志を持って繰り出されたエルヴィティスの剣閃は超光速。

 神の目を持つローレライですら認識が困難な挙動、その途中に最も硬き竜王が召喚される。



「お”お”お”ッ!!痛いッ!!」

「マジゴメン。あとで労働に見合った対価は支払うから、協力して」



 剣が突き刺さり、黒塊竜の鱗がびしりと軋む。

 その武装鱗の名は『暗黒等級鱗ダークマタースケール』。

 秘める硬度は、世界に存在する物質の中で最も硬いダークマターに近しい。


 黒土竜という種族は、喰った鉱石を鱗に蓄える。

 そして、黒塊竜の長き生命の営みの最中で食らわざるを得なかった神製金属――、エゼキエルの外装を得たことにより、覚醒神殺しに匹敵する硬度を得ているのだ。



「エルヴィティス……!!狙いはエデンではなかったのか!?」

「ちょっちしくじった。にゃは!」



 ずぶずぶと体に埋まっていく刀身に向かい、黒塊竜が拳を振り下ろす。

 纏っている核熱の炎は最高温度ではない。

 だが、無防備を晒している剣を圧し折るには十分すぎる威力を秘めている……はずだった。



「なんっ……」



 急速に衰えた筋力が、振り下ろされた鉄槌を弱体化させる。

 身体のエネルギーを根こそぎ奪われたかのように、纏う炎も風前の灯と化して。



「にゃはははははぁー!!《可逆肯定リヴァーシブル・アドゥッ!》」



 黒塊竜に刺さっているのは、エルヴィティスの剣だけではなかった。

 暗黒等級鱗の間にある、体の動きを円滑にさせる為の脂肪層。

 そこに差し込まれているのは、攻撃を懐疑し元の状態に戻す、犯神懐疑レーヴァテイン。



「エグラ、上に飛んで!!」

「心得ておる」



 エルヴィティスに攻撃されているという事実を懐疑し、否定。

 互いに接触前に戻された一瞬の隙を突き、黒塊竜が空へ飛び立つ。


 近接戦闘特化のエルヴィティスとの戦いにおいての定石、それは、遠距離からの魔法攻撃だ。

 ローレライの指示はそれを見抜いたことによるもの。

 彼女の武器である視認してからの後出しを有効化させるには、相手の攻撃が届くまでの時間を引き延ばすしかない。



「次はこうだろう?《暗黒の収縮(ダークネス・シフト)》」



 ごぽ……っと黒塊竜の喉が膨らみ、暗黒の球体が吐き出された。

 空に飛び立つ黒塊竜と地上で見上げるエルヴィティス。

 その中心で浮遊したそれは、黒塊竜の体内で錬成した、星の種。



「光すら引き寄せて逃がさない、ブラックホールの種だ。帝王枢機とやり合うには、強力なアンチバッファが必須だぞ」

「さっすが!にゃは、レジィ!!」



 僅かな時間を得たローレライが、最も確実な手を打った。

 それは、あらゆる情報を精査し、最適解を導き出す妹に判断をゆだねること。

 ローレライには分かっているのだ。

『女王レジェリクエには、もう、ロゥ姉様は必要ない』と。



『エルヴィティスが暴走し、タヌキの手から離れたわ。取り込まれたエルドラドの意志に関係なく、周囲を破壊して同化しようとする化け物になったそうよ』

「それで、おねーさんは何をすればいい?」


『情報収集よ。エゼキエルリリーズが到着する4分16秒後まで生き延び、戦いを引き継ぐこと』

「256秒ね。よっし、おねーさん張り切っちゃうぞっと!!」


『事象の観測は余達も行うわ。《サモンウエポン=メディアイーター》』



 通信機越しに唱えられた召喚魔法、それが呼び出したのはラボラトリー・ムーより送られてきた、機械仕掛けの悪食=イーター。

 那由他の権能に頼ることなく100%純粋な機械工学に基づいて設計されているそれは、帝王枢機のメインカメラを軸にした多目的記録装置。

 直径20cmほどのボール状のドローンであるそれらが合計150機……、すぐに運用できる機体の全機投入、これこそが、ムーが事態を重く見ている証明だ。



「良いかローレライよ。暗黒の収縮(ダークネス・シフト)の影響は表面積によって変わる。小さいお前が受ける引力影響は、通常時の1.6倍。エルヴィティスは14.4倍となっている」

「表面積ね。ってことは、引っ張っられているのは色……、光って事で合ってるかな?」



 有機物と金属では物質の密度に違いがあり、大きさだけでは重量を割り出すことが出来ない。

 ローレライの身長1.6mに対し、エルヴィティスの全長4.8m

 ざっくり表面積を計算して黒塊竜の言葉に整合性を持たせたローレライは、動きに変化が無い黒塊竜の秘密にも辿り着く。



「にゃーるほど、だから”黒”塊竜な訳ね」

「最近の若者は生まれた瞬間から黒いからな。冥王竜も『我らが黒いのは、その方がカッコいいからだ!』などとバカげたことを言っておる」



 黒は光を吸収することで反射を押さえ、知覚させないという特別な色だ。

 だからこそ、表面積が大きい黒塊竜であっても、暗黒の収縮(ダークネス・シフト)から受ける影響は限りなく小さくなる。



「にゃは、不完全燃焼だったし丁度いい。おねーさんの実力がどこまで通用するか、試してやろうじゃん!」

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