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第153話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-真・タヌキside①」

「……なん、だと!?」



 串刺しにして息止めた皇種を捨てたエゼキエルリリーズが、驚愕の声を上げた。

 三度目の凄惨な死を迎えた豹皇の亡骸は、予定通りクリスタル化。

 周囲で同じように皇種の残党を刈っている魔導枢機国、第一帝王騎士団のメンバーも順調に仕事をこなしている。

 故に、ソドムの声は、ここの現状を憂いたものではない。



「ゴモラ、ムー。エルがやらかしやがった」

『悪食=イーターの接続が切れたけど……、まさかエデンさんに落とされた?チョーシこいて遊んでないでさっさと助けに行って、馬鹿兄』


「ちなみにお前は何してんだ?」

「……もぐ、ごくん。大規模戦闘で最も重要な要素のひとつ、物資補給を行っている。腹が減っては戦はできない」



 ゴモラから贈られてきた超豪華サンドイッチ、デミグラスセフィナすぺしゃるの画像を見たソドムは、コイツ……!!という文句を言う時間さえ惜しんだ。

 ソドムがゴモラの現状を聞いたのは、尋常じゃない緊急事態を察知したから。

 真理究明の悪食=イーターを持つからこそ、エルドラドがどんな状態かを一早く理解したのだ。



「ムー」

『分かってる!全・研究開発工程ストーーーップ!!イリオスっち、非番と休憩の奴ら叩き起こして!!残りの奴らは悪食=イーターを連結、デミフルスペック・悪食=イーターでエルっちとエルヴィティスを解析、急いで!!』



 ソドムの警告で状況を理解したムーは、安易に000シリーズの認証をしたことを悔いた。

 普段のムーなら、エルドラドの戦いを見学しつつ、新武装のネタを探すぐらいの余裕がある。

 だが、次々に舞い込んでくるカツテナイ案件に忙殺されている現在、「あーはいはい、またいつもの奴ね。勝手にどうぞ」と放置。

 エルヴィティスの進化という超絶・カツテナイ案件を見逃すという、大失態を演じる事となったのだ。



『現在、エルっちの悪食=イーターとの接続はオフライン。ソドムっちのも?』

「ダメだな。アーカイブを見る限り、別の何かに変貌した可能性が高ぇ」



 ソドム、ゴモラ、エルドラド、ムーの4匹は、それぞれが持つ悪食=イーターを相互リンクさせることで、特殊コミュニティを形成している。

 意図的に役割の違う能力を主軸にしているのも、他の悪食=イーターを経由することで、疑似的に那由他が持つオリジナル・悪食=イーターに近い性能を引き出す為だ。

 今回の戦いにおいて、皇種の資格を帝王枢機に付与できたのも、エルドラドが吸い上げた能力をコミュニティで共有しているからである。

 なお、この相互リンクは親しい幼馴染で構成されるものであり、エデンは登録されていない。



「あ、あの!あの!!ソドム様!!」

「んだよ、うるせぇなカナン」


「エルドラド様との通信が、と、途絶えて……」



 エゼキエルリリーズの通常通信から聞こえる、カナンの焦った声。

 特殊コミュニティに在籍していない彼女は、まだ、エルドラドの現状を知らない。

 だが、『エルドラド・ファンクラブ』の方から得ていた情報が途絶えたことにより、異変だけは察知している。



「あー、エルがやらかして、エルヴィティスが暴走してる」

「え”。たたたたたたすけにいかないと!?!?」


「待て。俺が行くから、お前は雑魚処理をしとけ。今度は手柄を掠め取られんじゃねぇぞ」

「ヴぃぃ!!嫌です行きます!!」


「言い方を変えるぞ。お前が来ると邪魔だ。エゼキエルリリーズこいつで本気を出さなきゃ、今のアイツは止められねぇ」

「ヴっ……、ヴぃぃ~~・・・・・・」」



 ソドムがカナンに状況を説明したのは、これから向かう先が死地だと判断したからだ。

 カナンはエルドラドのことになると盲目になる、だが、ソドムの本気の警告を無視する程、馬鹿ではない。



「心配すんなら、エルに鼻で笑われる可能性の方だぜ。ほら見ろ、あっちの騎士団が中々の勢いで雑魚処理してる」

「ウ”!?」


「デモンとエジル、それにチェルブクリーヴと天窮空母も居るからな。エルに褒めて欲しけりゃ、999999(ミリオン)クラスをぶっ殺しまくってMVPでも取るこった!」



 一直線に戦線から離脱しながら、的確にカナンの弱みをド突き、行動を制限。

 万が一にも戦いに干渉されない様に、ゴモラに帝王枢機騎士団への加勢という名の足止めを要請しておく。



「……ムー、悪いが、あの機体は破棄だ。手加減できる余裕がある気がしねぇ」

『まさか、金キツネが噛んでる?』


「そうだったとしても不思議じゃねぇな。今回の隠れ蓑は、ゴルディニアスつう商人だった。エルの悪食=イーターを漁ったら映像が出てきたぜ」

『エルっち、会ってるのか……。あー、うぜぇー、キツネぇ!!』



 ムーがラボラトリーに引きこもっているのは、万が一の時の金鳳花対策。

 那由他のバックアップを担っている彼女が洗脳された場合、七源の皇種のパワーバランスが崩れかねない事態となる。



『無色の悪意は大した影響が無いはずだけど……、エデンさんへの苛立ちを煽られたってこと?』

「ゴモラん時もそうだったが、何らかの偶然が重なって暴発すんだよ、アレ。クソみてぇなタイミングで」

『失礼な。渇望した命脈(レヴィアタン・ラスト)の時は馬鹿兄が蟲の処理に手間取ったのが原因。お気に入りのスイーツ店が何軒も潰れたストレスのせい』



 軽口を叩き合っているのは、強制的に心情をリラックスさせる為。

 もしも、激高したソドムまでもが無色の悪意に汚染されれば、事態の収拾がつかなくなるからだ。


 無色の悪意の有無は、タヌキ帝王であっても自覚できない。

 これは、那由他と同格である金枝玉葉が、娘の白銀比へ100%の権能を遺した弊害。

 それに倣った白銀比は、子へ100%の権能を贈った上で、身の丈に合う様に封印を施す。


 そして、継承した権能は独自に成長し、新たな能力を獲得する……、故に、単純な権能の出力だけを比べるのならば、金鳳花やサチナが持つ権能の性能は、那由他のオリジナル・悪食=イーターを超えている。

 ソドム達が相互リンクで性能を上げたとしても、金鳳花の認識阻害を見破るのは困難なのだ。



「一番の問題は、核にヴァジュラを使ってる事だ。早くしねぇと、エルが吸収されかねねぇぞ」

『ヴィギルーン……、時間制限は?』


「分かんね」

『真面目に考えろクソタヌキ』


「はっ、エルが何しやがったか大体の想像はつくが……、確信できるほど情報がねぇ。あの野郎、相互リンクから意図的に情報を抜いてやがる」

『大体とか想像とか、真理究明が聞いて呆れる。馬鹿なの?クソなの?』


「一つだけ間違いねぇことはあるぜ!……ちっ、ホント碌なことしやがらねぇな、エデン!!」


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