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第147話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-ローレライside②」

「なんや……、ホンマに腹立ってきた。いい加減うっとおしいのも考えもんやで」



 エルドラドの心境の中で起こった、無色の悪意の発芽。

 それは、このタイミングになるように調整されたのではない、偶発的な結果だった。


 無色の悪意とタヌキの相性は非常に悪い。

 その者が抱いている最も強い欲求が掻き立てられる……、そんな影響をタヌキが受けた所で、食欲が増進されるだけだからだ。


 無色の悪意は欲求を手に入れる為に論理感を否定し、手段を選ばせなくさせる。

 そうして生まれた強い行動力は常識とのギャップを生み出し、神を喜ばせる物語となってゆくのだ。

 だが、上位のタヌキが持つ悪食=イーターは、最も優れた結果を導き出す知識集積媒体。

 欲求を煽られ衝動のままに行動したとしても、最適化されたプランは想定外を生み出さず――、無色の悪意を持っていない状態と同じ結果となるのだ。


 そんな理由から、悪食=イーターを使いこなす最上位タヌキ帝王には、無色の悪意は殆ど意味が無い。

 いつもよりも少しだけ感情が高ぶるだけ――、そしてこの瞬間、エルドラドの堪忍袋がブチ切れた。



「ムー、000シリーズを寄越したってや」

『アイン・ソフ・オウルを?出せなくはないけど……』



 エルヴィティスは戦況に合わせて装備を切り替えて戦う機体だ。

 だが、エゼキエルのような合体機構が考案されなかった訳ではない。


『まったくの別系統の帝王枢機が欲しいじゃと?ふむ……、見たことはあるがの……、儂らの世界にはない法則で動く機械生命体のようなものじゃ、悪食=イーターの処理能力だけでは扱い切れんと思うがの』


 世界を渡ってくる前の那由他がさんざん見た、くだらない機械戦争。

 生態系の頂点に立つ人類は環境汚染に適応するために肉体を改造し、良くなったエネルギー効率によって、食事を摂る必要性が下がって行った。

 余るようになった食物の代わりに固形燃料プラントが増設され、また、エネルギー効率が良くなり……、この繰り返しにより、この世界で生き残っている生身の生物の殆どが絶滅してしまった。


 乗り込んで操縦するエゼキエル。

 機体と融合して動かすエルヴィティス。


 空腹に耐えながら見る味気ない機械戦争なんかに、那由他は興味を抱かない。

 だが、その機械が保管されている場所は国、そこには、嗜好品という名の食料があった。

 そしてそれを得る為には、襲って、勝って、奪い取るしかない。



『何と戦うのさエルっち。蟲ー?』

「おかんやで」


「……。あーエデンさんかー。そりゃねー、通常兵器じゃ逆立ちしたって勝てないけども……、マジで殺りに行くってこと?」



 那由他がぶっ壊した時に見た破損パーツの知識を解析して作り出した機体こそ、この世界のエルヴィティスシリーズ。

 だが、元々は機械と融合して動かす操作方式、それをダイレクトブレインシステムに置き換えた結果、エルヴィティスを操縦するにはとある適正が必要となった。

 吸収分解の悪食=イーター、もしくは、真理究明の悪食イーターによる操作サポート。

 さらに、機械を肉体のように扱うセンス、計測データを瞬時に理解する自頭の良さなどなど、どれも類まれなる才能と呼ばれるもの。

 それを満たした数名の超エリートタヌキのみが、エルヴィティスのパイロットになれるのだ。


 そして、ここから先はエルドラドにしかできない。

 上記の適性に加え、エルドラドのエルヴィティスには、動力源に第二の神殺し『神縛不動・ヴァジュラ』が使用されている。

『結束』と『決別』の剣であるヴァジュラの能力は、物質の融合・分解に特化ものだ。


『無限の光-アイン・ソフ・オウル』という概念がある。


 あらゆる物質を分割していった先に行きつく存在こそ光であり、逆に、光を束ね続ければ物質となる。

 この世界に存在しているという条件を『光=色』とする考え方を『無限の光』と呼ぶのだ。



「あかん、そろそろおかんが痺れを切らす頃合いや、はよ頼むで」

『親子関係に口出す気はないけどさー、喧嘩もほどほどにしときなよー。ほい』



 エルドラドが欲したのは、エルヴィティスに命を吹き込む三つの強化兵装。

 第二の右腕と左腕、そして頭から足までの至る所に装着された、ワイヤーとプレートで構築された特殊フレーム装甲。

 濃紫色の機体に走る赤い紋様は飾りではない、生物の血管と同様に事実として脈動している。



「……エル?」

「なんや?遊びたいちゅーから本気だしとんのや。文句ありまっか?」


「いえ、でも、壊れたからと言って後で文句を言うのは無しですよ。手加減もできませんからね?」



 機械は生物ではない、故に、神経速は発揮できない。

 だが、吸収分解の悪食=イーター、ヴァジュラ、融合して操作する機体、無限の光……、様々な要因を組み合わせることにより、このエルヴィティスは疑似生命体となる。

 これこそが、エルヴィティスが全帝王枢機の中で最速と謳われる由縁だ。


~お知らせ~


みなさま、あけましておめでとうございます、青色の鮫です。

えー、年末年始、いかがお過ごしでしょうか?

僕はようやく体調が戻りかけてきまして、もう少しだけお休みしたいなと思う次第であります。


ですので、1月1日の更新はお休みとさせていただきます。

皆様も、どうぞ、お体には十分気を付けてお過ごしくださいますように!



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