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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第146話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-ローレライside①」

「エグラ的にどうなん?この状況」

「……状況とは?」


「木星竜と仲良いんでしょ?考えているであろう狙いとか、サチナちゃんとどっちが有利かとか、そういうの全部ひっくるめた話」



 月希光を覆う黒塊竜(エグリプスムーン)の背に乗って、ローレライが空を翔ける。

 前方斜め上で繰り広げられているのは、物理的も精神的にも大規模過ぎる兄妹喧嘩。

 右側には巨大な火釜が建造され、左側では巨大なマグロが解体されている。

 そんな、理解不能の渦中をドン引きしながら通り抜けつつ、自分に課せられた目標へ視線を向ける。



「おねーさんの狙いはエデンな訳だけどさ、ちょっと違和感があってね。大きな見落としがあるような気がしてならない」

「それはそうだ。木星竜がまともな戦い方をするはずがない。エデンはあからさまに用意されたエサだと思うぞ」


「エサかぁ。にゃーるほどねぇ」



 黒塊竜はこの戦いに消極的だ。

 理由は単純……、『メリットがない』。

 故に、当たり障りのない雑談程度にしか受け答えをせず、隙があれば逃げ出そうとすら思っている。


 黒塊竜は英雄に覚醒したアサイシスによってレーヴァテインに封印され、ローレライによってこの世に舞い戻った。

 だがそれは自由とは程遠い、仮釈放。


『懐疑して取り消した事実を、再び懐疑して否定する』


 そんな裏技を発見したローレライによって黒塊竜は任意のタイミングで再封印され、必要な時だけレーヴァテインから呼び出される便利な使いドラゴン化。

 現在は釈放時間を伸ばすべく好感度を稼いでいる最中だ。



「駒じゃなくエサなのは、洗脳や意識改変がほとんど掛かってないから?」

「それもあるが……、エデンと因縁がある者は多い。その場にいるだけで厄介ごとを呼び寄せるのだ。今まさに、お前がちょっかいを掛けようとしているようにな」



 好戦的な性格のエデンは、他種族の皇種から恨みを買っている。

 戦いを楽しみたい彼女は、まず、相手のレベルに合わせた攻撃で様子を見る。

 言ってしまえば完全な舐めプ……、そんな侮辱塗れの戦闘情報は次代の皇種へと引き継がれ、ギリギリの所で負けた敵として誤認。

 彼女の狙い通りに、『エデンへの復讐』の布石となるのだ。



「あれが居ることで、金鳳花が準備をしていない所でも物語が進むようになる。その最たる者が蟲量大数だ」

「ん、関係性が見えない」


「蟲量大数が動くとき、真っ先にエデンが殺されるのという噂がある。ホープも何度か言っていた。エデンはエサだと」



 エデンのレベルは9999阿僧祇。

 那由他まであと1に迫る、世界第4位の実力者。

 だが、そこに何らかの意図があるとしたら?



「にゃはは、お師匠の話じゃ、蟲量大数には金鳳花の洗脳は効きづらいって事になってたな……。どういう風に引っ張って来るのかって思ってたけど、エデンがキーワードな訳ね」



 蟲量大数、不可思議竜、那由他。

 始原の皇種たる彼らは不戦の盟約を交わし、自主的な戦闘自粛を守っている。

 そして、その均衡を崩す鍵こそがエデンーー、そんな物騒な存在は封印してしまうに限ると、ローレライは目を細めた。



 **********



「いい歳して何やっとんねん、クソババア!!」

「エルの方こそ、いい加減、反抗期を止めなさい!!3000年くらい経ちますよ、もう!!」


「3000年クソ親ムーブかまし続けてるからやろ、ボケェ!!」



 覚醒させた神縛不動・ヴァジュラを搭載した長剣を振り抜きながら、濃紫色のエルヴィティスが叫ぶ。

 そして、それを迎え撃つは、全身白一色の女性。

 無骨なガントレットが握る双剣で受け止め、力に任せて弾き飛ばす。


 エルドラドはエデンを心の底からうざったいと思っている。

 タヌキ真帝王としての実力は認めているし、事実、忖度なしの殺し合いをすれば敗北するだろう。

 格上だと十分に理解している、その上でうざったがっているのは、数千年の時が経っても『反抗期』……、子供扱いされているからだ。



「いつまで親子いうてんねん!!隣みてみぃ、バビロンもトウゲンキョウもインティマヤも、とっくに子離れしてるやろが!!」

「よそはよそ、ウチはウチです」


「あーもう、ホンマそういうとこが……」



 タヌキにも親子の情はある。

 だが、二代続けて生き残れる実力があるかは別問題……、そんな理由から、エルドラドと同格のタヌキ帝王で存命している親子は他にいない。

 そんな事実が嫌……、なのではなく、それを見た周囲の空気が悪くなるのが嫌なのだ。


 例えば、ソドムは野次って来るし、ゴモラも生暖かい目で見てくる。

 バビロンは爆笑、カナンに至っては露骨に媚びを売っている始末。

 そういうのが全部ひっくるめてうざい。本当にうざいのだ。


 そんな積もり積もった感情は――。



「マジでぶち殺したろかな」

「こら、親に向かってなんて口を叩くんですか!!」



 ――くっくっく、別に良いじゃねぇかよぉ、親のおっぱい吸ってもよー。

 ――ほんのり甘い思い出の味?まぁ、齧れるスネがあるのは良いこと。

 ――ぐははははは!ぐは!!ぐははははははっ!!

 ――あ、こちら魔導枢機霊王国で流行ってるお菓子です、よ、よろしかったらどうぞっっ!!


 ざわつく。

 心が。

 心の底に根付いた声が――、そして。





 ――無色の悪意が、発芽する。

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