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第138話「御神楽幸七・久遠竜鬼-こおりおに-レジェリクエside③」

「レジェリクエ陛下、何でも言ってください!!このミディが一刀両断して見せます!!」

『くすくすくす……、頼もしくて嬉しい限り。ということで、まずは相手の翼を削いて、舐めさせられた苦渋の落とし前を付けさせましょうか』



 ダルダロシア大冥林に雷鳴が響くとき、3匹の天の遣いが空を支配せん。

 予言のケライノー、警告のアヴァートジグザー、そして、鉄槌のヴァジュラコック。

 愚かな人間を戒める雷の化身伝説、それは、ダルダロシア大冥林に近しい国に言い伝えられた、おとぎ話に近しい何か。


 キングフェニクスの本名を知ったレジェリクエは直ぐに調査を開始し、このおとぎ話にたどり着いていた。

 ケライノーという、キングフェニクスと同等の力を持つ化け物が存在すると理解し、捕獲を含めた対処方法の検討を始めていたのだ。

 だが、戦争の渦中という状況と、最優先に攻略するべきラボラトリータヌキ、そこに加えてキツネの襲来……、そんな理由から後回しにしたのは仕方がないことだ。

 それでも、手に入れたかったペットを駆除するしかないという口惜しさは、消えてなくなる訳ではない。



『ミディ、ルドワール、あなた達の機体はエゼキエル型……、つまり、強化武装を装備する前提でデザインされた汎用機。知ってるでしょぉ?』

「この目と脳に焼き付いて、忘れられる気がしない。だが……!!」

「ルドワール様を一方的にボコったのに全然本気じゃなかったアレですね!?でも!!」


『そのために余達がいるのよ。あなた達は機体がぶれない様に、ただ真っすぐに飛ぶだけでいいの』



 レジェリクエの言葉が終わった瞬間に、二人の操縦席モニター上に見知らぬシステムが起動した。

『天使 /  魔王 合体シークエンス』という見出しから始まり、全自動で画面が切り替わっていく。


 彼らの驚きを蔑ろにして事態を進めているのは、天窮空母管制室に設置した特別席に座るメルテッサ。

 そこは帝王枢機のコクピットを丸ごと改造して作った、エゼキエル遠隔操作ユニットだ。



「そんな簡単な話なんですか!?」

「絶対に違うと思うが、やるしかあるまい!!」


『そうよぉ、足りない部分は勇気で補えばいいのぉ、ファイナルフュージョン、承認!』

『了解!!ファイナルフュージョン、プログラム、ドラーイブ!!』

『……何をやってるのよ、あなた達?』



 あらあら、流石の天才科学者も大衆娯楽には疎いようねぇ。

 一回やってみたかったんだよね、こういうの。はー満足!!


 数年前に流行した、ロボット系小説の合体シーン。

 作中で何度も繰り返されるそれは、ロボットに憧れるちびっこの心を掴んで離さない、クライマックス開始の合図だ。



「うぉぉぉおお!!これは!?」

「なんか出た!?後ろからなんか飛んできた!?!?」



 天窮空母から打ち出された2セット、合計の14個の超魔道具。

 それは、ソドムのエゼキエル用に保管されていた、天使・魔王シリーズだ。


 2機のエゼキエルを追い抜いた白と黒の武装が、その進路上に並び立つ。

 ルドワールの前にあるのは、白の天使兵装。

 赤いリコリスの手に、脚に、胸に、背に、そして頭へ次々と装着されていくそれは、ただでさえ固いエゼキエルの防御力を不敗へ押し上げる。



「天使シリーズの存在自体は知っている。隊長特権で扱えるようになる武装だからな。だがこれは……」

『7つ揃えて真価を発揮するように調整された武装だもの、まるで違う操作感でしょう?』


「あぁ、とんでもない。真っすぐ飛ぶだけで一苦労だッ!!」



 エゼキエル=エジルリコリスとなったルドワール機は、尋常な加速力を手に入れている。

 それは、背中に搭載された6基の盾形ブースターユニットによるもの。

 操縦者の意志を読み取り行われる完全自律防御駆動により、その身に傷を付けることは至難の業となる。



「きゃああ!?」

「大丈夫か、ミディ!!」


「だいっ……丈夫です!!何でもおねだりの為ならば、このくらいぃ、何、とか、しますよっ、とぉ!!」



 ミディが新兵リーダーを任されているのは、確かな実力があるからだ。

 通常はベテラン騎士が小隊のリーダーとなる。

 だが、ミディが入団試験で叩きだしたスコアは熟練のリーダーより優れた数字だった。

 それは大隊長に匹敵するものであり、枢機院で話し合いが行われた結果、さっさとキャリアを積ませて昇給させるために仕組まれ人事配置となったのだ。


 そんなエリートコースに乗っていることを、本人は知らない。

 性格的に調子に乗りやすく、そのまま失敗することも多いという学生時代の評価を考慮した結果だ。



「それにしても……、凄いパワーですね、この機体」

「あぁ、そちらはソドム様が使っていた武装だけあって、なんと禍々し……、カツテナイカッコ良さだ」



 それはリリンサが持つ魔王シリーズをエゼキエル用に調整した、つい先日までのソドムの本気武装。

 眷皇種や皇種どころではない、世界の危機たる滅亡の大罪期の対処に使用する姿を手に入れたエゼキエル=デモンブラッシュ、その火力は文字通り世界を救うに足るものだ。



『ルドワール、ミディ、左右に分かれてルート上を移動、残りの24機を振り切らない様にね』



 **********



「ふぅ……、まさかこんなに早く、帝王枢機騎士団を運用することになるとはねぇ」

「一息つくでありますか?こちら、はちみつレモンティーであります」



 ナインアリアを呼び寄せたのは、レジェリクエの喉を労わるメイドをさせるためではない。

 だが、出番はまだ先であり、ただ突っ立っていられるほど、彼女は不真面目ではない。



「カミナ、ケライノーのレポートは?」

「できてるわよ。ほいっ」



 ポイっと投げ渡されたのは、カミナがアタッシュケースから取り出した液晶タブレット。

 ラボラトリームーで開発されたそれは、現在の人類が使用しているパソコンを100台連結しても及ばない処理性能を持つ未来技術の塊だ。



「どれどれ……、なるほどねぇ」



『暗黒鳥・ケライノー』


 種族   鳳凰鶏

 年齢   300歳以上

 性別   メス

 称号   暗黒鳥

 レベル  125656

 危険度 大国滅亡の危機 



『基礎情報』

 おとぎ話になっている以上、皇種・ヴァジュラコックの側近なのは間違いないわね。 

 同じ種族のオス・メス同士という事を考慮すれば、妻や妾である可能性が高い。

 キングフェニクスが心配するそぶりを見せていない以上、こっちと夫婦って線はないと思うわ。


 問題なのは、金鳳花が与えた知識よりも詳しい権能の使い方を知っている点。

 技への理解度が高い=熟練度の高い応用を使用することであり、事実、電磁砂鉄なんて賢い技を使っている。

 油断して良い相手じゃないわね。


『戦闘能力』


 電磁石による砂鉄の誘導が主能力。

 推測される効果は以下の通り。


 ・電気系統への通信阻害

 ・金属融着

 ・自然雷発生

 ・砂鉄の流動による、摩擦攻撃

 ・電磁融着による砂鉄の形状変化、および、高速射出


 総じて、キングフェニクスが使用していた金属を集めて巨鳥を作る技の強化版。

 私達が鉄を介して起こす現象を全て使えると想定するべきね。

 最悪、砂鉄で帝王枢機を作って来る可能性すらあるわ。


 最大の弱点は、電磁界は800度以上の物質に影響しえない点。

 天撃つ硫黄の火(メギドフレイム)絶火葬槍ウォーランスの火力なら、問題なく焼き切れるわ。

 なお、磁界は温度が低くなるほど効果が高くなる。

 だから、急速冷凍も攻撃手段として使えるわ、自爆を狙えるって意味でね。



「ふぅん?楽勝ね」

「あら、油断しないでって書いたじゃない」


「良いから見てなさぁい。《支配声域、全軍に告ぐ、機体外部の音声スピーカーをON。出現した魔法陣で武装なさい》 」



 カミナはレジェリクエの真意を知っている。

 ワルトナやリリンサに隠していた本気の実力――、それは、当時の心無き魔人達の統括者の全員を相手取って、余裕で勝てる自信を秘めている。



「 《五十重奏魔法連・倶利伽羅剣(くりからけん) 」



 レジェリクエのよく響く声が、エゼキエルの外部スピーカーから響き渡った。

 その瞬間、目の前に出現した魔法陣へエゼキエルが突撃、円筒状の右腕を叩きつけ、液晶ユニットに写し取る。



『それは偉大な竜を炎に巻いて殺したという伝説から生まれた魔法。その子は不動の竜王なんて呼ばれていたそうよぉ』



 不動の(やるきのない)竜王。

 そんな不名誉すぎる称号を付けられる存在を思い浮かべ、レジェリクエが笑う。

 どういう経緯で炎に巻かれたのか……、いや、どういう風にクソタヌキブレードで叩き落とされたのかを想像し漏らした声が、騎士団に絶大な安心感を与える。



「女王陛下の嘲笑だ!!臆することなかれ、我らの勝利は約束された!!」

「全軍突撃だに!!ルドワとミディの活路を切り開けぇ!!」


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