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第132話「新しい遊び」

「確かにそうねぇ。だからね、新しい遊びを余達と一緒に作って欲しいのぉ。誰一人として犠牲になることのない、みんなが幸せになる為のゲームを」



 大魔王陛下がサチナの泣き顔にそっと手を当て、優しく視線を上に向ける。

 そしてその先に飛んでいるのは……、希望を戴く天王竜ウィル・ホープ・ウラヌス



「ホロビノっ!!」



 空を見上げたサチナの瞳に、希望が灯った。

 そして、地上に降りて来たホロビノに抱き着いて、目じりに溜まった涙をこすって落とす。


 ホロビノに助けを求めよう。

 そんな俺の提案に対して出したワルトナの答えは、NO。

 正体を知った今だからこそ言える事だが……、ホント俺はダメダメだな。



「レジィ、ホロビノは味方って事で良いのか?木星竜に会いに行ったって聞いているぞ」

「木星竜はホロビノの実兄。兄弟仲が良好なのは素晴らしいことでしょぉ」


「この場合は喜べないだろ。サチナの……!」

「そう、サチナは不可思議竜の娘でもある。あっちが兄姉連合なんだから、こっちだって弟妹連合で対抗するのが筋でしょぉ」



 サチナの視点で見た場合、金鳳花、紅葉、紫蘭、木星竜、サーティーズ、ホロビノ、この6名は全て血の繋がった兄姉だ。

 ここに着目した大魔王陛下は、冒険者とバカンスを楽しんでいたホロビノ達に忍び寄って囁いたらしい。


『今からぁ、空前絶後の兄弟姉妹喧嘩が始まるわぁ。そしてこれは、神を楽しませる新しい演目。いい加減で雑な取り組みなんてしたら、どんな神罰が下るか分からないわねぇ?ね、世界でたった二匹の白天竜さまぁ?』


 そんな大魔王脅迫で震えあがったホロビノは、レジィの指揮下に入った。

 想定外によってサチナの命が脅かされた時の最終保険として身を隠しつつ、招集が掛かるのを待っていたっぽい。

 ……まさに忠犬の鏡だな!



「サチナ、ホロビノ、あなた達には人狼狐の次に開催されるゲームに介入し、ルールを書き換えて欲しいの」

「ゲーム、です?」


「そう。そもそも、現在がどんな状況なのか理解できているかしら?」

「大臣と聖母にまんまと騙された、です。それ以外はよく分からねーです」


「変則鬼ごっことでも言うべきかしらね?参加者は皇の資格を持つ130匹。その中には疑似的な資格を発行された眷皇種も含まれているわ」



 通信機越しに会話を聞いた話では、かなりの大規模戦闘が起こっている。

 だが、それらプレイヤーは俺達を攻撃できるのに対し、こちらは相手を傷つけられない。

 俺とタヌキが戦っている時に森から反撃されない様に、温泉郷内の生命を背景扱いしているんだろう。



「そんな資格なんて、サチナは持ってねーぞ、です」

「だからこそ、介入できる余地が残されているのよぉ。遊びは平等じゃないとつまらないでしょぉ?」


「どうやる、です?」

「鬼ごっこの派生形『氷鬼』。これを軸にして、余達が参加できるように改変をしましょう」



 氷鬼って確か……、鬼に触られても交代せずに氷像となり、その場で動けなくなるって遊びだったはず。

 鬼は全ての人を氷像にすれば勝利。

 ただし、逃げる側が氷像を触ると再び行動できるようになる為、普通の鬼ごっこよりもチームワークが重要となる。



「まず、現在の『鬼ごっこのプレイヤーにダメージを与えられない』。このルールはダメージを与えられないのではなく、命の権能と時の権能を組み合わせた時間経過無しの即時回復よ」

「……なるほど、です」


「だからこその氷鬼――、紅葉と紫蘭を封印していたクリスタルに閉じ込めてしまえば、生死に関係なく脱落させられる。できるかしら?」

「母様のねやの……。できる、です!」


「よしよし優秀ねぇ。そして、クリスタルに閉じ込めるトリガーは『相手の命に触れる』こと。そういうのは得意なホロビノに任せればいいわ」

「きゅあ!?」

「任せた、です!」



 とんでもねぇ魔王キラーパスを食らったホロビノが目を白黒させている。

 だがまぁ、この忠犬は60万匹のドラゴンの命を余裕綽々で操作していた伝説の白天竜、やってやれないことはないと思う。



「さらに色々混ぜていくわよぉ、黒狼狐軍と白竜狐軍に分かれた両軍が、互いの駒を取り合う争奪戦にしましょう。これはチェスのモチーフ」

「盤面に駒が残る……、チェスです」


「クリスタルを解除できるのは両軍の『狐のみ』、余が凍ったら助けに来てねぇ」

「任せろ、です!」


「制限時間は今日の深夜12時まで、生き残った人数が多い方が勝ちにしましょう」



 サチナに配慮して明言していないが、勝敗条件は人狼要素か。

 さらに、この鬼ごっこで使うフィールドは広大であり、索敵スキルが必須。

 ここら辺はかくれんぼ要素……、これで、金鳳花側が仕掛けて来ていた遊びを網羅した上位互換の遊びとなる。



「あ、ワルトナの『花いちもんめ』要素も付け加えておこうかしら。ということで、景品はユニクルフィンよぉ」

「とんでもねぇ魔王キラーパスが俺にも来た!?なんだ、花いちもんめ要素って!?」


「ユニ~が欲しい!ユニクはあげない!そうだんしよう~、そうしよう~、って、やってるでしょぉ?」

「なるほどな。買って嬉しい、花いちもんめ~。値段をまけて悲しい、花いちもんめ~、……よく考えたらすげぇ歌詞だな!?人身販売じゃねぇかッ!!」



 花=人で、一文=2000エドロくらいだったか?

 結納金にしたって安すぎるだろ。

 せめてもうちょっと値段を上げてくれ、10億エドロ(1ぐるぐるきんぐー)くらいは欲しい。



「相手のプレイヤーの数が130+狐3匹。なら当然、こっちも130+狐3匹にしないとゲームが成立しないわよねぇ」

「分かった、サチナとサーティーズ姉さま、あと、母様も入れるです!!」


「はいこれ、白竜狐軍の130名メンバーリスト。少し離れた位置にいる者もいるけど、指定できるかしら?」

「効果はフィールドに掛けるです。範囲の外では適用されないですが、いいです?」


「それでOKよぉ」



 しれっと白銀比を自軍に引き入れるとか、さすが大魔王様だぜ。

 それはそうと、サーティーズさんって生きてるのか?

 ワルトが雇ったって聞いているが……、地獄の三丁目にお使いに行ってるとかないよな?



「レラさん、サーティーズさんって……?」

「死んでるよ」


「くっ!」

「レーヴァティンで真っ二つだにゃー」



 うわぁ、別の英雄に襲撃されてた。

 レラさんの性格や時の権能の性質を考えて……、1秒以下の奇襲で殺したに違いない。



「130のメンバーには入ってるんだよな。蘇生後にも適用されるってことでいいのか?」

「先にルールで縛っておかないと寝返りの可能性があるからねぇ」


「ちなみに他にはどんなメンバーがいるんだ?俺の顔見知りって130人もいないんだが?」

「サチナ、そのメンバー表は他者には絶対見せちゃダメよ。特に、狐に化かされまくってるユニクルフィンにはねぇ」



 なるほど、確かに相手は記憶を読めるキツネ、情報漏洩対策は必須だよな。

 ……。

 …………。

 ………………。

 くそう、ぐるげぇ!の音も出ない正論を吐きやがって。



「ん、でもこのメンバー……、いいです?」

「リスクと書いて、エンターティメントと呼ぶ。あの唯一神なら喜びそうじゃないかしら?」



 こっそりメンバー表を確認したサチナが、複雑そうな顔でレジィを見た。

 何か俺達に不利になることが……、例えば、中立を宣言しているホーライをこちらのメンバーに入れておくと、何もしなくてもマイナス要素になる可能性が高い。

 戦力にならないどころか、破損した結界を通ってじじぃが離脱すれば、それだけで1名分減点されちまう。


 だが、もしも俺達と共に戦ってくれるなら、莫大なアドバンテージを得ることが出来る。

 ハイリスクハイリターン、まさにエンターティメントって感じだが……、面白い戦略だ。



「さぁ、始めましょぉ。きつねさーん、きつねさーん、あーそびましょー!!」



 支配声域を持つレジィが声を張り、狐を遊びに誘った。

 そしてそれに乗るように、サチナを背に乗せたホロビノが飛び立つ。



「いくですよ、ホロビノ!!」

「きゅあ!!」

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