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第131話「恋人狐狼・昼の化かし合い⑭ キツネの目覚め」

「不倫なんて絶対に許さない……!!勝負だってまだ終わってないのにっ!!」

「だーかーらー、不倫なんだよねぇ。不徳だねぇ、ふてくされてるねぇ」


「む”ぅ”ぅ”ぅ”ーー!!」



 おい待て止めろ。

 俺が過去編という名の現実逃避をしている間に煽りを追加するんじゃない。


 レジィによる大魔王裁判により、テトラフィーアの有罪が確定。

 さらにワルトこそが狐であり黒幕だと判明し、戦局が大きく変動することになった。


 9匹のキツネの正体が、金鳳花、紅葉、紫蘭、ワルト、テトラフィーア、セブンジード、メイ、ヴェルサラスク、シャトーガンマで確定。

 俺は御旗であるサチナを敵の本拠地ど真中に置くという極大のミスをやらかしていたことになる。

 セブンジードが復活してるのも、サチナが無色の悪意を解除した後に再洗脳したからか。


 逆に、俺が敵だと思わされていた大魔王陛下一派こそがサチナの味方。

 ここでメルテッサが先んじて気が付いた事が生きてくる。

 キツネ側の情報を大魔王陛下一派が手に入れたことにより、逆転の一手を打つことが出来た訳だ。



「所でリリン、外の軍勢はどうしたんだい?僕の予定ではくったくたになった君をラグナが咥えてくる予定だったんだけど」

「ふっ、あの程度の軍勢など問題にもならない。私達のエゼキエルリリーズの前では!!」


「……。まぁ、完成してるだろうなと思ってたけどさ。参戦できない様に紅葉くれはがルールを設定していたはずだが?」

「そんなもの、ソドムとゴモラとエルドラドが揃えばどうとでもできる!!」


「……。しないで欲しんだが。これだから歴史に名だたるクソタヌキは」



 俺がいるのはサチナが磔られている真上の上空、ワルトは建物の屋根の上。

 リリンは破損した結界から内部に侵入、だが、その場から動いていない。

 なるほど、ワルト本体の位置を探っているのか。



「ワルトナ、決着を付けよう。あなたの思い通りにはさせない」

「おっと、威勢がいいのは良いことだが……。君は一昼夜戦い続けた満身創痍、一方、僕の体調は万全だ。なにせ、ついさっきまでユニとホテルで休憩していたんだからね!!」


「む”ぅ”ぅ”ぅぅん!?!?」

「そもそも、英雄見習いにもなってないぶんざ……あ。ついさっきなったばかりの分際で、英雄教育を受けてきた僕に勝てるとでも?」


「やって、見なければ、分からないっ!!」



 平均的な表情など欠片も残ってない超魔王・ド怒リリン様が唸る尻尾を撃ち鳴らし、それに合わせるようにワルトナが弓に指を這わせる。

 互いの中心点で炸裂した、熱を伴う眩い閃光。

 それを開始の合図にして、温泉郷の東側で爆音とむ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”ぅ”!!という鳴き声が響き渡る。


 ……タヌキ・キツネ大戦争、勃発。

 考えうる限りの最悪な大魔王ハーデスルートに進んだな。



「……はぁ。なぁ、大魔王陛下」

「なにかしらぁ?ちなみに余は中立なゲロ鳥派閥よぉ」


「俺もそこに入れてくれ、切実に。……じゃなくって、俺はどうすればいい?」



 人狼狐自体は、俺達の勝ちでいい……、はずだ。

 無色の悪意を植え付けられている狐はワルト以外全滅、残ったワルトも本気で勝ちを狙っていないように思えた。

 レラさんが救出しているサチナが本物なのが何よりの証拠。

 勝ちを優先させるのであれば、12時になった後でサチナを殺すなんて危ない賭けをする必要がない。


 それに、ワルトは俺に「全てを捨てて逃げよう」と持ち掛けて来ていた。

 だから、きっと、誰の死も望んでいない。

 ……そんな気がするんだ。



「ワルトナはリリンに任せておきなさい。どんな決着でも……、いや、あの二人が出した決着なら、それが最善だもの」

「そうか。なら……、外を片付ければいいんだな?」



 破損した結界の外では、カツテナイ大決戦が繰り広げられているようだ。

 割れた結界のから見える範囲だけでも、天窮空母が100機規模のエゼキエルを引き連れて巨大な鳥と戦っている。

 ダルダロシア大冥林そのものとかいう木星竜もいるし、なぜか、グラムっぽい波動も感じる。

 ちらっと見えた黒とオレンジ色の帝王枢機とかカツテなさ過ぎるカッコ良さだったし、世紀末とはまさにこの事だと思う。



「その意見には余も賛成なんだけどぉ……、カミナ、サチナの容体はどうかしら?」



 レラさんに保護されたサチナの横には、医師装備で完全武装しているカミナさん。

 手には既に空の注射器が握られており、サチナの顔色もかなり良くなっている。



「急性アルコール中毒を起こしていたけど、自力で回復期に入っていたわ。足の外傷は既に魔法で治療済み。他の所見は見当たらないわ」

「ちょっと可哀そうだけれどぉ、強制的に目覚めさせてくれるかしら?」


「できないわよ。だってもう目覚めてるもの」



 抱かれているサチナの手に力が籠った。

 レラさんの服をぎゅうっと握りしめ、顔が見えない様に俯いて表情を隠している。



「サチナ、余と遊びましょう」

「……もう、負けたです。嘘つき大臣に負けた、ですっ」


「嘘つきテトラフィーアが吐いた嘘って何かしら?」

「大臣は言ったです。サチナの目が覚めたら、全部、元通りの日常に戻るって。また、楽しい毎日がくるって」



 サチナの声は震えている。

 親しい人からの裏切り、そんなもの、8歳の子供が経験するにはあまりにも酷い仕打ちだ。



「サチナは負けたです。吊られた霊媒師はもう戻れねーですっ」

「確かにそうねぇ。だからね、新しい遊びを余達と一緒に作って欲しいのぉ。誰一人として犠牲になることのない、みんなが幸せになる為のゲームを」



 大魔王陛下がサチナの泣き顔にそっと手を当て、優しく視線を上に向ける。

 そしてその先に飛んでいるのは……、希望を戴く天王竜ウィル・ホープ・ウラヌス


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