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第129話「人狼狐狸・昼の化かし合い⑫ キングと帝王①」

 む”ぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう~~~~ッ!!

 む”ぅぅぅぅぅぅぅうううううううううううううううううううううううううう~~~~ッ!!



「……。」

「……。」



 あぁ、今日も元気に魔王様が鳴いている。

 トレードマークの尻尾でサチナの結界に八つ当たりしながら、平均を軽々超えた重低音ボイスで鳴いている。


 うん、マジで手が付けられないくらいマジギレしていらっしゃる。

 まぁ、ワルトに騙されるのは2度目な訳で、マジギレするのも理解できなくもな――。



「む”ぅ”ぅ”~~ワルトナ~。む”ぅ”ぅ”~~ユニク~。」



 いや待って、何故か俺に対してもブチ切れてるな、この魔王ッ!?

 なんでそんなに……、



「む”ぅ”ぅ”~~、レジェの言っていた通りにはならないって思ったのに。信じてたのに~~」

「うわっ、変な入れ知恵されてるっぽい!?待てリリン、それは誤解だ――」

「あーあーあー、見つかっちゃったねぇ。ま、十分に楽しんだから良しとしよう。ふ、り、ん」


「む”う”う”う”ゥ~~!!」

「ワルトぉおおおおおお!?」



 おい待てふざけんな、何処に不倫要素があった!?

 二人っきりで夜を過ごして、一緒に朝飯食って、ホテルのベッドで休憩しただ……、いや、アウトだなこれーッ!?

 状況証拠が揃ってるし、なんなら、徹夜明けの変なテンションでキスとかしちゃってるッ!!

 町の往来でッ!!

 人目をはばからずにッ!!



「殺されても文句は言えねぇ気がしてきた」

「よし、一緒に逃げよう。ユニ!!」


「そうはならねぇよ!!」

「ちぇー」



 なんかいつもの軽いノリで会話が進んでいるが……、今はそんなことをしている場合じゃないはず。


 テトラフィーアとワルトが狐、だが、この二人も仲違いをしていた?

 確か、それを知らされたのは、俺に化けたアヴァロンを追って、そして――。



 **********



『きっとこの戦いが終わったら、君は僕の頭を撫でながら、何度も、何度も謝ってくれるんだろう。……信じてるよ、ユニ』



 メルテッサを殺すと覚悟を決めたワルトナと別れ、俺はテトラフィーアの救出に向かっていた。

 当初の予定だった俺に化けさせたアヴァロンでレラさん達を吊る作戦は中止……、とはいえ、完全に思考を捨てる訳にはいかない。

 慌てて姿を現した俺への強襲が狙いの可能性が高い以上、最大限の警戒は必須だ。


 そんなことを考えた結果、ギリギリまでアヴァロンを囮に使い、1秒以下の時間でテトラフィーア達を確保できる位置まで隠れて移動することにした。

 優先順を、テトラフィーア、サチナ、ヴェルサラスクの順にしつつも、三人同時に助けられる機を伺う。

 だが……、



「ヴィギルア!」



 ……。

 …………。

 ………………アホタヌキ、降臨。

 あろうことか、物陰に隠れている俺にウッキウキなタヌキステップで近づき、めっちゃ気安い挨拶をしてきやがった。



「こっちくんな、レラさんに気が付かれるだろ。しっし、ほら、しっし!!」

「ヴィ~ギルア~~ンッ!!」


「声高らかに鳴くなアホタヌキィ!!お前、今どういう状況か分かってん」

「ヴィギルア~~ヴィギルオ~、ヴィギルギル~~」



 目の前でタヌキが踊っている。

 隠密活動中な俺の目の前で、キラッキラな毛並みを振り乱しながら、すげぇキレッキレの動きでタヌキが踊っている。

 あ、太鼓を背負ったタヌキ楽団が集まって来た。

 和風バンドの演奏にノッてるアイドルのように、煌びやかなタヌキステップで踊っている。



「邪魔だ退け、ぶっ殺すぞ、アホタヌキィィィー!!」



 おい、アホタヌキィー!!

 俺、今、捕らわれた恋人助けに行く途中なんだよッ!!

 目が良いレラさんを出し抜こうと必死に隠れてんだよッ!!

 テメェのせいでバレたらどうすんだ、ゴラァッ!!


 一瞬、マジでぶっ殺してやろうかと思ったが……、コイツは帝王枢機(工作用)を相手に互角の戦いを繰り広げるタヌキ将軍。

 殺すにしたってグラムの覚醒は必須であり、そんなことをすれば100%レラさんに感づかれる。


 いや待てよ、それが狙いか……?

 俺の捜索をタヌキに任せて、開いたリソースでワルト対策を練っているとかか?



「よし分かった。何が食いたい?後でたらふく食わせてやるから、今は静かにどっか行……、何その首にぶら下げてる紙の束」

「ヴィギルア!」



 えー、なになに?温泉郷のお食事無料券1000枚セット?

 あー、ダメだ。

 もう既に買収されてやがる。



「ヴィギルア!ヴィギルオーン!!」



 めんどくせぇ、蹴散らそう。

 そう思った瞬間、アホタヌキが声高らかに鳴いた。

 そしてその周囲に、4つの転移魔法陣が描かれる。



「バビロンくん、特にトロイアくん、ヨミくん、相手はグラムを持っています、油断はめっですよ」

「底が知れねぇってのは分かってる。あんな凡ミス、二度と踏まねぇよ」

「ヨミお前、そんなヨボヨボの爺さんで大丈夫なん?もうちっと若い姿の方がよくね?」

「へーきへーき。見た目だけだしー。それよりトロイアの方こそ訛ってるんじゃないのー?」



 ……。

 …………。

 ………………なんかヤバそうなタヌキが4匹も増えた。

 若奥さま系タヌキ・インティマヤと見知らぬご老人タヌキ?

 あとクマじゃない?タヌキ・バビロンと、そこそこタヌキ・トロイア。

 ご丁寧に、全員が『タヌキ奉行』って書いてあるスカーフを付けている。


 奉行っつーか、帝王だろうがお前らァッ!!

 ていうか、仮にもサチナの部下を名乗るんだったら、こんな所で油売ってねぇで助けに行けやーッ!!



「おいタヌキ共、何しに出てきた?俺は用事がねぇからどっかいけ。マジで」

「そりゃお前、温泉郷と俺の平和を乱す小僧をブチ殺しに来たに決まってんだろ」


「あ”?」

「適度な運動施設、美味い飯、気持ちのいい風呂、せっかく数千年ぶりのシャバを満喫してたのに、余計な面倒ごとを起こしやがって。ソドムとゴモラは隠れてコソコソやってるがなぁ……、俺らには関係ーねーつぅ話なんだわ。《覚醒せよ、神噛食指・ギガントイーター》」



 一瞬でガントレットを覚醒させたバビロンが、電光石火の如く走り出す。

 目的地は俺の心臓。

 振るいあげた剛腕が輝いているのは、既にエネルギーを蓄えているからか。



「タヌキほどじゃなくてもなッ!!」

「ほお?」


「俺も知識と経験を蓄えてんだよッ!!」



 俺はバビロンに一度、負けている。

 レラさんによると身体能力に大きな差はなかった……、だからこそ、戦略込みの実力で大敗を喫したことになる。


 よくよく考えてみたら、こんなにも完膚なきまでにタヌキに負けたのは初めてだ。

 アホタヌキやクソタヌキと戦うと、勝敗が付く前に有耶無耶になるからな。


 だから……、お前から貰った敗北は、色んな意味で勉強になったぜ。

 一晩眠れずに悶え続け、闘技場でワンコと蛇とクマを相手に戦闘訓練をしちゃうくらいになッ!!



「《窮狸の正拳・椀飯振舞おうばんぶるまい!!》」

「《単位系破壊ユニットゼロ重量ダイン!!》」

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