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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第121話「恋人狼狐・昼の化かし合い⑦ 二つのクイーン③」

「貴女の音と余の声、主役は(かつのは)どちらになるかしら?さぁ、奏でましょう。互いの人生を賭けた本気の旋律を」



 別世界に作られた、たった二人の音楽劇場。

 互いが出演者であり観客、その歌声と演奏の主導権を握ったものが、そのまま戦いの勝者となる。


 カツカツカツ……、指揮者の合図のようにレジェリクエが鳴らしたヒールに合わせ、テトラフィーアが空気に指を這わせる。

 そして、振り上げられた剣の動きに呼応するように、荘厳なクラッシック音楽が周囲一帯を包み込んだ。



「《大規模個人魔導・交響終楽章(シンフィナーレ)》」



 容赦はしない。

 いや、レジェリクエを相手に余裕はないと判断したテトラフィーアが選んだのは、用途別に分けている魔法の最終楽章。

 戦いを終わらせる為のこの曲は、彼女が考え付く限りの攻撃性を詰め込んだ――、クライマックスに相応しい激しい曲調をレジェリクエに叩きつける。



「あはぁ!大規模戦略魔法の連射とか、すごぉい!!」



 両手に持った剣で地面を引っ掻きながら疾駆するレジェリクエの目的は、テトラフィーアが仕掛けてきた攻撃の看破だ。

 350m以上の距離を開け、さらに、高速で移動することでテトラフィーアが発生させた音が着弾するまで一秒以上のタイムラグを発生させている。



「くすくすくす、素敵なクラッシックね。普通に良い曲でワクワクしちゃう」

「聞き惚れて頂いてもよろしくてよ」


「でも、これじゃ鎮魂歌こもりうたにはな――!」



 この程度の音楽じゃ余は殺せない。

 そんな余裕を張り付けた笑みを凍り付かせ、レジェリクエは仕込んでいた緊急回避手段を起動した。


 一切業を染め伏す戒具の能力、『時刻回帰』の効果により、地面に接触させて作っていた『時点』へ戻り……、今まで自分が居た位置で炸裂した炎の大規模殲滅魔法を観察する。



「おかしいわね。音楽で魔法を発生させるのはいいわ、そういう理だもの。だけど、音の発生位置から離れた所で発現するのは余の専売特許だったはずだけれど?」



 この世界の魔法は、呪文を唱えた者の前方1m前後に出現するというルールがある。

 それは、近すぎると声紋が広がり切らず、遠すぎると大きくなりすぎて重ならなくなるからだ。

 魔法詠唱は声質、音量、天候によっても左右され、効果に大きな影響を及ぼすのである。

 だが、レジェリクエが疑問視したのは、目に映った現象が法則を無視しているからだ。


 ……あら、怖い。

 ロゥ姉様の仕込み部屋の中じゃなかったら、ここで終わっていたわね。

 テトラの演奏がどんな物であろうとも、魔法の発動は音が鳴った場所で発生するはず。

 だけど、さっきのは余の現在位置、それも胸付近で発動していた。

 んー、心臓、鼓動、ビート……、あぁ、なるほど。



絶対音階テトラコードを進化させたのね。効果は周囲の音との融合。他者由来の音に音楽を加えることで魔方陣を成立させる……、って所かしら?」

「『他者由来の音』なんて、狭い範囲じゃありませんわ。ランク3・全権音階オーソリティーコードはあらゆる音を理解し、掌握する力。風に舞う木の葉の挙動すら手に取るように分かりましてよ」


「ちゃんと説明してくれるのねぇ、嬉しいわぁ」

「ご心配なく。攻撃も兼ねておりますので」



 疾走しているレジェリクエのヒールが地面を叩いた。

 その瞬間、カツン。という音はテトラフィーアの声や演奏と混じり、風魔法となって成立。

 細い足首を食い千切ろうと、風で出来た顎が襲い掛かる。



「おっとぉ!これは、ちょっと、反則じゃなぁい!?」



 足元の魔法陣に剣を差し込んで破壊、そのままテトラフィーアに肉薄して一撃を狙う。

 そんなレジェリクエを出迎えたのは、踏み入れることが出来ない密集した音の羅列。


 音は360度に向けて放たれる全包囲攻撃だ。

 だが、亜光速に達する超越者の攻撃に比べれば遅く、レジェリクエの身体能力でも回避や対処は不可能ではない。

 ――それは、350m以上離れ、1秒以上の猶予を持っている場合の話だ。


 彼女達が接近すればするほど、魔法成立頻度は速くなる。

 それは、テトラフィーアが用意した音がレジェリクエに届くまでの時間が短くなるから。

 仮に、3mまで近づいた場合の猶予は0.01秒を下回り――、レジェリクエの反応速度では対処できなくなる。



「近づけないかぁ。剣士にとっては致命的ねぇ」



 当然のことながら、テトラフィーアはレジェリクエが出す音を使い、高い精度の未来予知を行っている。

 心音、関節の駆動、呼吸、それら欠かせない体内音は、生命である限り止めようがない。



「魔法はどうかしら?《雷光槍》……、あはぁ、そりゃダメよねぇ」



 レジェリクエの支配声域は、その声が正しいものであると誤認させる。

 故に、呪文を唱えた場合は完璧な詠唱として扱われ、不発することはない。

 だが、今回の雷光槍は発動せず、レジェリクエの背中に汗をかかせただけに終わった。



 ……ただの音すら魔法に仕立て上げられるのなら、その逆もできて当然か。

 呪文に余計な音をくっ付けて無効化される。

 魔導師にとっての致命傷『星の対消滅(ディサピアルスター)』の疑似再現かぁ、嫌な一手ねぇ。


 テトラに攻撃するには亜光速以上で強襲を仕掛けるしかない。

 けれど、バッファなしの余の移動速度なんてぇ、ただのタヌキにも劣る愚鈍。

 あぁ、瞳に魔法陣を映せるロゥ姉様が羨ましい。



「無いものねだりをしても仕方がないしぃ……、創意工夫で乗り切ろうかしらね?」


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