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第110話「恋人狼狐・朝の考察④」

こんにちは、青色の鮫です。

もうすぐ9年目……という所で、カミナが二人に分裂するという、極大のミスをしました。

推理系小説の回答編でやっちゃダメすぎる大失態に、ソドムも激怒しております。


カミナはプロジアと会っており、結界の外の天窮空母に乗っているのはおかしい。

あぁ、どっちかが狐なのかな?


そう思った読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、普通にミスです。

第104話「人狼狐・夜明け」の本文と内容を修正し、ここに訂正とお詫びを申し上げます。



「という事で、これからの作戦なん……、あら、丁度良かった。リリンから電話だわ」



 唐突に鳴った携帯電魔を手に取り、レジェリクエが笑う。

 ワルトナとテトラフィーアの考察は終わり、残されているもう一つの懸念『130の獣』の情報が手に入ると、妖艶な表情で端末を操作する。



「私レジェリクエぇ、今、温泉宿でくつろいでるのぉ」

「緊急時なのにサボらないで欲しい!」


「くすくすくす、流石に冗談よぉ。今はロゥ姉様とメナフとメルテッサで作戦会議中。議題はもちろん、狐の捕まえ方よ」

「ん、カミナはいないの?レジェ達と合流していると聞いた」



 エゼキエルを通してカミナと通信したリリンサだが、結界内で起きた事のあらましは把握できていない。

 理解しているのはレジェリクエ達が人狼狐でないこと、そして、ワルトナが敵であることだ。



「カミナは別室にいるわ。天窮空母のシステム更新に、ラボラトリームー側の対応、転移の魔道具を改良して外に出られないかの実験などなど、忙しくてねぇ」

「なるほど、天窮空母から帝王枢機が出撃できたのも、カミナの調整のおかげ?」


「当然。……、今は天窮空母が観測した情報をまとめて貰っている最中。ということで、余はリリンが持っている外の情報が喉から手が出るほど欲しいのぉ」

「話す。けど、そっちの情報を嘘偽りなく教えてくれることが条件」


「くすくすくす、聞きたくない情報が含まれていると思うけれど、それでもいいのかしら?」

「いい。ワルトナが人狼狐だという事は分かっている」



 いつもの平均的な声で告げられた、的確な正答。

 それに感心しつつ……、リリンサの扱い方をよく知るレジェリクエは、先に情報収集をすると決めた。



「余達が知っているのは、ダルダロシア大冥林が木星竜であるという事実。それが130の頭かどうかは憶測でしかないわ」

「結論から言う。130の頭はそのまま130匹を指す。木星竜を含めたすべての皇種130体が襲来するということ」


「ぇ……」



 130の頭が130体の皇種を指す可能性をレジェリクエ達は考察し……、否定している。

 その中には白銀比やアマタノ、那由他や蟲量大数と言った、金鳳花が操作しえない存在が居るからだ。



「どういうことかしら?那由他様まで敵に回っているというの?」

「違うけど、近い。130の頭の中にいるタヌキの代表はエデンだから」


「ッ!?」



 レジェリクエにとって、タヌキ真帝王・エデンは世界最凶の存在だ。

 尊敬するローレライが全力を出して、いや、全力を超えた神の力を手に入れて戦い、蹂躙と呼ぶべき敗北を受けた。

 そんな抗いがたき絶望が敵に居ると知り、きつく拳を握る。



「130の獣は、金鳳花が用意した種族代表。ダルダロシア大冥林に住む30体の皇種と、皇種の資格を与えられた疑似皇種だと、紅葉は言った」

「なるほど……、白銀比様の長男が率いているのねぇ。それで、リリンは何匹の皇種を処理したのかしら?」



 別室に控えているカミナが何も言って来ないのは、情報過多で纏め切れていないからなのね。

 なら、敵側にも相当の被害が出ているはず。

 あぁ、もう、テトラの耳があれば、無駄な考察なんてしなくていいのに。


 近くにテトラフィーアが居ないことに文句を言いつつ、レジェリクエは現状の妥協ラインを設定。

 20体/130体。

 全体の15%ほどが処理済みなら上出来。

 リリンサが電話を掛けてきている以上、ホロメタシスが率いる帝王騎士団の奮戦も期待できる。


 そう試算したレジェリクエは、リリンサの平均的なドヤ声を聴いて戦慄した。



「大体は全滅させた!」

「……は?」


「友達になったアルミラユエトとベアトリクス、操られているラグナガルム、七源の種族の眷皇種以外は私とソドムで全滅させた!超カッコイイ、魔帝王機・エゼキエルリリーズ=ソドムで!!」



 ……。

 …………。

 ………………レジェリクエ、ローレライ、メルテッサ、メナファス、絶句。

 開いた口から漏れ出た乾いた笑いの四重奏が、狭い室内に木霊する。



「全滅させたって……、いや、いいわ。カミナが戻ってこないのが、これ以上ない証拠だもの。メルテッサ、座りなさい」

「ぼくだってエゼキエルリリーズの開発協力者だぞ!!見る権利はあるに決まって、ももふぅ!?」



 ローレライに取り押さえられたメルテッサの口に、メナファスがまんじゅうを詰め込んだ。

 二人の悪い顔が物語っているのは……、『抜け駆けすんな』。

 エデンと重火器という特大の興味が外にあるのは、この二人も同じなのだ。



「なるほどぉ、流石はタヌキィっと言ったところねぇ。凄まじ過ぎて開いた口を塞ぐのも大変」



 歴史に名だたるクソタヌキィ、『ソドム』。

 その正体が、ソドム、ゴモラ、エルドラドの三匹が使う名義だということに、レジェリクエは気が付いていた。

 だが、その実力が130体の皇種を一方的に虐殺できる程とは聞いていない。



「ソドム達が仲間で良かったというべきか、エデンが敵なことを嘆くべきか。判断に困るわねぇ」

「今はソドム、ゴモラ、エルドラドが対応中。帝王騎士団もいるし、ダルダロシア大冥林の脅威はほぼ取り除かれていると思う」


「ほぼ?何か気になることがあるのかしら?」

「ロリコンがヴィクトリアに会ったと言っていた。もしも、蟲代表が彼女なのだとしたら厄介だと思う」



 残っている敵は、8体。

 その内、判明しているのは。


 狼……、ラグナガルム。

 狐……、紅葉。

 竜……、木星竜。

 タヌキ……、エデン。

 さらに、ルドワール大隊が鳥、カナンの大隊は魚と交戦中であり、それは、疑似皇種だと判明している。

 そして、完全に不明なのは……、蛇と蟲だ。



「ヴィクトリアが敵、ありえない話じゃないけど……、可能性は低いと思うわ」

「それはなぜ?」


「ホーライの話じゃ、ヴィクトリアは無色の悪意から解放されている。なら、彼女自身が狐というよりも、洗脳された蟲を取り返しに来たって方がしっくりくるもの」

「……そういうこと。前にユニクが言っていた。ミナチルの村を襲った蟲の大量発生は王蟲兵・ケイガキの仕業だったと」


「!!ちぃ、確定かぁ。嫌な予感は当たっても嬉しくないものねぇ」



 ユルドルードの旅の目的は、ヴィクトリアの捜索と王蟲兵の討伐だった。

 その話をレジェリクエが耳にした時、ヴィクトリアと王蟲兵の関係を理解していなかった。

 故に聞き流してしまった致命的な違和感に気づき、静かに奥歯を噛む。



「そっちの話を転がしているのも金鳳花なのね。そういうこと……」

「どういうこと?教えて」


「ワルトナとテトラフィーアがなぜ裏切ったのか。その理由が判明したってことよ」

「んっ……!テトラも」



 バラバラだった物語が、一本につながっていく。

 リリンサが家族と別れたのも、

 ワルトナが大聖母ノウィンに引き取られたのも、

 レジェリクエがローレライと出会い、国王を目指したのも、

 カミナ、メナファス、テトラフィーア、彼女達と共に心無き魔人達の統括者を作ったのも。


 全ては、作られた筋書きの上。

 そしてそれは、大聖母の計画を利用した……、金鳳花の暗躍の結果だ。



「リリン、こっちの状況を話すわね」

「わかった」


「人狼狐は、ワルトナ、テトラフィーア、セブンジード、ヴェルサラスク、シャトーガンマ、メイの6名。金鳳花と二人の兄を足せば9人よ」

「テトラが敵だというのなら……、納得だと思う」


「メルテッサには事実を伝え、ホーライは無干渉を宣言。アルカディアとキングフェニクスも確保」

「……え。ユニクは?それにサチナも」


「サチナは襲撃され、テトラの手に落ちている。そして、ユニクルフィンはワルトナと一緒に行動中よ」

「そ、そんな……、」



 ワルトナとテトラフィーアが敵と聞いた瞬間、リリンサの脳裏には最悪のシナリオが浮かんでいた。

 そして、それを実現させるだけの実力を敵が持っていることも。

 嫌な汗が流れ落ちていく感覚に必死に抗いながら、リリンサは口を開く。



「レジェ。なぜ、落ち着いていられるの?レジェだって、一番の友達が裏切ってるのに」

「そうねぇ、取り乱すとテトラが喜ぶからかしらぁ?」


「んっ」

「相手は余と同等の頭脳を持つ二人。数で負けている上に用意周到な準備をしている。冷静に対応しなければ勝てないわ」



 言外に『頭を冷やせ』と告げたレジェリクエの声には魔力が宿っている。

 世絶の神の因子・『支配聖域』。

 レジェリクエにのみ許された神の御業が、リリンサの激情を刺激する。



「それはそう、だけど、悠長に構えていいとは思わない!!」

「でしょぉねぇ。だって、ワルトナはユニクルフィンと一緒に一夜を過ごしたんだものぉ」


「ぇ。」

「無色の悪意が煽るのは欲求なのでしょう?人間の三大欲求ぅ、食欲ぅ、睡眠欲ぅ、あと一つは何かしらぁ?」


「せっ、せいょく……」

「正解!くすくすくす、リリン、まんまと騙されたわねぇ。ワルトナは初めから、貴女との勝負なんてどうでも良かったんでしょうね?だってぇ、有耶無耶になるって分かっているのだものぉ」


「むぅ……」

「余の読みではぁ、ワルトナの欲求はユニクルフィンとの駆け落ちよぉ!貴女を仲間外れにしてぇ、二人で楽しく暮らすのぉ!!」


「む”ぅ……」

「でもそれは数年で終わるでしょうね。きっと子だくさんな家庭になるわぁ。だってワルトナってぇ、む、っ、つ、り、え、っ、ちだものぉ」


「む”ぅ”ぅううううううううう、ダメッ!!絶対にダメッッ!!」

「それが嫌なら、白銀比様の結界をどうにかして中に入ってきなさい。そして、ワルトナを尻尾でどつきなさぁい」


「分かった!!」



 勢いよく叩き切られた携帯電魔を眺め、レジェリクエが妖艶に笑った。

 支配聖域を使用した全力の煽り、それが、心無き魔人達の決戦兵器を起動するための認証キーだ。



「二股を掛けられた女同士を衝突させるとか、えぐすぎ。これが人のやる事か」

「何を言っているのぉ?これは魔王の所業よぉ、まっとうな論理感なんてある訳ないでしょ」


「でしょうね。で、ぼくは何をすれば良いのかな?先に言っておくけど、アレの間に挟まる勇気はない」

「くすくすくす、じゃ、余達はテトラを潰しに行くわよぉ。もう、鳴いたって許してあげないわぁ」


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