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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第102話「人狼狐・夜の襲……、魔帝王機、降臨!!②」

「欲に塗れた結果がこれか。やれやれ……、」

「鬼ごっこで本物の鬼を出してくるなんてね、やるじゃん、おねーちゃん」



 紅葉の下に集結してゆく皇種・疑似皇種の群れ。

 それらが求める欲望は違えど、抱いている感情は同じ。


 タヌキ=絶望。


 そう、彼らは知っているのだ。

 歴代の皇種の記憶を植え付けられているからこそ、歴史の展開点に出現する三匹のカツテナイ・クソタヌキーズ『ソドム』を良く知っている。



「まだだ、まだ終わった訳じゃない!!」

「エゼキエルは過去に何度も落とされている。それは記憶を紐解けば分かるぞよ!!」

「弱点を洗い出せ、通用しそうな攻撃を片っ端から試せ!!生きながらえて、紅葉様から恩賞を貰うのだ!!」


「……。」

「……。」

「……。」



 降臨してしまった絶望、明らかに強化されている新型エゼキエルを前にした者の反応は二つに分かれている。

 血気盛んな前者は、金鳳花から歴代の記憶を授かった疑似皇種。

 エゼキエルが成した歴史を知っていようとも、現在の自分自身の方が上回ると信じて疑わない、若輩たる仮初の皇。


 疑似皇種は、正規の皇種に仕えている眷皇種だ。

 彼らは権能の一部を皇種から下賜されており、それは種族特性として代々受け継いできたもの。

 先代や先々代の知識であってもそれなりに有用、そして、金鳳花は植え付けた記憶に『最適化』という名の強化を施していた。


 脈々と続く皇の記憶を完全に読み解き、己が力として扱うには数百年の研鑽を要する。

 故に、大半の皇種がそれを成し遂げる前に散り、種としては緩やかな成長か退化、もしくは現状維持となるのである。


 そしてその原因は、情報が多すぎるからだ。

 継承される皇種の権能は同一ではなく、宿し者の適正によって微妙に変化する。

 これにより、自分にとって有用な情報と使えない情報が混じり、結果論として試行錯誤が必要になるのだ。

 だが、金鳳花によって植え付けられた記憶は、過去の皇種が能力を行使する手順を抜き出したもの。


 とりあえず使える、そしてそれは眷皇種であった時代よりもずっと強力。

 そうして慢心した疑似皇種達が、一斉に空へ視線を向けて駆け出した。



「パチモン皇種が行ったが……。俺らどうするよ?」

「……。いや、アレは無理だろ。クソタヌキノリノリだったぞ」

「今度、子供が生まれるんだ。顔、見たかったなぁ……」



 全体の5分の1、正真正銘の皇種達が抱いているのは、あきらめムード。

 正規の手順で継承した記憶を読み込んでいる彼らは、ソドムのエゼキエルを倒す難しさを理解している。



「パチモン共が煽られている欲求は皇種に成り代わろうとする出世欲。だからこそ、強き者に挑む下克上を夢見ている」

「だが、少なくとも私は違うぞ。お前は?」

「メスをメロメロにして侍らせる方法を教えて貰ってよぉ、ようやくこれからって所でよぉ」


「「「はぁ……、やるしかねぇんだ。我らは皇ぞ、自らが望み君臨せしもの」」」


「「「クソタヌキがなんぼのもんじゃああああ!!逆に食ってやるわッ、ボケェエエエエッ!!」」」



 **********



「「「ぶべぇえええええええええ!!」」」


「ん、これで……、80ッ!!」



 半狂乱になりながら向かって来た皇種の集団へ右腕を叩きつけ、五閃。

 真理究明の悪食=イーターによる全自動補正クリティカル機能により、それぞれの刃には切断した相手に最も有効な魔法が付与されている。


 エゼキエルリリーズの戦闘は、まさに圧倒的だった。

 戦闘開始直後、やみくもに突っ込んできた疑似皇種の群れは言うまでもなく、瞬殺。

 その後、様子見をする理知が残っていた者たちとの戦いでも、一方的な戦局(ワンサイドゲーム)としか言いようのない事態と化している。


 シールドクラッシャーハンド、『魔帝王の左腕』、これが全ての元凶。

 防御面を重要視するリリンサが特にこだわった、エゼキエルリリーズの継戦能力を何倍にも引き上げる魔王兵装だ。


 巨大な円筒状の左腕掌の中央、そして、半月上に並ぶ爪状計測器が観測した相手のステイタスは瞬時に悪食=イーターで解析され、ソドムの知識と照合。

 運動性能やエネルギー量、物質強度と脆弱性、世界への干渉力などなど……、0.01秒にも満たない時間で導きだされる『クリティカル』情報を使用し装甲を強化。

 あらゆる攻撃を最も防御力が高い状態で受ける絶対防御の盾に傷一つ付けられず、皇種たちは足を止めることになる。



「次は、パンダと、猿と……、あの泳いでいる奴は何!?」

「カピバラだな。潜水の権能、空気中にも水分はあるだろ?それに潜ってんだ」



 ダルダロシア大冥林から伸びてきた巨大な竹を足場にして、パンダと猿の疑似皇種が跳躍。

 エゼキエルリリーズへ痛恨の一撃を与えるべく、権能を宿した拳を振るう。


『竹節の権能』

 植物の竹を操る能力……と誤解されがちなこの力は、物質に様々な能力を宿した『節』を強制的に発生させる。

 節とは物質の境界面であり、竹はその節ごとに成長する。

 パンダの皇の拳が着弾すれば、エゼキエルリリーズの内部に『断裂性』を宿した節が発生することになる。


『袈裟懸けの権能』

 木の上を移動する猿の強襲を受けた冒険者は、上から下へ斜めに裂傷を負う。

 その攻撃を権能へ至るまで高めた猿皇の爪は、相手のどこに触れたとしても物理法則を無視し、右肩から下脇腹に向かい両断する傷を穿つ。


 この二つへ対抗するために魔帝王の左腕が導き出した答えは、魔法による非接触防御。

 外装に映し出したホログラム魔法陣を空気中に転写し、原初守護聖界をベースにした防御陣を形成する。



「ぐぉら!!」

「きぃぁ!?」



 両者の攻撃は、相手に触れた物質に作用する。

 権能の効果によって防御魔法陣に断裂性を有した節が発生し、右側から左下へ向かい亀裂が走る。

 だが、エゼキエルリリーズには欠片も影響がない。



「ま……、な、これ」

「空気が重ぇ……」



 物理現象弱体化ジェネレーター、『魔帝王の靭帯翼』。

 エゼキエルリリーズの両翼が発揮しているアンチバッファ、その正体に気が付いた時にはすべてが遅い。


 左右の肩に取り付けられているジェネレーターユニットが散布しているのは、環境が起こす現象の規模を減退させる紅蓮の金属粒子。

 大半の皇種やそれに準ずる超越者は、毒やアンチバッファに耐性を持つ。

 故に、このジェネレーターは相手そのものではなく、相手が起こす現象をコントロールするように設計されている。


 光速で移動するラグナガルムを例に挙げるのが分かりやすい。

 ラグナガルムの権能は光に作用し、自身を光だと世界に認識させることで、光速を得ている。

 だからこそ、空気中の光の屈折率が変更された場合、光速で移動できなくなる。


 二匹の皇が動きを止めたのは、散布された金属粒子が周囲の空気流動を阻害しているから。

 まるで極寒の金属に閉じ込められたかのようなこの現象は、エゼキエルリリーズに新たに搭載されたアンチバッファシステム、『摩訶鉢特摩まかはどま』。

 相手の脆弱性に直撃する第八寒地獄の風、それを彩るのは――、鮮血。

 故に、大紅蓮地獄とも呼ばれている。



「消し飛べ!《魔帝王の等活獄(デモン・ファースト)》」



 断末魔の叫びすら残せない、それがリリンサが求めた『魔帝王の右腕 』による斬罰の結果だ。

 エクスカリバーの刃は、『絶対勝利』を宿している。

 それは物質を絶対に破壊するグラムと似て非なる、求めた結果を手に入れる力。


『勝利』それが何を意味するかは、人によって異なる。

 だからこそ、このエクスカリバーの刃は破壊するのみならず、物質の状態を『勝利条件』へ書き換える。


 リリンサが欲したのは、命令を自動で行使する魔王の右腕の便利さ。

 願うがままに形状や能力を可変させ相手の命脈を一撃で絶つ、決死の刃。

 そして、現在振るわれている勝利条件は……、『分子レベルでの崩壊』。

 紅蓮の霧と化した肉体が、エゼキエルリリーズの刃の挙動に追従する。



「あのカピバラ?レーダーから消える時がある。なぜ?」

「空気として認識されてるっぽいな。奇襲されても面倒だ、周囲一帯ごと吹き飛ばせ」


「了解!!」



 エゼキエルリリーズの右腕が通常兵器であるならば、『魔帝王の脊椎尾』は決戦兵器と言うべきであろう。

 それは、リリンサの主武装が魔王の脊椎尾だったことからも明らかだ。



魔導立方結晶陣(デモンキュービクル)、起動。装填・《天撃つ硫黄の火(メギドフレイム)》」



 五十重奏魔法連(クィンクァゲテット)×五十重奏魔法連(キュービクル)×五十重奏魔法連(マジック)、縦横高さの三方向に魔法陣を積層させることで、尋常ではない数の魔法を発射するリリンサの本気の一撃。

 エゼキエルリリーズの尻尾には、それを機械で自動化したシステムが搭載されている。


 そもそも機械とは労力を減少させ、作業効率を上げるための道具だ。

 故に消費する魔力はリリンサのものではなく、核である覚醒エクスカリバーのエネルギーを利用。

 リリンサが支払うコストは魔法一発分という、カツテナイ・コストパフォーマンスの実現した。



「《魔帝王の大叫喚獄(デモンフィフス)!!》」



 横薙ぎに振るわれた魔帝王の尻尾が円を描き、そして、全方位360度へ向かい、25万発の魔法陣が転写された。

 重なりすぎた魔法陣は真紅の球体となり、直径7mの悪食=イーターと化す。

 一瞬で構築・崩壊するそれは、近づいていた33の皇を道づれに、ダルダロシア大冥林に巨大な傷を付けた。



「ん、凄い威力。さすが私達のエゼキエルリリーズ!!」

「今ので殺った合計117。リリンサを除いて残り12か」


「木星竜、紅葉、ベアトリクス、アルミラユエト、ラグナガルム、ヒャクゴウ、あとは?」

「チィーランピンが死んでてマイナス1、鳥と蛇と魚と蟲がいなかった、あと一体は……ちっ、だよな、最悪だぜ」



 轟轟と燃えるダルダロシア大冥林は、恐ろしいほど沈黙している。

 紅葉が参加者として設定した生物の95%が脱落、だが、本番はここからだ。

 残ったのは始まりの皇種、蟲、竜、鳥、蛇、狐、魚。

 そして……、



「そーどーむくん、あーそびましょー」

「那由他様が居ねぇからって調子に乗ってんじゃねぇぞ、……エデン」



 タヌキ。

 そのレベルは9999阿僧祇。

 蟲量大数・不可思議竜・那由他、始原の皇種に次ぐ――、世界第4位だ。


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