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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第94話「人狼狐・夜の襲撃 ロリコンとオタクとフェチ」

「もうすぐ合流地点ですが……、あまりはしゃがないでくださいよ」

「了承しかねる。我にロボット物を布教した自分の失態に文句を言うこった」



 アップルパイシェルターによって、恐怖結界の再設置は完了した。

 ヴィクトリアと分断されるという想定外があったものの、そもそも、彼女の存在自体がイレギュラー。

 正体が掴みきれていない以上、安全に別れられたのは僥倖。

 そう判断したエアリフェードとシーラインは当初の予定通りに結界に添って移動し、合流地点へ到達した。



「……くぁーはぁーー!!この目で見ても信じらんねぇなぁ、おい!!」

「帝王枢機・アップルルーン=ゴモラ。私も初めて見た時には度肝を抜かれましたよ、えぇ」



 颯爽と森を駆け抜けた先、少し開けた草原にその機神は鎮座していた。

 天高く輝く月光に照らされた姿は、荘厳な仏像を彷彿させる。

 ジャフリート国に存在する本物の仏像が一つでも機神であったらいいのにと、シーラインは感嘆の溜息を吐いた。



「勝負は俺様の勝ちだな、シーライン」

「ちっ、負けも負けだ、大負けすぎて嫌になる。勝者は優雅に月見酒ってかぁ?アストロズ」



 深真紅の機神の前にいる者は4枚。

 アストロズ、ベアトリクス、暗号熊、ラグナガルム。

 周囲には食事をした痕跡があり、明らかに楽しんでいたのが見て取れる。



「無事で何よりですね、アストロズ。どうです?素晴らしい増援だったでしょう?」

「ちっ、お前、俺様達を試してやがったな?」


「はて、何のことでしょう」

「無色の悪意を持っているかどうか……、へっ、疑いは晴れたかよ?」


「もちろん。そして、これからは隠し事をすることもなくなるでしょう。皆、レベル100000となったのですから」



 アストロズとシーライン、双方は皇種を殺害したことにより、超越者として必要な条件を3つ満たした。

 ・神と同じ姿を得る=人化する。

 ・レベル99999に到達する。

 ・皇種を殺害する。


 そうして、超越者見習いとなった彼らは一堂に会し、これからを見据えて言葉を交わす。



「リリンサとセフィナは、あぁ、アップルルーンの中ですか」

「休息を取らせた。長丁場のようだからなァ」



 現在の時刻は深夜2時。

 アストロズ達がこの場に着いたのが1時過ぎ、普段なら寝ている時間であるリリンサとセフィナだが、事態を考慮して徹夜で行動するつもりでいた。

 だが、アストロズはそれを良しとはしなかった。


 働きたいなら寝て回復しろ。

 ガキの弱点は耐久力だ。それはお前らも変わらねぇ。


 半ば無理やりにアップルルーンに押し込み、ゴモラにコクピットの扉を閉めさせた。

 そうしてこの場には、アストロズとベアトリクス、ラグナガルムと暗号熊のみが残されたのだ。



「クマと狼が増えてますね?ベアトリクスちゃんは良いとして」

「こいつはオイラが直々に分からせたから大丈夫ダゾ。ラグナガルムはリリンサと友達だから問題ねーゾ」


「そうですか。ふむ、我々では手を噛まれるだけでは済みそうにありませんね。仲間というのなら一安心ですが」

「そっちの、アルミラユエトはどうしたんだゾ?」


「あぁ、別れましたよ。ヴィクトリアと接触するのは御免だーとか言って」

「アレにあったのかダゾ!?」



 ダルダロシア大冥林に住む者にとって、ヴィクトリアは複雑な存在だ。

 その姿はひ弱な人間にしか見えず、そして、誰もが彼女と戦ったことはない。

 戦いの直後に現れる、死の未届け人。

 感覚を研ぎ澄ませている戦闘中ですら接近を感知できなかった不気味さ、そして、一切の情を感じさせない無機質な声で語る底しれぬ恐怖を纏う彼女は、不可侵の存在として畏れられている。



「ダルダロシア大冥林の氾濫、皇種の襲来を防ぐという当初の目的は達成いたしました。これも皆様の尽力のおかげです。ご協力、感謝いたします」



 エアリフェードは深々と頭を下げ、今回の功労者へ礼を捧げた。

 特に、ベアトリクスとラグナガルムとゴモラには謝礼の贈答を約束し、一応の決着をつける。



「ひとまず、当面の危機は去ったと見ていいでしょう。アップルパイシェルターがどのくらい維持できるのか不明ですが、内部では既に新しい恐怖結界が稼働中ですので」

「ここまでやって『当面』かよ。数年ぶりに筋肉痛になったんだが?」

「我もだ。あー温泉に漬かりてぇ」


「はっはっは、私もですよ。ここに居ても仕方がありませんし、帰りましょうか」



 ここはダルダロシア大冥林を左右に半周した場所、そして、温泉郷があるのは森を隔てた反対側だ。

 だが、エアリフェードがここに居る以上、距離など無いに等しい。

 超越者として二人よりも先を歩いている彼にとって、知っている場所に転移するなど造作も無い些事だ。



「……待て」

「どうしましたか?シーライン」


「我はあの機神に乗ってみたい。飛べるんだろ?空」



 ヴィクトリアと会話している最中に脳裏の端で見た映像。

 それは、空を飛ぶアップルルーンの掌に乗ったアストロズを通して見た、美しい夜景だ。



「どうでしょうねぇ?リリンサ達と一緒にゴモラも休んでいるかもしれませ……」



『報酬2倍で手を打つ。食べきれないくらいのアップルパイ・パーティー二日分。』

 ひらひらと落ちてきた紙を見たエアリフェードは、二重の意味で戦慄した。


 一つは、アップルパイなんかでいいのかという葛藤。

 そしてもう一つは、その紙が不安定機構・大聖母が下す勅令書だからだ。



「アップルパイでいいそうですよ、シーライン」

「かかっ、二日分とかケチくせぇ、どうせやるならジャフリート国で縁日でも開いてやらぁ」



 気前よく宣言したシーラインの前に、アップルルーンの掌が差し出された。


 風に棚引く着物の心地良さと、見晴らしのいい景色。

 さながらロボット小説の主人公になったかのような気分だぜ。

 人生最大級の苦労だったが、得た物も多い。

 悪くねぇなと、シーラインは思った。

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