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第92話「人狼狐・夜の襲撃 オタクと少女②」

「――でよ、うぬぼれてる師範共と戦わせてみたら……、ものの見事にボッコボコにしちまって」

「刀に雷魔法は反則じゃない?」


「立派な作戦だって話でよ。刀の細工に注目させないために、猫耳生やした和風ドレスなんぞを着やがって」

「なにそれどんな服?」


「写真見るか?アルバムアルバム……、おぉ、これよ」

「へぇー!可愛いー!!」



 和やかな雰囲気で行われているのは、シーラインと少女の会談だ。


 ゴリゴリゴリ……と種子をかみ砕く音が収まってくる頃には、彼らはシーラインの身の上話で盛り上がっていた。

 剣皇国ジャフリートの国王として――、いや、エアリフェードやアストロズと一緒に得た数々の経験は話題性に富み、暫くの間この大陸を離れていた少女にとっては目新しい物ばかり。

 特に、最新の流行ファッション(?)を次々に着こなしていく弟子に興味津々だ。



「今ってこんな感じなんだぁ。外大陸は実用性重視だから、あんまり可愛い服ないんだよね」

「外大陸?」


「海の向こうにある大陸だよ。私はそっちに居ることが多いの。留守だと喧嘩を止めるヒトがいなくて」



 海の向こうに大陸があるという情報は、一般的には噂話や空想として扱われている。

 だが、不安定機構の最上位使徒であるシーラインは、『確かに存在する正体不明の離島』程度には認識。

 そして、その地が尋常じゃない強さの生物が住んでいる土地だという事も理解していた。



「よければ、外大陸の話を聞かせてくれねぇか?さっきのタングニョルニルを放り込んだら、どうなる?」

「んー、どうだろう。単体では生き残れないとは思うけど」


「仮にも皇だぞ?」

「この子はレベル999999(ミリオン)じゃなかったでしょ?ウチの子達にはまず勝てないし、帝王騎士団を相手にするにしても、相当頑張らないと。要練習だね」



 笑顔で語る少女の言葉に、シーラインは愛想笑いを浮かべるので精いっぱいだ。


 おいおい、タングニョルニルの実力は我と同じかそれ以上。

 相手に傲りがあり、我の初見殺しが刺さったから勝利できたが……、勝敗は容易に逆転する。


 井の中の蛙だったとリリンサに分からせられたとはいえ、我はまだ人類全体では最上位のはず。

 だが、このロリが子供扱いする存在には我では勝てぬし、そんな奴が複数存在する訳だ。

 リリンサ並みの戦闘力を持ってる騎士団とか、はっ、侵略されたらひとたまりもねぇな。



「国王としちゃ、是非、仲良くしてぇもんだが。どうだ?ここはひとつ、橋渡しとかしてくれねぇか?」

「霊王国と?んーーーーーーーー、ダメ?」



 探りを入れたシーラインから視線を外した少女は、木々が深く生い茂る森へ視線を向けた。

 直ぐに彼も視線を向けるも、そこには誰も居ない。

 目を凝らしてバッファを強化し、ようやく、小さな子タヌキを見つけるので精いっぱいだ。



「私に頼むより、不安定機構の大聖母に頼んだ方が良いよ。外大陸の国王だし」

「なに!?ノウィン様がか?」


「あー、違う違う。ゴモラだよ、魔導枢機霊王国・エルムゴモラの国王はタヌキなんだ」

「たぬ……。いや、タヌキ女だとは思うがよぉ」



 シーラインは不安定機構・ブランのトップであり、真っ当な冒険者の頂点でしかない。

 闇に葬られた正史を把握し、あまつさえ、意図的に操作する大聖母の指――、指導聖母と深い関わりを持たない彼はノウィンの素性を知り得ない。



「どうやら根本的な所で化かされてる。そういう認識で良いんだよなぁ?えぇ、タヌキの指のエアリフェードさんよぉ?」

「はぁはぁ、私は魔導師ですよ。全力疾走をしてきた直後なのですから、少し待ちなさい」


「これでも食らえや、おらぁ!!」



 シーラインとエアリフェードは魔法で認識を繋げている。

 情報は相互に伝達されており、現在地を含めた互いの情報を正しく認識できていた。



「うひゃぁ危ない!?」

「ちっ、見事にキャッチしやがって」


「瓶は止めなさい、瓶は!割れたら魔導服に掛かるでしょうが!!」



 茂みをかき分けて登場したエアリフェードに向かい、色の濃いブルーベリージュースが音速で飛ぶ。

 気遣っているように見える的確な嫌がらせに眉をしかめつつ瓶の蓋を受け取って開け、3つのコップに均等に注ぐ。

 そして水と氷を適量入れて希釈し、手作りジュースを完成させる。



「この非常時に貴方って人は!!」

「サンキュー。ほれ、このジュースも美味いぞ」

「ありがと」


「こともあろうに、ロリと!!ロリと仲良く戯れているなんてッ!!!!」

「お前がやれっていったんだろーが。くやしいなぁ?くやしいなぁ??」



 満面の煽りを受け、エアリフェードのコップに亀裂が走る。

 立ち上る濃密な魔力の渦、それはエアリフェードが本気で怒っている時のものだ。

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