第83話「人狼狐・ゴモラとソドムの主張」
「さてと……、ゴモラ、これからどうすんだ?」
「ヒャクゴウをブチコロコロがすけど?」
「2回転とはアイツも大変だなぁ……、じゃなくて、金鳳花と真正面からやり合うかっつー話だよ。狙いはリリンサ達なんだろ?」
ヒャクゴウと戦い始めた直後、ゴモラはソドムに連絡を入れている。
それは、万が一敗北した場合への備え、そして、あわよくば面倒臭い戦闘をソドムに押し付ける為の謀略だ。
そして、ゴモラの性格を熟知しているソドムは、こっそり視界を除きつつも、ガン無視。
いつでも駆け付けられるように準備をしつつも、『魔帝王機』の建造を優先させていたのだ。
「ノウィンが神の根城に拉致されたってことは、神は本気で鑑賞している。当然、今回の物語は相当な規模で拗れてるはず」
「だな。ヒャクゴウの口ぶりからして、あの子が重要なターニングポイントになるのは間違いねぇが……、ちっ、対策どころか、むやみに語るだけでも時間逆行の魔法が発動しかねねぇ。あの術式はかなり不安定だからな」
「絶対にリリンサに感づかれる訳にはいかないし、後手に回るしかないけど……。問題は、今回の物語はクロスオーバー、独立していた物語が絡み合った集大成である可能性が高いこと」
「俺とゴモラ、それと王蟲兵が主人公の『滅亡の大罪期』、ホウライとヴィクトリアの『ホーライ伝説』、シアンとカーラレスの『無色の悪意の血族』、『蛇峰戦役』に『きつね遊戯』、『白天竜存亡』、そして……、あの子の『ヴィクティム・ゲーム』」
「ラルバとアサイシスの『ブルファム建国記』、フランベルジュ国の『三国間戦争』、レジェリクエとローレライの大陸統一『世界核戦争』の流れもそう。たぶん、これら物語の続編が章管理されてて、次々に引き起こされる」
ゴモラもソドムも神の物語には積極的に関与しない立ち位置を心掛けている。
大聖母から情報収集をお願いされたとしても、ゴモラやソドムが意見を言う事はなく、求められた情報をかき集めるだけ。
なんとなく『この国が滅ぶなー』と思っていても、基本的に見て見ぬふりをする。
だが、『滅亡の大罪期』だけは違う。
この物語の主人公は、今のソドムとムーであり、ゴモラやエルドラドも深く関わっている。
ホーライやヴィクトリアですら新参者のサブキャラクターでしかなく、言ってしまえば、滅亡の大罪期は、『巨大怪獣VSロボのメカアクションファンタジー』という、もはやジャンルが違う物語と化している。
「まんまと出し抜かれたぜ。今まで人類に秘密にしてた帝王枢機も引っ張り出されちまった」
「だから、那由他様はゴモラ達に好きに動いて良いって指示を出した。確実に、物語の山場として、帝王枢機も組み込まれてる」
「ほぉぉ、じゃ自重は捨てていいって事だな?よっし、任せろ!!」
「考察が先。ゴモラの読みじゃ……」
第1章 サチナを狙う 『人狼狐』
第2章 ダルダロシア大冥林の強襲 『130の頭』
第3章 シアンとカーラレスとあの子の 『無色の悪意の血族』
第4章 蟲量大数との決戦 『ヴィクティム・ゲーム』
第5章 新しい時代の始まり
「の順。そして、リリンサやユニクルフィンが主人公としてデザインされているのは……、2章まで」
「だろうな。2章でリリンサが負けた場合、第3章からはあの子が主人公として物語を引き継ぐんだろうぜ」
「ゴモラ的にはそれは面白くない。というか、中身がおじいちゃんの転生TSとかどこに需要があるのって感じ」
「ヤジリだなぁ……」
「ほんと邪神。なので、ゴモラ達は第2章ダルダロシア大冥林の強襲 『130の頭』に参戦して、リリンサ達を勝ち組に置く」
「130の頭、わざわざ現存する皇種の数を出してるって事は、ダルダロシア大冥林に限らず、ほぼ全ての皇種が関与する戦いになるだろ?勝ち組ってのは?」
「皇種が一度も死なずに生き残った種族が勝ち組。でも、人間だけは一度死んでもオッケー」
「あー、プロジアが温泉郷にいるのはそういう事か」
「そう、リリンサは次代の人間の皇に内定している。だから、プロジアはどこかで死ぬ予定」
「そこまで弱くないけどなー。皇の記憶を参考に、魔王シリーズと互換の装備を量産してるし」
「たぶん、3章で殺されるんじゃない?ハーレムメイドに仕込みとかありそう」
「そう言われると、ハニートラップであっけなく死にそうではある」
「でしょ?ヴィクティムゲームの参加者は、ユルドルード、あの子、アプリコット、ユニクルフィン。金鳳花はこのメンバーを揃えて再戦する予定だったはず」
「アプリコットの魂は白銀比から奪い、ユニクルフィンは植え付けてあった無色の悪意で操作する、か」
「ユニクルフィンの願いは、『あの子の救済』。もしもリリンサを失えば、その欲求は止まることはない」
「だが、那由他様によって無色の悪意は取り除かれた。なるほどな、だからいつも以上に静観してんのか」
ソドムとゴモラは状況を整理し、これからの戦略を立てる。
それはやがて、歴史書の新たな1ページに「ソドム」の名が刻まれる行いだ。
「何を以て、ダルダロシア大冥林の強襲『130の頭』の始まりとするんだ?今だって、少なくない数の皇種が行動を起こしてるが」
「木星竜、もしくは、アマタノが動いた時点で自重を捨てよう」
「動くってのは、物理的に体を動かしたらってことだよな?」
「そう。あー、エデンとダンヴィンゲンとかの七源の階級も条件に加える。まぁ、戦いたいとは思わないけど」
「それまではリリンサやセフィナのサポートに徹する訳だ。ところで、いつまでヒャクゴウを転がすつもりだ?」
「無意味に転がしている訳ではない。アレをいたぶることによって、ダルダロシア大冥林の他の皇を”分からせて”いる」
「つまり、お前が飽きるまでってこったな。ヒャクゴウ、お前は知らなかったんだろうが……、ゴモラが『京』なのは、軍勢処理担当だから。で、レベル999999を超える強い奴は俺やエルに押し付けられてんだよなー」
レベル999999を超えた者に与えられる階級。
億
兆
京
垓
抒
穣
溝
澗
正
載
極
恒河沙
阿僧祇
那由他
不可思議
無量大数
16段階あるそれらの階級は、レベル999999を倒した数によって決まる。
故に、雑魚処理担当なゴモラは階級が上がりずらく、王蟲兵と戦うソドムは上がりやすい。
だが、王蟲兵が成長しきる前の処理が基本であり、結果、ソドムとゴモラの階級は下位に留まっている。




