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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第77話「人狼狐・夜の襲撃 ロリコン・フェチ・オタク⑨」

「面白い。確かに私の蹴りに耐えられるのなら、友と呼べるやもしれん。耐えられれば、だがな」



 チィーランピンは誘いに頷き、ゆっくりと歩を後ろに進めた。

 その僅かな時間に、アストロズは脳裏へ記憶を駆け巡らせる。

 そうして死を打開するための走馬灯を精査し、気になる情報へたどり着く。



「チィーランピン様よ、お前、ユルドルードって知っているか?」



『英雄・ユルドルード』は、歴史に名を連ねた英雄の中でも抜きん出た実力者だと言われている。


 他種族の皇種にとって人間は非常に厄介な害敵であり、人間側から見た皇種も非常に厄介な害敵だ。

 そもそも論として相互不干渉が基本であり、簡単に戦闘になる訳がない。

 だが、ユルドルードは20を超える皇種と戦い、全てに勝利している。

 圧倒的な戦闘力も当然のように備わっているが、その真価は……、積極性。

 皇種を探して戦いを挑み、人間に有利な条件を突き付けるなど、人類史に刻まれる暴挙だ。



「知らぬよ、出会ったことはない」

「そうかよ」



 チィーランピンは「知らない」と答え、そしてアストロズは、それが嘘だと見破った。


 ……そんなこたァねえな。

 20も見つけている以上、何らかの索敵手段を持っている。

 そのユルドルードが情報を残せていないのなら、コイツは逃げ回っていたんじゃないのか?

 何らかの懸念があって……、例えば敗北を恐れた、とかな。



「戦いを止めるって前提だぜ、追撃はもちろん、殺意を乗せるのも無しだ」

「それでも死んでしまうが故に弱者なのだ。お前も死して恨んでくれるなよ」



 それに、皇種と友好的に接してきたというのなら、もう少し情報があっても良いはずだ。

 ダルダロシア大冥林に住んでいる皇であるアルミラユエトやベアトリクスがよく知らないってのは不自然だぜ。


 結論、チィーランピンは他の皇種と友好的に接せていない。

 それがコイツの意思かどうかは……、攻撃を受け切ってから考えるとするか。



「いいぜ。来いよ」



 アストロズは覚悟を決めるも――、何も準備もしなかった。

 これから起こるのは『予想外の仲裁』、チィーランピンにだけ条件を押し付けこちらは万全に対策するなど、己の矜持に反すると思ったのだ。



「……ッ!」



 その衝撃は唐突に、アストロズの背中を襲った。

 穿たれたのは肩甲骨の間。

 ビキビキと軋む背骨の裏側にある心臓は押しつぶされ、中の血液が血管へ絞り出される。


 後ろ足を上げているチィーランピンを睨みつけながら、アストロズは思う。

 ……おい、これのどこが仲裁なんだよ。

 こんなもん、怒り狂ったアマタノの攻撃と大差ねぇじゃねぇか、と。



「ほぉ!?本当に死なぬのか!?!?」



 ビキビキと全身の骨へ伝わった衝撃は神経、そして筋肉へと伝播。

 アストロズという存在そのものが軋みを上げ……そこに、魔法の効果が適応される。


衝撃吸収機構ダメージバースト


 この魔法こそ、アストロズの強さの全て。

 衝撃吸収機構は、体内に衝撃エネルギーを蓄えて任意で解放するというシンプルな効果しかない、ランク7の魔法だ。

 だが、アストロズは数十年以上も欠かさず発動し続け、そしてそれは、魔法と肉体の融合という稀有な状態へと昇華されていた。


 アストロズの体内に巡る、血液、魔力、リンパ液に続く第四の流れ、『運動エネルギー』。

 それは最早、肉体の一部として扱われており……、容易に皇種の命を奪う蹴りでさえも体内に留めて、支配する。



「がはっ、がふっ……、どうだ?生きてるぜ」

「……。」


「ちぃーと痛ぇが、それでも、生きてる」



 言葉と血を同時に吐きながら、アストロズが笑う。

 チィーランピンとの勝負に勝ったという事もある、だがそれ以上に、アマタノへの足掛かりを掴めたことが嬉しくてたまらない。

 そんなアストロズへ向かられたのは、チィーランピンの訝し気な表情だった。



「《五色の権能(アンカラレス)炎駒えんく》」

「かっ……ッ!?」



 蓄えたエネルギーの流れは次第に体内へ融合し、アストロズの血肉となってゆく。

 そうなるべきである流れは衰えるどころか、勢いが増え――。


 肉体の制御が出来ず、アストロズは地面へ膝を付いた。

 訳も分からないまま腕を大地に突き刺して姿勢を取り繕おうとするも、呼吸すらままならない。



「はっ、はっ……、て、めぇ……」

「このチィーランピンの『とも』になりたいのだったね?」


「……あ?」

とも、それは差し出される存在。『供物』、『供養』、神仏を前に捧げる存在とは、すなわち、神が望む物語の礎となること」


「ちがっ……」

「超越者を食らえば、より強き者となり、物語を生み出す礎となる。それに君の肉体は素晴らしい、供宴に相応しい食事という意味でね」



 見下ろされる視線は、チィーランピンのものだけではない。

 動かせない視線では捉えられない位置に、少なくとも3体。

 そして、チィーランピンのすぐ近くに突然現れた、暗黒の熊。

 そのどれもが、アルミラユエトに匹敵する威圧感を放っている。



「四肢を裂いて分けろ、暗号熊(エニグマー)。生かしたままにするのは得意だろう?」

「一番美味い身体はどうするグマ?」


「金鳳花様に献上する。超越者へ覚醒させたい御方がいるそうだ」

「なるほどな。なら、もっといい供物が来たグマー」



 そう言って振り返る暗号熊、その視線が捕らえたのは……、高速で飛翔する深真紅の機神。

 その掌に乗っている二つの影こそ、リリンサとベアトリクス。



「ボディフェチ!!」



 キュアッ!!っと尻尾を棚引かせ、一閃。

 魔神の脊椎尾から放たれた雷神王の掌が、アストロズとチィーランピンを分断する。



「しっかりして!!死んだら許さない!!」



 転移の魔法で飛んできたリリンサが、アストロズへ突進。

 ただでさえ制御不能な体を海老反りに押し上げる。



「……かっ、死んでる場合じゃねぇ」

「何のことっ!?」


「悪の女幹部に、獣娘アイドルに、魔法少女に、戦隊ロボとかよぉ……、馬鹿かお前、ちっとは加減を覚えろ、馬鹿」

「む”ぅ"!?」



 蠢く魔王の脊椎尾、怒髪天を付いているガチギレアイドル、そして、真っ赤な戦隊ロボ。

 そんな意味不明な夢のコラボレーションを見ずに死ぬ。

 それはあってはならないことだと、アストロズは思った。


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