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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第59話「ユニクルフィンの主張⑬」

 

「よし、いくぜ」

「じゃ、手筈通りにね」

「恩を仇で返すみたいで気が引けるけど……、これも向上なのかもね」



 俺の疾走速度は超音速。

 グラムで空気抵抗や周囲への影響を破壊しながら走った場合、リリン達がいる関所まで3分弱。

 人通りの少ない所を選んで走る為、どうしても時間が掛かってしまう。

 ……だが、それでいい。


 白銀比の部屋から出た俺、ワルト、メルテッサの三人で罠を仕掛けた後、それぞれが別行動をするように見せかける為、三方向に向かって走り出した。

 そして二人は直ぐに建物に入り、転移魔法を使って観測ポイントへ移動。

 ワルトは温泉郷を見渡せる高台、メルテッサは白銀比の部屋から5km以内の部屋に陣取り、レジェリクエとカミナさんの動向を探る。



「見えた」



 祭囃子でにぎやかな街を駆け抜けて、下町へ。

 今、走っている予備資材置き場を抜ければ、関所はすぐそこだ。

 走破まであと15秒、リリンになんて声を掛けようかと考え――、首筋に這った殺意にグラムを差し込んで破壊する。



「……にゃは、やるじゃん」



 つぅ……、と俺の首筋を伝う熱い臨死。

 真っ赤な血液は、俺の未熟さの証だ。



「失敗したのに褒められても嬉しくねぇよ、レラさん」

「前の時の様子見と違って、今のは本気で殺しに行ったよ。もちろん、レーヴァテインを覚醒させてね」



 カリカリカリ、とレーヴァテインの先端が地面をひっかく。

 気だるそうに登場したレラさん、その瞳は冷めきっている。



「本調子じゃないとはいえ、本気の剣筋を見切られるとへこむなぁ。流石ユニくん、成長期」

「単刀直入に言うぞ、無色の悪意を持ってるな?」



 この場にテトラフィーアが居ない以上、問答なんて意味が無い。

 それでも口を開いてしまったのは、姉を切り捨てたくないという我儘と、最適解への布石。



「にゃは!持ってないよ」



 だから、その否定にも意味が無い。

 例え、その声色が俺の良く知る『自称ユニくんのおねーさん』であったとしても。



「あちゃー、信用ゼロとか傷つくなぁ。本当に持ってないのにー」

「そうだな。そのレーヴァテインでレジィとカミナさんの首を取ってきてくれたら信用しても良いぜ」


「……反抗期ってことにするには、過ぎた言葉だよ。それ」

「それはこっちのセリフだ。セブンジードやメイを捨て駒にしたってのは気づいてる。それをそっちも分かってるから斬り掛かって来たんだろうが」



 レーヴァテインは無色の悪意の天敵だが、相手が有効に使えない訳ではない。

 むしろ、二度目の洗脳が効かない人物を排除する武器として見ても、無類の強さを発揮する。

 この剣で殺害された場合、サチナやサーティーズ、ワルトの魔法を受けられず、生殺与奪の権利を握られるからだ。



「いつからだ。レジェンダリアの王位継承の時には既に、無色の悪意を持っていたのか?」

「いちいち琴線に触れるなぁ。ユニくんって、こんなにデリカシーが無かったっけ?」



 デリカシーがない?

 確かにそうだとは思うぜ、だが、人の命を簡単に使い捨てる無色の悪意に比べればマシだ。


『無色の悪意の性質上、挑発には引っ掛かりやすいかもしれない』

 そんなワルトの言葉通り、レラさんは俺の安い挑発に乗って来た。


 かちゃりとレーヴァテインを鳴らし、鷹のようにまぶたを細める。

 ……それが、死を見据えた英雄の目か。



「《疑心闇技(ワンサイド・ダウト)》」



 俺の首へ2回、心臓へ4回放たれた連続剣技。

 そんな命を否定する剣閃を、グラムを振るって破壊する。



「《単位系破壊(ユニットゼロ)圧力パスカル》」



 衝突時のエネルギーを破壊してゼロにし、『攻撃が成功した』という事実から破壊。

 レーヴァテインの『懐疑』に先手を打ち、単純な戦闘力勝負に持ち込む。



「上手いじゃん。ま、そうじゃなくっちゃ、英雄ローレライのおとうと弟子を名乗れないよね」

「何を言ってんだ。村長は親父が蟲量大数と戦うと決めたから、レラさんを弟子にした。なら、英雄を目指したのは俺の方が先だぜ」



 この戦いに勝つには、レーヴァテインは必要不可欠だ。

 最も理想的な結果は、レラさんを味方に付けること。

 だが、それはもう叶わないだろう。

 無色の悪意を取り除く方法『蘇生』を金鳳花に対策されてしまった今、確実な手段は、まだ存在しない。


 だからこそ……、俺はレラさんを殺し、レーヴァテインだけでも回収する。

 容易に使いこなせない神殺しの覚醒体も、メルテッサなら問題なく使用できる。



「あー、そういえば、こんなクソガキの子守りなんか誰がするかって思ったっけ」

「はっ、ガキはレラさんもだろ」


「かもね。16そこそこじゃ今のユニくんと同じで簡単に騙される、馬鹿で自己中なクソガキだ!!《創神幾何学理論(アルカナソーサリィ)・ようこそ、おねーさんの世界へ》」



 一瞬で移り変わった、レラさんの瞳。

 それに呼応するように、世界が展開してゆく。


 魔法陣で出来た扉を踏み抜いたように、俺達の身体が別世界へと放り出された。

 対空した一瞬、上から見下ろした地面に立っているのは二つの人影。

 レジェリクエとカミナさんだ。



「悪いけど、手段を選んでいられるほど余裕がないんだよね」

「だろうな。グラムで付けた傷はそんなに浅くない。動くだけでやっとだろ」



 地面に向かって加速した俺の動きに合わせ、レジェリクエとカミナさんが動く。

 二人が装備しているのは尋常じゃないエネルギーを秘めた手甲。

 明らかに、神殺しを研究して作ったであろう代物だ。



「あっちでやろうぜ、レラさん」

「あん?」


「お前の相手は俺だっつったんだ」

「おまっ……!!」



 俺の背に隠れていた二本の矢。

 正真正銘の神殺しの攻撃であるそれが、レジェリクエとカミナさんに突き刺さる。



「う”っ……!」

「結構、痛ったいわね、これ……!!」



 両手を重ねて矢を縫い留めた二人、だが、威力を殺し切れずに吹き飛ばされた。

 なるほど、カミナさんだけじゃなくレジェリクエまで手甲を装備しているのは、初撃を防ぐ為か。


 だが、それぞれが叩きつけられた先には、すでに、ワルトが放った矢が刺さっている。

 それこそが、あらかじめ決めていた策謀だ。



「《鞍置けの朝雨トランスファー・レイン》」



 無色の悪意への備えをしていたのは、俺だけじゃない。

 むしろ、正確に状況を読み取っていたワルトナとメルテッサは、この展開を想定し、絶対必勝の環境を用意していた。


 レジェリクエとワルトが転移したのは、わんぱく触れ合いコーナー。

 確実に蘇生できるこの場所ならば、一切の躊躇なく、仲間の心臓を射抜けると。

 そして……、



「《開け、エヴァグリフォス宝物殿》」



 カミナさんとメルテッサを飲み込んだのは、世界を破滅へ導く神由来の宝物庫。

 ラルバが生み出し、ホーライによって封印された魔道具を従えたメルテッサが負ける可能性など、万に一つもあり得ない。



 **********



「カミナ先生には恩があるんだがねぇ……、ヴェルサラスクとシャトーガンマを泣かした罪は償って貰うよ」



 射貫かれた手甲は、もう、跡形もなく崩壊している。

 創造と想像を具現化するシェキナの矢に込められていたのは、『風化の想像』。

 それは、物質の強度を著しく低下させると共に、時間経過による魔力切れを引き起こす。



「魔道具に精通しているカミナ先生も、知らないもんは識りしょうがない」

「そうね」


「一方、ぼくはここにある魔道具の全てを知り尽くしている。それだけの知能があるのなら、勝てる道理が無いのは理解してるよね?」



 エヴァグリフォス宝物殿に引きずり込んだ時点で、メルテッサに確実に勝てる人物は存在しない。

 ここには封印されている魔道具の他に、ブルファム王国に差し出された利便性の高い国宝が点在。

 それらは王族の命を守ってきた過去を持つ、正真正銘の救世の道具だ。



「仕方が無いことだが、個人的にはレジェリクエと戦いたかったかも。この前の戦い程度がぼくの実力だと思われちゃ、心外だからね」

「そう。それは良かったわぁ」


「……な、に?」

「世絶の神の因子は、所持していない神殺しには影響しえない。同じ轍を踏むお馬鹿さんが相手なんてぇ、余はとぉーってもラッキーだわぁ」




 **********




「……誰だい、君は。レジェごときに止められるほど、僕の矢は陳腐じゃないんだが?」



 射貫かれた手甲は砕け、それが絶命の一撃になるはずだった。

 意図的に弱めたもう一本の矢と違い、こちらの矢には『加速』と『衝撃』の効果も内蔵。

 冥王竜が好んで使う時間加速による自壊悪化、それに物質を脆くする風化と神殺しの破壊力を乗せたそれを以て、レジェリクエとの決着にするつもりでいたのだ。


 だが、そのレジェリクエ(・・・・・)は無傷で立っている。

 ユニクルフィンによって壊滅させられ、ワルトナによって封鎖されたわんぱく触れ合いコーナー、そのド真ん中で。



「動きにくくて手間取った。けど、条件は満たせたし!《星神支配(ウラノス)!!》」



 手の中にある矢を握りつぶし、ガントレットに魔力を注ぐ。

 それは、戦闘を回避する選択肢を奪う運命操作。

 狙った標的を絶対に逃がさない――、タヌキのからめ手だ。


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