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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第53話「レジェリクエの主張①」

「お待ちしておりました。人を統べし、我らが皇・プロジアさまぁ」



『アヴァロンの隠れ家』の最奥にある和室。

 文字通りの意味で秘められているこの部屋は、レジェリクエがテトラフィーアやワルトナにも秘密で用意していた会談場所。


 そこに姿を現したのは、男性一人とメイドが四人。

 正確には……、超越者が四人と、人間の皇が一人だ。



「おっと、発明家プロジアとして呼ばれたと思ったんだけど。失敗したかな、もうちょっと仕立てのいい服を着てくれば良かったよ」



 冗談がお上手ねと、畳の上で傅いているレジェリクエは思った。

 プロジアが纏っている服は超一級品。

 そのスーツが魔王シリーズに劣るものでないことは、レジェリクエの真横に座っているカミナが頷いたことで理解している。

 ましてや、それと同じ性能のメイド服が4着も用意されているなど……、レジェリクエの初手を挫くには十分すぎる威圧だ。



「せっかく下手に出てくれたんだ、お言葉に甘えさせて貰おうか。ぼくぁ、アプリやダウナフィアみたいに腹芸が得意ではなくてね」



 レジェリクエが出した招待状は、『発明家、プロジア・フォルトマン』宛てだった。

 それは、戦争終結後の後始末が目的であり、その時点では、『人間の皇』が彼であると知らなかった為だ。



「お好きにお掛けになってくださって構わないわぁ。さぁ、ハーレムメイドの皆様も」



 プロジアと必ず行動を共にする4人のメイド、『フレティーヌ』『アースィ』『ウィンディア』『アクアメノウ』。

 彼女たちはプロジアの護衛、兼、世話係として紹介され、会談の際には必ず部屋の四隅で待機する。


 その会を開いた者が愚者ならば、監視されるような立ち振る舞いに無礼を申し付ける。

 その会を開いた者が賢者ならば、笑顔でそれを流し、二度とプロジアを呼ぶことはない。

 そしてレジェリクエは、第三の選択肢を取った。

 同じ数のメイドに擬態させた護衛を用意し、既に席に着かせることで、対等な関係で話がしたいと示したのだ。



「ふぅん……?みんな、ここには食事に来たんだ。埃が立つようなことは許さないよ」

「ますたー、ろーれら」


「フレティーヌ。君にはみんなの監視を頼むよ。できるね?」

「ますたーがそういうなら」



 レジェリクエが用意した4名のメイドは、カミナ、ローレライ、ミオ、アルカディアの4名。

 プロジア達を部屋に招いたのはグオであり、料理の給仕も担当する。

 それを見たプロジアは、『なるほど、かなり深い所まで探る気だね』と呟いた。



「誰に聞いたんだい?ぼくぁが皇だってこと」

「リリンサよぉ」


「なるほどね。ちゃんと支配者側にいるようで安心したよ」



 もしも、リリンサが形式上、レジェンダリアに協力しているだけだとしたら、ぼくぁの正体は利用されないとプロジアは思っていた。

 リリンサの横や後ろに立っているのが誰であるかや、その恐ろしさを十分に理解しているからだ。



「ま、それでもローレライがいるのは驚きだったけど」

「にゃは!ご無沙汰してます」


「カミナも。ぼくぁが会いたいって言ったらアポイトメントが2年待ちとか言うくせに、こういう会には顔を出すんだね?」

「……あら、失礼しました。どうやら不備があったようです。プロジア博士の面会希望なら、オペより優先度が高いもの」



 医師、カミナ・ガンデのアポイトメントは常に2年待ちで固定されている。

 それは、レジェリクエとワルトナが考えた策謀、『雑魚散らし』。

 不安定機構、聖・オファニム大医院、ガンデ技巧店の三つ存在している窓口の全てでアポイトメントを取ることでのみ、面会希望が通る仕組みになっている。



「どうだい?二人とも。ぼくぁのハーレムメイドに加わる気は?」

「ないねー」

「ないですねー」


「あちゃー、残念」



 ユニクルフィンと別れた後、ローレライはプロジアに会いに行った。

 その時にハーレムメイドと戦闘になり、一方的に勝利。

 特に、好戦的な性格のフレティーヌは心身ともにボッコボコされており――、それ以降、彼女の目標は打倒ローレライとなっている。



「ローレライはともかく、カミナは本当に欲しかったのに。いやー、この、天窮空母―GR・GR・GG―は君のデザインでしょ?」



 プロジアに届けられた招待状には、一冊の本が同封されていた。

 それは、天窮空母の設計図。

 プロジアを吊り上げ、そして、戦争終結後の後処理を確実に行う為の一手だ。



「そのお話は余からさせて頂くんだけどぉ……、お料理の配膳も始まったことだし、食べながらゆるーくお喋りしましょう」



 末席に座っている数合わせ(アホタヌキ)の暴発を防ぎつつ、率先してワイングラスを傾ける。

 中身はただのぶどうジュース。

 自分の、否、人類の命運が掛かっている局面で酒を嗜んでしまうほど、レジェリクエは愚かではない。



「その様子だと、余のプレゼントは気に入ってくださったみたいねぇ?」

「そりゃね。天窮空母の設計図を見て驚かない魔道具技師はいないでしょ。込められた意味も含めて笑うしかないね、絶対」


「でしょぉ?それで、こうしてお会いできたのが答えで宜しいのかしらぁ?」



 レジェリクエが仕掛けた策謀、それは、どの国に属しているか不明な最高位魔道具技師、プロジア・フォルトマンの掌握だった。


 大陸統一戦争後、もっとも懸念するべきは航空戦力を使用したレジェンダリア本国への強襲。

 心無き魔人達の統括者以外の戦力で迎撃した場合、甚大な被害を出さざるを得ないと分かっているからこそ、レジェリクエは誰よりも早く戦争に使用したのだ。

 そして、それを模倣できる最有力候補こそ、発明家・プロジア。

 彼の技術力はカミナと遜色なく、僅かな情報で完成させてしまう可能性をレジェリクエは危惧していた。


 故に、レジェリクエは天窮空母の『設計図』をプロジアに差し出し、ブルファム王国戦争に使用すると宣言したのだ。

 後日の会談にて、彼の心証を探るために。



「まぁね。あれはぼくぁじゃ作れないし、完成品を貰った方が早いと思ってね」

「くすくす、そうね。とっても大変だものぉー」



 天窮空母に使われている技術は、現在の人間でも再現可能。

 当然、最高峰の技術力を持つプロジアに作れないはずがない。


 だからこそ、その『作れない』は、『不可能ではない、机上論』。

 全長500mもの巨体……、1000万パーツを超えるであろう部品の全てを個人の生産力で作るなど、数十年あっても不可能。

 材料の調達、高い水準の技術者確保、部品を一気に生産する組織力……、それらを持つ国にしか、天窮空母は生産できない。



「何処の国と仲良くしてるのか知りたかったんだろうけど、残念なことに、ぼくぁ友達が少ないんだ」

「なら、余とお友達になってくれないかしら?今なら友好を記念してぇ、天窮空母を丸ごと一機、プレゼントぉ」


「お、本当に?言ってみるもんだなぁ」



 互いが思惑通りに笑い合っている、茶番。

 レジェリクエはプロジアが人間の皇だと理解した瞬間にこの場面を思い浮かべ、いくつもの策謀を張り巡らせて此処にいる。



「それでなんだけどぉ……」

「おっと、タダとはいかないよねー、フレティーヌ、そのクレープおいしそうだよ」


「余に情報を提供してくれないかしら?」

「情報?それには皇の知識も含まれる感じかな?」



 短剣を鳴らしたフレティーヌをなだめつつ、レジェリクエの表情を伺う。

 プロジアは皇だ。

 たとえそれが友人から押し付けられたものだとしても、矜持くらいは持っている。



「そうよ。ここにローレライを呼んだのは、言葉を荒げてでも情報を手に入れたいという余の意思表示」

「うわー、重い話は勘弁して欲しいね。もしも、そんな事を言い出すんなら、不幸になった友人の中でも、ぶっちぎりの最速記録になる」


「くすくすくす……、大丈夫よ。余はまだ不幸にはなっていない。これからの為に情報が必要なだけ」



 ここから先の策謀。

 その全ては、ワルトナ・バレンシアに勝つため。


 指導聖母・悪辣、戦略破綻、そして、ワルトナ(・・・・)

 ……本当に酷い名ね、と、レジェリクエは心の中で呟いた。



「余が欲しているのは、この物語の根源、『リリン』。皇の記憶……、アプリコットの記憶を有しているあなたなら、全ての答えを知っているはず」

「……そうだね、知っているよ」


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