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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第43話「リリンサの主張⑥」

 


「空気を吸ったらダメとか言っておきながら、喋りながら近付いたのが意味不明だと思う!!」



 忌むべきロリコンをセフィナに近づけたくないと思いつつ……、それはそれとして、自分の師匠がショボいとは思われたくない。


 そんなリリンサが取った行動は……、素直な質問。

 ロリコンの上げ足取りを狙いつつ、失敗しても知識が手に入るという完璧な作戦。

 そんな姉弟子と考えた策謀に、シーラインがドヤ顔を返す。



「だからだろ。声っつーのは吐くときに出るもんだ」

「んっ、じゃあ、破滅鹿が大人しかったのは?あれだけ殺意剥き出しで来た割には、無抵抗すぎると思う」



 リリンサの目から見た破滅鹿は、明らかな殺意をたぎらせていた。

 そんな生物が一切の抵抗もせずに斬られた。

 シーラインの剣筋が速いことを考慮しても、ありえない事態だ。



「からくりは、その殺意だよ」

「なに?」


「ガキのお前じゃあるめぇし、てめぇの殺意くらいコントロールできんだわ」

「は?」


「で、ただ消すだけってのも芸がねぇ。我がやってたのはその先の極意よ」

「なにそれ」


「10匹の内、2匹にだけ殺意を向けた。そいつらは逃げようとするが、仲間はヤル気満々のままだ」

「ん」


「で、『何で逃げない!?』と『何で逃げようとする!?』て互いに混乱してる内に……って寸法よ」



 シーラインは刀を抜くと同時、視線、足運び、呼吸、表情、声……、あらゆる外見的変化を、群れのNO.2とNO.3と思われる破滅鹿へ叩きつけた。

 野生動物が持つレベル99999、それは、卓越した経験を持つ証明。

 そして、シーラインが与えた『分が悪い』程度の危機感によって、破滅鹿の意見は真っ二つに裂かれたのだ。


 逃げるべきだと思うが、仲間が動かない。

 逃げようとする仲間がいるが、動かない。


 そんな均衡がもたらす結果は、硬直。

 様子見という名の……、致命傷だ。



「えっと、よく分からないけど、凄いことをしたってのは分かります!」

「セフィナ、分からないなら褒めてはダメ。罵るべき」


「ののしるの!?」

「そう。それに今のは剣士の技だけで勝ったのではない。魔法でズルもしてる」


「そうなの!?」



 ちらり。とリリンサの視線が捕らえたのは、シーラインが持つ刀。

 柄に添えられている指先が薄く輝いているのを見て、リリンサがふっ。嘲笑を零す。



「オタク侍には手にした魔剣の魔法陣を覚え、別の剣の内部で構築できる特技がある」

「魔剣の効果を真似しちゃうってこと?」


「そう。このオタク侍が八刀魔剣(オクトパラディーン)などと呼ばれているのも、最大で8種の能力を剣に付与できるから」



 剣の道を極めたシーラインにとって、剣は書物と変わらない。

 本の文字を読めば理解できるように、剣を振ればその性能を理解できるのだ。


 そして、新たに握った別の剣へ魔力を流すことで、性能を付与。

 戦局に合わせ、様々な魔剣の能力を切り替えて戦う、それがシーラインの戦術だ。



「任意の対象にのみ殺気を飛ばすなんて芸当は、普通の人間には無理。剣に魔王シリーズの性能を付与してるからできること」

「おっと、見抜かれたか。賢くなってるみてぇで何よりだ」


「ふっ。今の私にとって、真理を究明するなど造作も無い。見くびらないで欲しい!!」



 それが出来るのは、ソドムの真理究明の悪食=イーターを手に入れたから。

 自分のズルを棚に上げたリリンサのドヤ顔……、それも長くは続かない。



「ん、別の群れが来た。これは……、ボディフェチ」

「いいのかよ?俺様との相性じゃ瞬殺だぜ」



 ひたり。ひたり。

 そんな軽い足音に合わせ、見上げるほどの巨体が動く。

 ドグマドレイク、真頭熊ベアトリーチェ人剃獅子マンティコア

 非常に仲が悪い代表例のオンパレードが、一糸乱れぬ動きで近寄って来る。



「セフィナ、あれが何か分かる?」

「え?ドグマドレイクじゃないの?」


「違う。他のは?」

「真頭熊と人剃獅子?」


「それも違う。あれは化けているだけ。『人形兎バニードール』という兎だよ」

「兎さんなの!?」



 セフィナにとって、兎は愛玩動物だ。

 家族と一緒に行った動物園の触れ合いコーナー、そこで兎と遊ぶのが何よりも好きだったのだ。



「5mくらいあるよ!?すっごくおっきいよ!?!?」

「あれはそういう兎。でも、あそこまで大きい個体は異常という他ない。流石、レベル99999(カンスト)



 人形兎は、別種の生物に擬態して獲物を騙す、狡猾な生物だ。

 その生態は、体内に取り込んだ空気で筋肉を膨張させ、任意の姿を作るというもの。



「ボディフェチ。セフィナは近接戦が得意ではない。参考になる様に戦って」

「具体的には?」


「右手だけで50発以上攻撃を防いだ上で、カッコ良く倒して」

「はっ、簡単すぎて欠伸が出ちまうなぁ」


「真面目にやって!!」



 ドグマドレイク3、真頭熊2、人剃獅子4。

 合計9匹の巨体、それが歪に膨らんだ。



「あっ、こっちに来るよ、おねーちゃ――っ!!」

「大丈夫、来ない」


「えっ!?」



 優れた筋肉を膨張させて生み出す、ゴムのような伸縮エネルギー。

 人形兎が繰り出した必殺の殴打、それを向かい打ったのは、アストロズの拳。



「ボディフェチは肉体にエネルギーを蓄えている変態。相殺なんて余裕で出来る」

「すごいよ!?私達を狙った攻撃にも追いついて、全部撃ち落としているよ!?」


「足跡を良く見て」

「足跡……?あれ、アストロズさんの足跡ってどれ?」


「ない。受けたエネルギーを全て体内に留めている。大気が持つ重量でさえも」

「えっと……?」


「私達は常に空気の重さを背負い、地面に流している。戦闘時のボディフェチはそれすらもコントロールしているから、非常に軽い」



 人形兎の太さ50cmを超える極太の腕。

 それが繰り出す怒涛の攻撃、その回数が50回を超えた。


 刹那、ドグマドレイクだったものが、無残に破裂する。

 ゴム風船を壁に押し付けて殴ったかのように、原形を留めずに粉々にはじけ飛んだ。



「俺様の戦法はシンプル。エネルギーを貯蔵する魔法『蓄積衝撃解放(ダメージバースト)』を纏い殴る。そんだけだ」

「ダメージバースト……?ってそんな魔法じゃないよね!?」


「極めるとこうなんだよ。何代か前の英雄が使った『千海山を握する業腕』って魔道具があってな。手に入らんから魔法で代用してんだ」



 殴打ダメージを累乗する千海山を握する業椀、その逸話は格闘家ならば誰でも知っている。

 殴れば殴るだけ強くなり、やがては高位竜すらも一撃で殺す威力となる。

 そんな伝説を自力で用意できてしまう。

 それが武術を極めたアストロズだ。



「終わったぞ。どうだ、参考になったか?」

「全然ダメ。コントロールできるなら、セフィナと同じ体重で戦って欲しかった」


「先に言えやッ!!」

「私は分かりやすくと言った。意図を汲み取れなかったボディフェチが悪いと思う!!」



 リリンサの無茶ぶりその②、情報の後出し。

「セフィナが真似しやすいよう、体重や歩幅を似せて戦って欲しかった!!」


 それはかつて、弟子だったリリンサにアストロズが見せた光景。

 身長2m越えの巨体が150cmもない少女用の動きをする。

 ロリコンとオタクに『マジキモイ』と言わしめたそれこそが、リリンサの近接戦闘の基礎だ。



「普通に戦うのを見ても参考にならない。これなら、アルカディアの戦闘の方が数段いい」

「誰だそいつ」


「ふっ。アルカディアは千海山を握する業腕の所有者!!」

「んだとっ!?」


「そして私の友達!!紹介して欲しければ、オレンジ料理を用意して!!」



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