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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第33話「ユニクルフィンの主張⑥」

「ぐるぐるきんぐー!」

「ぐるぐるきんぐー!」



 そうと決まったら話は早い。

 胸いっぱいに息を吸い、声高らかに相棒を呼ぶ。

 そして待つこと1分半。

 俺の目の前には、雄々しく立つ雷界の警告者が立っている。



「はわわ、あの、今のは一体……?」

「呼んだら来た。ただそれだけだ」


「……なんでそんなに心を通わせてるんですか!?」



 しいて言うなら……、漢気が似ているから、かな。

 いや、意味不明すぎるだろ、俺。

 久しぶりに鳴いたせいで、脳みそまでぐるげーしちゃってる。



「キングフェニクス、手伝って欲しいことがあるんだが」

「ぐるげ!」


「とりあえず一緒に来てくれ。サチナの所で説明する」

「ぐるぐるきんぐー!」



 鳴き声の意味は分からないものの、翼を広げてジェスチャーしてくれるので問題ない。

 なお、サーティーズさんはしっかり理解している。



「ということで白銀比(ギン)の部屋に向かうぜ」

「ゆになんちゃら、白銀比様の所で何するし?プラムがいるから危ないのはダメだし」


「サチナ達がいるし大丈夫だろ」



 白銀比のタヌキ嫌いは聞いているが、最近はタヌキ奉行が群れを成しているので慣れたはず。

 そもそも、アルカディアさんはタヌキ系なだけの人間だ。

 襲われるはずもない。



 **********



「っと、着いたが」

「すんすん、中に誰もいないし?」



 サチナとテトラフィーアに会って、サーティーズさん、アルカディアさんとプラムさん、ついでにキングフェニクスの無実を証明。

 そして、超越者の身体能力を使ってワルト達を捜索し、合流。

 リリンが戻ってこれない場合の対策も含め、集まった情報を精査する。

 それが俺の狙いだったんだが……。



「サーティーズさん、入って良いか?」

「えっっ、私に聞くんですか!?」


「一応、ギンも女性だ。男の俺が勝手に入るのもな。だが、サーティーズさんが最初に入れば問題ない!!」



 ぶっちゃけ緊急事態だし、怒られるとかはどうでもいい。

 だが、金鳳花は認識阻害のプロ。

 俺達がたどり着いた部屋が、認識阻害によって歪められた偽物だったりしたら洒落にならない。



「はわわ……、母様怒ると怖いんですからね……。母様ー?いらっしゃいませんかーー?」



 とりあえず、サーティーズさんは何も疑問に思わずに部屋に入った。

 その後ろに俺とキングフェニクス、最後尾にアルカディア姉妹が続く。



「やっぱり誰もいませんね。サチナちゃんもテトラフィーア様も居ないで……」

「だよな。合流して一緒に行動しているのか、それとも、ん、どうした?」



 グラムを覚醒させて警戒しつつ、サーティーズさんの様子を伺う。

 仕掛けてくるならこのタイミング、そう思って身構えていたら、……襲ってくるどころか、なぜか硬直している。



「はわわ……、はわわわわ……、はわわわわわわわわわ……」

「うわぁ、すげぇ動揺。尻尾の毛も逆立ちまくってる」


「た、大変ですっ、時揺れの閨室の扉が開いています!!」



 時揺れの閨室?

 聞き覚えのない言葉だが……、どうやら、白銀比が厳重に封印している私室ならしい。

 その扉が開きっぱなしになってるってのは、どう考えても良くない凶兆だ。



「時揺れの閨室は兄さま達の部屋です」

「それって白銀比の長男と次男の?」


「はい、通常は母様しか入れない様になってまして――」



 温泉郷に張られた結界と同質の封印であるそれは、時の権能を用いて相殺しないと通過できない仕様になっているらしい。

 それは、結界を張った本人である白銀比以外には不可能。

 サーティーズさんが前に入った時も、白銀比と一緒だったそうだ。



「あの……、これ、中を見てくるって流れですよね?」

「可能ならな。できるか?」


「今は何の結界も無いただの転移部屋ですから。うぅ、母様に怒られたら助けてくださいね……?」



 無事に乗り切れたら、いくらでも怒られてやるよ。

 疑った侘びだっていくらでもしてやる。



「アルカディアさん、プラムさん。キングフェニクス。大至急、サチナ達と合流したい。捜索を手伝ってくれ」



 サーティーズさんが時揺れの閨室を調べている間、こっちも出来ることを済ましておく。

 来る途中のお土産コーナーで買った懐中時計を全員に配り、捜索網を説明。

 キングフェニクス、アルカディアさん、プラムさんには分かれて捜索して貰いたい。



「次の集合は午後4時00分。それから一時間毎に集合。できるか?」

「ぐるぐるきんぐうー!」

「できるし!」

「がんばる、ます!!」



 超越者の足の速さなら、1時間で広範囲を捜索できる。

 プラムさんの身体能力だけは未知数だったが、どうやら、『さすらいの魔獣使いと雷獣ドングリ』という名の知れた冒険者なんだとか?

 ツッコミ所が天元突破しているが……、お前、雷獣なんてかっこいい名前で呼ばれてるのかよ。

 ドングリみてぇにふっくらしてるのに。



「はわ、はわわわ、はわわわわわわ……」

「お?帰って来たな。どうだった?」


「兄さま達の封印が解かれていました。そしておそらく、母様以外の手によって」



 サーティーズさんが見たのは、砕け散った封印の結晶と誰もいない閨。

 想像を絶する緊急事態なのは、顔色を見れば明らかだ。



「非常に不味い事態です。兄さま達は母様の琴線。触れてはいけない領域です」

「具体的にどう不味いんだ?」


「母様が向ける兄さま達への感情は計り知れません。その多くは愛情でしょうが、他の感情もあるはず。どんな動きをするのか想像できません。ただ……」

「ただ?」


「兄さま達は目覚め、意志のある状態で活動していると思います。時の権能を3つも駆使した認識改変。母様を欺くには、それくらいしないと」



 温泉郷全体を対象にした人狼ゲーム。

 そのプレイヤーの中に白銀比が含まれている、サーティーズさんはそこが気になっていたらしい。


 時の権能は細長い枠の中に書かれた迷路のようなもので、重ねると複雑難解になる。

 温泉郷の結界はサチナと白銀比の合作であり、サーティーズさんにはさっぱり分からないそうだ。



「なぁ、兄達の情報ってサチナも知っているか?」

「……それは、どうでしょうか?兄さま達の存在は知っていても、状態を理解できているかは分かりません」


「どういうことだ?」

「母様は時の権能を通して、持ちうる限りの記憶を継承させています。そして、それに封印を施している」


「記憶封印?なんでだ?」

「そもそも、なぜ10歳になった私たちが親離れをするかという話になりますが、……母様が持つしがらみから遠ざけ、幸せと遊楽に満ちた人生を送って欲しいと願ってのこと」



 理屈は理解できる。

 皇種、それも極の階級持つ白銀比ともなれば、周囲へ与える影響は計り知れない。

 浅慮な考えを持つ者が、子供を攫って白銀比の弱みを握ろうと行動すれば、危険極まりない。


 ……で、その結果が、ゲロ鳥に託児依頼?



「ちょっと待って。サーティーズさんの生い立ちが特殊すぎて納得できかねるんだが?」

「何か勘違いがある様ですが……、雷界の警告者・アヴァートジグザーといえば、名を出すだけで恐れ戦かれる強者ですよ」


「ゲロ鳥なのに?」

「ゲロ鳥だと思われてませんから。天窮空母に似てる自立飛行巣が本体という認識をされてます」



 戦場を飛んでた金属ゲロ鳥、あれ巣なのかよ。

 あんなん、ゲロ鳥1万匹くらい収容できるだろ。

 つーか、普通に空母。



「なるほど、立派な宮殿住まいだったのは理解した。でも、ゲロ鳥と女の子じゃギャップがあるというか、他の姉妹もそうなのか?」

「いえ、私は特別です」


「なぜそこで胸を張った?」

「時の権能の使い方がとても上手だと褒められまして、同じく技術タイプであるアヴァートジグザーの下で学ぶなんしーと」



 真っ当な理由過ぎて、ぐるげぇの音も出ねぇ。

 なお、俺の代わりにキングフェニクスが誇らしげに鳴いた。



「そんな訳で、私たち姉妹には時の権能に関する記憶が封印されてます。それが解けるかは己の技量によるんです」

「つまり、サーティーズさんは他の姉妹よりも優れた能力を持ってた訳だ?」


「そうです。2000人を超える姉妹でも存命しているのは極わずか、大抵は人間の父方に預けられ、普通の一生を全うします」

「確か、サーティーズさんはテンスティックって苗字だったけ?」


「私の父はフランベルジュ国の貴族でして、テンスティック家には成人してから、時々、お世話になってます」



 会社を立てる際の身元保証人が――っていう話は、カット。

 ゲロ鳥が保障にならないのは分かり切ってる。



「サチナちゃんがどの程度、時の権能を理解しているかによります。兄さま達に関することも封印されておりますので」

「それって、どういう風に解くんだ?」


「自力で解くのは不可能ですよ。能力に合わせて勝手に解けて、記憶が思い出せるようになります」



 だとすると、金鳳花にも記憶の解放は出来ない?

 いや……、そう決めつけちゃダメな気がする。


 ソドムに畑を荒らされたサチナは、怒りに任せて権能を解放させていた。

 あの時に感じた本能的な恐怖は、皇種に匹敵する。



「サチナの記憶解放はかなり進んでる。だとすると……、この部屋に入れば事態の深刻さを理解できたはず」

「書置き一つないのは不自然です。冷静さを欠いた、つまり、母様とは会っていないんでしょうね」


「……探すぞ。サチナ、白銀比、リリン、ワルト、メルテッサ、あと、ホウライを見つけたら一緒に行動し、4時にここへ集合」

「そちらは、手紙ですか?」


「開示していい情報が書いてあるから、出会ったら見せてくれ」



 内容はシンプルに一行。

『話がある。勝利についてだ。byユニクルフィン』


 情報の漏洩対策をしつつ、事情を知ってるリリン達には理解できる。

 そして、村長にとって勝利(ヴィクトリア)は琴線だ。

 こう言う風に書いておけば、確実に来てくれる。



「頼むぞ」

「はい」

「分かったし!」

「ぐるぐるきんぐー!」



 サチナ達と接触すれば、その時点で素性が判明する。

 アルカディアさんとプラムさんはレーヴァテインに斬られているので大丈夫なはずだが、確認しておくに越したことはない。


 サーティーズさんの無罪が確定するまで自由にはさせられない。

 だが、別件でお願いしたいことがある。

 わんぱく触れ合いコーナーの危険生物の処理は早めに済ませておくべきだ。


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