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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第25話「人狼狐・ユニクルフィンの主張②」

「はわわわわ……、はわわわわわわわ……、はっ、は~~あ」



 社長っぽいカジュアルスーツをあられもない姿にされたサーティーズさんが、涙目で溜息を吐いた。

 もはやギャグ路線にしか見えないが、本人は至って大真面目だ。



ビッチ()アイドル()に挟まれた結果、露出系女優を目指すことにしたのか。個性を出すってのも大変だな」

「誰がアダルト女優ですか!?妙な納得の仕方をしないでください、私はあくまでも社長です!!」


「サチナの月収に年俸が負けそうって聞いたけど?」

「くゅっ……」


「悲鳴が声になってねぇぞ」



 絞められたゲロ鳥みたいな声で悔しがっているあたり、結構プライドが高そう。

 学校で見た時は人あたりの良い委員長って感じだったのに残念だ。



「つーか、レジィやテトラフィーア達と互角の戦闘力って聞いたぞ。助けて貰わなくても、自分で蹴散らせただろ?」

「えぇ、もちろんです。あの程度の冒険者など、私が本気を出せば直ぐに全滅させられますよ。弊社は警備にも力を入れておりますので」


「だよな。で、なんでやらなかった?」

「……だってそれ、社会的に死にますよね?」



 社会的に死ぬ?

 そういうのは全裸親父の専売特許だったはずだが?



「ここは大陸有数の高級観光地。貴族にしろ、冒険者にしろ、羽振りの良い人たちが集まる場所です」

「入場チケットにはプレミアがつきまくってて数百万エドロもするって話だもんな」


「そんなにっ!?!?……そして、温泉郷はテトラフィーア様の庇護下、つまり、最新の流行の発信地です」

「薄々そうだろうなとは思ってたが、やっぱりか」


「そんな場所で社長自らが暴力事件を起こす?そんなのもはや、自己破産と呼ぶべき暴挙ですよ。はわわ」



 なるほど、言われて見ればそりゃそうだ。

 頑張って企画したお祭り中に実の姉が暴力沙汰を起こすとか、サチナがキレること間違いなし。

 クソタヌキをカツテナイ大事故に合わせた時以上の暴虐が、零細企業に襲い掛かるッッ!!


 ……。

 …………。

 ………………どうやら、心は読まれていないっぽい。

 こんだけ暴言吐かれて平静を装う理知があるなら、酒に沈まされないと思うし。


 俺が疑っているのは、サーティーズさんが本物の人狼狐である可能性。

 襲われていたからとりあえず助けて人混みから逃げてきたが、それが罠じゃないとは限らない。



「あの、それでこれはどういうことなんでしょうか?」

「このチラシは見たか?」


「……人狼狐ゲーム?」

「まぁ、とりあえず移動しようぜ。サチナに用事があるんだ」



 ワルトの話に出てこなかったから考えていなかったが、サーティーズさんは色んな意味で危険すぎる。

 ビジネスでボロ負けしているが……、時の権能の使い方はサチナより上手いはず。

 フォスディア家の功績をシルバーフォックス社に置き換えていたって話だし、記憶操作はお手の物だ。



「へー。人狼狐を捕まえたら好きな物が頂けるんですか。ちょっと興味がありますね」

「一応聞くが、サーティーズさんは人狼狐じゃないよな?」


「企画者が知らない訳ないじゃないですか。私とは無関係……、あの子、また新しいビジネスを?」



 何かに思い至ったサーティーズさんが、全自動で悔しがっている。

 サチナと同業他社(ライバル)を名乗るのはおこがましいと思うが、社長として思う所があるらしい。



「いやいや、この催しはサチナが企画したもんじゃねぇよ」

「そうなんですか?でも」


「俺達の知らない所で勝手に始まっちまったから問題なんだ。もちろん、レジィ達の仕業って事もない。で、サーティーズさんに調査を手伝って貰いたくて、サチナの所に案内しようって思ってさ」


「弊社へのご依頼でしたか。どうも御贔屓にしていただいてありがとうございます」

「ちなみに、ブルファム王夫妻の護衛はどうした?」


「陛下はブルファム王国へ戻り執務を行っております。官僚の心身整理が済んだからと」



 他愛のない話で雰囲気を整えつつ、人狼狐かどうかの探りを入れる。

 サチナ達の所に敵を連れて行くのは、出来るだけ避けたい。


 それはそうと、護衛対象の情報をボロボロ喋るなぁ。

 ワザとやってるんじゃなければ相当ポンコツだぞ、このひと。



「サーティーズさんの会社は情報の取り扱いに特化してるんだったか?」

「既にご存じかと思いますが、私は他者の記憶を覗くことができます。その性質上、嘘を吐かれることは極めて稀です」


「なるほど。テトラフィーアの所に潜り込めたのも、時の権能の効果か?」

「えぇ。自身の記憶を封印することで、言動に嘘が発生しないようにしました。テトラフィーア様がお持ちの神の因子は、声に含まれる揺らぎを観測していらっしゃいますので」


「揺らぎ?」

「私も耳は良い方ですので、人が後ろめたい記憶を隠しながら喋る時の独特なイントネーションは存じております」


「そんな事もできるんだな?」

「時の権能って結構、疲れるんですよ。見るだけでも大変で数十人の記憶改変とかは、実はうんざりする仕事だったり。ですから、なるべく時の権能を使わない様に工夫を」


「ん?ちょっと待ってくれ。フォスディア家の功績を自社に置き換えてたって聞いたぞ。それは大変じゃないのか?」



 サーティーズさんの説明では、時の権能を過小評価。

『便利だが扱いが難しい能力』ってイメージを俺に植え付けようとしているように感じた。

 簡単に洗脳できますなんて馬鹿正直に言うはずもないが、それを既に知っている俺に隠す必要性もない。



「はい?何のことでしょうか?」

「とぼけなくても分かってるって。レジィが言ってたぞ、復興を目指すフォスディア家の実績をシルバーフォックス社が奪っていたってな」


「……。弊社の威信にかけまして、そのような事は一切行っておりません」

「いや、なんかテトラフィーアによると証拠があるらしいぞ?」


「申し訳ございませんが、ユニクルフィンさんの脳裏に浮かんでいる関連記憶を拝見させていただきますね」



 流石は社会人、記憶を覗く前に一応の報告を入れてきた。

 確か、俺が思い浮かべればスムーズに読み込めるんだったっけ?

 どれどれ、ちょっとアシストしてやるか。



「あー、ブルファム王国の戦争中、関所に差し掛かった所で、指導聖母・悪質に――」

「……はわッ!?」


「リリンがブチ切れててー、クレーターの中から――」

「はわわ!?」


「出て来たレジィとテトラフィーアが、悪質が騙されてるって――」

「はわ!?はわわ!?はわわわわわわ……、なんですかこれは!?こんな酷いこと、弊社は行っておりませんよ!!」



 ……それっておかしいよな?

 レジィ達の話じゃ、数十万人規模の記憶改変が行われてるはずだが?



「断じて知りません!!そもそも、こんなことは不可能です!!」

「そこらへん詳しく聞いても良いか?」


「記憶に齟齬なく永久に改変するのって、物凄く手間が掛かるんです。例えば、ユニクルフィンさんの脳内で群れを成しているタヌキですが」

「なんだと。それも聞き捨てならない」


「タヌキ好きになるように改変するとなると、好きになるエピソードを植え付けるだけでは足りません。トラウマに別の要素をつけ足して……、そうですね、トラウマは映画のワンシーンであり、ユニクルフィンさんはそれを見て楽しんだ、みたいな記憶に書き換える必要があります」


「ソドムのカツテナイ・クソタヌキムーブは、心の底からファンタジーなら良かったのにって思ってるぜ!」



 サーティーズさんの説明によると、会社の実績をすり替えるのは難しい部類の記憶改変ではない。

 日常でも起こる記憶違いを誘発させれば良いからだ。


 だが、記憶違いが簡単に発覚するように、周囲の人間から訂正が入る。

 その為、関与した人物の記憶をすべて書き換える必要があるらしい。


 フォスディア家が行っていた依頼は年間数千件以上。

 当事者のみならず、不安定機構のスタッフを含めれば膨大な数になる。



「そんな大規模な改変を矛盾なく行うのは、一人では絶対に不可能です」

「ギンでもか?」


「母様なら……、世界の時間自体を止めれば、物理的には可能でしょう。問題は不眠不休で何年もの間、処理を続ける手間ですので」

「できるが、やるとは思えないって事か?」


「はい。皇種である母様には寿命も老化もありませんが、自身の時間を止めることは出来ません。仮に10年の時を止めたなら、母様だけは10年間の経過が起こります」

「10年前に何を話していたのか覚えてないと、会話が成り立たなくなる訳か」


「そうです。私にも経験がありますが……、死ぬほど頑張って3日ほど時間を止め、徹夜で作業して納期に間に合わせて」

「うわぁ、凄いけどショボい」


「停止を解除した後の皆の反応と来たら……、私の苦労も知らず、へー、だの、すごーい、などと。挙句の果てには社長にまたやって貰えばいいじゃんと仕事を投げ出す始末。もう二度とやらないと誓いましたよ、えぇ」



 あんなに頑張ったのに。

 ぼそりと呟いたサーティーズさんの目じりには、うっすらと涙が滲んでいた。

 相当悔しかったんだな。可哀そうに。



「確かに、弊社の認知度が凄いことは存じております。ですがそれは、指導聖母・悪才アンジニアス様の手腕によるものと」

「……!!待て、そいつ、一昨日会ったぞ」



 わんぱく触れ合いコーナーでロイやじいちゃんと遊んでいた最中、唐突に声を掛けられた。

 そういえば、ワルトとテトラフィーアによろしくとか言われたが……、俺はその事を報告していない。



「……怪しいな」

「何がですか?確かに掴み所のない人だと思いますが」


「悪才って、どんな奴だ?記憶を読めるんだから姿を隠してても分かるだろ?」

「もちろんです。……はわ?あれ、思い出せ……」



 結局、サーティーズさんの口から悪才の人となりが語られることはなかった。

 記憶改変を受けているのか、それとも、そのフリをしているだけか。


 だがもしも、サーティーズさんの証言が全部本当だとすると……。

 時の権能を持つ敵は、金鳳花一人だけじゃない?


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