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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第17話「笛吹き男」

「ワルト、誰だアレは?指導聖母の素性は把握しているんだったよな?」

「……。さぁ、誰だろうね」


「なに?」

「指導聖母はその名の通り女性の集まりで、男性はいない。それに、あの認識阻害の仮面は僕が配布したものじゃない。素顔が読み込めないんだ」



 今の指導聖母に配備されている仮面はカミナさんが作成したもので、ワルトの仮面越しに見ると素顔が分かる細工が施されている。

 そうして重要人物の素性を調べたワルトの情報により、大魔王陛下達は盤石な戦略を立てることができた訳だ。


 だが、あの男はワルトの仮面越しに見ても素顔が見えないらしい。

 それに、纏っている雰囲気が……、やけに不気味だ。



「あの嫌な感じ……、素性が分からないからってだけじゃないよな?」

「止めた方が良いかもしれない」


「リリン?」

「なんか、心の奥がざわついている気がする。早く止めないと不味いことになると」



 リリンの言葉は、何の確証もない感情論だ。

 だが、俺もワルトも迷わず動き出すことができた。


 俺はグラムを、ワルトはシェキナを活性化させ、それぞれの攻撃有効圏内へと移動。

 0.1秒以下の時間で介入できるように準備し、サチナ達の動向を見守る。



「……、見慣れない顔です?」

「何言ってんだゾ?仮面を付けてるんだから当たり前なんだゾー!!」


「ちょっと今は、本当に黙ってて欲しいのです。ベアト」



 サチナも仮面男の異常性に気が付いたようだ。

 ワルト達の認識阻害の仮面は、人と認識させた上で、正体への興味を抱かせない。

 一方、目の前の男が纏っている雰囲気は『蝋人形』、人間どころか、生物だとすら思えないほどに冷え切っている。



「ご存じないのも無理はないでしょう。私は大衆の一人、使い捨ての末端ですから」

「?」


「ならばせめて目立とうと、こうして舞台に立ってみました。いやー、素晴らしい。実に良い眺めです」

「今日は笛を披露しに来たです?」


「そうですとも。素晴らしい演奏の後ですから、少々気後れしてしまいますが……、これも愛なんでしょうね」

「お前、さっきから何を言ってる、です」


「強いてあげるなら号笛でしょうか。物語の開幕を知らせる前奏曲プレリュードという意味ではね」



 そうして男は口に笛を当て、優しく息を吹き込んだ。

 流れて来たのは、想像しえない愉快な音階。

 祭囃子にふさわしい……、子供を興奮させ、大人を惑わす曲。

 そんな耳あたりの良い音が、俺には不気味でしかなくて。




 ぴーぴーぴーひゃら、ぴっぴっぴ。

 ぴひゃらぴーぴっ、ぴーひゃららー




 《人食いキツネが探しているよ》

 《祭りの中から狙っているよ》


 《甘い甘ーい、愛の飴》

 《騙してとろける、人の飴》


 《静かな夜には、もういない》

 《明日の夜には、誰もいない》




 《12の鐘でキツネが来るよ》

 《9つの指に、130の頭》


 《裂いて分けよう七つの幸》

 《足りない足りない、まだ足りない》


 《終えて始まり、残りは9つ》

 《探して減らそう、無色の心宝》




 なんなんだ、この歌……?

 いや、これはそもそも、歌なのか……?


 楽そうなリズムと、意味不明な歌詞。

 それになにより、耳元でささやかれているように明瞭に声が聞き取れる。


 これ以上は本当にヤバい。


 俺が矢倉台の上に駆け上ったのと同時、ワルトが放った矢が真横を通り過ぎる。

 そして、一直線に男へ向かい……、突然崩れた足場越しに、男の歪んだ笑みを見た。



「ちぃっ、ユニ、リリン!!《虚影の雨(ヴィジョン・レイン)!!》」



 背中にシェキナの矢が差し込まれ、偽られていた記憶が是正。

 距離にして100m、それが俺達の立ち位置。

 砂漠で発生する蜃気楼のように目の前にいたサチナ達の存在が霞み、はるか遠くで出現する。



「覚醒神殺しを欺く認識阻害、だと……?」

「やられたよ。まさかシェキナを持つ僕すら術中にはめるとはね」


「……で、コイツは誰だ?」

「仮面を外そう、ユニ。話はそれからだ」



 崩した態勢を力任せに立て直し、瞬きの間に男へ肉薄。

 無理やり舞台裏へ連行し、男を拘束する。



「リリンはサチナのフォローに行ったか」

「かなり動揺しているね。クマとタヌキに任せるには過ぎだ事態だよ」



 神殺し覚醒状態での本気の移動、俺達の動きが見えた奴は殆どいない。

 だからこそ発表者が突然消え、司会のサチナまで混乱してしまえば、せっかくの大会が台無しになってしまう。

 少しでも被害を抑えようとするリリンの動きに感謝だ。



「仮面、取るぜ。……こいつは?」

「……ヴァトレイア。ソクト達と一緒にいた鏡銀騎士団のメンバーだ」



 拘束ついでに頭を殴ったから、既に男の意識は落ちている。

 そして、無抵抗な男の仮面を外すと、そこにあったのは何度か見た顔だった。



「どういうことだよ。さっきまでやきとりを焼いてたぞ、コイツ」

「流石の僕にも分からない。情報が少なすぎ……、リリン?」

「ユニク、ワルトナ。大変なことになった」



 足早に舞台裏に入ってきたリリンの顔色は悪い。

 そして、一緒についてきたサチナとベアトリクスも同じだ。



「サチナ、司会はどうした?」

「それ所じゃないです。これは、これは……、時の権能を使った大規模記憶改変なのですっ!!」


「んなっ……!?」



 涙ぐむサチナの視線の先で、観客たちの盛り上がりは最高潮に達していた。

 それぞれがさっきの歌を絶賛し、そして、そこに込められた意味を口にする。



「聞いたか!?次の催しは『人狼ゲーム』らしいぞ!!」

「探すのは狼じゃなくてキツネだが……、明日の正午までに温泉郷に紛れたキツネを捕まえれば、豪華賞品ゲットか!!」


「あぁ、キツネと言えばサチナちゃん。あと、ギン様に例の『はわわ』もそうだよな?」

「正体が分かってるのが3匹。残りの6匹は何処に隠れてるのかしらねぇが……、タヌキならいっぱい居るんだがなぁ」


「”豪華”賞品だからな。3匹はボーナスで、残りは難易度が高いんだろ。とにかく怪しい奴は片っ端から捕まえちまえ、行くぞ!!」



 事情も理由も、時系列も目的も、何もかもが不明。

 ただ一つ言えることは……、俺達と敵対する何かがいる。

 それだけだ。

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