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第15話「サチナとベアトリクスの音楽祭!」

「さぁさぁ、今回の投票ポイントは~~こちらなのです!」

「いけいけいけいけ、もうちょっと伸びろ……、あー、5374ポイントなんだゾーー!」


「サチナ的には面白かったと思うですが」

「いまいち伸びなくて残念なんだゾ」



『びじゅある・びーすと』の初ライブで最高に盛り上がった会場は、そのままカラオケ大会へと移行した。

 司会MCは引き続き、サチナとベアトリクスが担当。

 そして那由他は、審査委員長という名の特別鑑賞席に着席。

 B級グルメを片手に辛口のコメントをするという、二重の意味でおいしい役回りについている。



「那由他的にはどうだったです?」

「ふむ、ノウリ国の民謡を現代で好まれているハイテンポな曲調にアレンジしたものじゃの。故に歌詞は完成されておるが、どこか聞き覚えのあるものとなっておる」


「パクリ感が強いです?」

「それもあるが、16人で歌うなら、声の質を揃えるのは最低限のマナーじゃのー」


「声の質?でも、おんなじ声ばっかりでも面白くなさそうですよ」

「言葉が足りんかったかの?儂が言っているのは人の配置の話じゃ。互いに声の良さを潰し合っている……、例えば右端から4人目と5人目、こ奴らの声は周囲より低く、近い位置で固まっていると悪目立ちする。両端に配置するのがベストかの」


「確かに、一番大きい声が右側中央寄りだと聞きづらいです」

「プロを名乗るなら歌唱以外にも気を配るがよい。今のままじゃ学生合唱と大差ないじゃの!」


「なるほどなのです。そんな訳で、ノウリ国立合唱団の発表でした。わー!ぱちぱちぱちなのです☆」



 と、こんな感じの辛口コメントをする、タヌキ。

 一方、学生と大差ないと言われた国立合唱団は顔を赤らめているものの……、指摘された人の配置に思う所があった様子。

 礼儀正しく一礼している指揮者を放置し、静かに議論を交わしながら退場していく。



「最終的なびじゅある・びーすとの獲得ポイントは30321。投票の試しを含んでいるとはいえ、堂々の1位か」

「ライブ開始直後の観客数は、ざっと1万人くらいだった。なら多くの人がサチナ達の歌に感動し、2票以上入れたことになる!!」

「ちなみに、午後1時時点の祭り総売り上げ試算は5000万エドロ。約10万枚の投票権が配布されている訳だね」


「3分の1をサチナ達が持って行き、さっきまでに消費されたのが約5万。残り2万か」

「屋台の売り上げは好調そのもの!おじいちゃんのお店の行列を見る感じ、もっとあると思う!!」

「だが、普通の冒険者の胃袋には限界がある。そうだねー、未使用の投票権は4万~5万って所かな」



 カラオケ大会の基本ルール。

 それは、『音楽なら何でもあり』だ。


 カラオケ……、歌のみを披露する場合は事前予約を済ませ、音楽を演奏するアヴァロン組に音源を提出する必要がある。

 といっても、音を記録できる魔道具で聞かせるか、曲名の申告をするだけ。

 後はアヴァロン組の演奏を聴き、間違いがないかを確かめるだけでOKだ。


 一方、演奏を伴う、もしくは演奏のみの発表の場合は、飛び込み参加が可能。

 サチナ達を除いた最高ポイントの人には豪華景品が贈呈されると告知されており、事前登録が間に合わなかった人も次々に挑戦している。



「俺って音楽には詳しくないんだが……、どの発表もかなりレベルが高いよな?」

「私的にもそう思う。実際はどうなのワルトナ?」

「どれも一流だねぇ。実際、レジェが主催する音楽祭で見る顔がちらほらいるし」


「……で、今の暫定1位は」

「アルカディアのタヌキ踊り!獲得数15000ポイントでぶっちぎりの2位!!」

「もはや、タヌキ・ミュージカルと化してたからねぇ」



 喜んでいいのか頭を抱えていいのか迷うところだが……、飛び入り参加したアルカディアさんが現在の首位になっている。

 事前予約?なにそれ?おいしいし?状態だったのに一瞬でタヌキ共と意思疎通。

 そして、真の仲間とでもいうように混然一体となった歌声が、冷えつつあった会場を再燃させた。


 理解不能なタヌキ語でヘヴィメタル?を声高らかに歌うアルカディアさんと、爆音を演奏しながら暴れ狂うアヴァロン組。

 中間伴奏で乗りに乗ったアルカディアさんとタヌキ共が組み手を始めるという超展開を、観客一同(俺達は)、忘れることはないだろう。



「サチナ。投票数が減ってきてる気がするゾ。もっと評価されても良いと思うんだゾー!」

「おそらく、投票券の節約が始まってるです。みんなーー!投票権の準備が足りてねーぞ、ですっ!!」


「でもでも、飯を食うにも限度があるゾ!那由他じゃあるまいし、ダゾ」

「それはそうです。な、の、で!そこの屋台で投票権の販売をしてるです!通常よりも2割引きのお値段なのです!!」


「おぉー!それは楽ちんなんだゾ!!」



 タダで貰えるはずの投票権を直接売り出した、だと!?

 1枚400エドロ。

 これって、普通に買い物をする時より安く買えるが、落ち着いて考えると損にしかならないというド直球魔王システムなんだが……、んん!?結構な行列になってるな!?



「普通に飯を買った方が良いと思うんだが……、なんであんなに売れてるんだ?」

「投票権には宝くじが付いている!」


「なん、だと……?」

「花火大会の後には抽選会がある。公開されている景品目当てで購入する人が多いということ!」



 手元の投票権に視線を向けてみると、なるほど、この『た組 2412106』が抽選番号か。

 リリンとワルトの話では、通常の冒険者が垂涎する超一級装備、王貴族が欲しがる貴金属、各国の高級グルメなどが当たるらしい。

 当然、欲しい物が当たるとは限らないが、不用品は温泉郷の質屋で買い取ってくれるから無駄がない。


 これは、遊び心を刺激しつつ、金銭的にも満たされるという依存性の高い策謀だな。

 流石は魔王の直轄地、やることが派手で面白いぜ!



「ちなみに、400エドロで買った方が景品が当たりやすいかもって噂が流れてる」

「へぇ、実際は?」

「4対6にしてあるよ」


「やっぱり確率を変えてるのか。ま、そりゃそうだよな、原価が違うし」

「ん、そうじゃないかも?」

「おや、流石は美食の魔王様。食べ物が絡んだ時の賢さは目を見張るねぇ、目を覆いたくなるねぇ」



 ワルトの解説によると、当選確率に差をつけているのは発行部数に違いがあるから。

 例えば、400エドロの投票券は6/100の当選確率なのに対し、500エドロの投票権は4/50だとする。

 当選確率は6%と8%となり、500エドロの方が高いということになるらしい。



「僕ら頭脳組で計算した結果、4対6にするのが公平って結論でさ」

「ん。だとすると、どっちでも変わらない?」


「色々仕掛けはあるけども、結局は運だしね!」

「じゃあ、ワルトナは当たらないと思う!」


「僕もそうだろうなとは思ってるけど……、改めて言うんじゃないよ、こんのぽんこつラッキーガールめっ!!」



 3回連続大吉を引き当てるリリンの横で、ワルトは凶→凶→白紙(印刷ミス)を引き当てたことがあるらしい。

 そこまで来ると逆に運が良い気もするが、本人的には納得してないっぽい。



「よし!景品を当てられるか勝負しようぜ!」

「んなっ……」

「なら、数を揃えておこう。それぞれ100枚までにする!」



 こんの美食の魔王様、屋台で5万エドロも食う気なのか。

 ……余裕か?余裕なんだろうなぁ。



「ところで、当選確率ってどんなもんなんだ?」

「末賞なら50分の1。在庫処分も兼ねてるし」


「なら、2個くらい当たる訳だが、ワルト?」

「リリンが5個を超えてくるのは確実として……、僕とユニの一騎打ちか。数だと引き分けになる可能性が高いし、商品の定価で競おうか」


「一番価値の高いのが当たった奴が勝ちか。これなら1個しか当たらなくても逆転の目があるもんな?」

「ユニまであらためて言うなーー!!」



 せっかくの祭りだし、使えるものは何でも使って全力で楽しんでいくぜ!!

 そうだ。後で景品を見に行かなくちゃな。

 どんな物があるか知っていた方がワクワクするし!!



「ではでは、次の発表者のご入場なのですー!」


 おっと、もう次の曲か。

 世界各国の人々が訪れているだけあって、様々な音楽が聴けて面白い。

 数十曲があっという間に終わり、次の発表者は……あれ?



「ん!」

「うわぁ、調子に乗ってるねぇ」

「メルテッサと手羽先お姫様、だと……?」



 綺麗なドレスを見事に着こなしたメルテッサを先頭に、可愛らしいドレスのシャトーガンマとヴェルサラスクが続いて入場。


 ここでまさかの顔見知り。

 歌が上手いって話の指導聖母と、音楽に秀でているというブルファム姫の実力、しっかりと聞かせて貰うぜ!!


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