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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第13章「御祭の天爆爛漫」

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第11話「破綻する魔王債権」

「まったく、僕が苦労してうどんをぶにょんぶにょんきしゃー!してるって時に、あろうことか女を三人も引っ掛けるとはねぇ。口惜しいねぇ、死人に口なしだねぇ」



 チャラ男っぽい軽ーい感じで財布を返そうかとも思ったんだが……、想定よりも深刻に悩んでいたんだから、しょうがないだろ!?

 ガチ泣きしてる女の子に財布を渡して、はい、終わり!って訳にもいかないしな。


 それに、騒いでいたらワルトが来るかなー?って打算もあった。

 俺の予測じゃ、アカムの借金の元締めは大聖母・悪辣ヴィシャス

 過去の俺に関わっている以上、絶対に放置はしていないはずだ。



「ぶっちゃけると、俺の手に負えそうになくて相談したかった。勝負の邪魔しちゃ悪いとは思ってるけどさ」

「あぁ、アカム達の借金のことかい?結構な金額だしねぇ」


「だろ?で、テトラフィーアが知らないならレジィも無関係。転じて、ワルトが管理してそうだなってのが俺の読みなんだが」

「ふむふむ、なるほどー、頑張って考えたんだねぇ……。残念、はずれ!!」



 ……えっ、はずれ?

 テトラフィーアも、レジィも、ワルトも管理してないって、それじゃ純粋な借金って事か?



「違うのかって、待てよ。さっき結構な金額って言ったよな?どうして額を知ってるんだ?」



 ワルトの目線で見れば、セブンジードから受け取った財布を返しに来ただけに見えるはず。

 何らかの手段で盗聴していたとしても、『モモリフ達』の借金って言うならともかく、借金があるって言ってない『アカム達』にはならない。


 なら、借金があるのも金額も知っているが、管理していない?

 几帳面な性格のワルトが、『ユニクルフィン関係者』だと分かっていて雑に扱うとは思えないが……。



「どういうことだ?カミナさんやメナファスって訳でもなさそうだし」

「ま、それは昨日までの話。許可を取って来たから、今から僕が管理するよ」



 許可を取って来た?

 ってことは、もしかして……。



 **********




「あ、あの、ユニクる……ひっく、ふぃんさん。お財布、ありがとうございました」



 捕まえたタヌキに賄賂をたっぷりと与えてリリースした後、ワルトと一緒にアカム達の所に戻った。

 すると、目を赤く腫らしたモモリフが静かに近寄ってきて、深々と一礼。


 普段はツンツンしていても、助けて貰ったらお礼が言えるあたり、素直な良い子なんだよなぁ。

 押し付けられた借金が数十億単位なのは可哀そうだし、どうにか助けてやりたい。



「さっきも言ったが、誰かに相談するのは大事だぜ。そんな訳で、強力な助っ人を読んでおいた」

「助っ人、ひっく、ですか……?」



 ワルトは心理戦のプロだし、俺の紹介はいらないかもしれないが、形だけは取り繕った。

 ここまで来れば、後は上手くやってくれるはず。

 そう思って安堵し……、ん?暖色三人娘が不思議そうな顔をしてるな?



「ひっく、ワルトナさんも温泉郷にいらしてたんですか?」

「そうだよー。ここは色んな娯楽施設が纏まってるからね、忙しい僕が羽を伸ばすには最適なのさ!」



 もう既に顔見知り、だと……?

 警戒心が強いモモリフが0.1秒で打ち解けたのを見る感じ、会った回数は1回や2回じゃなさそう。



「モモリフ、ワルトを知ってるのか?」

「もちろんです。私たちと懇意にして下さっている不安定機構の支部長さんですから。って、もしかして、ユニクルフィンさんもお世話になってるんですか?」



 お世話になっているというか、生活の実権を握られているというか……、どっちにしろ、子供に語る話じゃないので笑顔で誤魔化しておく。


 アカム達とワルトの関係は、冒険者と不安定機構支部長。

 ワルトはこんな感じの手駒冒険者をいっぱい持っているって話だし、特に不思議はないな。



「君らの話が聞こえてしまってねぇ、借金で困ってるようだね?」

「あ、いえ……、そうなんですけど」


「権利書を見せてくれるかい。冒険者が背負う法外な借金の監視も支部長業務の一つでね」



 おぉ、流石は指導聖母、上手い切り口だな。

 仕事だから話を聞くと言われれば、だいぶ相談がしやすくなる。


 そして、どうやらワルトは本気でアカム達の利権を手に入れに行くらしい。

 どの角度から見ても優しい笑顔……、あぁ、これが本物の魔王の営業スマイルか。



「あの、これなんですけど……」

「どれどれ、あぁー、これは酷い!!悪徳金融ばっかりじゃないか!!」


「えっ!?」

「不安定機構内の要注意人物名が見事に並んでいる。って、おやおや、アカムやフランルージュも困った顔をしているね?」



 そして、あっという間に、三人が借金の実態を曝け出した。

 もともと顔見知りだったって話だし、しょうがないんだが……、このワルト、心無き魔人たちの統括者の創設者。



「モモリフの借金が約25億エドロか。どうしてこんなにあるんだい?」

「賭博場がテトラフィーアに潰されるって噂のせいで、預かり金の引き出しが相次いで残高がマイナスに……、管理していたクレセント家にも責が及んで一家離散。いつの間にか、私の所にも請求が来るようになり……」


「なるほど。だから債権者にフランベルジュ王印があるのか。ふむふむ、なら、債権整理で3億まで減らせるね」

「えっ!?」


「借金には利息が発生するが、なんと、フランベルジュ国の金利率は2年前に改定されているんだ。なのに、君は過去の利率で支払っている。実際は完済真近だよ」



 モモリフのクレセント家はどうやら、悪徳金融から金を借りてしまっていたらしい。

 その利率は年25%と完全に違法であり、一年間で6億2500万エドロ以上返済しなければ借金が増えていくという、地獄のような状態だった。


 だが、テトラフィーアが行った法改正で、違法金利は強制的に年3%へ。

 過払い金が毎年5億5000万エドロ発生していたことになり、残っている金額も微々たるものになるそうだ。



「え、流石に嘘ですよね?そんな……」

「いやいや、嘘じゃない。こういうのは悪徳金融を納得させるのが面倒臭いだけで、法律上はそうなってる。で、僕は不安定機構の上位使徒。フランベルジュ国にも問題なく圧力を掛けられる」



 王宮に圧を掛けられる権力者の力を借りるって、別の問題が発生する気もするが……、まぁ、借金生活よりかマシだろ。

 あれだけの実力なのにケーキすらまともに買えないとか、流石に不憫すぎる。



「次にフランルージュの債権が22億。君の場合は純粋な借金じゃないね」

「あぁ。派閥争いで失敗し、母上たちの実家から結納金の未払い請求が相次いだ。悪いのは逃げた父上だが、私はもう一度、母上や兄弟たちと暮らしたく……」


「家族と仲直りが目的なら、支払う必要はないね」

「えっ。」


「結納金の未払い請求?行き場のない君の母上たちの殆どは実家に帰っただろう。だから、ホンドリス家が払う結納金ではなく、離婚による慰謝料になる。そんなものは種を巻いた父親が支払うべきでしょ」

「そ、そうかもしれないが!私の実母は病気で亡くなっている。それでも優しくしてくれた母達に恩を返したいのだ」


「なら、やり方を変えよう。君はドルベルマン子爵が購入したホンドリス邸宅の専属メイドとして終身雇用契約が結ばれているね。が、その賃金は君が受け取るべきものなのに、支払われていない。そもそも、契約が成立していないんだ」



 ワルトの見立てでは、住宅と一緒に売り渡されたフランルージュが金銭を受け取れないのはおかしいらしい。

 フランルージュは根本的な所で騙されているようで、彼女が支払うべき債務は一エドロも無いそうだ。



「そんな……」

「ドルベルマン子爵も分かってるから、君が出奔しても探さない。僕を後見人にして正式な退職願を送れば、今まで働いた分のお金が逆に貰えるよ。微々たるもんだろうけど」


「でも、あの家が家族との最後の繋がりなんだ。それなのに……」

「人身売買が違法である以上、君はホンドリス家の令嬢のままだ。なら、資金さえあれば貴族として返り咲ける。あぁ、僕はブルファム王国の上級貴族と懇意にしていてね。君の後ろ盾になって欲しいとお願いするくらい簡単な話さ」


「じゃあ」

「社交界には君の家族も顔を出すだろう。後はゆっくりと関係を修復していけばいいさ」



 フランルージュのホンドリス家は、ノーブルホーク伯爵家の派閥に属する貴族、……つまり、リリンのじいちゃん部下だった。

 で、争っていた敵派閥の長は、おそらく、オールドディーン大臣。俺のじいちゃん。

 そして、中立であるブルファム王はロイの親、そんな俺達はみんなで仲良く温泉郷を満喫している。

 貴族の派閥争いは、タヌキすら食わねぇ!!



「で、最後にアカムだが、君の借金は33億と、他の人より高額だ」

「うぅ、その、おとうとおかぁは悪くないんです。天災に見舞われた領地はどうしてもこうなるって……」


「確かにギョウフ国の飢饉は仕方がない事態で、食糧難に陥った民に食べさせるために無茶な輸入を行った両親は誇るべき善人だね」

「そうなんです!少ない食料を融通していただいた恩があるのに、まだお金を返し切れなくて、申し訳なくて……」


「いやいや、その商会は悪徳で有名なんだよ。代表の指導聖母・悪辣って言えば、知る人ぞ知る守銭奴でさ」

「えぇー!?」



 ……自分で言うんだな。

 なお、その商会の現在は、大変にリーズナブルな価格でぶにょんきしゃー!うどんを提供している。

 話がひと段落したら、みんなで食べに行こうと思う。



「でも、ちゃんと食べ物を持ってきてくれましたよ。それで多くの人が助かってて」

「そう、金を払ってないのに食料を持って来れたのがおかしいんだよ、アカム」


「え?」

「領地一つを賄えるほどの食料なら、輸送にも保管にも莫大な金が掛かるが、それを一商人が行うのは無理がある。つまり、その裏側には国、おそらくレジェンダリアがいる」


「ま、魔王の……!!」

「三国間戦争に介入し勝利を収めたレジェンダリアは、それに足る投資をしていたってこと。で、その商会はレジェンダリアから融資を受けておきながら、君たちにも請求をしている可能性がある」


「えっ、えっ」

「タダで配れと言われた食品を売っていた訳だし、残りの借金は払わなくても大丈夫。既に随分に儲けてるからね、その悪辣商会」



 なるほど、ワルト達レジェンダリアが三国間戦争に用いたのは、足りない食料をどんどん満たしてゆく、逆兵糧攻めだったのか。

 腹が満たされれば心に余裕ができ、魔王の甘言に惑わされやすくなる。

 ただでさえ洗脳が得意な大魔王陛下の援護として、これ以上のものは無いだろう。

 美味そうに飯を食う美食の魔王様も活躍するし。



「テトラフィーア姫は恐ろしい経済学者だが、それゆえに不正会計には厳しい沙汰を下す。僕のルートを使って密告しておくから、君の債権者である指導聖母・悪辣は闇に葬られるだろうね」

「それじゃぁ、もう、お金を払わなくていいってことですか……?」


「そうなる。さ、これで借金の残りはたったの3億エドロぽっち。で、実は君達が行ってきた依頼の報奨金だが……、査定にミスが見つかってね。申し訳ないが随分と安く見積もられていたんだ」

「えっと……?」


「15歳以下の冒険者が行った依頼の報酬には2割上乗せすることになってる。が、嘆かわしいことに、君らには2割しか支払われていない」

「え」


「簡単に言うと、100万エドロの達成報酬の場合、君らは120万エドロを受け取れる。だが、実際に支払っていたのは20万エドロだった」

「え”ッ」

「え”ッ」

「え”ッ」


「そんな訳で、これが君たちが本来受け取るべきだった報酬。金額が額だから、こっちで口座を開設して均等に振り込んでおいたよ。はい」

「ひぃえぇええ~~!!」

「ひぃえぇええ~~!!」

「ひぃえぇええ~~!!」



 すっと、差し出された三冊の預金通帳。

 それを恐る恐る手に取って中身を見たアカムはへたり込み、モモリフは真っ青になってひっくり返り、フランルージュは土下座で崇め始めた。


 助けて欲しいって顔で俺を見つめて来たアカムの手元を見てみると、ひい、ふう、みい、よぉ……、残高30億エドロ(3ぐるぐるきんぐー)か。

 借金を減らすどころか、貯金までできて良かったじゃねぇか。


 相談すればどうにかなるって言ったのは俺だけど、流石に予想外過ぎだぞ。魔王共。

 つーか、明らかに準備万端で待ち構えてるじゃねぇか。

 これのどこか管理していないんだ?ワルト。

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