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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第12章おまけ② タヌキ日記!

 

「う”ぎるあ!人間の街にはまだまだ美味しいものがいっぱいあるし!!おいしい果物料理もいっぱいあるし!!」

「ぷるん……、あの、ドングリさん置いて来ちゃってよかったの?」


「首輪の転移は相互間でしかできない。誰かが群れに残ってないとすぐに帰れないし!」

「そうなんだ」


「そもそも、群れをほったらかしにして人間の街にいるのがおかしいし!だから、罰として、おいしい餌のお預けの刑に処すし!!」



 インティマヤと共に里帰りをしていたアルカディア達は、発生したカツテナイ修羅場から早々に逃げ出した。

 タヌキ代官の地位を与えているドングリをお留守番(生贄)に捧げつつ、インティマヤに用意してもらっていた転移陣を起動。

 颯爽と温泉郷に戻ってきた彼女たちの目的は、もちろん――、人間の料理だ。



「リンなんちゃらを探すし!そこには一応、ユニなんちゃらもいるし!!」

「那由多様に見張てってお願いされてるんだよね?悪い人なの?」


「ユニなんちゃらは普通。でもリンなんちゃらとレジェなんちゃらは凄く良い人だし!」



 アルカディアが言っているように、一応、ユニクルフィンを監視するという重大任務が課せられている。

 だが、それを頼んだ那由他は温泉郷に滞在しており、アルカディアよりも遥か格上なソドム・ゴモラも同行している。


 命令に背くわけじゃないし。

 ただ、進路方向においしい獲物があったから、立ち止まって食べるだけだし!!


 そうして、皇たる那由他の命令よりも食欲を優先した2匹のタヌキが、おいしい獲物を求めて温泉郷をウーロウロ。

 死地と触れあって目が死んでいる冒険者、やきとり出張店の材料をかき集めているオヤジと盗賊、涙目で落とした財布を探している3人組の冒険者少女。

 そんな彼らから見ても浮きまくっている二匹のタヌキは、唐突に出会った格上を見て毛を逆立たせた。



「おぉ、ソドムの弟子の……、アルカディアって言ったか?丁度よかった」

「バビロン様だし?」


 気さくに声をかけて来たけど、目の前にいるのはソドム様と同格のタヌキ。

 ただのタヌキ将軍でしかない私とは、身分が違いすぎるぎる!!


 そんな理由から恐縮しているアルカディアだが、無視できるわけもなく。

 さりげなくプラムを後ろに隠しつつ、バビロンを見下ろさないように腰を落とす。



「何か用だし?」

「この店に顔見知りが入って行ったのを見掛けてな。で、俺も行こうとしたら受付に止められた」


「お金を払わないとダメだし!」

「そう思って金塊を出したら、そういう問題じゃねぇんだと。貸し切りって奴だとか?」


「じゃあ無理だし!」

「そこでだよ、アルカディア。お前、ここに来てる人間と顔見知りだろ?」



 バビロンは一昨日、森でユニクルフィンやリリンサ、レジェリクエ達と出会っている。

 だが、その場には那由他もおり、ムーのご機嫌取りも必要だった。

 さらには、エデン&インティマヤという超面倒な組み合わせのボスママタヌキもいるという非日常への対応のため、バビロンは必至に空気を読んで対応。


 だが、人間とのコネを作る余裕はなく――、こうして、ソドムの弟子にたかっている。



「すんすん……、レジェなんちゃらのことだし?」

「押し入るのは簡単だが、そんな空気でもねぇだろ。頼めるか?」


「んー、やってみるし!」



 快諾したアルカディアは店の戸を開き、「レジェなんちゃらに呼ばれてきたし!!」と盛大に胸を張った。

 そのあまりにも堂々とした態度に店員は納得。

 こうして、3匹の珍獣がレジェリクエの国家会談に紛れ込んだ。



 **********



「一人の君臨者を頂かず、法律を枢機院議会で制定。国家を運営する。……そんな民主主義によって、魔導枢機霊王国エルムゴモラは人とタヌキの共存を成し得ているのねぇ?」

「そうだよ。枢機院議会は年期が違う二つの組、獣議院と餐議院に分かれている。法律案を出すためには、獣議員20名、餐議院10名の賛成者が必要になるね」


「じゃあ、派閥に属さないと法律案を出せすらしない……、なるほど、群れるからこその民主主義なのねぇ」

「枢機院議員は、立候補者、及び、特出した功績を出した者に国民が投票する選挙によって決まる。そんな訳で、ここでも求心力が必要になるね」


 国家予算を惜しみなく投入したレジェリクエ渾身のフルコース料理を堪能したエルムゴモラ国御一行様、その司法機関のトップに立つ存在こそ、このヨミ卿だ。

 厳格な顔立ちに優し気な口調というギャップを持ち合わせている彼の正体は、もちろん、タヌキ。


 魔導枢機霊王国・エルムゴモラは、レジェリクエ達の絶対君主制とは違う民主主義によって運営されている。

 それは、国の中枢により多くのタヌキを送り込むため……ではない。


 真なる国王ソドムがそうであるように、タヌキは基本的に面倒くさがり。

『人間が運営している国でのんびり楽しく暮らそうぜ!』が共通認識であり、人化を覚えてまで立候補するタヌキは非常に少ない。

 だからこそ、能力が高く国民タヌキを思いやってくれる有能な人間を育てるため、切磋琢磨を強制させるような制度が多く存在している。



「国民選挙ってどうやってやるのかしら?」

「8つの都に属する各自治体の投票所で、事前に配布した投票券を用いて投票する」


「券を持つ有権者はどうやって決めるのぉ?」

「満18歳を超えた成人、および、人化を獲得しているタヌキで住民登録をしている者に配布」


「投票券を譲渡、もしくは代理人に投票を行わせることは可能ぉ?」

「認めてないね」


「有権者の誘導はどこまでOKなのかしら?例えば、金銭や物資の譲渡、仕事の斡旋などは?」

「個人ではなく、不特定多数に利益をもたらす方策のみ可能。自分が持つ他者を豊かにする力を示し、国民を賛同させるのが選挙の本質だからね」


「両議員議席数は?」

「国民数の――」



 ローレライが作り上げた民主主義制度から、レジェリクエが質問し、テトラフィーアが聞き取る。

 そんな盤石の態勢で行われた質疑応答を、ヨミが淀みなく答えている。


 相手はタヌキィ、油断なんてもっての外よぉ。

 そう思いながら挑んだ会談だったけれどぉ……、あはぁ、すごく勉強になるぅ。


 本当に参ったわ。

 優位に立つ為の足掛かりすら組めないなんて。



「議席数が決まっているのなら、特出した功績を持つ者が有利なのも納得ねぇ。で、それってどんな功績がいいのかしら?」



 レジェリクエの狙いは、枢機院議席を確保し、エルムゴモラの中枢に入り込むことだ。

 可能であれば、レジェリクエ、ローレライ、テトラフィーアの三名分。

 最低でも、別大陸で活動するローレライの分は確保したい。


 そんな思惑から、最短最速の方法を模索している。



「国防戦力……、軍属している機士の大隊長になるのが一番の近道だね。食料を調達し飢饉を解消してくれる人って、まさしく英雄だし」

「ということは、カナン様やルドワール様の主な任務って、食料調達なの?」



 もともと、違和感はあった。

 外大陸には人間が暮らす国家が一つしかないとホロメタシスから聞き、軍の存在に疑問を持っていたのだ。


 もしも、ここにユニクルフィンがいたならば、どこまで行っても飯か、タヌキィィ!とでも叫んだだろう。

 だが、この場にそんな愚か者はいない。

 食料調達の重要性を軽んじる施政者など存在する訳がないのだ。



「エルムゴモラの周囲の森に生息する生物は、強力な皇種や超越者によって統制されている、つまり国に属しているんだよ。その支配地の国民、もしくは栽培している食物の略奪を繰り返せば、戦争になるでしょ」

「理解したわ。帝王枢機を用いても、安定した食料調達は難しい。ゆえに、特出した技能を持つ者に枢機院議員という権力を持たせるのね」



 エルムゴモラの背景を理解しつつあるレジェリクエは、そこがホロメタシスの弱みだと見抜いている。

 前代の王であった彼の兄が行方不明になっているのは、特別な功績を上げるために、軍を率いて戦ったからだと気が付いたのだ。


 なるほど、ホロメタシスを取り込むのは容易ね。

 神製金属を生み出せるメルテッサと技術者のカミナなら、オンリーワン帝王枢機を生み出せる。


 だけど……、ヨミ卿の優位は崩せない。

 おそらく、ホーライの回想に出てきた全魔王装備エゼキエルに近しい何かを持っているはず。

 その証拠に、『エルヴィティス型』の国王機の所有者はカナンだと、リリンが言っていたわ。


 何か決定的な優位……、ヨミ卿の好物とか分かればいいんだけど――!



「陛下」

「なにかしらぁ?って言いたいところだけどぉ、タヌキかしらぁが答えよねぇ?」


「あえて言いますわね。アホタヌキの所業ですわーー!!」



 すぱーん!と勢いよく引き戸が開くと同時、う”ぎるあー!という叫び声が木霊する。

 そこにいるのは、アホの子のペットのアホタヌキ。

 姉妹どころかペットにまで策謀を邪魔され、レジェリクエの額に太い血管が浮かび上がる。



「レジェなんちゃら!ごはんを食べさせて欲しいし!!」

「……。そうなの。わかったわぁ」



 毒を寸胴鍋で食わせてやろうか、アホタヌキィ。

 割と本気でそう思ったレジェリクエだが、さすがに不味いと自重。

 適当にあしらうべく別室を用意させようとして――、目の前をヨミ卿が通り過ぎた。



「ば、バビロン様……!?」

「おう。久しぶりだな!」


「ご、ご無事だったんですか……!!麻呂は、麻呂は……、バビロン様のご帰還を心より、ひっくっ……!!うわーん!!」



 突然始まった感動の再会劇、それはレジェリクエにとってはカツテナイ好機。

 まるで、年老いた老人が死んだと思っていた愛犬と再会したかのような光景を、宝くじが当たった時の目で眺めている。


 これは、棚からぼた餅……、いえ、違うわねぇ。

 ふすまから、アホタヌキィ!!!!



「ホロメタシス陛下ぁ、ヨミ卿はバビロンと浅からぬ関係のなのねぇ?」

「バビロン様は、ソドム様・ゴモラ様と一緒に魔導枢機霊王国・ソドムゴモラを陥落させた伝説のタヌキです。私もお初にお目にかかりますが……、レジェリクエ陛下は既に友好を築いていらっしゃったのですね」



 きらきらきら……というホロメタシスの尊敬のまなざしを、『あら、可愛い。どうやってベッドに引きずり込もうかしら?』などと舐りつつ、手にした勝機を確立させる。

 そして、速攻でシェフを呼び寄せたレジェリクエは、ありったけの夕張メロン(カンタロープ)料理を注文した。


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