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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第12章幕間「リリンサの手記」

 

「飯も食ったことだし、ひとっ風呂浴びてくるぜ!」

「いってらっしゃい」

「5時間くらい入ってていいよ、ゆーにぃ」



 ……おい、流石に5時間は長すぎるぞ。

 今からだと日付が変わっちゃうだろうが。


 アヴァロンMAXを平均的な顔で攻略し、あろうことか季節限定デザートも全制覇するという偉業を成し遂げやがった大魔王姉妹に見送られ、俺は自室の扉を開いた。

 温泉の連れは、もちろんタヌキ。

 最初は足止め目的でやって来ていたゴモラも、どうやら温泉の魅力に取りつかれた様子。

 ソドムに至っては、サウナと水風呂を行ったり来たりするというタヌキにあるまじき玄人向けな楽しみ方をしてやがるが……、まぁ、襲って来なければどうでもいい。



「時間も遅いし、12時前には戻るぞ」

「ん、了解」

「えー、おねーちゃんの日記、ゆっくり読みたいのにー」



 俺が長風呂を強要されているのは、その時間で日記を書いたり読んだりする為らしい。

 もともと、俺が寝た後でひっそり書いていたのは知っていたが、詮索しないのがマナーだと思って放っておいた。


 ……だがな、タヌキを使ってまで露骨に隠されると、普通に気になるもんなんだよ!!



「なぁ、別に俺がいる所で書いても良いと思うんだが?ぶっちゃけ読みたいぞ」

「……まだダメ」


「なんでだよ?」

「この日記には、私の失敗も数多く書いてある。ユニク籠絡を終えるまで、不利になる材料はなるべく見せたくない!!」



 そんな事を言ったリリンの頬は、ちょっとだけ色づいている。

 ……なるほど?

 一応は、やらかしちゃった自覚はあって、俺にそれを知られるのが恥ずかしい訳だ。

 だとすると、今日のやらかし――、アヴァロンMAXを完食し、ついでに正体をぶっちゃけまくったら畏怖と崇拝が宿った目で信仰された――、も書くってことだな?



「しゃーねーな。でも、色んなもんの決着が付いたら見せて貰うからな!」

「ん、その時は……、ユニクの話も聞かせて欲しい!!」



 記憶を取り戻してから5日が経った今も、リリンやワルト達に親父とした旅の話はしていない。


 それは、旅の中のあの子は重要な役割を担っていたと、感覚で理解しているから。

 下手に話すとアプリコットさんの忘却の魔法が暴発する可能性がある以上、慎重に扱わなくちゃいけない案件だ。


 その記憶の中には、ワルトですら知らなそうな事もある。

 親父達と一緒に、『光王蟲・ケイガギ』を倒している……とかな。



「おう、そん時にはみんなで暴露大会と行こうぜ!」

「うん、楽しみにしている。あ、セフィナの話も聞かせて欲しい!!」

「分かった!!」



 **********



「んふふー、昨日の続き~~、おねーちゃんの日記の続き~~、あった!!」



 机に召喚した日記帳から昨日読んでいたものを探し出たセフィナは、さっそくベッドに寝転がって読み始めた。

 その傍らには分裂したゴモラ。

 ユニクルフィンの監視と温泉を堪能しつつ、リリンサの過去を知るという一石三鳥の美味しい役回り。

 さらに、セフィナと一緒におやつも食べられるという幸福で、大変にご機嫌だ。



「さてと、私も書き始めよう。ホウライとの出会いは気合を入れて書かなければならない!!」



 ぺらり。っとページをめくり、白紙の一番上に日付を書く。

 そして、想像よりも壮絶だったホウライの過去を記すべく、ペンを走らせた。




 ***********



 10の月24の日。

 ずっと憧れていた英雄ホウライに会って来た!!



 ……むぅ、ずるい。

 それがユニクやワルトナ、メナフやレジェ達が私より先にホウライに出会っていると聞いた時の感想。

 というか、私が憧れているのを知っているのに黙っていたとか、性格が悪すぎると思う!!


 そんなボヤキをちゃっかり聞いていたワルトナによると、時系列では私が最初に出会っている可能性が高いという。

 パパはホウライの弟子で、ママは大聖母。

 常識的に考えて、、ホウライに私を見せているのが普通ならしい。


 一瞬、「私が一番なら問題ない!!」と納得しかけたけど、ホウライの正体を隠されていた言い訳にはならない!

 流石はワルトナ、本当に油断ならない好敵手だと思う!!



 *



 ホウライに会いに行くメンバーは、ユニク、私、セフィナ、ワルトナ、レジェ、カミナ、メナフ、メルテッサ。

 つまり、新生・心無き魔人達の統括者たち。


 本人にはまだ伝えていないけれど、セフィナとメルテッサは心無き魔人達の統括者のメンバーに内定している。

 そもそも、七大罪がモチーフだとワルトナは言っていたのに、ホロビノを含め6名だったのは、セフィナの為の空席だったっぽい。


 ちなみに、「7どころか、9名になったけど?」って聞いたら、「ユニは英雄だから大罪をモチーフにしない」とのこと。

「それでも一つ足りない!!」って言ったら、「解釈によっては八つの原罪になるんだよ。あ、キミはもちろん暴食だから」だそう。


 私   ……『暴食』

 レジェ ……『色欲』

 カミナ ……『強欲』

 メルテッサ…『憂鬱』

 メナフ ……『憤怒』

 ホロビノ……『怠惰』

 ワルトナ……『虚飾』


 そして、セフィナはゴモラ込みで『傲慢』。

 自信たっぷりなのに自爆する所があるので、割と納得だと思う。



 そんな訳で、みんなでホウライに会い行ったんだけど、なぜか、全力で捕獲を試みることになった。

 ホウライには思う所があるらしく、最終的に、逃げられたら面倒という意見に固まった。

 私的にも、ホウライの実力は見てみたいので、怪我をさせない程度に戦おうと思う。


 ……うん、英雄ホーライを相手に考えが甘かったと言わざるを得ない。


 なにせ、覚醒神殺しを持ってるユニクとワルトナ、そして私以外は瞬時に全滅。

 しかも、カミナには毒、メナファスには手数、レジェには技を見せつけて圧倒するという、完全勝利で。

 ちょっとカッコよすぎると思う!!


 そして、私とワルトナ、ユニクの最強連携は、ホウライから勝利をもぎ取った。

 最終的には三人ともがホウライの急所に武器を突きつけるという、揺るぎない方法で。


 だけど、これが実践だったらまったく違う結果になる。

 それが分かったのは、ホウライの過去のお話を聞いたから。




 **********




 ホウライの出生については、ホーライ伝説でも執筆されていない。

 主人公として登場するホウライは壮年……、今と同じおじいちゃんになってから。

 だから、どうして英雄になったのかを教えて貰えると聞いて、すごく興奮した。



 それは、とても悲しい過去だった。



 ホウライは、健やかに暮らしていた普通の村人だった。

 魔法の才能は確かにあった、世絶の神の因子も持っている。

 だけど、平和な村では過ぎた武力で、何も起こらなければ、ホウライの名は世に出なかったと思う。



 無色の悪意を持つ存在、『金鳳花』。

 白銀比様の娘だという彼女は、すごく昔にした神との約束『世界を不安定にして物語を発生させる』を行う、舞台装置だという。

 そして、ずっと前にノウィンが言っていた、「大聖母は世界が乱れ過ぎないように管理するのが仕事」というのは、金鳳花の悪事への対処という意味だったと気が付いた。


 かの存在が人間にどんな影響を及ぼすのか。

 それが上手く行ってしまった場合、世界がどうなるのか。

 それこそが、隠されていたホウライの人生だった。


 親しい友人や恋人ごと、生まれ故郷を亡くし。

 激甚の雷霆として名を馳せるも、手に入るのは虚しさばかり。

 何十年も心許せる人ができず、気が付けば老人となっていた。


 そんなホウライがやっとの思いで手に入れた幸せも、金鳳花によって与えられた偽り。

 心を操る金鳳花は、ホウライを、ラルバを、きっと、出会ってきた様々な人間に感情を植え付け、意のままに操っていたんだと思う。



 それは、許してはならない行い。



 けれど、対策のしようがないこと。



 あんなにも強くて、カッコ良くて、すごいホウライですら、ラルバの手助けがなければ気が付けなかった。



 それでも……、私達は金鳳花を知る事が出来た。

 もしも、私達の中に無色の悪意が――、



 **********



「おねーちゃん!ゆーにぃがそろそろ帰ってくるって!!」



 本当は、ホウライのカッコイイ描写をいっぱい書く筈だった。

 だけど、脳裏に浮かんでくるのは金鳳花に関する事ばかり。


 出来あがった日記に納得がいっていないリリンサは、もう一度だけ小さく、むぅ……と呟き、セフィナと一緒に日記を片づける。



「あ、おかえり。ユニク」

「あぁ~~、良い湯だった。リリン達も入ってきたらどうだ?」


「そうする。セフィナ、準備!!」



 リリンサの衣服は既にサチナが準備済み。

 あわただしく着替えを探し始めたセフィナを眺めつつ、ふと、思ったことを口にした。



「……今度はユニクが守ってね」

「ん、何がだ?」



 リリンサに声を向けられたユニクルフィンは首を傾げるも、当のリリンサが良く分かっていない。

 言い間違いか聞き間違いだろう。


 そう納得した二人は、明日のお祭りの話題で盛り上がることにした。


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