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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第118話「魔王の晩餐②」

「おやおやー?シルストーク達じゃないか。こんな所で奇遇だねぇ」



 あ、タダでさえ絶句しているシルストーク達に髪の白い絶望が話しかけた。

 つーか、フィートフィルシアの一件で負った傷心すら癒えていないだろうに、リリン→ワルトのコンボは壮絶すぎる。


 可愛らしい少女がアヴァロンMAXへ挑戦するというカツテナイ暴挙、それを見ていた他の客はおおよそ好意的な声を上げた。

 よし、行け!!だとか、頑張れよー嬢ちゃん達ー!とか、微笑ましく子供を見る目で二人を応援。

 そして天丼を3分で平らげた光景を見て絶句していた訳だが……、シルストーク達がリリンを見る目はもはや、人間へ向けるそれじゃなかった。



「わ、ワルトナ……、これもお前の仕込みかよ」

「いや、今回は普通に違うよ。むしろ、キミらが誰に連れて来られたのか聞きたいくらいさ」



 シルストーク達は、フィートフィルシアに集った9万人の冒険者とは違い、リリンに直接『ぶにょんぶにょんドドゲシャー!!』された超優秀な冒険者だ。

 魔王装備のリリンを一時的に封印できたという凄まじい功績から鑑みるに、この大陸でも指折りのパーティーなのは間違いない。


 で、なぜかこの店にいた。

 一瞬、ワルトの暗躍か?と思ったが、どうやら今回は偶然らしい。



「シフィー様の護衛をロイ様に頼まれたんだよ。どうせ知ってるだろ。俺達にフィートフィルシアに行けっていたのお前だし」

「護衛を引き受けろとまで言ったつもりは無いんだが、ま、良かったじゃないか。王貴族と繋がりが出来てさ」


「喜んで良いのか?それ」

「いいんじゃない?僕、ロイ、ブルファム王家、女王レジェリクエ、テトラフィーア大臣。ほら、雇用主がこんなにもいっぱい。……うはうはだねぇ、うなされるねぇ」



 うなされるなら良くはねぇな。

 つーか、リリンに齧られる悪夢とか見そう。



「お前らのせいで困惑してるってのに、更に不安を植え付けんな!!」

「尻尾にブチ転がされた件かい?それとも、アヴァロンMAX?」


「どっちもだよ!!」

「そうかいそうかい。じゃあ僕、関係ないじゃないか」



 リリンとセフィナがアヴァロンを攻略している間に、俺達も食事を楽しんだ。

 魔王姉妹の前に並んだ料理を参考に、美味そうなのを適当に注文。

 それを味わいつつ、真横の暴虐から目を背けていた訳だが……、余裕を残しての完食とは恐れ入ったぜ!



「むぅ、あれ、シルストーク?」



 あ、戦闘モードが解除された魔王様が、平均的な表情で首を傾げている。

 ちょっと席が離れているせいで気が付いていなかったみたいだが……、どうやら、ワルトと何を話しているのか興味津々。



「ユニク、ちょっと行って来て良い?」

「いいけど……、あんなに食ったのに動けるのか?」


「大丈夫。コツを覚えた!」



 ……何のコツだよッ!?

 30人前の飯を食って体型が変わらないとか、もはやホラーの領域なんだが!?

 つーか、大食いの途中で星杖ールナを召喚したのは何か関係があるのか!?



「シルストーク、エメリーフ、ブルート、こんばんわ」

「よう!とりあえず、飯を食える元気はあるみたいだな」



 食後の魔王様×2とか、色んな意味で不安しか無いので俺も付いてきた。

 それと、フィートフィルシアのパーティーでは最低限の話しかできなかった。

 彼らが知ってる昔のリリンとワルトの話とか聞いてみたい。



「……リリンサ。色々と言いたい事があるんだけどさ」

「うん」


「えっと、その……、手に持ってるアイスに見覚えがないんだが!?アヴァロンMAXにそんなのあったか!?!?」



 ……。

 おぅ、気になるよな。

 期間限定ソフトクリーム、『夕張メロン・バビロンすぺしゃる』。



「これは昨日発売の新味。だから、アヴァロンMAXには含まれていない!!」

「だよな!?どう考えても追加で注文してるよなぁ!?」


「それはそう。あ、もしかして食べたい?じゃあこの間のお詫びに、私が奢ってあげる!!」



 そこから先はまさに電光石火の攻撃だった。

 シルストークが断る間もなく店員さんを捕まえたリリンは、迷うことなく、「一番豪華な期間限定ソフトクリームセットを、このテーブルにいる人全員分!!」と注文。

 しれっと自分の分も確保するとは、この魔王、抜け目がなさすぎる。



「エメリ、ブルート、……行けそうか?」

「ちなみに、パンケーキの上にソフトクリームが乗っているタイプのスウィーツだぞ」


「無理だぁ!!俺達もアヴァロン食ってんだぞ!!みんなでだけど!!」



 どうやら、そこで潰れてる男がアヴァロンMAXに挑戦したらしい。

 だが、普通の人間に食えるはずもなく。

 結果的に、シルストーク達で綺麗に平らげたようだが……、10人で食っても1人あたり3人前。

 そんな食後に3段重ねのパンケーキは辛いと思う。



「もぐもぐ……、ん、シルストーク達ともちゃんと仲直りしたい」

「リリンサ?」


「戦場での再会だったとはいえ、ちょっとやり過ぎたと思っている。ごめん」

「……ちなみにどの辺が?」


「回避不能なハメ技を使った所?」

「そこも大外に酷かったけどな!?もっと謝るべき所があると思うぜ!!俺は!!」



 リリンが言っているハメ技とは、魔王シリーズの能力を組み合わせた、回避も防御も出来ない即死技。

 肉体と精神の両方から拘束し、無抵抗な相手を魔王の脊椎尾の先端に作った刃で貫くという、これ以上ないくらいの魔王の所業だ。



「むぅ……?」

「リリン、たぶん背後の窓からぶにょんぶにょんドドゲシャー!!だと思うぞ」


「あ、なるほど。原初守護聖界で強化したのはやり過ぎだったかもしれない!」



 俺とシルストークの、「そこじゃねーよ!!」という声が重なった。

 強化とか関係なく、背後から攻撃された時点で詰みだから。



「んだよ騒がしい……、おいソクト。誰だコイツら?」



 シルストークから見た魔王の所業を語って貰っていると、潰れていた男が動き出した。

 ヴァトレイアという名のこの男達は、そこそこ名の知れた冒険者パーティー。

 レベルも3万代後半だし……、なにより、携帯電魔を操作していたワルトがすごく良い笑顔をしている。



「まさか、お前らまで王だ貴族だ言い出すんじゃねぇだろうな?そういうのはストラインで十分だぞ」

「……貴族では無いと思いますが、不敬をすると後悔しますよ」


「あん?って、よく見りゃさっきの無謀な子供ガキじゃねぇか。どうしたのかなー?厨房に文句を言いたいんならあっちだよー?」



 ……やべぇ。後悔どころか、香典が必要になるかもしれない。

 なにせ、この男たちが来ている鎧は、鏡のように磨き抜かれた銀製。

 どう考えても、鏡銀騎士団のトップになったリリンに喧嘩を売って良いとは思えない。



「貴方は鏡銀騎士団に所属している?」

「おっとぉ!物知りだねお嬢ちゃん。この鎧は鏡銀騎士団の中でも特別な人しか着られない特別製なんだぜ」


「……そうだね。オーダーメイドじゃない鎧は、特別弱い人が着るためのもの」

「あ”ん?今のは聞き捨てならねぇぞ」



 ギリリと奥歯を噛んで立ち上がったヴァトレイアと、静かにフォークを置いて立ち上がったリリン。

 そして俺達は、頭を抱えた。



「負けた。あぁ確かに俺は負けたよ、ゲロ鳥に。だがなぁ!!こんなガキにまで馬鹿にされちゃ……ごふぅッ!!」

「何やってんだッ、ヴァトレイアーーッ!?まさか自爆テロを見せる為に俺を呼んだのか!?」



 あ、ものすっごい勢いで疾走してきた焼鳥屋のおっちゃんが、全力でヴァトレイアを殴った。

 それも2回。しっかり魔法を纏わせて。



「痛ぅ、んだよ、ストライン」

「馬鹿かお前!?この御方をどなたと心得る!?」


「……!?いや、ちょっと。もしかして、俺、また何か……」

「あぁ、やっちまった。やっちまったんだよ、キングフェニクスⅠ世様よりもやべぇ失態をよォ」



 そうだな。

 そのキングフェニクスⅠ世様を捕まえた張本人だからな。



「そんな……」

「リリン。引導を渡してやりなー」

「了解!」



 目を平均的にキラッキラさせたリリンが、ドヤ顔で胸を張った。

 一方、ヴァトレイアと焼鳥屋のおっちゃんは既に正座。

 俺達の正体を知っているおっちゃんの方が顔色が悪いが……、おそらく、リリンが名乗る肩書は魔王では無いと思う。



「私の名前はリリンサ・リンサベル。あなたが真っ当な鏡銀騎士団なら聞き覚えがあるはず」

「……、リリンサ……?リン……。……。……。ぇ」


「そして、姉弟子である澪騎士ゼットゼロから譲り受けた今、私が鏡銀騎士団のトップ。……そんなに特別扱いして欲しいなら、いくらでもしてあげる!」



 平均的な暗黒微笑のリリンの横で、ワルトが何かの書類を作っている。

 鏡銀騎士団のロゴが入ってるし、これはたぶん、人事命令書ってやつだな!!


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