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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第115話「心無き魔人達の質問コーナー!⑥」

 

「ほほほ、ラスボスがノウィン様か。洒落の聞いた冗談じゃわい」

「しれっと心を読むんじゃねぇよ、村長じじぃーー!!」



 義理の母がラスボスとか、一周回って普通な感じするなー。って達観して居たら、裏ボス筆頭候補に看破された。


 って、そう言えば、昔話中にも匂いで感情を嗅ぎ分けてやがったな?

 ホント、特殊能力が満載過ぎる。

 本物の妖怪だってもうちょっと慎ましく生きてるぞ。



「ったく。ここでくらいなら良いけどさ、流石に本人に言うのはやめてくれよ」

「言ってどうにかなるならそれも有りじゃがのぅ」


「あん?」

「ノウィン様が黒幕ならば洒落の聞いた冗談で済まされる。が、そうでない場合もあるのじゃよ。ユニク」



 ラスボスがノウィンさんとか、どう頑張っても勝て無さそうだが……、そもそも、争いが起こると決まった訳じゃない。

 一応、娘を二股に掛けてもいいという許可も貰っているし、リリンやワルトのどっちかを蔑にするつもりも無い。


 だが、村長には別の気掛かりがあるらしい。

 さっきとは違う真剣さを宿した瞳が、それを物語っている。



「儂が何を言いたいのか。分かる人はおるか?」

「……。疑っているのは金鳳花の影響かな?」


「ワルトナ、それにレジェリクエ、メルテッサも気が付いておるようだな」

「当然。僕が新しく配属された超状安定化バランシールは皇種災害の対処組織。だからこそ、最たる発生源『金鳳花』の情報収集は、大概の事態より優先される特記任務だ」



 ラスボ……、ノウィンさんから昇格を言い渡されたワルトは、尋常ならざる涙と汗と嗚咽を溢した訓練の果て、どうにか合格を貰ったらしい。

 そして現在、指導聖母時代とは比べ物にならない量の蔵書を机に積み上げ、歴史を勉強中。

 村長の過去話でも知っている所があったらしく、所々で頷いていた。



「ホウライ様の過去にも絡んでいたように、一つの時代を作った人物は何らかの形で金鳳花と交流している事が多い」

「そうなのか?じゃあ……」


「もしかしたら、僕らの中にも影響を受けている人がいるかも。そう言いたいんですよね?ホウライ様」



 俺達の中に、金鳳花に操られている奴がいるだと……?

 そんな馬鹿なって思う反面、妙にしっくりくるような気もする。



「金鳳花か。で、ぶっちゃけて聞いちまうんだが、どんな奴なのか良く分からないぜ!」



 幼いヴィクトリアを殺す為に村に赴いて、奉納祭を引き起こした。

 ラルバを陰から操って大陸統一を成そうとし、終世の原因を作った。


 金鳳花がした事はタヌキが可愛く思えるほどの大罪。

 そう分かっちゃいるが……、逆に言えば、それしか分からない。



「関わっちまったらやべぇってのは十分に理解した。実際、世界が滅んだ訳だしな」

「ほほほ、備えあれば憂いなしとは言うのぅ」


「で、俺達が影響を受けてるって思った理由はなんだ?あるんだろ」



 普段はブチ転がしたくなる煽りを放つ村長が、今みたいな雰囲気を放つのは珍しい。

 レラさんと喧嘩してる時だって、此処までマジな奴は見た事がない。


 そして、俺の探りを肯定するように、村長が湯呑をゆっくりと傾けた。

 皺がれた濡らした唇を濡らし、滑らかになった声を重く響かせる。



「こんな老いぼれの話など、聞かないで済むのならそれに越したことは無かろう。ユルドルードやアプリコットにも話しておらんしな」

「英雄の親父たちにも?それってつまり、俺達が金鳳花の影響を受けてるって確信してるってことだよな?」


「……あぁ、そうだ。状況があまりにも不自然に整い過ぎておる。ノウィン様の思惑もあろうが、他の誰かの悪意が介入している気がしてならないのじゃよ」



 村長は言った。

 俺、リリン、レジェリクエ、メルテッサ、この4名はブルファム王国建国時の有力貴族の子孫。

 そして、サチナ、サーティーズ、ホロビノ、冥王竜、ソドム、ゴモラ……、当時を生きた者、及びその子孫がこんなにも集まっているのは異常だと。



「それに……、ノウィン様が神に助言を乞うた結果、返された言葉が『ヴィクトリアに会いに行け』じゃ。これだけなら、世界に飽きた神の気まぐれと思う事も出来たが……」

「どんどん怪しい材料が出て来ちまったと。……そうか、だから村長は親父たちが蟲量大数やヴィクトリアを探すのを断ったんだな」


「ほほほ、そこには触れてくれるな。儂のちっぽけな心が砕け散ってしまうわ」



 毛が生えてるどころか、カビの生えた鏡餅並みの強度だろ。村長の心臓は。

 ハンマーで叩いても砕けやしねぇ。



「金鳳花の話を聞いた後だしすげぇ怖いな。だけどさ、近くに居るってどうやって判断するんだ?村長ですら見抜けなかったんだろ?」



 人の心を嗅ぎわける妖怪村長ですら、命を賭したラルバに教えて貰うまで気が付けなかった。

 相手は人の記憶と心を操作できる『時の権能』の所持者。

 存在を知っているからと言っても、簡単に見抜けるとは思えない。



「ある意味、白銀比ギンよりも一枚上手だしな。そんなのが神と組んでたら、どうしようもねぇぞ」

「いや、今なら対抗できる可能性がある」


「そうなのか?」

「奴の認識改変は強固で大規模。自力での脱出は不可能で、傀儡は死ぬまで捕らわれ続けるしかない」


「じゃあダメじゃ……、ねぇのか?」

「あぁ。奴の認識改変は死ぬと同時に解除される。仕組みは分からぬが……、一度死んだ者は奴の認識改変に耐性ができる。違和感にも気付けるんじゃよ」



 馬鹿は死んでも直らない。

 裏を返せば、死んだら馬鹿は直るってことか?


 だけどさ、人間は死んだらそれっきりなんだけど。

 いくら認識改変に耐性ができようとも、喋れなければ意味がな……。あ。



 ……。

 …………。

 ………………そういえば、丁度、タヌキに殺された哀れな英雄見習いが居たっけ。

 な?俺。



「対抗手段って俺かよッ!?」

「ほほほ、違和感に気付けると言っても、日常を知らぬ儂では不可能じゃからな」


「それにしたって、人の敗北を好都合みたいに言うんじゃねぇよ!!実はかなり凹んでんだぞ!!」

「つくづく、那由他様には足を向けて眠れんわい」


「……まさか村長、金鳳花を炙りだす為に、タヌキと結託して俺を殺したとか言わねぇだろうな?」

「流石にそこまではしとらんわ」



 なんか胡散臭ぇぞ、村長じじぃ

 タヌキとズブズブとか自分で言ってやがったの忘れてねぇからな。



「その話を聞いて、ぼくはほっとしたよ」

「メルテッサ?」


「実は、ちょっと思い当たる節があるんだよねぇ」

「そうなのか?」


「キミと戦った時、チェルブクリーブと一体化していた僕は一度死んだ。そして今、こんなにも落ち着いた心で居られるのは、病だけが原因じゃないのかもしれない」



 ラルバと同じ神の因子を持っているメルテッサは、ブルファム王と下級メイドの間にできた子供だ。

 母親の貴族階級は低く、生まれたメルテッサも期待されていない女の子で、しかも病弱だった。

 そんな理由から孤児院で育った彼女は、誰にも見出されずに一生を終えてもおかしくない存在だったらしい。



悪典バリアブルには恩がある。だが……、彼女自身は金鳳花の手駒で間違いないと思う」

「その人ってワルトの図書館にいた人だよな?」



 メルテッサの独白で顔色を変えたのは、ワルト以外の魔王達。

 一方、悪典を管理しているワルトは想定内とでも言うように平然としつつ、メルテッサの言葉を待っている。



「生きている事に驚いたもんだが、魔王一派に負けたフリをして潜り込んだってのが真相だろうね。……その場合、ぼくは見捨てられた事になるんだけど」

「それは無いねぇ」


「ほぉ?どういうことか説明してくれるかな?悪辣ぅ」

「悪典に仕事を振ってるのは僕だけど、管理者は他ならぬノウィン様なんだよ。ということで、奴はゴモラに監視されてる」



 ……そう言えば、お前は俺以上に死にまくってそうだな?ニセタヌキィ。

 死に芸と言って良いくらいに分裂→死亡→分裂を繰り返してんだから、耐性も相当なもんだろ。



「そうなの、ゴモラ?悪典の正体が分かるなら教えて欲しい!!」

「ヴィーギルッン!」


「ん、悪典自体は金鳳花では無い。でも、何からの影響は受けてる。けど、大陸を揺るがすような兆候は見られず、煽られている感情もささやかっぽい?」



 流石は大聖母が重用しているタヌキ。

 重要な情報がスラスラ出てくる。

 アップルパイと引き換えで。



「金鳳花は時の権能を用いて、無色の悪意を植え付ける。そして、対象者の強い感情や願いに反応し、道理や道徳を無視した手段を使わせる性質を持つ、と」

「んー、だとすると、悪典にも煽られている感情がある訳だが……、物事を思い通りの動かしたいっていう支配欲って所かな」


「っぽい。ノウィンの考察でもそうなってるけど、悪典は世絶の神の因子を持っておらず、身体能力も高くないって」

「なるほどねぇ。これはマジで深刻な事態かもしれない」


「どういうこと?」

「無色の悪意の究極の対処方法って関わりを持たないことでしょ。でも、ノウィン様は悪典が影響下にあると知った上で僕らを近づけさせている」


「ん、確かに」

「たぶんね、ノウィン様ですら取り除けない数の人間が、大なり小なり、無色の悪意の影響を受けてるってことなんだと思う」


「これは警告なんだよ。リリンやセフィナが不安を感じ過ぎないように遠回しにした、ね」



 ワルトが出した結論に、他の大魔王達が噛みしめるように頷いた。


 人間は誰でも、他者より優れたいっていう欲求がある。

 そして、それを手に入れる為の努力も、みんながやっている事だ。


 金鳳花は、その欲求を煽り、理性の枠を外れさせる。

 そんな存在が身近にいる、考えただけで身の毛がよだつ思いなんだが……。



 俺の周囲に、欲求に忠実な魔王様が多すぎるッッ!?!?

 心当たりがあるってレベルじゃねぇぞ!!


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