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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第114話「心無き魔人達の質問コーナー!⑤」

 

「レジェンダリアがブルファム王国の暴走を止める役割だったとか、ホント、感慨深いね」

「ワルト?」


「あぁ、これは正しく奇跡!!ブルファム王国の崩壊=大陸経済の破綻だ。数百万かそれ以上の飢餓死者が出るだろう未曾有の緊急事態を救ったのが、それを期待して建国されたレジェンダリアだったなんて!!」

「んー、まぁ確かに。それで、何が言いたいんだ?」


「……そうなるように仕向けたのって、どう考えてもノウィン様だよね?」



 ……。

 …………。

 ………………マジ?



「ノウィン様なら知ってても不思議じゃない。ホウライ様に聞きたいんだけど、さっきの話を他にした事ってある?」

「何度か、な。マメな性格の奴もおったし、不安的機構に資料が残っていても不思議ではあるまい」


「はい確定ー。大聖母のみが閲覧できる史書があるらしいし、まず知ってるだろうね」



 って事は、大魔王陛下のレジェンダリア王位継承から、リリンやワルトとの出会い、そして、大陸平定の流れまで全てノウィンさんの仕業ってことか?

 しかも、その過程で、フランベルジュ国、ノウリ国、ギョウフ国の三国戦争が起こっている。

 確か、その黒幕も指導聖母って話だったはずだ。



「リリンの前で言うのは気が引けるが……、ノウィンさんが戦争を誘発させてたんならタダ事じゃねぇぞ」



 不安定機構の役割は、『世界を不安定にして、物語を生み出し、神を楽しませること』だ。

 だからその最高責任者である大聖母が戦争を起こしているのなら、それは世界存続という意味で正しい行いなのかもしれない。


 だけど、そう簡単に割り切れる話じゃないな。

 戦争は多くの命が消費される戦い、その首謀者が実の母親だったなんて、リリンやセフィナには辛すぎる事実だ。



「おや?何でそんなに怖い顔をしているんだい?」

「そりゃそうだろ。戦争ってのはな――!!」


「分かって無いねぇ。レジェに教えて貰いなよ。ユニ、リリン」



 分かって無い?

 そう思って見渡して見ると、取り乱しているのは俺達だけだった。



「まず、戦争は善悪では語れないわ。悪い面もあるけれど、良い面もある」

「人が死ぬんだぞ?それも数え切れないほど多く」


「そうね。でも、放っておいたって人間は死ぬわ。さっきワルトナが言ったように、飢餓は三日で確実に人を殺すわね」

「そうだが、それと戦争に何の関係があるんだよ」


「あるに決まってるじゃなぁい。戦争が起こる理由の大半は飢え。そしてそれは生態系の営みの結果、だから必ずどこかで発生するわ」



 食べ物がないなら、持っている奴から奪えば良い、か。


 最初は金銭で売って欲しいとお願いするだろう。

 だが、金貨は食えない。

 三日以内にその金貨を食料に変えなければ、人はその場で死ぬしかなくなる。

 それが分かっているのに、余剰以外の食料を売る奴はいない。



「戦争ってぇ、飢餓対策の特効薬なのよぉ。確かに人が死んで数が減る。けれどぉ、その一時的な減少が多くの命を救うわぁ」

「人が少なくなれば、食い扶持も減るってことか」


「そう。仮に飢餓に苦しむ男50人、女50人の村があったとしてぇ。男を1人だけ残しておけばぁ、翌年には男1人、女50人、子供50人になるかもしれないじゃない」

「理論的にはな」


「でも、男が戦争に行かないとぉ、食料の取り合いになる。そして、力の強い男が勝つ」

「男が女を殺すってことか?そうはならんだろ」



 男女差別になるかもしれないが、女性を守るのは男の仕事だと俺は思っている。

 男だって馬鹿じゃない訳で、子供を産んでくれる女性を蔑ろにすれば先がないのは分かっているからだ。



「戦争をしないという選択は、他者の命を奪わず、互いに平等な死を選ぶということよ」

「……平等な死?」


「だってそうじゃなぁい。回避手段がないから飢餓になったの。そして、先に死ぬのは体力のない子供、女、最後に男の順」

「つっ!!」


「戦争の結果が必ずしも権力者のみの快楽に繋がるわけじゃないわ。余が成した大陸統一が、これから先の未来で多くの民の命を救うように」



 大魔王陛下の……、いや、女王レジェリクエの瞳には強い光が宿っている。


 俺は今回の戦争で直接的に死者を見ちゃいない。

 それを体現するように、ロイも、じいちゃんも、今回の戦争は死者が少ないと言っていた。

 少ないだけで、決してそれはゼロでは無い。



「戦争をしなければ、何も生み出せない男ばかりが残る。それが分かっているから、みんな、戦争をするのぉ」

「でも、そうなるように仕向けるのは良いことなのか?」



 例えば、経済を上手に回して飢餓者へ食料を届ける。そんな事だって出来るはずだ。

 それじゃ物語にならないとは分かっていても、納得は出来ない。



「指導聖母・悪典バリアブルはぼくの育ての親みたいなもんだ」

「メルテッサ?」


「あの人は利己主義だし、三国戦争の目的もテトラフィーアを手に入れて自分の治世を盤石にする為。悪典が勝ってたら、彼女とぼくは同僚だったろうね」



 レジェンダリア大臣ではなく、指導聖母になったってことか。

 そして、そこにはワルトは居ない。

 悪典と戦ってた心無き魔人達の統括者は全員死亡、当然リリンも……、ん、あれ?待てよ?



「ノウィンさんが戦争を興したんだよな?それでリリンに危険が迫るっておかしくないか?」

「そ。だから、ノウィン様がコントロールしている事になる」


「どうしてそう繋がるんだ?ワルト」

「戦争自体は偶発的に起こったものだろうね。で、僕ら心無き魔人達の統括者を勝たせたのは、常に勝ち組にリリンを置くため」


「つっ!!」

「僕はね、ノウィン様は厳正で中立な統治者だと思っていた。けど考えを改めた。あの人は大陸一の利己主義者。愛する娘達を守る為に最善を尽くす、……文字通りのお母さんだよ」



 全てはリリンとセフィナを守るため。

 幾つもの戦争を利用して、この大陸有数の力を持つ人材を選りすぐり、そして、心無き魔人達の統括者という結果を作りだしたのか。



「ついでに言うけど、ノウィン様は僕ら指導聖母のビジネスに口出しをしない」

「ビジネスってなんだ?」


「そのままの意味で商売。僕の冒険者活動、メルテッサのブルファム王国運営、フロムマージュのフォスディア家、自律神話教やシルバーフォックス社もそう。指導聖母は何らかのビジネスを行っている。……あ。タヌキは除外」



 そう言えば、唯一神であるヤジリさんでさえ闘技場の運営をしたっけな。

 働かなさ過ぎて給料が初任給より少ないらしいが……、大聖母とズブズブの関係なので、金には困って無いだろう。



「要するに、戦争を起こしているのは指導聖母でノウィン様じゃない。じゃあ何で僕が恐れ戦いてるかって言うと」

「……言うと?」


「いつ、どこで、どんな状態で発生する分からない戦争の結果が僕らの勝利になる様に、あらゆる不都合が取り除かれている。20年も前からね」



 20年前だと?

 それじゃリリンどころか、大魔王陛下すら生まれていないんだが……?



「なんで20年も前なんだ?リリンを守るって理由ならおかしいだろ」

「アプリコット様と出会ったからでしょ」


「んん?」

「たぶん、この人と結婚して子供を作るって決めたのがその時期なんだろうねぇ」



 ……まだ見ぬ我が子の為に、大陸統一の筋書きを描いた、だとぉ……。

 いくら何でもそんなことが可能なのか?



「証拠もあるよ」

「あんのかよ!?」


「あるよね?メルテッサ」



 あ、指導聖母・悪性の仮面を持ってるメルテッサが『ぐぬぬ……』って顔してる。

 どうやら、ノウィン様の仕業だって確信しているらしい。



「はぁ。7人の指導聖母の過半数がブルファム王国に関わる人物になったのは、おおよそ20年前だって言われてる」

「あっ」


「4人はブルファム王国系。その他、神獣と神で2名。こんな偏った編成にしてるのは、ブルファム王国の内情を探る為だとしか思えない」

「……密偵はニセタヌキか?」


「でしょうね。姿を消して後ろに付いて行くだけでブルファム王国の内情、丸裸にされるもん」



 もしかして、アプリコットさんや親父、母さんの素性を調べる為に、指導聖母をブルファム王国系で固めた?


 ……。

 …………。

 ………………好きになった人の素性を調べるにしてはやり過ぎだぞ。



「これって家族愛っていうのか?」

「たぶんそうじゃない?」



 世界統治機構を使って旦那の素性を調べ上げたヤンデ大聖母・ノウィン。 


 +


 ドM英雄・アプリコット。



「その結果が超魔王リリンか。納得の結果だぜ!」

「ん!!私もセフィナもお母さんから愛情を注がれていたのは理解している。でも、ノウィンに化けていたのは許していない!!」



 なるほどなぁ。

 ヤンデ・リリンに、呑んでリリン、タヌキリリンに魔王リリン……、ちょっと目を離した隙に変身するのは、性癖が遺伝したからか。

 その理屈で言うとセフィナも大概にヤバそうだな。



「つくづく、ノウィン様に逆らおうって気が無くなるわねぇ。いや、最初から狙って無いんだけどぉ」

「賢明な判断だと思うよ、レジィ。おねーさんも敵対したくないもん」

「じゃな。権力者に逆らわないのが長く生きるコツだわい」



 うわぁ……、横の方でなんか聞こえた。



「戦争が起こったのも、レジェンダリアやフランベルジュ周りの国営が上手く行っていなかったのも、正しい歴史が失われていたのも、全部が偶然。でも、ホーライ様を赴かせてローレライを見いだしたり、僕を育ててリリンの友達にしたり、テトラフィーアがユルドおじさんと出会ったりしたのは、全部狙ってやったこと……、かも知れない」

「マジかよ」


「だから僕と一緒に、お義母さんと仲良くなれるように頑張ろうね。ユニ」


 俺の人生物語のラスボスは蟲量大数だと思っていた。




 今、違うかもしれないと、本気で思った。



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