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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第108話「ホウライ伝説 未来へ、あなたと②」

 

「うぅ、こんな時にルティンとチャカは何処に行ったんですか……?主人の大事な時に側に居ないなんて、侍従失格ですよ……?」



 誕生日パーティーを楽しく終えたラルバは、ホウライの自室へと向かっている。


 もともと、この流れはラルバも望んでいたものだ。

 ルティンとチャカス、親しい侍従と計画した『一夜の過ち大作戦』。

 18歳という節目にホウライへ想いを告げ、両親に邪魔される前に既成事実を作るという暴走としか言えない計画も、薬を持ってる侍従が行方不明では成り立たない。



「準備していたお薬も無いし……ううん、ホウライ様からお呼び頂いたんだもの、きっと、私の想いを察してくださっているに違いありません!!」


「……でも、『お師匠って朴念仁っすよ。』 あぁ、もう、何でこんな時にアサイシスさんの言葉を思い出すんですかっ!!」


「ルティン、チャカ……、本当に何処に行ったんですか?主人に心細い思いをさせるなんて、後でお説教ですからねっ!」



 心細さから一人言を呟くも、ラルバが歩く廊下には誰もいない。

 若干一名、隠れて聞き耳を立てているアサイシスがいるが、ラルバには分からないことだ。



「あの、ホウライ様……?」

「来たか。入ってくれ」



 控え目にホウライの自室の扉を叩き、迎える声を聞く。

 ドキドキと高鳴る心臓がうるさくても、ホウライの言葉を聞き逃すはずがない。



「失礼します。……あれ、執務をなさっているんですか?」



 ラルバの目に留まったのは、机に向かって書き物をしているホウライの背中。

 たまに見る光景であり、別段、珍しくもない。

 だけど、いつもには無い雰囲気を纏っていて。



「癖でな。考えを整理する時は紙に文字を書きたくなるのだ」

「……!!ホウライ様、目がっ!!」



 振り返ったホウライの目が赤く腫れている。

 いつも完璧でカッコイイ、世界で一番尊敬している人が涙を溢していた。

 そんな異常事態に、恋心すら吹き飛んで。



「どうなされたのですか!?」



 思わず掛け寄るラルバ、だが、ホウライは落ち着いていた。

 そして、用意していた椅子へ座る様にラルバへ促す。



「何があったというのですか?パーティー、いやその前に何か、御気分を損ねるようなことが?」

「……あぁ、あった。有り過ぎた。とてもじゃないが、簡単には受け止めきれん事が大量にな」


「ホウライ様ですら対処できないんですか!?それはもう国の一大事です、直ぐにお母様を呼び――っ!?」



 慌てて立ち上がるラルバの手を取るホウライ。

 振り返った彼女を真っ直ぐに見詰めるのは、決意に満ちた男の目だ。



 「ライセリアに報告するのは後で良い。今はお前が一番大事じゃ、ラルバ」

 「えっ、と……。はい」



 思わずへたり込むように椅子に座ったラルバは、上目遣いでホウライを見る。

 懐かしい光景。

 いつの日にか、肩を並べて一緒に歩けたらいいな。

 そんな幼い想いを思い出し、緊急事態で吹き飛んでいた恋心が急速に燃え上がってゆく。



「あの……」

「ラルバよ。儂はお前を愛しておる」


「ぇっ……!?」

「可愛らしい幼子だったお前の師でありながら、娘や孫の様に思いながら育てた」


「……あ、そうですよね、そう、知ってま」

「そして現在、お前は美しい女性へ成長した。この儂ですら目を奪われ、魅了されてしまうくらいだ」


「ぇ」

「どちらかの命が果てるまで、生涯を添い遂げたいと思っておる。こんな老いぼれの手で良ければ、取ってはくれまいか?」



「…………。はいっっ!!」



 ラルバは驚き、涙を流して、笑った。

 憧れていても、叶わないと思っていた未熟な恋。


 それが実った事実は簡単には信じられなくて。

 だから、急いで返事をして。

「もう言質は取りましたよ」と、はにかんで笑った。



「それで、一体何があったんでしょうか?」

「ほほほ、恋人に向ける第一声がそれか?」


「だって、朴念仁が紅葉したんですよ?天変地異が起こったに決まっています」

「酷い言われようじゃのぉ。だが、事実」


「私を籠絡しなければならない程ですから、かなり大変なことですよね?でも、受け止めて見せます」

「……本当にお前は強いな。ラルバ」



 お前にとってはつらい話になる。

 覚悟は良いか?

 そんな前置きへ肯定を返したラルバは、真剣な表情でホウライを見つめた。



「簡単には信じられぬと思うが、お前の感覚での未来を儂は見てきた」

「……悪い未来を知っていると?もしかして、ブルファム王国運営に問題があって、近い将来に破綻してしまうとかですか?」


「いいや、もっと規模の大きい話じゃよ。儂らが原因で世界が滅びた。こうして話が出来ておるのは、一度滅び、復元されたからじゃ」

「……?」



 そうだよな?ヴィクトリア。

 タヌキが言っていた、『次』ってのは神への奇襲ではなく、本当に人生をやり直せる、そうなんだろ?



「突飛過ぎたようじゃな。実はのぅ、ここで想いを告げるやりとりも二回目じゃ。前はラルバから儂に想いを告げ、そして儂はお前を振った。こっ酷くのぅ」

「……えぇーっ!?!?」


「その後のお前は拗ねてしまってのぉ、ライセリアとジュゼッペが死んでも儂を頼らず、勝利への盲信に取り付かれ、他国家を侵略。世界を統べ、そして、人類の皇へ――」

「ちょ、ちょっと待ってください!!情報が多すぎます!!え、あの、お母様とお父様がな、亡くなる……?」



 色づいていた頬が蒼白に変わり、ラルバの表情から完全に恋が抜け落ちた。

 母も父も、王や宰相として厳しい一面を見せる。

 だが、それでも、ラルバは彼らから向けられている愛情を疑うことは無い。



「そうだ。ライセリアもジュゼッペも死ぬ。それだけではない。アサイシスも、ルティンもチャカスも、そして、儂もお前も皆、死ぬのだ」



 ホウライは話した。

 仲違いをしたホウライが留守にしている期間に、ライセリアとジュゼッペが乗った馬車が崖から滑落。

 ライセリアは即死、一命を取りとめたジュゼッペも憔悴死してしまったこと。


 孤独となり、愛憎に取りつかれたラルバは囁かれるままに、世界の頂きへ駆け昇った。

 手段を選ばず、ホウライや自らの手を血で汚し、多くの人を殺めたこと。


 そして、それを主導していたのは無色の悪意を宿した金鳳花……、侍従のルティン。

 全て始めから仕組まれていた。

 儂との出会い、いや、奉納祭のあの日から、全て金鳳花が神を楽しませる為にやったことなのだと。



「そんな……ルティンが悪人で、チャカが神様……?じゃあ、二人が居ないのは?」

「神との最終決戦の時には既に、ルティンは死んでいた。謀られていたと気付いたお前が殺し、そして、そんなお前を儂が殺したのだ」


「私が……?」



 殺した?殺された?

 途切れた言葉を想像したホウライは恐怖する。


 ラルバを愛している、それは紛れもない本心だ。

 そして、人間が最も恐怖するのは、愛の喪失。



「奴らが此処におらんと言う事は、世界を再生する際に取り除かれたのだろう。じゃから、儂が見た未来は必ずしも訪れるものではない」

「ルティン、チャカ……、彼女達を取り戻す手段は無い。そうなんですね?」


「つらさは理解しておるつもりだ。お前にとっては最も心を許す人達だったからな」

「そうですね。侍従であり、姉であり、親友であり、最も大切な人達、それは今も変わりません。ホウライ様の言葉が嘘ならいいのにって思います」


「……だろうな」

「でも、ホウライ様はこんな酷い嘘を吐く方ではありませんっ!!私を泣かすようなこと、意味もなくおっしゃるはずがないんですっ!!だから、これは仕方がないことで、ぐすっ……」



 気が付いた時には、ラルバの瞳には涙が溜まっていた。

 そんな表情を見るのはいつ以来だろうか。

 あぁ、やっぱり女の涙は苦手だと、ホウライは思った。



「誓って嘘では無い。だが、儂は酷い奴だぞ」

「違います!!ホウライ様は酷くありませんっ」


「今だって、お前を騙そうとしておる。この身体は傷付き過ぎた。ラルバが子を望もうとも作ることは叶わん。いくら心を交わそうとも、儂は王配としての役目は出来んのだ」

「つっ……!!あぁ、もう、次から次へと本当に……っ!!」



 ホウライが暗香不動で魔法を肉体に融合させる代償は、決して軽いものではない。

 使用する度に肉体は魔法物質に置き変わり、回復手段の無い傷となって身体を蝕んでゆく。

 そして、機能しなくなった臓器の代わりに魔法を使い――、ホウライは魔法無しでは生きられない身体となっている。



「まったく不甲斐ないのぅ、未使用のまま使いもんにならなくなるとは」

「雰囲気を和らげて誤魔化さないでください!!全部、話を聞かせて貰います。まずは、ホウライ様が恋していたというその勝利女、ヴィクトリアからですっっ!!」



 泣いたり笑ったり、怒ったり拗ねたり。

 コロコロと表情が変わるラルバが愛おしくて、ホウライにも自然に笑みが零れた。



 儂は、ラルバと共に生きていく。

 ほほほ……、これで良いのじゃろう?ヴィクトリア。


 お前は勝利し、那由他様や蟲量大数と共に世界を作り直した。

 原因である儂やラルバを取り除かず、あまつさえ、道を踏み外した時に戻すとは、お人好しが過ぎるわい。


 問題は山済みだ。

 人類の皇の資格はどうなったのか。

 セフィロトアルテを襲撃する以前の戦争で死んだ、多くの民の命はどうなっておるのか。

 那由他様や天王竜の意向によっては、タヌキや竜による仕返しもあるだろう。



 ……分からないことばかりで、ちゃんとやれる自信もないけどさ。

 できるだけ頑張ってみるぜ。





 だって俺は、ホーライだから。



~お知らせ~


長い長い過去話、ホウライ伝説は今回でお終いです。

御付き合い頂き、ありがとうございました!!


ちょっと予定の10倍くらい長くなりましたが……、これも当然タヌキのせい。

まさか僕も、かつてないタヌキが主人公ムーブをするどころか、出生の秘密まで暴露してくるとは思ってもおりませんでした(汗

……やりたい放題したソドムとゴモラ、お前らだよお前ら。


次回より、ユニクルフィンとリリンサ達の物語へ戻ります。

とりあえず、ホウライの話を聞いた各キャラクターの感想回をしばらく書いてから、次章へと進もうと思います!!


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