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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第103話「ホウライ伝説 終世 七日目 ③」

 

「何処まで行っても飯かよ!?」

「無論じゃの。飯無き世界に価値など無い」



 身長130cmの細身の体と共に、同じ長さの長剣が舞う。

 那由他が担ぐその剣の名は、『神廻旋刃・アナグラム=ヴァニティ』。

 それは、悪喰=イーターで複製した第六の神殺し『神壊戦刃・グラム』を覚醒させた、始原の皇種・那由他の研ぎ澄まされた”爪”だ。



「所詮は複製品(ヴァニティ)と侮っておる様じゃがの」

「つっ!」


「誰が斬れぬと申した、じゃの?」



 フォォンっと風を、空間を、世界を破戒し、アナグラムの切っ先が神の喉元に食い込む。


 魔法の真理を知りつくしている那由他は、ただの会話に魔法の詠唱を混ぜ込める。

 今も魔法十典範をこれでもかと含ませ、バッファ、転移魔法、光魔法、認識錯誤を同時展開しているのだ。


 真昼の日の下で幽玄と化した那由他。

 その剣の軌跡に残されるのは神から噴き出す血飛沫では無く、それが変異した漆黒の輝石。



「喉を鳴らすがよい。今は飯の時間じゃからの」



 神殺しの覚醒体には段階が存在する。


 ① 誰が使用しても同じ形態である『初期覚醒』

 ② 神殺しを理解し求めた性能を発揮させる『真なる覚醒』


 そしてその先……。


 ③ 神殺しの性能のみならず、それを扱う自分と成すべき未来すらも見据えた者が辿りつく境地、『神髄覚醒』。

 刻まれた真名すら変化する程に、原型から掛け離れた性能を発揮するこの形態こそが、神殺しの極致だ。



「がっ……!?」



 喉を破かれた神は苦悶し、右手で傷口を押さえつける。

 だが、指の隙間から血液が零れることは無かった。


 声紋を重ね合わせて魔法を発動できる人間の特性は、神にも適応されている。

 唯一神が持つ三種の神器、『世絶の神の因子』『神愛聖剣・黒煌』『魔法次元』。

 それらの封印は神の撤廃に必要不可欠な前準備、その一つを那由他は行ったのだ。


 声と血液の代わりに輝石が漏れ出す神の喉、その奇怪な現象はアナグラム=ヴァニティの能力『絶対破戒』によるものだ。

 破壊では無く破戒……、定められた『戒め』の破壊は、対象の概念そのものを壊し、存在したという事実ごと別物質へ置き換える。


 それゆえの、『アナグラム』。


 文字を組み替え、異なる意味を持たせる言葉遊びの如く、切り捨てられた物質が変異する。

 その辿りつく先は――、ダークマター。



「がはっ、がふ……、おい」

「……ほう?ワザと受けて、対応できるか試したかの」


「随分と捻くれてるじゃん。……その剣の何処がグラムだ。中身の殆どが命の権能じゃねぇか」



 ダークマターは、神の名の下に不変だ。

 神製金属生成の失敗作でありながら、それ以上の強度を持つこの物質は、世界で最も加工が難しいが故に『最果ての物質(ダークマター)』と呼ばれている。


 急速に発展する機械工学への歯止めと嫌がらせの為に生み出されたダークマターは、そのまま、神への嫌がらせへ転じた。

 人間ベースの性能しかもたない神も破壊不可能であるからこそ、那由他は神へのトドメとして重用しているのだ。



「アナグラムはお前が最もよく使う神殺し。何度、斬られたか分かったもんじゃない」

「教えてやろうかの。にひゃ」


「黙れよ知識(タヌキィ)ッ!!じゃなくって、当然、ボクは対策を講じている。それが造物主の訳だが……」



 失敗作であろうともダークマターは『造物』であり、造物主の効果適応が可能。

 それができる造物主を所持していたからこそ、ラルバは神の器に選ばれたのだ。


 だが、那由他の攻撃は神の想定を超えていた。

 自動で回復するはずのダークマター化が直らず、任意での対応となっている。



「なるほど、それでヴィクトリアな訳だ」

「何の話じゃの?」


「とぼけんなよ。身体をダークマターにされようとも、造物主なら過去の状態へ戻せる。それを妨害するには過去を清算――、別の命へ再誕させるのが手っ取り早い」

「その理屈じゃと、儂が使えるのはおかしい筈じゃがの?」


「だから不可思議竜では無く、ヴィクトリアを選んだんだろ。命の権能()をお前に譲渡させる為に」



 まずは、造物主の攻略からじゃの。

 ヴィクトリアには負担を掛けるが……、やらねばお終いじゃ、しっかり働いて貰うからの。


 常時進行している作戦会議は、それぞれが所持している悪喰=イーターを介して行われている。

 その中心に居るのは、愛烙譲渡を持つヴィクトリアだ。


 愛烙譲渡の神化体『愛玩信憑』は、感情のみならず自分が持つ能力()も相手に譲渡できる。

 様々な条件・代償を那由他が肩代わりすることで利便性を高めた秘儀であり、ヴィクトリアが多くの才能を持つほど高い効果を発揮する。


 そして現在、後方に控えているヴィクトリアの中には、全生命体を飲み込んだ悪喰=イーターが納められていて。



「今だに悪喰=イーターの本体をヴィクトリアが持っているのは、食った皇の権能を分配するためか」

「ほぉ……?」


「那由他が命の権能を使うだけじゃない。お前も何かを隠し持ってるな?蟲量大数」



 鋭い神の視線へ、蟲量大数の不敵な笑みが返された。

 そして、陽動に徹していた世界最強が、身体の前で拳を握る。



「愛とは偉大なものだ。奪った時より、身体に馴染む」


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