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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第97話「ホウライ伝説 終世 六日目 プロローグ・アンバランス⑳」

「大神父・ノワル様、大聖母・シアン様、ご着席。……これより、史実編纂会合を開始いたします」



 新造された首都・セフィロトアルテの大中央塔の最上階室にて、十名の高位神官が一堂に会した。

 その中でも『大神父』『大聖母』の肩書きを持つノワルとシアンが、最も身分の高い神官となっている。



「あー、みなさま、御苦労さん。先日一児の父となったノワルです。子育てってのはアレですね、七賢人様の介護に匹敵する苦労がこの世にあるとは思いもよりませんでしたよ。えぇ」



 そして、憔悴しきった顔でノワルが口を開いた。

 最も身分が高くなろうとも……、否、最も身分が高くなってしまったからこその多忙により、ノワルの睡眠時間は平均3時間を切っている。

 産後間もないシアンの執務軽減のため、通常の神官5人分の仕事を請け負っているからだ。



「あー、一応言っておきますが子供は可愛いんですよ、もふもふとセットですし。けどまぁ、なんつーか……。一ヶ月くらい育児休暇を頂いても?」

「ふむ、カーラレスを亡き者にしてより5年もの月日が流れた。お前は身を粉にして働き、見事、世界を納めるに相応しい知恵と格を手に入れたと言えよう」


「ありがとうございます、グリン大教主」

「ひと月などとケチくさい事は言わん。80年くらい休めば良かろう」


「それは解雇つーんだよッ!!」



 冗談二割、本音八割な開始の挨拶で場を温めつつ、ノワルは強かに参加者の顔色を伺った。

 この場に招かれた高位神官の内訳は、七賢人の後継者六名、ノワルの腹心一名。

 そこにノワル、シアン、グリンを加えた十名により、大陸の運営が行われている。



「ボ賢人様は放っといて始めるぞ。先月から続く議題の通り、この大陸には無数の集落や街が存在する。それらを八つの大きな括り、『国』として管理する。それは理解できているな?」



 ノワルの言葉に重厚な頷きを返したのは、指導聖導と呼ばれる七人。

 それぞれが国の運営を任される者達であり、自らの価値観が数百万人を幸せにも、不幸にも導く。

 そんな重責は七賢人の下に居た時には想像もつかず……、こうして、ノワルの言葉を静かに聞く事しかできずにいる。



「この方策には幾つかの狙いがある。ヴェニー、分かるか?」

「世界存続には前提条件があります。『神を楽しませる』、その為には物語を発生させ続ける必要があります」


「そうだな。それで?」

「競争が必要不可欠です。始原の皇種へ挑み勝利するのは勿論、人間同士の争いも物語となり、神を楽しませる要因となる。故に、私達は自らの国を競わせるのです」


「正解。一見して、これはマッチポンプのようにも思えるだろう。最終的には武力を伴う戦争になると分かっていて、最初っから談合してるんだからな」

「はい、ですが……」


「今この場は心理戦の真っただ中で、そこも醍醐味の一つだと神さんには納得して貰ってる。共闘も裏切りも策謀も暗躍も自由だ。思うがままに意見を交わし、手を取り合い、蹴り落として、自らの価値観を押し通す。それが我ら不安定機構アンバランスの役割だ」



 世界の頂点に立ったノワルは、七賢人を頂いていた治安統治組織の名を不安定機構アンバランスと改めた。


『世界存続』


 そんな絶対に優先させなければならない目標を達成し続ける方法は二つ。


 始原の皇種の討伐を目指す、討伐伝記。

 人間同士の戦争を描いた、戦争戦記。


 それを両立させる為の方策として、ノワルは世界を八つの国に分けた。

 その長に七賢人の後継者を就けるのも、互いに負けたくないという自尊心を利用するためだ。



「自分の国に何をさせるのかは自由だが、その結果を月に一回、この場で発表して貰う」


「ただし、内容に嘘があっても構わない。誇大広告や過小評価は心理戦の常套手段だからな」



 自国の功績を正しく報告し、同盟国を募る。

 虚偽を信じ込ませ、相手の意思を操作する。


 そこにルールは無く、むしろ、如何にして唯一神すらも思いもつかない奇策を作り、実行するか。

 肉体的な弱者たる人間の武器は『思考力』なのだと、大神父ノワルが語る。



「だが……、勝敗の決着方法は決めておかなければならない。各自が神さんから下賜されたこの本は、真実のみが書ける『黒の史実書』。ここに国の全功績を記すことを命じる」


「機密情報の塊の本を奪われる=国の優位性の喪失だ。戦争時の決着は本の所有者変更によって決定される」


「ということで、それぞれが上辺を取り繕った編纂史実発表会を始めるぞ。まずは俺の国セフィロトアルテだが――、」



 こうして世界に、不安定機構アンバランスが誕生した。

 そしてその陰で、唯一神が頬笑みを溢す。


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