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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第86話「ホウライ伝説 終世 六日目 プロローグ・アンバランス⑨」

「落ち着け、シアン。生まれたての子タヌキに何をさせる気だ?」

「食後の思想運動です」


「聞いたことねぇぞ、そんなお手軽なプロバガンダッ!!」



 胸フェチだと証言されたノワルへ、三つのジト目が降り注ぐ。


 七賢人の中でも最も力を持つとされる時代の覇者・カーラレスの孫である彼女は、当然のように大切に育てられた。

 だが、自由奔放に育てられている従姉妹や従兄弟とは違い、シアンには徹底した情操教育が施されている。

 無論、カーラレス達が行っている酒池肉林もシアンには隠され、異性に興味を抱くどころか嫌悪の対象となるように教えられていたのだ。


 だが、七賢人が失墜し、情報統制されていたアレやコレが耳に入るようになってしまった。

 その結果、今まで汚らしいと思っていた行為に興味が出始めるも……、どうすればいいのか分からない。その結果がこのタヌキ睨みだ。



「……えー、グリン様。七賢人様は争いが絶えない世界を憂い、様々な娯楽を布教させることで、他者への虐欲を抑えようとしていた訳ですね?」

「うむ、それはおおむね成功し、世界は安定した。されど、傍観者にとっては至極つまらない世界となった」


「神さんはそれが気に入らなかった。だから、」

「人間に争いと混乱を呼ぶ為に神の因子はばら撒かれた。それは唯一神の全知全能、この世のすべて。極論、全ての人間を一つにまとめた場合、世界を作り出せるのだろう」



 神の因子とは、唯一神の力の欠片。

 逆に言えば、全てを集めて一つにすれば、唯一神になれると。


 なるほどな、合点が行ったぜ。

 今の神さんには唯一神としての力が、”ほぼ”無いのは、あるべき力を世界にばら撒いたからか。


 唯一神を神さんなんて呼べちまうくらいに気安いのは、普通の人間と大して変わらないと感じるからだ。

 実際、身体能力だけ見れば、ドン臭ぇ世間知らずの小娘にも劣る。

 ……ぶっちゃけこの目を疑ったぜ。

 普通の川魚を釣り上げるのに30分も苦労した上に、それを野良タヌキに奪われて涙目になった所を見た時はな。


 ノワルの中で唯一神に対する価値観が変化した。

 理解できない存在から、警戒するべき唯一神へと。



「神さんは世界を滅ぼすと言った。だから多分、いつでも唯一神としての力を取り戻せる。俺が抱いたのはそういう認識です」

「私も同じ意見だ。逆らってどうのという次元にない。一対人類すべての様なものだからな」


「人間すべて、か。だとすると、カーラレス様の星導四日神盤のような膨大なスケールの力がある一方、相応にショボイのも存在しそうですね?」

「うむ、我らは研究の結果、人はだいたい10~20の神の因子を持っているだろうと結論を出している。いわゆる才能という奴だな」



 人類存亡、その分水嶺こそが神の因子。

 ようやく七賢人に思考が追い付いたノワル、そして、これから起こるであろう未来を予測する。


 神の因子は多岐に渡り過ぎる。

 料理が得意、話が上手い、体力がある……、ちょっと優れている程度なら、大した問題にはならない。


 だが、世界を滅ぼせる神の因子を使った、人類同士の戦い。

 たった一人の人間が、星の配置を変えられるというのなら。

 それに準ずる天変地異が交錯する戦闘は、想像を絶して余りある破滅でしかなく。


 ノワルは戦慄する。

 神の因子によって変わる世界を。



「良くも悪くも、人間は神の因子に支配されている。それにだ、シアン。恐らくだが、思想にも影響を与えているぞ」

「思想ですか?」


「誰だって得意分野をやりたがるだろ?それが神の因子によるというのなら、考え方も変わる」



 走るのが好きなのは、速く走れるからだ。

 なら、速く走れる神の因子を持つ者が多ければ多いほど、人々は、徒競争に興味を持つようになる。

 神の因子を利用する事で思想のコントロールが可能、むしろ、七賢人はそれをやっていた可能性すらある。


 神の因子も唯一神の力である以上、それを操作できる神の因子があっても不思議ではない。

 そして、それを行っている可能性が最も高いのは――、ノワルは目の前に居る師を見据え、喉を鳴らす。



「グリン様、貴方は人を導くことに秀でていました。まるで、得意な才能が見えているかのように」

「ほぉ?」


「神殿に入ったばかりの私を側仕えに取り立てたのも、考えれば不自然です。教えてください、貴方には神の因子が見えているのですね」



 ノワルは逡巡し、理解した。

 アンチ七賢人としてノワルの部下になった有能な人材は、どれもグリンの側仕え時代に面識を得ている。

 会わせられていたのだ、と。



「よかろう。一人一つ、質問に答えてやろう」

「……では、遠慮なく。貴方が知る限りの神の因子の情報を教えてください。洗いざらい全部!!分かってるんですよ、貴方の部屋にある鍵付きの本棚に記録帳がある事はッ!!」



 この本棚には絶対に触ってはいけない。掃除も自分でやるから不要だ。

 側仕え時代に言い聞かされていた規律がどうしても気になっていたノワルは、夢を失った後の反抗の第一手として監視魔道具を仕掛けた。

 バレないように部屋の中では無く、明り取り窓から見える木の中に。

 そうして本棚の中を覗きこんだ結果、大量の尻フェチ本と共に、漆黒の魔導書誌を見つけている。



「貴様……なぜそれを!!だが、カーラレスによって、既に焼き払われておる」

「七賢人様の部屋は瓦礫と化していますが、貴方達を捕らえた時点で私物は別の場所に移してあります」


「なに!?真か!!」

「随分と貴重な資料が仕舞ってあるようでしたので。もう一度ご覧になられますか?」



 秘蔵エロ本見たけりゃ、本棚、開けろ。

 ノワルが放った言外の脅しをグリンは瞬時に理解、互いに利があると鷹揚に頷く。



「よかろう。明日にでも見せてやる……、がそれはノワルの願い。シアンにも質問はあろう?」

「ノワル様は後で私に教えてくださいますよね?なら別のことを伺いましょう」



 ノワルが求めている情報は、グリンが知っている神の因子の全て。

 だが、記録帳には記載されていない神の因子がある。

 他ならぬ、グリンが持つ神の因子だ。



「シアン、グリン様の――」

「……まさか、お尻フェチの神の因子が存在するとか言わないですよね?」



 なんつーこと聞いてんだお前ぇぇぇぇぇ!?!?

 馬鹿なの!?思春期なの!?

 世界存亡の危機だって分かってるだろ、お前の賢さならさぁ!!



「それは見たこと無いが、愛撫の神の因子ならあるぞ。他ならぬ私が持っている」

「なん……、だと……?」



 なにその、ゴッドハンドッ!?

 唯一神に太鼓判を押された愛撫って何?どんなんだよッ!?!?


 理解が及ばずに目を白黒させ始めたノワルを余所に、グリンがルクシィアを撫で始めた。

 そして、う”ぃ~~あぁ~~と気持ち良さそうに伸びるルクシィアの様子に戦慄する。



「儂も若い頃は、数多の女子を骨抜きにしたものよ」

「……こ、こんなエロじじぃを先生と呼んでいたとか、黒歴史にも程がある。一刻も早く闇に葬らないと」


「できるのか?この指が触れた瞬間、貴様は果てるぞ」

「男相手でも見境なしとか、もはや恐怖でしかねぇぞッ!!つーかそこまで極まると、尻とか胸とか関係ねぇだろうが!!」



 こきり。とグリンが指を鳴らした瞬間、ノワルは全力で距離を取った。

 尻と胸を押さえて。



「流石はカーラレス様の親友、相容れないとか言っときながら他の教えにも通ずる。ずいぶんと手慣れていらっしゃるようで!!」

「ふん、私達は賢人ぞ。知り尽くした上で厳正な評価をするに決まっておろう」


「開き直りやがったこのエロじじぃッ!!さては胸フェチ用の本棚も隠し持ってやがるな!?だって、お前の奥さん爆乳だもん!!」

「大は小を兼ねるし、優れているものは認めなければならぬ。お前は度胸が狭いな、ノワル」



「……。やはり胸に話を戻す……、これはいけませんね。う”ぃー太、ルクシィア。準備運動はできましたか?」

「ヴぃー!」

「るるん!」



 エロじじぃと戦ってたら、背後から物騒な確認が聞こえたんだが!?

 慎ましさを備えているシアンから、先日のカーラレス様と同じ気迫を感じるんだが!?

 つーか、下ネタに話を戻したのお前だろ。祖父孫揃ってマッチポンプにも程があるぞ。



「シアンが動物と意思疎通が出来るのも、世絶の神の因子『愛烙譲渡スウィートマータ』の恩恵だ」

「嫌な流れから急に真面目な話すんな!繋がらねぇだろ、意識が!!」


「行きますよ、う”ぃー太!!ルクシィア!!」

「ヴぃー!」

「ぎる!」


「「「アァ―ッ!!」」」

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