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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第85話「ホウライ伝説 終世 六日目 プロローグ・アンバランス⑧」

 

「う”ぃー太、ルクシィア、ご飯ですよ。はい、スライスチーズ」

「待て。なぜ発酵させた?お乳っつったら液体だろ」


「でも美味しそうに食べてますよ?」

「当たり前だ。タヌキだからな」



 皿に山盛りにされたスライスチーズに齧り付く二匹の子タヌキを見て、ノワルは納得を含んだ溜め息を吐いた。

 多く見積もっても生後3日しか経ってない幼体であっても、食い物を与えれば迷いなく齧る。それがタヌキ。


 そしてノワルもジャンクフードを食べつつ、タヌキの様子を伺う。

 せっかく名付けたのに死んでしまうのは寂しいと万全を期し――、おかわりを所望した子タヌキ共に度肝を抜かれた。



「図太てぇ。コイツらは大物になるぞ」

「ふふ、私を守ってくれるんですもんねー?ルクシィアー、う”ぃー太ー?」

「「ヴぃ!!」」



 ……。

 やっぱり会話してるよな?

 タヌキのリクエスト(鳴き声)に答えて違う味のチーズを用意したシアンを見て、ノワルの疑問が深まってゆく。



「う”ぃー太は男の子ですので、ルクシィアも守ってあげてくださいね」

「ん?コイツってオスなのか?」


「そうですけど」

「いや、ヴィータって女性に付ける場合が多いからさ」



 さっきの反応を見る限り、う”ぃー太はカッコ良さに憧れているっぽい。

 例え俺を嫌っているとしても、女性的と言われば反応を示すはずだが……、気に入ったか?チーズ。



「んー、それって生活力が高くなりますようにって願いを込めてですよね?じゃ、う”ぃー太は女子力が高い執事タヌキを目指しましょうねー」

「ヴぃぉ!?」



 執事も羊もねぇよ、どう育ててもタヌキにしかならねぇ。

 こいつも嫌がってるし、むしろ不貞腐れてヤサグレそう。


 ……あ、お前、執事とか女子力とか理解してんのな。



「ルクシィアは姫騎士です。でも、女の子ですから無茶はしてはダメですよ」

「ヴィルン!」

「お前、メスかよ!?」



 確認しなかった俺も悪いが、その情報は先に欲しかった。

 音色的にメスでも違和感がないのが救いだが……、食用花の名前とかが良かったかもしれない。



「なぁ、シアン。ちょっと気になる事があるんだが。さっきからタヌキと会話してるよな?」



 絶対の確信を抱いているが、一応確認しておく。

 なお、もしもシアンの一人芝居だった場合、俺は人間不信に陥るだろう。



「はい、赤ちゃんなので言葉はたどたどしいですけど、そこがまた可愛いんですよね」

「常識の確認から行くぞ。普通の人間は動物と意思疎通できない」


「え?そんなことないですよ。じゃあ、ペットのご飯とかどうしてるんですか?」

「勘、もしくは、これで良いやっていう妥協」


「えぇ!?」



 何だこの反応。

 俺に取っちゃ、子タヌキに迷いなくチーズを食わせることの方が驚きだよ。



「確かに内気で喋らない子もいます。けど、大人しいインティマヤだって話しかけてきますよ。みかんー欲しいーとか」

「なんかヤバそうなタヌキが増えたが、置いておく。ちなみに、他の動物は?」


「大体は喋りますね。あ、理解できるかは別ですよ。鳳凰鶏が言っていた『皇の教えは絶対だ。阿波に吹く風は讃岐にも吹く』とは何でしょう?」



 上の者から下の者へ考えや思想は移っていく、って意味だ。

 しっかし、ニワトリには似合わねぇなぁ、おい。



「なるほど、お前がおかしいって事が良く分かった」

「んな!?」


「家庭教師を引き受けた日に、『どういう風に育てたら、こんな不思議系お嬢様になるんだ?』と思ったもんだが、どうやらそれも神の御技って奴らしい。……そうでしょう?グリン先生」



 顔を真っ赤に染めたシアンが、臨戦態勢になった子タヌキーズを抱き締める。

 剥き出しになった可愛らしい犬歯、だが、ノワルが見ているのはその背後に歩み寄る老人だ。



「ノワル。貴様、何を今更、私を先生などと呼ぶ?」



 清廉な白を基調とした神官服に、緑色の装飾が映えている。

 普段は温厚であり、七賢人随一の優しさを持つと呼ばれる彼の名はグリン。

 だが、ノワルへ返された視線と言葉は鋭く研ぎ澄まされていた。



「グリン様の偉大さと慈悲深さを改めて認識したからです。先日までの愚行も、今となっては恥じるばかりで」



 ノワルが言っている愚行とは『俗賢人の集い』のことだ。

 神どころか全世界へ向けて、七賢人の痴態を24時間生中継。

 魔道具が設置さている広場には多くの人が集まり、店が集まり……、そうして七賢人の名は児童にまで轟いている。



「正直、途中から俺も楽しくなってきて……七賢人様をネタにしてさんざん煽ったことを、今ここに謝罪します」



 俗賢人の集いで差し入れられる脱出アイテムは、街角で配られているアンケート回答の中からランダムに選出される。

 その条件は『殺傷能力が低い物』という非常に緩いものであり、どう使っても脱出不可能であろう面白アイテムが書かれている事が多い。


 なお、七賢人が最も歓喜乱舞し、脱出寸前まで行ったアイテムは『コンパス・定規セット』。

 最も目が死んだアイテムは『カーラレスのヘアヌード写真』。



「それは別に良い。神を楽しませねば世界が終焉するのならば、いかようにも道化を演じよう」

「え?あ、はい。じゃあどこに怒っているんですか?」



 もしも七賢人が脱獄に成功した場合、激怒のままに殺しに掛ってくるだろう。

 コメディからのシリアス急展開も良いと神が言っている以上、それも悪手では無いとノワルは覚悟を決めていた。


 だが、そこには怒っていないとグリンが言う。

 マスクメロンの様に頭皮に血管を浮かばせながら。



「師への裏切り、忘れたとは言わせぬぞ」

「……すみません、心当たりが多すぎます。どれですか?」



 先に裏切ったのは、貴方たち七賢人ですけどね。

 俺の純粋無垢なな少年心を汚してから何年経ったと思ってる?

 水面下で行ったプロバガンダ、10や20じゃ足りねぇぞ。



「貴様が準備時間を欲し、我ら七賢人全員を牢獄に入れた時のことだ」

「あぁ、俗賢人の前の時ですね」


「差し入れた春画本により我らは二つのフェチ派に分かれた。そして、数の上で私達、尻派が優勢であったのだ」

「!?すんげぇ所が追求されたッ!」


「七賢人が七人であるのは、意見が分かれた折に多数決に判断を委ねる為だ。だが、部外者であるはずの貴様はあろうことか胸派を主張し、4対4の拮抗状態を作りだした」

「それが狙いですからね」


「貴様が余計な入れ知恵さえしなければ争いなど発生せず、しいては、胸派であるカーラレスに後れを取る事など無かったのだ」

「いくらなんでも、良い大人が殴り合いのガチ喧嘩になるとは思っていませんでしたけどね!?」


「言い訳をするな、乳を欲する童め!貴様が尻の良さに目覚めるまで、私の弟子を名乗ることは許されないと心得よ!!」

「許さなくて結構です!!この上ない不名誉なのでッ!!」



 誰かコイツの口を封じてくれ!!

 シアンがタヌキと一緒に睨んで来てるから!!

 早速、姫騎士タヌキが出陣しそうだから!!


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