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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第64話「ホウライ伝説 終世 五日目 ③」※挿絵あり

 



挿絵(By みてみん)







「だから、私が貴方をこの手で殺す。そして……ッ!!」



 愛を宿したその声で、愛した者を殺すと誓う。

 薄らと零れた涙の匂い、それを掻き消す暴虐がホウライへと向かって――、落ちる。



「俺の父ちゃんもよくさ、母ちゃんからビンタを貰ってたっけ」

「んッ!」


「で、避けると怒りが酷くなるっつってさ、こうやって受け止めてた」



 左右の上空から振り下ろされたのは、ヴィクトリアの背後から伸びる二本の蟲顎。

 光学迷彩を宿しているそれは不可視にして超光速、されど、皇として覚醒したホウライの視覚はもはや、主感覚のサポートでしかない。


 暗香不動イムバブルオーダー権能神化……、『神香比例イルムオルバ』。

 あらゆる感覚器を超越したそれは、大気中に漂う全ての香りを情報へと置き換える。

 匂いを発した瞬間に考えていたこと、目的、計画。

 対峙している相手の意思だけではなく、土、草、木、空気、雲……、ひと繋ぎとなって接触している物質の状態情報までも、ホウライは思うがままに集得できる。



「へへ、ちっと憧れてたんだ。お前と夫婦喧嘩すんの」

「夫婦じゃないっっ!!」


「まだな」

「そうなる予定なんて無いッ!!」



 ホウライが嗅ぎわける未来予知、その速度は神経速。

 それはある意味で当然なのだ。

 この世界で最も速い神経速を感知できるからこそ、その体内機関を『神経』と呼ぶのだから。



「小さい頃、ほんっとうに小さい頃に砂場で喧嘩した事あっただろ」

「なんの、話……ッ!!」


「お前が作ってた砂の家に俺がボールぶつけてさ。すっげぇ怒って掴みかかって来て……どうなったと思う?」

「そんな、昔、覚えてないっ!!」


「その割には焦った匂いがするけどな?顔真っ赤だぜ」

「うるさい!」


「押し合いして滑って転んで。始めてのキスとられたって泣きじゃくるお前に謝っても謝っても許して貰えなくて……、女を押し倒したら責任と取らなくちゃならないって、そん時にグンローに教えて貰ったんだ」

「つっ!?」


「半ば強引だったけど、嫌じゃなかったんだぜ。仲直りのプロポーズ」



 バチン。っと手で弾いて飛ばす。

 ホウライには攻撃軌道が分かっている。

 それがどの方向から繰り出されていようとも、ヴィクトリアが意図したものであるかぎり、寸分の狂いも無く撃墜できるのだ。



「どうした?俺を殺すんじゃなかったのか?」

「はぁっ、はぁっ……、」


「これで気が済んだろ。もうやめとけ」

「やめる、わけないでしょ……」



 ギリっっと奥歯を噛みならして、睨みつけ。

 白くて小さな蟲が鳴く。

 殺意あいを宿したその声で。



「遊びはお終い、そろそろ本当に殺すね」

「まずはその下手くそな演技を止めたらどうだ?クオリティがアサイシス以下だぞ」


「へったって……!」

「一度死んだ身だ、お前が本当に俺を殺したいっつうんなら、それも良いとは思うぜ」


「じゃあ、さっさと死んでよッ!!」



 癇癪の様に放たれた攻撃、そして、ホウライはそれを受け止める。

 まるで、妻の理不尽な怒りを笑ってやり過ごす夫の様に。



「……お前、何か企んでるだろ」

「つぅ!?」


「虫一匹殺せない優しい性格のお前が、一切の躊躇なく俺を殺すと言い切った。俺の利になるとしか思えねぇ」



 パシン。と乾いた音が鳴る。

 受け止めた攻撃をその位置で絶尽。

 そしてホウライは大地を駆ける、目を丸くしている幼馴染、その手を掴むため。



「願い下げだぜ、ヴィクトリア。生贄とか、自己犠牲とか、そういうのはもういらねぇ。お前が俺を殺すというのなら、俺はお前を生かし続けてやる。ずっと側に居てな」

「私のせいだから、自分で決着をつけなくちゃ、ならないのに……ッ!!」


「それはお前じゃねぇ、俺の役目だ」



 ちっと痛いぞ。

 そういって振りかぶったホウライの腕には、二色の雷光が渦巻いていて。

 そして、くんっ、っと小さく鼻を鳴らし、ヴィクトリアが何も出来ない事を悟る。



 たとえ、その身に宿した能力が世界最強だとしても。

 戦闘経験の無いお前が使った所で、何の意味も無い。

 体内に電気信号を流して、気絶させる。

 そして次はテメェの番だぜ、蟲量大数。


 そんなホウライの目論みは、ヴィクトリアの背後から伸びた蟲顎によって遮られた。



「なんっ……!?」

「我らが姫を泣かせたな」



 蒼に輝く蜘蛛顎クモアギト、そこから発せられた呼気と共に、覚えのある糸が放出さた。

 それは紛れもない大災厄。

 世界最大の粘度――、縛王蟲・チトウヨウの縛糸八卦。



「ちぃっ!!」



 叩きつけたホウライの左腕へ、大量の糸束が着弾する。

 腕に蓄えていた電荷はヴィクトリアの意識を奪う用に調整されたもの。

 糸を焼き切る威力は無く、ホウライは隠していた手札を切らざるを得なかった。



「《虚実反掌》」



 ホウライの肉体の90%は既に、魔法物質へと置き変わってしまっている。

 特に、酷使してきた腕は原形を留めておらず、日常生活でさえ魔法で誤魔化している程の状態だった。


 だからこそ、その融合は簡単だった。

 覚醒させた神殺しを己が骨に見立て、肉体内へ留め置く。


 蛇と戦い、勝負服と引き換えに手に入れた、ホウライの最終形態『雷人皇』。

 両の腕に宿した神殺し、その能力の一つ『疑心』を使い、己の行動を虚偽へと置き換える。



「蟲になるとか、命を宿すとか、そういう事かよ……」



 蟲顎を撃墜した位置に戻り、更に一歩引いたホウライ。

 だからこそよく見えた。

 今まで隠されていた、ヴィクトリアの現状が。



「……きらい。嫌いだよ。私の言う事ちっとも聞いてくれないホーライちゃんなんか……、大っ嫌い」



 不可視化していた肉体が完全に露出してゆく。

 それは、ヴィクトリアの背中から生える6本の蟲顎蠕虫。

 もっとも原始的で、最も精錬されている、”ワーム”だ。



「見せたく、無かったのに……」





挿絵(By みてみん)





「……ごめんみんな、やっぱり力を貸して」

「「「「「我らが姫の仰せのままに」」」」」




 六匹の王蟲兵を背に従え、混蟲姫・ヴィクトリアが命ずる。

 慈愛あいを宿したその声で。



「じゃあ、殺すね。……さよなら、ホウライちゃん」

「好きなだけ吐き出せ、俺が全部受け止めてやる」



明けましておめでとうございます!!

本年も、どうぞよろしくお願いいたします!!



ということで、新年の描き初め(?)はヴィクトリアです!

……。

…………。

………………尻尾多すぎぃ!!


これにはソドム&ゴモラも絶句。

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