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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第49話「ホウライ伝説 神愛なるもの⑦」

「今ここで殺すぜ、神」

「やってみな。そして知るが良い、知識の眷族(タヌキ)よ。ボクへの反逆が、なぜ、蟲量大数と那由他しか成し得ないのかを」



 カツテナキふてぶてしさで叩きつけられた、反逆声明。

 ソドムが突き付ける黄金色の剣を払い除けた神は、不敵な笑顔で挑発を返す。


 そうして、ソドムは与えられた役割を完遂した。

 神からヴィクトリアを救出したダンヴィンゲンは、その厳つい顔を僅かに緩ませている。



「姫よ、このような無茶をなさらずとも、命じてくだされば……」

「私が囮になるのが最善手。神ならば『ヴィクトリア』を絶対に茶化しにくるって、ヴィクティム様も那由他様も言ってたから」


「ならば、この私が姫を演じるという手が」

「あると思ってるの?この腕、私の胴周りより太いんだけど。ねぇ、私をなんだと思ってるの?馬鹿なの?」



 様々な理由から感情が昂ぶり、そして、それを隠す必要が無くなったヴィクトリアは親しい配下を思いっきり睨んだ。

 極寒のジト目に震えあがったダンヴィンゲンは身体を強張らせ、すぐに追加された「冗談だよ」という声で緊張をほぐす。


 これから先の戦いは、まさしく、九死に一生。

 自身を含めた10名の世界最高軍勢の命、それが神に挑戦する為の賭け金である事を誰もが理解している。



「いくよ」

「姫の仰せのままに」



 ダンヴィンゲンの腕から離れたヴィクトリアは、小さな胸いっぱいに空気を吸った。

 そして、押さえていた世絶の神の因子を覚醒させる。


 愛を重ねた声で、啼く。

 勝利()忠誠つくせと、絢爛に。



「――ひとを愛し、ひとを利する者は、天必ず之に福す。《愛玩信憑》」



 ヴィクトリアの口から発せられた音の羅列。

 それはかつて、世界を一纏めにしたシアン・リィンスウィルの信条だ。


 死してなお破滅を願い続ける祖父・カーラレスすらも愛そうとした彼女は、自身の言葉を魔法へ変えていた。

 いずれ生まれる愛烙譲渡の所持者が、再び、世界を救えますように。

 そんな願いが込められた魔法によって、ヴィクトリアの権能は超覚醒状態(ランク3)へと神化する。



「ん。きた。悪喰=イーターでサポートを開始する」

「久しぶりだからな。しくじるんじゃねぇぞ、ゴモラ」


「ソドムじゃあるまいし。そもそも、このシステムは私とシアンで作ったもの。馬鹿兄には扱えない」

「ほぉぉ?」


「解脱転命にアクセス、ついでにソドムの真理究明を使って思考ブースト。……那由他なる知識をあなたへ。《堕ちゆく神教への福音ネストチャーチ・ゴモラ!》》」



 愛とは、他者と結び付きたいという感情だ。

 故に、愛烙譲渡の真髄は、様々な境遇で育まれた心すらも一つにする。


 愛玩信憑が発動して以降、ヴィクトリアの支配下にある生物は、互いに絶対なる信頼を抱く。

 発せられた指示をそれぞれが好意解釈し、その作戦を上方修正。

 さらに、命の権能を併用することで魂を連結、0.0001秒のタイムラグすらも生じさせない超高速意思疎通が行われるようになるのだ。


 それは、軍勢にして完全なる、個。

 それぞれが立案した最大最善手を同時多発行使、その口火を切るのは知識を手にしたヴィクトリア。



「ソドム・ダンヴィンゲン・黒塊竜、前衛攻撃。 決め手はソドムの神殺し。ふたりは神の防御を破壊」

「「「了解」」」


「ホウブンゼン・ケイガギ、後方射撃。神の魔法行使を妨害しつつ、前衛の進路を確保」

「「了解」」」


「カナケラテン、天王竜、防御。攻撃を引きつけて、竜たちの戦闘領域を維持」

「「了解」」


「チトウヨウ、ゴモラ、戦闘支援アンチバッファ。神の動きを阻害することに集中」

「「了解」」


「出し惜しみは無し。みんな、全力でやって!」


「まかせろ!!」



 魂内で交わされた命令伝達に従い、それぞれが最善手を打つ。

 始めに動いたのは神に対峙しているソドム。

 神喰途絶=エクスカリバーに搭載された6つの悪喰=イーターを起動し捕食、周囲の空気を調律する。



「神つっても体は人間だ。ならよ、息はしてるよなぁ?」

「……ッ!?」


「うるせぇ口をまず閉じろ。てめぇの野次は聞き飽きた」



 悪喰イーターが噛み合わさった瞬間、神の周囲に存在する空気成分が急変。

 音を最も伝達させにくい配合であるそれには、さらに、もう一つの役割がある。



「我が拳に宿え、」



 灼赤から獄蒼、そして漆黒へと色変わった炎を握りつぶし、黒塊竜が天を駆ける。

 そして、歯を食いしばった神の前方20mへ拳を振り下ろした。


 そこはソドムの空気調律よって作成された導火線の最先端。

 真理究明によって導き出された『理想気体』は、まさしく理想通りの結果を齎す。



「《潰滅理炎(ドラクーン・フレイム)》」



 瞬きの間に空を奔った黒炎が穿ったのは、神の視界。

 有爆したエネルギーが光を押しのけ、ソドム達の姿を覆い隠す。



「けほっ、やって――ッッッ!」



 目の前に広がった暗黒の意図を考えた神は、視覚外からの強襲に備えていた。

 空気成分を全世界と平均値化して、それを瞬時に取り除く。

 そうして一秒も掛らずに対策を講じ……、晴れた視界を埋め尽くす拳を見て戦慄した。



「《世界最強の物理破壊力(マキシマム・ダイン)》」

「かっっ・・・…ッ!!」



 馬鹿な。ありえない。

 そんな思考こそが、神域浸食・ルインズワイズの術中だった。


 ゴモラは強かに聞いていたのだ。

「この肉体なら蟲量大数や那由他を殺せそう」

 そんな神の自惚れを掻き立て、まやかしの勝機の予兆を抱かせる。



予知みえてるぜ。テメェが此処に吹き飛んでくる未来がな」

「……ッ!!」


「馬鹿みてぇな枚数の魔法防壁は神のお家芸。対策なんざ、とっくの昔に出来てる」



 神が行使する能力は、大きく分けて二つ。

 一つは肉体に備わっている世絶の神の因子。

 そしてもう一つは、全ての生物が平等に使える『魔法』という理だ。


 その理を用意したのが神であるからこそ、全ての魔法を無条件で使用できる。

 数えるのが億劫になる程の重ね掛けですら、一音の詠唱すら無く発動できるのだ。


 だからこそソドムは、エゼキエルの絶対勝利を回天させる。



「《天滅す勝利の剣メギド・エクス・カリバー神跋列断槍(ウォーゴッデス)》」



 平たい長剣だったエクスイーターの刃に亀裂が走り、ドリルめいた形状へ。

 亜神経速に達した極大の回転槍、その切っ先が刹那秒で切り刻むのは、200を超える防御魔法。



「い、いぃぃーー、いっつぅッッ!!!?」



 ついに指先へ触れたエクスイーター、その回転を止めるのは神にとっては造作も無い。

 世絶の神の因子は神殺しには干渉できないが、回転基盤であるエゼキエルには有効だからだ。


 そして、その知識は共有されている。

 ホウブンゼン、ケイガギ。

 遠距離攻撃を得意とする二匹の王蟲兵が狂喜し、けたたましく羽根を鳴らす。



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― 新着の感想 ―
[一言] 追記、 返信見ましたけど、竜族最初っから 不憫属性だったのねん……
[一言] ふと、思ったけど、この神さん、 言う事の割に格が低いような? 話に満足して消すまで準備に7日はかかるし、 わざわざ、「これ以上続くのは駄作」的な発言しても、 自身を殺すチャンスは与える…
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