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ユニーク英雄伝説 最強を目指す俺よりも、魔王な彼女が強すぎるッ!?  作者: 青色の鮫
第12章「無色の篝火狐鳴」

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第45話「ホウライ伝説 神愛なるもの③」

 


「……小虫?叩き潰す?脆弱な人間ごときが粋がるものではないと思うのだがね?」



 その言葉が気に入らない。

 それは、カツボウゼイが王蟲兵である以上、当たり前の事だった。


 王蟲兵は、それこそ、蟲量大数匹にも及ぶ昆虫の頂点だ。

 そこに至る過程はまさに弱肉強食であり、同族であっても……、いや、進んで同族を殺して捕食し、能力を奪う強かさが無ければ辿りつけない。

 多くの種を喰らい混じり合うことで、『カツボウゼイ』という新たな種へと進化したのだ。


 だからこそ、単一生物でしかない人間の不遜な態度を許せるはずがない。



「我らが姫の願いはお前を此処から遠ざけること。故に手加減が必要となる……、などと思って欲しくないのだがね?」

「ほっほ」


「殺すな=五体満足ではない。四肢を捥がれていようが、呼吸さえしていれば死んでいないのだ」

「それは、邪魔をするという意思表示で良いのかのぅ?」


「貴様が主体では無い。姫の願いを叶えるのだ」

「ほっほっほ、それは骨が折れるのぅ。なにせヴィクトリアの我儘は筋金入りじゃからな」



 ほーらいちゃん、ほーらいちゃん、あのね――。

 そんな前置きから始まるヴィクトリアの我儘は、いつも無理難題ばかりだった。


 メロンをジュースにすると美味しいんだって!

 ……今、真冬だぞ。


 秋シャケのムニエルって知ってる?

 知ってるぞ。立春の今日は絶対に喰えねぇ。


 お目目が白いカブトムシが居るんだって!?

 それ、死んでる奴じゃないよな?秋になる前に言えって。


 お父さんがね、星マークのタヌキを見た事あるんだって。私も見たいな!!

 15年前の話は無理すぎる……。


 そんな不可能のいくつかを達成したホウライにとって、今回のお願いは簡単すぎる内容だった。

『絶対に死ぬな』

 そんなこと、言われるまでも無いからだ。



「……《暗香不動イムバブルオーダー奥義、逝薫イクン》」



 死ぬつもりは欠片もねぇ。

 だが、死ぬ以外なら何でもやってやる。

 そんな強き意思から来るホウライの第一手、それは、肉体の70%を雷人王の掌へと融合させることだった。


 世界最強の加速力・カツボウゼイ。

 彼の王蟲兵が持つ神経速に対抗するには、ゴモラの様な緻密な戦闘管制を敷くか、同じ領域に辿りつくしかない。


 そして、現在のホウライではどちらも不可能だ。

 神殺しを覚醒させた事により、認識は神経速に達している。

 だが、皇種の資格を得たばかりであり、まだ肉体の性能限界値を超えていない以上、神経速では動けない。



「遅――!」

「かのう?」



 もしも相手がカツボウゼイでなければ、戦いの中で肉体を成長させられたかもしれない。

 だが、そんな時間も余裕も無い。

 視覚も聴覚も嗅覚も、すべてが攻撃の跡に付随する。

 そして、それが勝負を決する一撃である事は、ラルバから授かった知識の中にも記述されているのだ。


 だからこそ、ホウライは人間としての四肢を捨てた。

 肩と腰から先を純粋な魔法概念へ置き替えることで、限定的な神経速を獲得したのだ。



「……。ウ”ウ”、ウ”……ウ”……。」

「《虚実反照》」


「遅……、おそ、かった……のは、わた……」



 それは、世界最速のカウンター。

 攻撃が行われる前に発生する、神経速マイナス秒の決着だった。


『犯神懐疑・レーヴァテイン=”黎明の悪夢を(サクリファイス)息止める者(ラルバ)”』

 この剣は、刀身に接触した相手と自分の状態を、触れていた時間分だけ撒き戻す。


 その結果として残されるのは、攻撃前の挙動を起こしながら、認識の上は『攻撃を終えた』相手と、まだ『攻撃していない』ホウライ。

 そして、互いに発揮している速度は神経速。

 認識の遅延こそが、勝敗の分かれ目となる。



「違う。死に急いだんじゃよ。儂と同じくな」



 ホウライが呟いた時には既に、カツボウゼイの生命活動は停止していた。

 抜け殻となった肉体は自然落下を始め、燃え盛る森の中へ消えてゆく。



「……虚偽だ」

「ほう?」



 重くのしかかる様な、言葉足らずな声。

 それは6つ菱形の複眼のみが存在する顔から発せられている。



「姫は我らの敗北を望まぬ。無論、死もだ」

「確信がある様じゃのぅ。それも糸で読み取ったのか?」



 レーヴァテインで殺害した生命の魂は世界へ還元されず、刀身内へ封印される。

 いくら天王竜が転生を行えると言えど、神殺しに干渉するのは容易ではないはず。

 そんな目論みを看破され、ホウライは苦々しく笑う。



「同胞の敗北にも動揺せんか。どうだ?ついでにそのまま儂を見送るというのは?」

「問題外」


「そうか。それは仕方がないのぅ」



 そして、飄々とした態度で舌を打つ。

 目の前にいる縛王蟲・チトウヨウは、文字通りの意味で、一筋縄ではいかないからだ。



「世界最速の次は『世界最遅』か。ギャップが激し過ぎるのぅ」


かなり短くてすみません!


ゴモラ「……あ、カツボウゼイ瞬殺された。ウケる」

ソドム「相性クソいいもんな、レーヴァテイン」

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